表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DECIDE YOUR DESTINY2  作者: 北村タマオ
第3章 拡大する混沌
23/26

0023 カオスを討つ

 無論、メルートリア大陸侵攻作戦の気配は、イラストリラ合衆国の市民の知る所になった。メディアは次々とこれを取り上げて、この是非を示していた。保守系・リベラルで、意見が分断される筈なのに、今回だけは全会一致にて「反対」に流れていた。

 当たり前だ。希林・ブロッサムは、西海洋の荒波を越えて進む強襲揚陸艦の魔女控え室にて、船に揺られながら思う。東イズク大陸での北沙羅樹国との問題、神華大陸の大都市・城胚での攻防戦、南沙羅樹国での霊定県での華党機動艦隊との戦い、全てを後回しにして、新しい戦線を構築するのは、誰が見ても聞いても知っても、無謀な事業にて税金を溶かされていると解釈するだろう。

 保守系・リベラル、双方問わずに生活が困窮している中で、これ以上の税金の無駄遣い、そして無用な流血を強いられていたら、国が煙の様に消えてしまうだろう。混沌から生まれて、混沌の中に消えていくのが、この国の運命なのかもしれない。巻き添えで、南沙羅樹国まで道連れにされてしまうのは勘弁して欲しいものだ。

 メルートリア大陸は、歴史的にはこの間まで先進国として列強に君臨していた国々が揃っている。城胚での攻防戦にて派兵しているとは言え、まだまだ本命の主力部隊は本土に残している。これを一国で相手にするのだ。同盟国としてぶら下がっている南沙羅樹国の戦力はあんまり当てに出来ない。

 成果が欲しい。それは分かる。選挙に勝ちたい。それも分かる。だから戦争を拡大します。それは違う。これからメルートリア大陸に落とす1発の爆弾の値段で、高級車が買える。貧困層への食糧配給が全州で行える。貧困層への増税も出来ない、富裕層への増税だって必要ない。戦争にはとんでもなく金がかかるようになってしまった。いや、何時の時代のどんな戦争だって、金がかからない戦争なんて無かった。何なら、勝った国が後に滅びた戦争だってあるのだ。

 戦争は儲からない。だが、戦争に備えなければもっと儲からない。有名な一節であるが、もうそれは過去のものになりつつある。戦わずして勝つ、抑止力こそが強みだった筈では無いか。イラストリラ合衆国は、北は北極海、南は南極にまで軍事力を配置している。それが抑止力として機能していたのは、無敵・無敗の合衆国の力があればこそだ。どの戦線でも負け続き、あるいは膠着状態にある中で、その無敵神話は終わりを告げていた。

 メルートリア大陸へと向かう船の中で、希林・ブロッサムは船酔いに弱い部下の面倒を看ながら、ここから先に自分達を待ち受ける運命を前にして、世界中を敵に回してしまった同盟国との未来について、先が見えないというのは、こう言う時の事を言うのだなと思っていた。

 希林・ブロッサムは、この戦争の行く末に勘づいていた。いや、しかし、それだけは有り得ない。今の所は、その確率は限りなく低い。もしそうなれば、戦争どころでは無い。いやしかし、沙羅樹国の分断にしても、誰も予測していなかったわけでは無いが、望んでもいなかったではないか。

 

 恵美・マギアは、「アウシウ」連合軍にて魔女軍の作戦班班長として迎え入れられていた。西海洋を目下航行中のイラストリラ合衆国の第1、第2艦隊は、あの第二次円津海峡海戦にて投じられたイラストリラ合衆国海軍と同じ戦力、いや、より強大と言っても良い。あの2度目の奇跡の勝利をもう一度実現しなければならない。

 と、言われても。恵美・マギアは思わずにはいられない。と、言われても、「アウシウ」に残された戦力では、あの艦隊を押し戻せないのは確かである。だからこそ、自分を選んだのだろう。作戦班班長として。前線で主に戦う魔女が、これに赴任するのは異例中の異例であったが、この際、どんな手を使ってでも、勝たなければならなかった。

 最終目標は、イラストリラ合衆国の現大統領の任期が終わって、選挙が始まるまで戦線を持ち堪えさせる事。その為には、あらゆる手段を講じても構わない。作戦班班長として、恵美・マギアは会議室に集められた、「アウシウ」各国の作戦士官に告げる。

「あと1年と少しで、ゲーテル・デバイ大統領の任期が終わります。それまでに、1つ、大戦果を立てたいというのが、今回の敵の意図です。つまり、1年と少しの間、負けさえしなければ良いのです」

 その1年と少しが、「アウシウ」にとってどれだけしんどい時間なのか。この場にいる人間に分からぬ訳が無い。ただでさえ、過去に2度に渡る大戦争の影響で衰退しているとは言え、1年と少し、イラストリラ合衆国の2個艦隊の猛攻を耐え抜けと言うのか。

「海軍力に関しては、この「アウシウ」の連合艦隊では太刀打ちできません。何処からどう頑張っても、大型護衛空母4隻には敵いません。どうやってあの4隻に積み込むジェット戦闘機とパイロットを融通したのかは分かりませんが、あの大統領の事ですから、何かしら成果らしい成果が出るまで、任期を迎えるまで軍事侵攻を止めることは有りません」

 それについては、全員同意する表情を浮かべる。

「あと1年と少し、それだけ耐え抜けば充分です。聞けば、敵国内部では、2つの大きな政治団体が力を伸ばしていると言います。彼らが現政権への圧力を強めれば、結果として戦争を止める事が出来ますが、それはまだまだ希望的観測の範疇です。間違っても、イラストリラ合衆国が分断されると言う事態を期待して作戦を立てるわけにはいきません。仮にそんな事態に陥ったとしても、我々に利があるとは想えません」

 それはそうだ。生きたまま降伏させて、賠償金なり経済制裁なり、何でもやらせるべきだ。

「であればこそ、あと1年と少し、その間に防御を固めて、敵の政治的分断と混乱を待つ」

 ……いや、それこそ希望的観測ではないか。次期大統領が戦争を止める方向に考えがいくかどうかは分からないではないか。

「確かに。ですが、こちらから逆侵攻なんて事も出来ません。繰り返しますが、1年と少し、敵の攻撃を耐え抜く。これしか手はありません。何をやっても千日手か、あるいはこちらの敗北に終わります」

 だが、長い戦いになる。その間に失われる人・もの・金は、どう保障するのだ。

「嫌なら「アウシウ」を解散して、これまで通りにイラストリラ合衆国と友好的な関係を築けば良いわ」

 ……分かった。1年と少し、だな。こちらに直接攻め込んでくるのを持久戦に持ち込むと言うのだな。短期決戦では無く、長期戦に持ち込んで、敵の厭戦気分と政変を期待する。それで良いのか。

「その通りです。我々の武器は「時間」です。時間稼ぎさえすれば、西海洋から遥々こちらに伸びきっている補給線を断ち切る事に専念して、地上戦では防御一択です」

 それしか無い様だな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ