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DECIDE YOUR DESTINY2  作者: 北村タマオ
第3章 拡大する混沌
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0022 西へのカオス

 既に手遅れであった。今からデモを起こしても、もう遅い。既に第3次「ジーアス」戦争は始まっており、もう止まる事は無い。何処の国の専門機関も、同じ解答を示していた。

「10年戦争になり、全世界のGDPの10%は消える」

 戦争は既に2年目に突入、東イズク大陸の島国の分断国にて始まったいざこざは、瞬く間に戦争に発展し、これから先、戦線は拡大して、縮小する見込みは無い。


 希林・ブロッサムは、霊定県から首都

・桜都に呼びつけられていた。恐らく、新しい辞令であろう。迷惑な話だ。この間、議会を通った「海外派兵に関する特別措置法案」に基づいて、海外派兵を行うつもりなのだ。その派兵先なんて、今はもう決まっている。イラストリラ合衆国海軍第9艦隊が、「アウシウ」の同盟軍と戦っている、神華大陸の大都市・城胚に決まっている。今度こそ、年貢の納め時だろうか。これから先、異国で血を流すのか。外国の失策の尻拭いで。

 魔女自衛隊のエースとして、魔女の名家として知られる彼女は、重苦しい気持ちを抱いたまま、首都・桜都に行った際、世の中と言うのはなかなか先が読めないものだと悟ってしまっていた。

「イラストリラ合衆国のメルートリア大陸侵攻部隊の一員として赴任して欲しい。3日で使えそうな魔女をピックアップして、すぐに合衆国本国へ行ってくれ」

 もし一般市民が聞いたら、俄に信じがたい話である。北沙羅樹国に対して2度も負けている。大勢の水兵や軍艦を沈められている。その中で、戦線を拡大し続けるとは。しかも、殴りかかる相手はかつての同盟国であるメルートリア大陸の国々だ。「アウシウ」の中心的な国家が名を連ねているとしても、直接攻め込んで、勝てる訳がない。

 しかも、これに応援部隊を派遣すると言う事は、イラストリラ合衆国と地獄の底まで一緒、とも解釈できるのではないか。それは御免被りたい。いや、そうなる前に向こうの国で政変が起こるだろう。それに、こんなに酷い戦争になっているからこそ、次期大統領選挙では両党共に「終戦」を公約に掲げるはずだ。無論、マニフェストとして掲げておいて、後で引っくり返すのも充分有り得る事態である。

 先が見えない状況は、もう暫くは続きそうだ。


 メルートリア大陸の都市・メルトルにある「アウシウ」本部でも、勿論この情報を事前にキャッチしていた。東海岸の海軍基地に、次々と艦船や航空機、それに兵隊を集めているという情報が入ってきていたからだ。

 だとすれば、目的は1つだ。今度はこっちがやられるのだ。神華大陸の城胚にて行われている規模の、いや、それ以上に大きな規模の市街戦は覚悟しなければならない。

しかし、大東洋に面した東イズク大陸にて戦いつつも、西海洋を大軍で渡って大陸に攻め込んでやろうというのは、字面にしただけでも無謀・無茶・無益である。やってやれないわけでは無いが、あの「アウシウ」結成からかなり経っているのに、交渉の1つもせず、1歩の譲歩もせず、1度も声明を発表していない。

 これは、相手に対して最大級の侮辱であり、「相手にせず」と言う相手への最大級の攻撃である。挙げ句の果てが、軍事侵攻となっているのだが、ホップ・ステップ・ワープに近いスピードで、事態は進行中であった。

 「アウシウ」の一翼を担う神華大陸が攻め込まれている今、そこから戦力を削るわけには行かない。人的動員は勿論、生活用品の配給制もしなければならない覚悟を決めなければならない。80年前の第2次「ジーアス」戦争以来の、戦乱の嵐が吹き荒れようとしていた。


 その都市・メルトルの「アウシウ」本部ビルに、草臥れた雰囲気で会議室に駆け込んでいる一団がいた。彼ら、彼女らは通訳を伴っており、何か仕事で此処に来たのは明らかである。

 「アウシウ」の会議室にて、来るべき審判の日に備える作戦士官達に、その一団は名乗りを上げる。

「北沙羅樹国国際派遣部隊であります」

 と言う事は、先頭に立っている魔女が、あの第2次円津海峡海戦の作戦の立役者である恵美・マギアだと言うのか。この国難に際して、北沙羅樹国が自国の貴重な人材を派遣してくるとは。これは大きな賭けである。

 ……いや、そんなに大きな期待はかけない方が良い。恐らく、恵美・マギアを引き抜いたのが協力態勢のピークであり、これ以外にはろくな陣容ではあるまい。

 メルートリア大陸の、「アウシウ」の命運がかかるこの事態にて、ラシア共和国がソラージュ連邦と名乗って「冷戦」を繰り広げた共産主義勢力の一員であった北沙羅樹国に嫁がせて、今に伝わる魔女の血筋が、こんな所で取引の材料にされるとは、誰も思わなかった。


 一方、2隻の原子力空母を中心とする合衆国海軍第9艦隊と地上軍は、城胚を巡る戦いにて日々消耗していたが、その中でメルートリア大陸への侵攻作戦を知らされて、怒り散らかしていた。

「そんな事をするくらいならば、わざわざこんな所に我々を送り込む意味が無いじゃないか!」

「2正面どころか3正面作戦だぞ! 上層部は戦略の基本から分かっていないのか!」

「これは戦力の逐次投入であり、典型的な失敗であり戦略的敗北だぞ、連中はそんな初歩的なことも分からないのか!」

 彼らの怒りは、そのまま士気の低下に直接の影響を与えていた、逆に「アウシウ」の連合軍は粘り強く、しつこく抵抗する様になっていた。これ以上無いくらいに最悪な展開である。

 2個艦隊を失い、今や大型タンカーやコンテナ船を魔改造して急場を凌ぐ状況の中で、1度でも良いから勝てば良いのに、敗北を重ねている。何故か? 戦争の最終目標も考えないままに、目的も曖昧模糊にて掴み所が無く、単純に政治的な理由でもって事を成したのが理由だ。

 これじゃあ、まるで潰れかけた大企業が失敗続きの中で次々と違う事業に手を出して、その度に火傷しているのと同じ構図ではないか。その内に累積債務が返済不可能なところまできて、終わりが来るぞ。その内に銀行からCEOが派遣されて、財務整理の為の作業が始まる。そして、煙の様に消え去るのみだ。

 クソ、一体これからどうなるんだ。もしかして、一部の噂は、「10年戦争説」は事実なのか。冗談じゃ無い。こんな戦争、10年も続けていたら、イラストリラ合衆国は煙の様に消え去ってしまう。

 あと1年、我慢すれば、大統領選挙だ。次の大統領候補は、両党共に「終戦」を公約に掲げてくるだろうが、どう言う形での「終戦」なのかで意見が変わる筈だ。そして、結果によっては戦争はまだまだ続く。それこそ、10年も続くかも知れない。


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