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DECIDE YOUR DESTINY2  作者: 北村タマオ
第2章 1年目の混沌
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0020 冷たいカオスへの誘い

 恵美・マギアは、ここから先、イラストリラ合衆国第12艦隊による再侵攻にて、如何に抵抗・撃退するべきか話し合っている「北の砦」と呼ばれる司令部にて、周りの作戦士官の右往左往を見て、おかしくなっていた。神華大陸や霊定県まで戦線が拡大したからと言って、ここが北沙羅樹国が安全となった訳ではない。矢張り、希望的観測で戦線はこちらに戻らないと油断していたのだろう。

 大型護衛空母3隻を擁する敵艦隊に対して、如何様に戦うのか。今度はラシア共和国や神華大陸の華党軍の支援はあてには出来ない。大型護衛空母に、何か弱点でもないものか。と言う意見も出ていたが、そんなのは3隻も揃ってしまったら、弱点もクソも無い。大型タンカーやコンテナ船から造った3隻の大型護衛空母に載せられている戦闘機は、280機。真っ正面からまともにぶつかり合えば、絶対に負ける。

 かと言って、もう前回と同じ飽和攻撃による防衛システムへの一点突破戦術は出来ない。あれ以来、国を挙げて増産しているとは言え、あの時に用いた対艦ミサイルと同じ数を揃えるのは不可能だ。

 とは言え、防戦一方では敵の思う壺だ。長期戦となれば、単純に数が多い敵が勝つ。矢張り、何かしら策を講じて奇襲をかけるしかない。古代の師曰く必勝の方は、「強い奴とは戦うな」である。それが無理であれば、勝てる様に環境を整えて勝つのだ。

恵美・マギアは、「北の砦」の地下3階の作戦室にて侃々諤々の議論をしている作戦士官達に対して、1つ、腹案を示した。ザックリとしたアイデアであり、細かい肉付けはそっちでやってくれと言わんばかりにであったが、作戦士官達は全員揃って賛同していた。そんな単純な話で、この国難にて戦うべき策を決めても良いのかと思うし、何よりもこの作戦は魔女軍が非常に嫌な立場に立たされる。何なら、恵美・マギア自身も、この作戦に駆り出される可能性が高い。何となれば、発案者自身が1番手になり、作戦を実行するのは仕方が無い。

 話は大きくなり続けた。ザックリしたアイデアは、いつの間にか一撃必殺の奇襲作戦となる。ちょっと待て、そんなの博打じゃないかと止めようにも、もう止められないところまで進んでしまった。イラストリラ合衆国海軍が、そこまで間抜けなのか。だが、上手く行けば、2個艦隊を一網打尽に出来る。大型護衛空母も、今度こそ積んでいる航空機諸共沈めるのも可能だ。

 かくして、第2次円津海峡海戦に関する作戦案は固まり、党の審議会に回されたが、最初は良い顔はされなかった。当たり前だ。こんな博打、許可する方が変わり者である。だが、他に良いアイデアは無い。まともにぶつかれば、消耗戦だろうと決戦だろうと、最終的に負ける。妙ちくりんなアイデアであろうと、何でも良いからやってみるしかない。

 失敗したら? そんな事、考えるまでもない。


 「ナウレカ・エイト」型大型護衛空母は、既に7隻ほどが完成して、乗員の訓練が終わって就役している3隻が、ここに集結している。最終的には、12隻建造する予定であり、載せる戦闘機とそのパイロットも、全力で用意中だ。12隻あれば、世界中の海に1000機以上の航空機を展開できる計算となる。

 「アウシウ」、「反イラストリラ合衆国連合」を打倒する最後の切り札が、これでは何とも情けない話であるが、要は勝てば良い。そして、勝つのには物量を揃える必要がある。

 神華大陸にて城胚攻防戦で踏ん張っている第9艦隊の味方の為にも、ここは1つ、戦局を引っくり返さなければならない。その為の大型護衛空母だ。

 対水上レーダーが、複数の船を探知する。艦対艦ミサイルの射程範囲に入る前に、敵艦隊は一斉回頭して逃げ出していく。しかし、変だ。対水上レーダーは、敵艦隊が一斉に逃げ出しているのに、敵艦隊の3倍の数の標的を捉えている。

 目視での見張りで確認すると、その正体は、こちらに「泳いでくる」魔人達であった。


「飛龍01より。ビッグマウスへ」

「ビッグマウスより。飛龍01へ、状況を報告せよ」

「合衆国艦隊は、魔人には気付いているようですが、こちらの「本命」には気が付いていません。奇襲は成功です」

「ビッグマウスより。飛龍01へ。了解した。頃合いを見て撤退しろ」


 海中に潜んでいた魔女達は、魔槍にて自分の身体を温めながら、冷たい海中の中で耐え忍んでいた。海上には、敵の艦影が幾つも見える。友軍の魔人へと攻撃する準備をしているのか、駆逐艦が魔人相手に横っ腹を見せ始める。

今がチャンスだ。


 かつて、第2次「ジーアス」戦争にて、沙羅樹国は幾つもの一人一殺の自殺戦法を考案してきたが、これはその中の1つに酷似していた。唯一の、だが最大の違いは、攻撃側の生存は保障されていると言う点である。

 海中に潜んでいた魔女軍は、洋上に敵艦隊が来るタイミングで、次々と水上に全速力で浮かんでいく。魔槍の矛先を熱くさせて、敵のイージス駆逐艦や大型護衛空母の真っ赤に塗装された船底に向かって、突き進む。


 艦隊は大混乱に陥っていた。目の前の魔人を相手に対応しようとしていたら、海中に「何か」が潜んでいるのは感知していたが、機雷にしては小さすぎた。何かのセンサーの類ではないかと思っている内に、実際に船体を熱い魔槍で貫かれていく中で、全てを悟っていた。

 また負けたのだ。


「全滅ぅ!? 北沙羅樹国相手に、2個艦隊が全滅だとっ!」

 と、大海洋艦隊司令部は大混乱に陥っていたが、イラストリラ合衆国大統領、ゲーテル・デバイは、前線からの敗報を聞いて、急ぎ国防省の「無能ども」を呼びつけて会議を開くように要求していた。ああ、これで何人クビにされるのか。いやいや、そんなのはどうでもいい。失われた人・物・金は尋常ではない。ある意味、第一次円津海峡海戦よりも、結果は深刻である。魔女や魔人が使い方次第では、戦局をひっくり返せる力があると言う事が証明されたが、そんなの敵の功績であり、こちらは無数の艦艇を乗員や艦載機、そのパイロット諸共、冷たい海の中に沈んでいき、凍え死んでいったのだ。


 高松之カツタロウ挙国一致内閣総理大臣は、その敗報を聞いて目眩を感じてしまった。心臓が弱かったら死んでいた。そこまで弱い軍隊だったのか。いや、例えこちらの自衛官が指揮をしていたとしても、こうなっただろう。圧倒的戦力差を抑える為に、奇策を用いてこれに打ち勝つ。これぞ軍人の仕事である。

 こっちにも、自衛隊にも居るだろうか。こんな策を用いる人間が。そして、それを採用する組織が。北沙羅樹国を、時代遅れの権威主義国と見て、舐めた作戦を取ることはもう許されない。

 どうする、合衆国海軍第9艦隊が、城胚にて踏ん張っているが、これを援護する為に派遣している海上自衛隊を、このまま西方にて配置するべきか、悩みどころであった。

 第2次までやってしまった今、第3次、第4次もある物だと思った方が良い。憂鬱な気分にさせられる。あの小さい島1つ奪うのに、こんなに犠牲を払う羽目になるとは。どんなに物量を揃えたとしても、それだけでは脅しにはならない。むしろ、窮鼠猫を噛むになりかねない。かの国には良い薬になっただろう。かの国が「馬鹿」でなければ、つける「薬」もあるのだが。


 ゲーテル・デバイ大統領は、怒るのを通り越して、恐怖していた。これでもう終わりだ。「史上最低の大統領」の烙印が、自分の顔に押されているのを感じていた。大型護衛空母のアイデアは悪くは無い。ただ、大名行列的な艦隊行動は、最早出来ない。リスクが大きすぎる。魔人や魔女の扱い方に関しても、合衆国軍は軽視しすぎていた。

 色々と反省点があるのだが、今の問題はただ1つだ。「誰が責任を取るか」、だ。一番その任に適任であった艦隊司令官は、新進気鋭の空母と共に沈んでしまった。であれば、大海洋艦隊司令官こそ、その任に相応しい。

 列席者は、今更自分のキャリアを考えはしなかった。それよりも、これは世界秩序が、イラストリラ合衆国による世界秩序が崩壊がした瞬間である。これから始まるのは、1国による軍事的支配での世界秩序へと反発を抱く世界VS既得権益を守る為に戦う超大国、と言う図式の戦争となる。そんな戦争、国民は望んでいない。もしそうなったら、内乱ものだ。結局、人間と言うのは結果が出せない人間に対しては、何処までも残酷になれる。そして、人間が一番軽蔑するのも仕事が出来ない人間である。

 もうそろそろ、会議室の外から見える光景は、枯れ葉が寒風に舞う季節になっていた。この戦争も、そろそろ2年目だ。そうなれば、この大統領の任期もあと1年になる。それだけが救いである。与党は選挙にて大敗し、大統領選挙でも、現野党の立候補者が完勝、政権交代が実現するだろう。

 いや、そんな単純な形で終わりそうには無い。そうなるのには、もう人・もの・金を失いすぎた。もう一悶着起きる筈だ。人間のする事というのは、かなり簡単に予測できる。


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