第十三輪:『恋愛事情がちょっとおかしい』
次回予告を毎回最後に付けてるんですけど、次回の内容しっかり決めてないと本当自分の首を絞めることになります。
今回も締まりました。
ということでもう二月ですね!今回も笑形お楽しみ下さい。
これは今から十年以上前のお話。
莎子と未來はほぼ生まれた時から一緒だった。レイラー同士は惹かれあうもの。レイラーが集まった団地の隣同士であった莎子と未來の家族は、二月に未來が生まれ、その年の六月に莎子が生まれた。年が近いこともあり、親同士が仲良く、二人が仲良くなるのも時間の問題だった。
しかし、三歳になる頃莎子の両親と未來の父親があることをきっかけにいなくなってしまった。莎子は母親の姉に引き取られる形となったが、住む場所は変わらず二人は今まで通りに過ごしていた。いなくなった理由は物心ついた頃に教えられるのだが、それはまた別のお話。
そしてある時、その団地に礼央の家族が引っ越して来たのだ。団地にといっても、団地の横に大きな一軒家が新しく建てられ、そこに越してきたのだ。礼央の家は病院らしく、いつも両親はいないことが多かった為、年の近い莎子、未來の家に預けられることが多かった。なのでこちらも仲良くなるのに時間はかからなかった。
礼央「はじめまして、あおやまれおですっ!」
みき「こんにちは! みきはみきりん! こっちはさっつんだよ!」
さこ「はじめ……まして……」
礼央「!?」
それは礼央が初めて莎子宅に預けられる為、家を訪れた時。
一目惚れだった。
元気なみきりんの後ろに隠れるようにして言葉を紡ぐ莎子に、三歳にして礼央は胸を打たれ、この日から莎子にベタ惚れとなったのだ。
初めは人見知りで警戒心剥き出しの莎子だったが、礼央の優しさに触れ、段々と心を開いていくのだった。
三人はいつも一緒だった。保育園に行くにも、遊びに行くにも。
莎子、未來は礼央の家に遊びに来ていた。珍しく両親が家におり、三人と莎子の母親の姉と未來の母親全員が来ていた。
礼央母「いつもごめんなさいね」
さ母姉「礼央君大人しくていい子ですよね。莎子も礼央君にべったりで見てて可愛いんですよ」
礼央「おれ、おおきくなったらさっつんとけっこんする!」
さ母姉「あらあら、莎子はそれで良いの?」
さこ「……うん」
礼央母「あらー! じゃあこの際婚約しちゃいましょうか!」
礼央父「おい、そんな勝手に……」
礼央爺「いや、良いかもしれん!!!」
突然礼央のおじいちゃんが現れ、力強く言い放った。
礼央爺「レイラー同士都合が良いし、礼央には将来わし達の病院を継いで欲しいしな! 結婚相手が早く決まるに越したことはない! 婚約じゃ!」
みき「えぇ~、みきもさっつんとけっこんしたい!」
みき母「あらあら、ライバル登場だわ」
さこ「みきりんともけっこんする」
さ母姉「やだ一夫多妻制!? いや、この場合一妻多妻夫?」
礼央爺「とりあえず紙と判子じゃ!!!」
そうして莎子と礼央は三歳にして婚約者同士となったのだった。ちなみに未來と結婚の話は礼央のおじいちゃんには関係ないので口頭のみの可愛い約束となったのだった。
それから小学生、中学生、高校生とすくすくと育っていった三人だったが、礼央は変わらずに莎子のことをずっと好きだった。
礼央と未來が中学三年生のある帰り道、一人だけ学年が下の莎子は委員会の為未來と礼央が二人で下校している時にふと疑問に思っていたことを未來は聞くのだった。
みき「ねぇ礼央ってずーっとさっつんが好きなんだよね?」
礼央「へ!? なんで知って!?」
みき「いや、みきもずーっと一緒にいるし、バレてないと思ってた方が不思議だよ」
礼央「お、オレそんなに分かりやすいかな?」
みき「そうだね。さっつんは気づいてないと思うけど」
礼央は真っ赤な顔を腕で隠すようにして未來の方を見る。どうやら恥ずかしい時に腕で隠すのが癖らしい。
みき「ずーっと気になってたんだけど、さっつん以外好きになったことないの?」
礼央「うーん、ないかな。なんだろう、さっつんて目が離せないよね」
ふふっと礼央が思い出したように笑うと、未來もそれに釣られて何かを思い出したようで笑みをこぼす。
みき「確かに。無表情で冷静そうに見えて怖いものとか嫌いなもの多いし、ちょっと天然だよね」
礼央「そうなんだよね。なんだか目が離せなくて、気づいた時にはもう好きだったんだけど、知れば知るほど好きになるし、他の子に目を向けてる暇はないかな」
みき「礼央モテるのにね」
礼央「モテるのはオレじゃなくてみきりんでしょ? よく囲まれてるし」
みき「その度にさっつんが助けてくれるけどね」
礼央「オレもよく助けられる。格好良いよね」
また礼央はふふっと笑った。
みき「あーあ、さっつんが男の子だったらみきも結婚したかった!」
礼央「ふふっ、そうだね。さっつん男の子だったら相当モテただろうね」
みき「絶対さっつんのこと幸せにしないと怒るから!」
礼央「そもそもオレとさっつんがどうこうなるかもまだ分からないよ。オレは、好きだけど……」
みき「だって婚約してるじゃん」
礼央「あれは小さい頃おじいちゃんが勝手に決めたことだから無効だよ!」
みき「紙で契約しちゃってたじゃん」
礼央「そ、それはそうだけど……。さっつんの選択肢奪いたくない」
みき「まぁ礼央はそうだよねー。頑張れ少年!」
礼央「いてっ」
みきりんは礼央の背中を思いっきり叩くのだった。
そう、実は莎子と礼央は婚約をしているのだった。しかし付き合っているわけではなく、お互いの気持ちもお互いは知らない。その“婚約”という文字が逆に二人の枷になっているのである。
そして時は現在に戻る。
礼央「そういえば今日懐かしい夢を見たよ」
さこ「夢? なんの?」
今日は莎子と礼央が当番の様で、お昼ご飯の準備を二人はキッチンでしていた。といっても礼央がほとんどこなし、莎子が盛り付けていくだけである。
他の皆はというと、未來はキッチンから見える談話室で莎子と礼央の様子をにこにこと伺い、その隣でいつものごとく礼と紅龍が些細なことで言い合っていた。
一夜は庭のハンモックで寝ていた。
礼央「さっつんが委員会で一緒に帰れなかった時にみきりんと話してた時の夢」
さこ「何を話してたの?」
礼央「え!? そ、それは言えないんだけど……」
さこ「じゃあなんでその話したの? 気になる」
礼央「ご、ごめん。あ、さっつんお皿並べてくれる?」
礼央は話をそらすため莎子にお願いする。莎子もそらされたことを分かっていたが、仕方なしにお皿を並べ始めた。
礼「何作ってんの~?」
そこに礼が現れ、莎子を後ろから抱きしめた。お皿を持っていた為、落とさないように反撃は出来ない。
さこ「離せ」
礼「えー、なんかさっつんいい匂いすんね。何作ってたの?」
さつ「作ってるのは礼央! 良いから離せ!」
礼央「何やってるんだよ礼!」
そんな二人に気づいた礼央は声を荒らげるが、食材を切っていたため手がべとべとですぐには莎子を助けに行けない。手を一生懸命洗っているが、お肉を切っていたため、中々ぬめりが取れない。それをいい事に礼の言動がエスカレートしていく。お皿を置こうとする莎子だったが、それを礼は許さず、机から少し遠ざかるようにする。
礼「たまにはオレとデートしね?」
さこ「するわけないでしょ! キモイ! 無理! 離せ!」
礼「えー、ひどくね? オレといると超楽しいよ?」
さこ「死ね!」
礼「死ねはひどいでしょー! お仕置きしちゃおうかな~?」
礼はにやりと不敵な笑みを浮かべて莎子の顔を右手で掴み固定させ、左手は抱きしめる力を強くした。
礼央「礼いい加減にしろよ! さっつんから離れろ!」
やっと手を洗い終わった礼央が二人の前へと立ち、礼を引き離そうとする。
礼「前々から思ってたんだけどさ、別にさっつんと礼央付き合ってるわけじゃねーんだろ? だったらオレがさっつんに手を出そうと勝手じゃね?」
礼央「勝手じゃない! それにさっつん嫌がってるだろ!」
礼「えー、じゃあオレがさっつんのこと本気で好きだって言ったら? それなら止める権利なくね? ちゅーから始まる恋だってあるかもよ?」
さこ「ない! あんたのことなんて絶対に好きにならない!」
礼「んなのしてみなきゃ分かんねーじゃん?」
礼央「だ、だめだよ!!! さ、さっつんはオレの──」
礼のおふざけがエスカレートしてきたので、紅龍と未來も止めに入ろうとしたその時だった。
礼央「婚約者なんだから!!!!!」
その場がシーンとした。
タイミング悪く戻って談話室に入って来ていた一夜も固まっている。
一同愕然としている中、いち早く意識を取り戻し、沈黙を破ったのは礼だった。
礼「こんやくしゃ? 何? 冗談?」
礼に返され、礼央は自分が何を言ったかハッと我に返り、視線をそらした。
礼央「いや、その……」
一夜「妄想だったらマジ笑えねーな」
あまり状況が掴めてない一夜ではあったが、やはり本気にはしていないようでふっと笑う。
礼央「……」
礼央は沈黙してしまう。莎子に迷惑をかけてしまうことになるだろう発言をしてしまったことを後悔して。
しかしそんな礼央を見かねて莎子は口を開いた。
さこ「良いよ、礼央。ここまで言っちゃったらしょうがないし、礼央が馬鹿にされるのはやだ」
礼央「さっつん……」
周りは未來以外何がなんだか分からないという状況で、二人の次の言葉を待つ。意を決したように莎子が言葉を紡ぎ出す。
さこ「礼央が言ったことは本当。あたしと礼央は婚約してる。って言っても親同士が決めたことだし、本気にはしてないけど」
莎子は言いながらそっぽを向いた。そして信じられないなら未來に聞いてみろと付け足す。
みき「そうだね、二人は婚約してるよ」
礼「マジ?」
礼央「お、オレも本気にはしてないけど、本当の話だよ。オレのおじいちゃんがオレ達が三歳の時に決めて、しっかり証拠も残ってるし」
礼央は申し訳なさそうに、言いづらそうに話す。
紅龍「そんな面白そうな……ではなかった。大事な話を何故黙っていた?」
さこ「別に話す程のことじゃないでしょ? リレワンにだって関係ないし」
礼央「隠してたわけじゃないけど、からかわれるのが目に見えてたし、さっつんに迷惑かけたくないし、オレとしては言いたくなかったんだよ。だから言わないよう三人で決めてたんだ」
一夜「ふーん。ま、俺はどうでも良いけどな」
興味なさそうな一夜は早々に自室へと戻って行った。
紅龍「まぁだからといって何か変わるわけでもないからな」
紅龍もソファーへと座り直し、プロテインジュースを飲みだした。
礼「でもさー、本人達にその気ないならちょっかい出してもよくね?」
礼央「だ、だめだよ!」
礼「えー、だってさー」
みき「ほら、礼もういいでしょ。行くよ」
みきりんは礼をソファーの方へと無理矢理引っ張って行くのだった。
その後莎子と礼央は昼食の準備を終え、皆で昼食を食べ終わり、二人はキッチンで片付けをしていた。皆は部屋へと戻っていった。
礼央「ごめんね、さっつん」
さこ「まぁ隠しててもいい気はしなかったし、丁度いいでしょ」
礼央「もしかして本当に礼のこと好きだったりしたらオレ邪魔したんじゃ……」
さこ「ない!!! 絶対にないから!!!」
莎子は思いっきり否定し、礼央をキッと睨みつけた。礼央への怒りというよりかは、礼を思い出しての怒りだったのだが、礼央にそれが伝わったらしく、すごい剣幕の莎子に笑みがこぼれた。
礼央「あ、そうだ。美味しいチョコレートがあるんだよ?」
買い物に行った時に見つけた美味しそうなトリュフを思い出した礼央は、冷蔵庫から四角い茶色の包装された箱を取り出す。ついでに自分用に紅茶を入れ、莎子用には礼央特製の手作りオレンジジュースをコップに注ぎ、二人はソファーへと隣同士で座った。
さこ「食べていい?」
莎子は待ちきれない様子できらきらした目で礼央を見る。そんな莎子に可愛いなと内心礼央は思いながらどうぞと声をかけてあげる。
箱から出し、包み紙を開けると中にはとても美味しそうなトリュフ。一口莎子は口に頬ばった瞬間、目を見開き先程よりきらきらした目で礼央を見た。
さこ「美味しい!!! これすごく美味しい!!!」
莎子らしからぬテンションで、今にもぴょんぴょん跳ねそうな勢いで礼央に言う。そんな莎子に礼央はふふっと笑う。
さこ「礼央も早く食べて! ほら!」
テンションが上がった莎子は包み紙を開け、トリュフを礼央の口の前に手で持っていく。いわゆるあーんを無意識にやろうとしていた。しかし、礼央はすぐそれに気づいた。
礼央「さ、さっつんこれじゃあ……」
さこ「早く!」
礼央は莎子の手を止めようとしたが、莎子のまっすぐな瞳に折れて仕方がなくそのまま口に運ぼうとする。
一瞬で、素早く食べればすぐに終わる。そう思った礼央は目をつぶり、さっと口に入れようとした。
さこ「わ!?」
礼央「ご、ごめん!」
しかし見事に莎子の指までくわえてしまい、驚いた莎子は声をあげた。礼央も驚きすぐに口を離したが、トリュフはちゃんと口の中へと収まってくれた。
礼央「あ、洗って来た方が良いよ? ごめんね、指まで……」
さこ「だ、大丈夫だけどチョコついちゃったし、洗ってくる──」
礼央「危ないっ!」
─ズルンッ─
まただった。莎子はまたやらかした。
キッチンに行こうとした莎子だったが、慌てて立ち上がった為、足のバランスを崩し、そのままソファーに倒れてしまった。礼央がそれを支えようとまたもや下敷きになる。しかしミラクルは重なるのだった。
礼央「!?」
さこ「ご、ごめん!」
礼央はおでこに柔らかい感触を感じた。それが莎子の唇だということに気づくのに少しかかったが、驚いて莎子が起き上がった時には礼央の顔はもうオーバーヒートだった。茹で蛸の様になった礼央はソファーに転がったまま、口をパクパクさせていた。
さこ「ご、ごめん、本当にごめん。今拭くから」
そう言って莎子は近くにあったティッシュを手に取り、礼央のおでこを拭こうとする。しかし、すんでの所で礼央はハッと気がつき、莎子の腕を掴もうとした。
礼央「待ってさっつん!」
さこ「!?」
─むにゅっ─
しかし更にミラクルとは立て続けに起きるもので、腕を掴もうとした礼央は目測を誤って莎子の胸を掴んでしまった。いくら莎子が小さいからとはいえ、礼央には大問題であるし、柔らかい感触がしっかりと手に伝わって来た。
礼央「わあああああああああ!? ご、ごめん!!!!! ごめんさっつん!!!!!」
先程の莎子より、一段も二段も上の驚きと大声で礼央は叫んだ。どうしたら良いか分からなくて、何故か胸は掴んだままであった。
さこ「んっ、れ、礼央落ち着いて。だ、大丈夫だからとりあえず離してほしい……」
莎子は恥ずかしそうに頬を赤く染めながらそっぽを向いた。これが礼ならパンチをお見舞いするのだが、礼央ならそうはいかない。
礼央「そ、そうだよねごめん!!! や、やましい気持ちがあったわけじゃないんだ! ちょっと動揺してて!」
自分がしていたことに更に驚き、慌てふためきすぐに手を離した礼央。しかし、莎子も恥ずかしさのあまり礼央の方を見ることが出来ない。
さこ「わ、分かってるから。……と、とりあえず、部屋戻るね」
礼央「本当にごめんねさっつん!!!」
さこ「大丈夫。あ、あたしもごめん」
最後まで莎子は礼央と目を合わせることなく自室へと帰ってしまった。
一人談話室に残された礼央はがくんと力が抜けたようにソファーへとうな垂れ、両手で顔を覆った。
礼央「どうしよう、嫌われちゃったかも……」
礼「み~た~ぞ~」
礼央「わ!? な、なんだよ礼! 驚かさないでよ!」
ひょっこりと礼がソファーの後ろから顔を出した。
礼「さっつんのおっぱいどうだった?」
礼央「なっ!?」
一瞬で礼央の脳裏にフラッシュバックし、顔を真っ赤にする。うつ向き、わなわなと礼央は震えだす。そして顔をばっと上げるやいなや、思いっきり息を吸った。
礼央「わああああああああああああ!!? オレなんてことしちゃったんだああああああああああああああああ!!?」
突然叫びだした礼央に礼はとても驚き、どうにか落ち着かせようとしたのだが、礼央は全く聞く耳を持たなかった。どうしようもないので礼はそっと談話室を後にするのだった。
その日の礼央は中々寝付けることが出来ず、ベッドの上で一晩中うなっていたそうな。
そんな日の深夜、家の周りをうろつく影が二つあった。
?「ここがそうですか?」
?「そうみたいだな。どうする? 一気に仕掛けるか?」
?「いや、まだ早いです。もう暫く様子見しましょう。そして後からじっくりいたぶってあげましょう」
?「ほどほどにな」
二つの影はにやりと怪しく笑ったのだった。
─続く─
次回予告
礼央「あぁ~、さっつーん、さっつううん」
一夜「うっせぇな。そんなに気になんならアイツんとこ行けよ」
礼央「行けるわけないだろ! あんなこと……ああああああああさっつうううううううううううんん!!!!!」
一夜「うっせえええ!!!」
?「次回笑形第十四輪! 『新たなる敵はレイラー!?』やっと僕達の出番みたいですよ」
礼央「き、君達誰!?」
?「それは次回のお楽しみってやつだな」
一夜「敵ならぶっ潰す」
?「望む所ですよ」
2019.02.03
2019.02.05
2024/06/08(最終加筆)




