表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DECIDE YOUR DESTINY2  作者: 北村タマオ
第2章 1年目の混沌
21/26

0021(第2章 完) 強まるカオス

 世の中、天敵という奴が居るに違いない。第2次円津海峡海戦の結果は、南沙羅樹国の自衛隊に対して、そう教えていた。イラストリラ合衆国の艦隊を、2度も撃退している。しかも、2度目は完全に自力で、だ。1度目はラシア共和国と神華大陸の華党からの支援での攻撃である。

 この天敵、北沙羅樹国に対して、こちらはどう対抗するべきなのか。因みに、円津海峡での2度目の敗戦を経ても尚、イラストリラ合衆国第9艦隊は、神華大陸の大都市・城胚をめぐって「アウシウ」の連合軍と戦っている。南沙羅樹国を守ってくれる筈のイラストリラ合衆国は、むしろ守られる筈の国に対して、船を融通してもらうつもりらしい。

 海上自衛隊は、まさか自分達がようやく80年ぶりに造る事が出来た原子力空母「しなの」を持っていくつもりなのか。と、内心脅えていたが、結局買い取られたのは沙羅樹国船籍の大型タンカーやコンテナ船であった。どうやら、大型護衛空母をまだまだ造るつもりらしい。それ以前に、「しなの」の作戦能力は、イラストリラ合衆国海軍を満足させるスペックではない。搭載機数50機、速力30ノット、原子力機関で蒸気カタパルトでは、100機近くの搭載機能と32ノットの速力に、原子力機関で電磁カタパルトを持つ大型護衛空母の方が使い勝手が良い。

 希林・ブロッサムは、霊定県の基地のテレビにて、合衆国側のニュースを見ながら、この戦争の、「南北統一有事」の行く末を考えていた。イラストリラ合衆国は、あの天敵・北沙羅樹国を未来永劫許さないだろう。2度の大恥をかかせておいて、あれだけの血と鉄を海に沈められていて、やり返さないわけが無い。そこから第3次「ジーアス」戦争に雪崩れ込んだとしても、混沌の中でこそ、あの「体力馬鹿」が取り柄の超大国の本領発揮の状況である。

 「アウシウ」、「反イラストリラ合衆国連合」全てを敵に回してでも、全部これを打ち負かすつもりで戦う筈だ。まだそれだけの基礎体力はあるのだ。混沌こそが合衆国の強みが活かせる環境である。そして、どさくさに紛れて自分に優位な形で戦闘終結を測る。なる程、完璧な作戦である。

 だが、その作戦、その戦争、全然上手くいっていないよ。大量に戦死者を出して、多くの兵器を失い、税金も溶かしている。ここからどうやって復帰しようというのか。これから先、この混沌をどう納めるつもりなのか。それこそ、最後の審判でも起こすつもりなのか。冗談じゃない。

 と、ここまで考えた上で、もう1つの思念が脳裏を過る。同盟国とは言え、外国人の自分が此処まで義憤と諦観に満ちた考えになっているのだから、肝心のイラストリラ合衆国の国民はどうなのだろうか。矢張り義憤と諦観に満ちた思いを抱えているのだろうか。いやいや、そんなものではない。


 マックス・マクシミリアル代表は、目前に広がる大衆を前にして、武者震いを起こす。そうだ、俺は正しい。正しいんだ。皆、もうウンザリしているんだ。だからこそ、自分は大衆の代表なのだ。これだけの支持者が居るのだから、SNSのフォロワーも爆発的に伸びている。こうして演説会にも足を運ぶコアな支持者を集まった。あとは行動だ。

「王だろうと皇帝だろうと、民の声を聞かない人間を代表にしていも良いのかっ!?」

 会場からは、「NO」の大合唱。

「王だろうと皇帝だろうと、戦争で大勢の人命を使い捨てにして、財産を溶かして、我々から税金を取り立てるのが許されるのかっ!?」

 またもや「NO」の大合唱。

「王だか皇帝だか知らないが、我々が望まない戦争を起こして、我々を苦しめる事が許されるのかっ!?」

 再び「NO」の大合唱。

「「自国第一主義」の精神は、既に汚された。我々が望んでいるのは、こんな政治では無い。この中でこれを望んだ合衆国国民は居るかっ!?」

 更に「NO」の大合唱。

「今すぐ停戦を! 今すぐ国際社会への復帰を! 真面目に働けば報われる社会を再び我々の手で作り上げるのだ」

 大喝采、満場一致の大拍手、「RSIA」と呼ばれる政治団体の第1回演説会の熱狂は、もう冬の足音と共にクリスマスも近づいている奇跡に、雪も溶けそうな熱さが伝わってきていた。


 アレックス・ファンネル代表は、動画サイトのライブ配信にて、視聴者の表記を見て、つい冷や汗がたらりと落ちる。どんなに有名なインフルエンサーのライブ配信よりも数が多い。

「みんな、今のこの国の政治について、もう一度考え直してみよう。私はこの国の製鉄所にて3世代に渡って鉄を造り続けました。私はそれを常に誇りに思っていました。ですが、もうそれでは生活していけません。妻は医療保険が適用されずに、ベッドで2人の息子の将来を託して、天に召されました。私は、この国を偉大にしたいとは思いません。それは3%の金持ちが97%への搾取を正当化する為の詭弁です。我々は、かつてリベラルと保守に分かれていても、ゴールは共有していた筈です。私は、またこの国の市民達が再びゴールを共有したいと思っているのです。我々には見えているゴールを、無理矢理引き裂いているのは、3%の富裕層と97%の貧困層です。私は2人の息子に、もっと良い国を残したいのです。それこそが、我々の世代が向かうべきゴールです。これ以上の正しいゴールがあるでしょうか。もし私が生きている間に、「MIUA」とそれを支持する人々が1つのゴールを見出して、その役目を終えたら、私はまた鉄を造ります。私は製鉄技術と2人の息子以外には、何も持っていない男なのです。皆さん、ゴールは同じ筈です。そして、それは今、一部の権力者や特権階級に奪われています。一部の成功者だけが居心地の良い社会は、それこそ時代遅れの権威主義国です。もう一度、皆で同じゴールを目指しましょう」

 アレックス・ファンネルは、爆増・激増・急増する「GOOD」ボタンと賛同のコメント、続々と投げ銭にしては額が壊れているスパチャを見て、自分に言い聞かせていた。さぁ、これからが本番だぞ。自分のしていることは、少し間違えれば独裁者のそれと変わらない末路を辿る事も十分に有り得る。あくまでも謙虚で、誠実に、そして親しみのあるキャラクターをしなければ、その時点で「MIUA」は危険なカルト政治集団となってしまう。

 冷静に。常に冷静に。アレックス・ファンネル代表は、その時点で配信を終える。興が乗ってきて演説を延長して、変な失言をしない内に、聴衆の熱量が頂点にある内に、これを終わらせたいと思い、それは成功した。


 戦争の最初の1年は過ぎていく。惑星「ジーアス」の国々を混沌に誘う第3次「ジーアス」戦争の、最初の1年が過ぎていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ