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DECIDE YOUR DESTINY2  作者: 北村タマオ
第2章 1年目の混沌
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0018 カオスの炎

 神華大陸の華党軍には、一種の驕りがあったと言うのは否めない。今や世界唯一の軍事大国。並び立つ者無き帝国。そのイラストリラ合衆国と雖も、この広大な神華大陸には攻め込みはしない。仮に首都まで攻め込まれても、より奥地に遷都すればいい。そうしてこれまで勝ってきたのだ。それが分かっていればこそ、彼らは、彼女らは、その兆候を感じつつも、それを俄に信じられなかった。

 合衆国海軍第9艦隊は、華党海軍機動艦隊を素通りすると、城胚へ向けて戦爆連合100機を送り込んでいた。華党海軍機動艦隊は、急ぎ城胚の防衛の為に戦闘機を送ろうとしたが、既に第1次霊定島防空戦にて戦力を使い果たしてしまっており、艦隊上空の護衛までが手一杯であった。

 華党空軍はスクランブルで戦闘機を投入したが、バラバラに飛んでくる戦闘機を相手に第9艦隊の戦闘機は各個撃破にて迎え討ち、それらを全て叩き落とし、城胚は爆撃機による攻撃で、高いビルは半分が瓦礫の山と化した。

 それに加えて、あろう事かイラストリラ合衆国第9艦隊は、魔戦機ロボや魔人を続々と上陸させてきた。まだ華党陸軍は城胚が戦場になると言う事態を想定してはいない。第9艦隊が後方から連れてきたのは、最新鋭の装備を持つ魔戦機軍と魔人軍である。市民はそれを見て、いよいよ戦場がここまで広がった事について、かなり悲観的になっていた。別に亡国への道を通っている事への悲観論ではなく、世界の行く末に対する悲観論である。

 この戦争、そう簡単には終わらない。あの大統領は、終わらせ時を完全に間違えていた。むしろ、無意味なままに戦線を広げ続けている。南北に分断された沙羅樹国、それは冷戦と呼ばれた時代の残り香が放つ血の臭いに踊らされて、次々と戦線は広がり、犠牲者は増え続けている。これに何の意味があるのか。

 まさか、あの大統領は本当に、この戦争で自分の国をもう一度偉大にするつもりなのか。それは戦わずして勝つ、と言う意味では無いのか。戦えば、財は溶け、命は失われ、物は壊される。イラストリラ合衆国は、とんでもない馬鹿をトップに選んでしまったものだ。もう最初は何処の誰がどうして事を起こしたのか、誰もが分からないままに混沌に叩き落とされている現状は、第1次「ジーアス」戦争のそれに酷似していた。このまま、第3次「ジーアス」戦争と呼べる規模まで雪崩れ込むのは、誰が見ても明らかであった。


 華党機動艦隊は、後背からその合衆国第9艦隊を突きたいところであるが、先の第1次霊定島防空戦にて艦載機を消耗している。せめてエスコート艦だけでも活用して、艦対艦ミサイルの10発でも撃ち込みたいところであるが、第9艦隊のエスコート艦の性能は高い。第1次円津海峡海戦にて投入しただけのミサイル量で無ければ、飽和攻撃にはならない。そして、現在の華党機動艦隊のミサイル駆逐艦では、数が足りない。

 各地の華党海軍の艦隊が動こうにも、この西の海域には海上自衛隊が牽制の為に警戒している。こちらもどうにかしたいのだが、それでは城胚は落ちる。このままでは、あのゲーテル・デバイ大統領の思うがままだ。

 「アウシウ」の同盟軍は、復旧なった列車網にて急ぎ城胚近辺に集まりだしていた。華党政府は、「アウシウ」の援軍を応援・協力・支援しつつも、忸怩たる思いを抱いていた。このまま戦争が続けば、城胚は戦場になる。東イズク大陸で、南沙羅樹国の首都・桜都を越えるビジネス街として発展した街にて、大規模な市街戦を戦う羽目になるのは、即ち城胚が瓦礫の山になると言う事でもある。このままでは、神華大陸の広大な大地が、悉く地上戦と空爆により瓦礫の山となる。

 こんな状況が、10年続くと言う予測は、誰もが立てていた。戦後80年、至る所にて煮え滾っていた膿と血が、今になって皮を破いて噴き出しているのだ。どれだけの血が流れて、どれだけの膿が腐臭を放ちながらばら撒かれるのか。全世界のGDP10%減と言うのも現実味を帯びてきた。

 チクショウ、誰か止められないのか。「アウシウ」がその全軍事力を投じたとして、それで勝てるのか。


 霊定県の軽魔基地にて、他の魔女自衛隊や航空自衛隊、それに駐留合衆国空軍のスタッフ達と共に、状況を見守る希林・ブロッサムは、1人考えていた。

 どうすれば、この戦争、終わるのか。このままやり続けたら、世界は戦火に包まれて、海は涸れて地は裂けて、残っているのは人類だけ、と言う状況にもなりかねない。そんなになって戦争に勝っても意味なんて無い。現大統領の任期は残り2年、それを過ぎれば終わる、と言うのは希望的観測だ。恐らく、ここまで戦線を広げて、大勢の犠牲者や多額の戦費を費やしている与党は、岩盤支持層以外の支持を失い、負けるだろうが、ここまで攻め込んでおいて今更「御免なさい」で済む話ではない。

 例えそうしたとしても、反イラストリラ合衆国連合、「アウシウ」は残る。そして、イラストリラ合衆国の国際社会での孤立はより深まる。こんな無茶苦茶な戦争をして、大統領と与党が変わったからと言って、全てが帳消しとはならない。大勢の人が死んでいるのである。多額の金が湯水の如く溶けているのである。多くの家を失っているのである。そうなった時、南沙羅樹国は如何するべきなのか。あらゆる面で依存している合衆国との関係を、考え直すのか、あるいは思い切って断ってしまうか、そして恐らくは、地獄の底まで付き合う羽目になるのか。

 高松之カツタロウ総理大臣は、野党と協力して挙国一致内閣を組閣しているが、この問題に関してはどう考えているのか。そもそも戦後のビジョンまで描いているのか。負けた場合について考えているのか。あるいは勝つまでどんな犠牲を払っても続けるつもりなのか。元を辿れば、この沙羅樹国の「南北統一有事」に端を発した戦争が、世界規模にまで広がりそうになっている。

 そんな中、もう一報、ニュースが届く。

「「ナウレカ・エイト」級大型護衛空母は3隻まで就役、北沙羅樹国ヘと航海中。第4、第7艦隊の残存艦と共に第12艦隊を編成して、北沙羅樹国の陥落を目標として軍事行動に出るらしい」

 やれやれ、自分はまた北へ行くのか。いや、今は神華大陸の戦線をそのままにして、自衛隊のエース魔女を北へと向かわせる筈がない。残っている連中にどうにかしてもらうしかない。

 この日の為に、東北の空き地に無断で準備した基地にて待機し続けた合衆国海軍艦載機とそのパイロットは、再び自分達が命を預ける母艦を宛がわれたのだ。そして、もう前回と同じミサイルによる飽和攻撃は出来ない。華党軍が目の前の敵に対して手一杯である以上、ここから先は北沙羅樹国のみで対応しなければならない。それで敵の主導部を「斬首」して、あるいは「逮捕」して、それで全てが終わるのか。

 ちょっと、それは考えられない。火花は枯れ草について、炎になって山を、森を、大地を燃やし尽くさんばかりだ。

 さて困った。あの迷惑超大国の尻拭いは、誰がするのか。


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