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DECIDE YOUR DESTINY2  作者: 北村タマオ
第2章 1年目の混沌
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0017 カオスは大地へ

 沙羅樹国の最南端である霊定諸島にて、大規模な攻撃が行われたのは、ゲーテル・デバイ大統領の無謀な空爆から僅かに2週間後である。それも、華党の誇る空母機動部隊により、である。

 なるべく飛行場か軍事拠点を狙ったつもりで合ったが、10度に1度は誤爆が起こる。基地周辺の住民街には、ミサイルや爆弾が落とされており、戦後80年、繰り返し主張され続けていた問題、イラストリラ合衆国の基地があったら、霊定県民はその戦争に巻き込まれて、無垢の民の血が流れる事になる。

 老人ホームでは、鳴り響くサイレンを来て、皆こう言った。

「また戦争かぁ」

 嫌になるなぁ。とは言わない。それは常日頃、子や孫に言い伝えてきただけに、今更そんな事は言わない。今後は、食い物も食えなくなり、飲む水も自衛隊や駐在合衆国軍に奪われて、シェルター代わりの穴の中に引っ込んで暮らさなければならないのだ。

 戦争とはそう言う物だ。自衛隊や駐在合衆国軍なんて、これっぽっちも信用できない。幾ら頑張っても、このまま霊定県民に戦火が降りかかるのは間違いない。だからこそ、多少の犠牲はやむを得ないとして、航空自衛隊と魔女自衛隊が、制空権が駐在合衆国軍の力でどうにか保たれている間に、可能な限りの援軍を送り込んでいた。

 F19戦闘機36機、魔女43人。それが、現在許す限りの援軍であった。その中に、希林・ブロッサムも含まれていた。


「神華大陸の華党の海軍力は、米軍のそれに比べると、明らかに弱いです。しかし、我が方よりも圧倒的に強いのは確かです。西方海域を守る様に言われている海上自衛隊も、例の原子力空母「しなの」が引き渡されても尚、攻勢に出られない。日本の造船能力では、1度失った護衛艦の補充は時間がかかります」

「第9艦隊が、現在神華大陸の華党への攻撃を行うべく西進している。これが到着するまでの間、霊定県の島々を守り抜くのが我々の役割だ」

 季冬基地のブリーフィング・ルームにて現状を説明されている中で、希林は1つ、質問をぶつける。

「第9艦隊が来るまで、ここで踏ん張りのが、霊定県民の為になるのかどうか、そこはハッキリしなければ、住民の協力は得られないでしょう」

 ブリーフィング・ルームに集まった兵全ての顔が強張る。県民は、皆「軍隊」と「戦争」に怒りと怨みを未だに抱いている。住民からの協力が無ければ、今後何かと苦労させられる。

「第9艦隊は、原子力空母で2隻を中心に編成されている、正規空母で編成された、最後の予備兵力だ。これを南沙羅樹国に割いてやるのだから、感謝されこそすれ恨まれる筋合いは無い」

「「鉄の嵐」を、また降らせるわけにはいきません。今度は、嵐を止める側なのですが、起こすよりも止める方が難しいです。霊定県民にとって、あの戦争はトラウマになっています。本土決戦への捨て石となって見捨てられた県民は、軍隊というのを徹底的に信用していません。これを回復させるのには、あらゆる手段を用いなければなりません」

「……とは言っても、市街地上空の防戦となれば、戦闘機の残骸が市街地に落ちる。巡航ミサイルを飛ばされたら撃墜する必要があるし、撃墜したミサイルの破片は市街地に落ちる」

「だから、そこから住民を全力で守る姿勢を見せるのです。ポーズでも何でも良いから、住民ファーストの姿勢を見せなければなりません」

 面倒な事になった。駐在合衆国軍は全員、同じ表情を浮かべていた。しかし、同時にそれがここで戦う事だと言う事も覚悟していた。普段から、反戦派の反対活動を見てきた彼ら、彼女らは、住民の感情と言うのを良く理解していた。要するに、「県民への健気さ」を見せなければならない。


一方の華党機動艦隊は、2つの選択肢があるのに、そのどちらを取るべきか迷っていた。海上封鎖に徹するべきか、あるいは霊定県に上陸部隊を送り込んで、完全に占領下に置いてしまうか。どちらも魅力的な選択肢であるが、かなり早めに結論は出ていた。

 海上自衛隊は、艦隊保存主義に凝り固まっているのか、華党機動艦隊が来るのと同時に引き下がっている。これはこれで、正しい判断でもある。明らかに劣勢である華党機動艦隊に対して、海上自衛隊が攻め込めば、折角建造できた原子力空母を失う羽目にもなりかねない。

 第9艦隊の原子力空母は、華党の空母よりも強い。連中も頃合いを見て引くかも知れない、いや、絶対に引く。

それでも、第9艦隊がこの戦場に到達するまで、まだ時間がある。霊定県を占領下置いても、制海権を取られた後で上陸軍だけ残しても無駄死にだ。ここは1つ、1度か2度の嫌がらせの全力攻撃を行って、第9艦隊と海上自衛隊への牽制の任に就かせるのが一番良い。

 かくして、第1次霊定島防空戦が始まったのである。


 希林・ブロッサムは魔槍を手にしながら、レーダー基地が確認した華党機動艦隊の戦爆連合数十機を探し出していた。F19戦闘機は、もう世界の戦闘機マーケットでは「旧式」の烙印を押されているが、それでも長らく世界最強の名をほしいままにした傑作戦闘機だ。駐在合衆国軍の最新鋭戦闘機には見劣りするが、無いよりはマシだ。

 敵も、こちらと同じ程度の数を揃えている。戦闘機と爆撃機が40機程度、魔女が30人程度。どうやら第9艦隊が到着する前に、制空権でも取っておこう、と言う意図なのか。

 戦闘機が、魔女より前方に飛んでいく。先に戦闘機を叩いて、残された爆撃機を自衛隊機で撃墜させて、魔女は魔女同士の戦いで防ぐ。それがセオリーであった。

 だが、第9艦隊を送り込んだイラストリラ合衆国の国防省には、別の考えがそこにあった。神華大陸の華党が、今後2度とイラストリラ合衆国に逆らえなくなる様に、キツいお灸を据えるつもりであった。華党が作り上げた1大都市、城胚の占領である。同地を占領して、200年租借地としてこちらの物として、その間軍事的な活動を抑えようという、正気の沙汰とは思えない作戦であった。

 無論、これはゲーテル・デバイ大統領のアイデアではない。国防省にて立案された作戦である。しかし、200年租借地と言うのは、ゲーテル大統領のアイデアである。永久に支配下に置きたいが、それでは広大な神華大陸にて華党軍と泥沼の戦争となる。そうなる前の手打ちとして、城胚の租借である。

 元々、海上自衛隊なんぞに期待などしていない。連中は、後方支援や船団護衛でもしていればいい。本命の海戦は、こちらにやらせてくれればいい。お膳立て程度の仕事であれば、回してやっても良いが。


自分の身体の横を飛んでいく魔女の火球を避けながら、希林・ブロッサムは魔槍から衝撃波を飛ばして3人一組で戦う敵の魔女を散らして、1人は衝撃波で身体がバキバキにへし折れてしまい、海に落ちていく。

 今の所、こちらの防戦は上手くいっている。イラストリラ合衆国の戦闘機は、悔しいが性能も良いし、パイロットはこのじゃじゃ馬を乗りこなしている。自衛隊のF19戦闘機も、爆撃機を良く抑えている。

 それから10分もしない内に、敵は空爆任務を断念、爆弾を捨てて逃げ出していた。80年間、協同で訓練し続けて、この日の為に備え続けたのが大きい。

 しかし、こんな消耗戦、何時までも続けていたら、空自の戦力は半年も持たない。そうなる前に外交でも軍事行動でも、何でも良いから手打ちに出来る要素が欲しいところである。

 この日の戦果は、敵機の3分の1を撃墜確実、こちらは駐在合衆国軍は4機、自衛隊が6機、魔女4人である。大損害と言う訳では無いが、こんな戦闘をダラダラと続けていたら、南沙羅樹国から戦闘機が1機も無くなってしまう。

 何処かで落としどころを見つけ出すしかない。第9艦隊の到着が、その「落としどころ」になる予定であったが、城胚への攻略戦なんて、この時霊定島防空戦を戦う人間達の内、誰1人として信じていなかった。


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