第十一輪:『誘拐事件は突然に』
あけましておめでとうございます!今年も笑形をよろしくお願いします!
ということで早いもんで新年ですね…。早すぎて一瞬でおばあちゃんになっちゃうんじゃないかと不安になります…。一日24時間じゃ足りねないですよね。
ということで本編をどうぞ!
紅龍「やめろ!来るな!」
まだ夜も深まって間もない頃、一日の鍛練を終え眠りに着いた紅龍はうなされていた。汗だくになり、眉間にシワを寄せ、苦しそうに息を荒げている。
紅龍は夢を見ていた。それは幸せな夢とは程遠い、とても苦しく思い出したくもない悪夢という名の過去。
『炎のレイラーのせいだ!』
『近づくんじゃねぇ! 出てけ!』
『お前達のせいでこっちまで危ない目にあいたくねぇ!』
炎のレイラー。
少し昔、人間とレイラーが仲違いするきっかけになったのが炎のレイラーの暴走である。紅龍の何代か前の炎のレイラーの何らかによる暴走のせいで街は消失し、人間もレイラーも沢山死んだ。
そのせいで人間はレイラーが危ない化け物だと認識をし、幾人かのレイラーは人間に捕まり処刑された。それ故に人間からもレイラーからも追われる形となってしまったのだ。
最近こそあまりそのようないざこざはないものの、古くを重んじる一部からは未だに狙われ、襲われることが多かった。
何故リレパを使っていないにも関わらず炎のレイラーだと分かるのか。炎のレイラーには特徴があった。
それは燃えるような赤と青のオッドアイであること。
それを隠すために最近では炎のレイラー一族はカラーコンタクトをするようになっていた。紅龍の深緑の目もまたそうだった。
しかしレイラー同士は引き合うもの。親しくなったレイラー同士、リレパを明かす度に周りは態度を変え、紅龍達は追われるように住居を変えた。
それも全て紅龍がまだ物心つく前の話である。しかし忌み嫌われる自分達が紅龍の脳裏にはこびりついており、時折それが悪夢となって紅龍の精神を蝕んでいくのだった。
◆◆◆
時刻は午前十時。皆朝食をすませ、談話室で各々やりたいことを別々にやっている。
紅龍はソファーに座り、その横を礼が通りすぎようとした時にあることを発見した。
礼「紅龍その怪我どうしたん? また修行か?」
紅龍「ま、まぁな……」
紅龍の顔には小さいが擦り傷があった。
修行。
しかしそれは嘘だった。実は紅龍はレイラーを狙う組織に顔が割れていたため、一人で出掛けると襲われることが多かった。何人かで行動していれば不利だと悟るのか何もしてこないので誰にもバレていない。幼なじみの礼にさえも。話せば巻き込むことになると思い、紅龍はいつも一人で片付けていたのだ。
礼「ほどほどにしとけよー? いざとなった時に怪我で戦えませーんじゃ洒落になんねーぜ?」
紅龍「貴様には言われたくないな。修行している姿を見かけないが?」
礼「え!? お、オレはほら、非戦闘員だし」
紅龍「非戦闘員はこのチームにはいない。良い機会だ、ランニング行くぞ。みっちりしごいてやる」
礼「は!? いやいや、ランニングとかぜってーやだ! 汗かきたくねーし!」
さこ「あ、丁度ランニングしようかと思ってたし、あたしも行く」
礼央「オレも体力つけたいけど、今日当番だから行けないや。頑張ってね、さっつん」
礼央と未來が今日の当番らしく、二人はご飯の支度やお菓子作りとはりきって家事をこなしているようだ。
紅龍「さぁ、行くぞ」
礼「いやだーーーーーー!!!」
◆◆◆
あれからぐずる礼を連れ、森を降りた所にある公園のランニングコースを走る三人。
礼「いやだー! 走りたくねー! 帰るー!」
紅龍「ぐずぐずするな、早く走れ」
礼「今日は純子ちゃんとデートの予定あんだよー! なんでこんなことしなきゃいけないんだよー!」
さこ「うるさい、黙って走れ。スマホ没収」
あまりにもぎゃんぎゃん喚く礼にしびれを切らし、礼のポケットからスマホを取り出し、純子ちゃんとやらに勝手に断りを入れて莎子は自分のバッグの中へとしまう。
礼「わー! ひでー! 見ながら走ってるわけじゃねーじゃん! つーか今何うってたの!?」
さこ「もーうるさい! 純子ちゃんに断っといたから、静かに走れ!」
礼「ひどすぎるー!!! じゃあさっつんデートしてくれんの!?」
さこ「は? なんであんたと? 絶対やだ」
紅龍「諦めろ礼。大人しく走ったら俺様がデートしてやろう」
礼「何が悲しくて紅龍とデートすんだよ!?」
結局3人のランニングは一時間続いた所で一旦休憩。公園のベンチに礼と莎子が座り、小道を挟んだ反対側の縁石に紅龍は座って飲み物を飲む。
礼「やべー、超喉乾いたー! さっつんそれちょうだい!」
さこ「別にいいけど」
紅龍「は!? おい礼、オレがやる。これを飲め」
礼「えー、紅龍のとこまで取りに行くのめんどいし、さっつんくれるって言ってるじゃん」
紅龍「だ、だがしかしそれでは……」
さこ「何? なんか問題あんの?」
紅龍「……」
紅龍は莎子の口元に目がいく。
礼「あー、間接ちゅー気にしてんの紅龍? お前案外可愛いとこあんなー!」
そんな紅龍の視線に気づいた礼はくくっと笑いながら自分の唇に人差し指を添える。
紅龍「う、うるさい! どうでもいいから、これを飲め!!!」
つかつかと歩いて紅龍は礼へと近づき、自分のペットボトルを礼の顔へと押し付ける。
礼「や、やめて紅龍ちゃーん! 紅龍ちゃんと間接ちゅーとかいやー!」
礼は冗談混じりに紅龍をちゃかす。それにヒートアップした紅龍は更にペットボトルを顔にぐりぐりと押し付けた。
さこ「アホらし……」
そんな二人の長くなりそうなやり取りに呆れ、莎子はもうひとっ走りしようと少し二人から離れる。
その時だった。
さこ「ん!?」
「おい、早くしろ!」
「わかってる!」
莎子は後ろから怪しい男に布で口を覆われる。布には何か薬が付着されていて、意識が遠のいていく。抵抗したいが身体に力が入らない。
「おい、その女かつげ!」
「わかってるよ!」
何人かの男達が早くと急かす。一人の男が莎子の手足を素早く縛り、もう一人の男が米俵を持つように右肩に莎子を抱えた。
紅龍「さぁ、そろそろ休憩は終わりだ、行くぞ」
礼「マジかー。休憩みじけぇー。行こうぜ、さっつん」
礼は莎子が近くにいるだろうと思い声をかけるが返事がない。
礼「あれ? さっつんは?」
紅龍「先に行ったのだろう」
礼「あ!!? 紅龍! あれ!!!」
礼の指差した先には見知らぬ男達に担がれ、そのまま公園の脇に停めてあった黒塗りのワゴンに莎子を乗せようとしている。
礼「ゆ、誘拐か!? でもなんで? レイラーだってバレたとか?」
紅龍「!?」
礼「とにかく早く追いかけようぜ!」
紅龍「……」
礼「紅龍! 何やってんだよ!」
紅龍「……オレのせいかもしれない」
礼「は? どういうことだ?」
◆◆◆
さこ「はなせ!」
お察しの通り、莎子はレイラーを狙う組織に捕まっていた。どこかは分からないが、埃と錆っぽい倉庫のような薄暗い場所。そこには約三十人程の男達がいて、莎子を取り囲んでいる。手足を縄で縛られ、更に柱に身体を縛られていた。いくら莎子でも身動きが取れない状態。
「観念するんだな、お嬢ちゃん」
「レイラーは高く売れるからな」
「なぁ、その前にこいつで遊んでも良いだろ?」
いかにもなスキンヘッドの男が莎子へと近づく。
さこ「近寄るな!」
「いってー!!!」
かろうじて動く足で男を蹴り飛ばす。予想されていなかった動きのため、多少大袈裟ではあるが男はよろめく。
「こいつ……。痛い目に合わせねーとわからねーみてーだな」
スキンヘッドはニヤリとしながら莎子へと近付いた。
◆◆◆
礼「大変だー!!!」
あれから一度家へと戻った礼と紅龍。礼はすぐに追いかけようとしたのだが、紅龍はその場から動かずに誘拐犯はその場からいなくなってしまった。礼が紅龍に何故追いかけないのか問いただすと、犯人の場所の検討がつくという。どういうわけかは分からなかったが、その場でリレパを使うわけにもいかずに、一度体勢を立て直すことになり、家へと戻ってきたのだった。
家ではタイミングよく談話室に皆揃っており、未來と礼央が作ったであろうお菓子を食べていた。
みき「どうしたの?」
スゴい形相で帰って来た礼に驚いた未來は聞く。その後に難しい顔をしながら紅龍も談話室へと入ってきた。
礼央「あれ? さっつんは?」
帰って来たのが二人だということに真っ先に気づいた礼央は不安な顔をしながら聞く。
礼「……それが」
先程あったことを礼は焦らないように簡潔に話した。
礼央「助けに行かなきゃ!」
礼「待てって! だから場所が……」
なりふり構わず出て行こうとする礼央を礼が腕を掴んで止める。
礼央「早くしないと莎子が危ないだろ!!!」
普段はさっつん呼びの礼央だが 、無意識に莎子呼びになっていることから慌てぶりが伺える。礼央らしからぬ荒げた声をあげた。礼は一瞬怯んだが、闇雲に飛び出して行っても仕方がないので礼央の腕は掴んだまま礼央を見つめゆっくり言う。
礼「なんか紅龍に作戦があるらしいんだ。なんもわかんねーまま飛び出してったってどうしようもねぇだろ?」
珍しく礼は冷静だった。どうやら家までの帰路で色々考え慌てても仕方がない、紅龍を信じようと頭を冷やしたらしい。
礼央「……ごめん、そうだね。紅龍、どうしたら良いのかな?」
礼に諭され礼央はいつも通りになり、紅龍の方へと向いた。
紅龍「……俺のせいだ」
礼「は? 何言ってんだ?」
紅龍「チビ女が連れていかれたのは俺のせいだ」
礼「だから意味わかんねーって」
紅龍「……」
紅龍は話した。自分が今まで一人で出掛ける度に襲われていたこと、レイラーを狙う組織に顔が割れていること、炎のレイラーというだけで忌み嫌われ、蔑まれてきたこと。
そして
紅龍「……騙していたわけではないが、俺のこの目はカラーコンタクトだ」
そう言って紅龍はコンタクトをはずす。すると燃えるような赤と青のオッドアイが露になった。
礼「十年以上一緒にいるけど気づかなかったわ」
紅龍「すまん……。一族の決まりだったんだ。隠していたわけではないが、何となく言いづらくてな」
紅龍は礼から目をそらした。
礼「まぁ、別にそんくらいの隠し事誰にでもあんだろ。つーかそれ以外にも聞いてねぇこと多過ぎて」
みき「そうだね、顔が割れてるんなら言ってくれれば買い物とかは他の皆でなんとかしたのに」
紅龍「特別扱いはされたくなかった。それに今に始まったことではないからな。一人でも追い払えるし、巻き込みたくはなかった」
礼「……だとしても言ってほしかった。何年一緒にいると思ってんだよ?」
紅龍「……すまない」
何年も何十年も一緒にいて知らないことだらけだった、というよりは信じてもらえていない様な気さえしてしまって、礼はとても悔しそうな表情を浮かべた。そんな礼の心情を察してか紅龍は礼の方を見れなかった。
紅龍「だから何度か襲われるうちに奴等のアジトを突き止めてはいたんだ。人数がかなり多いので仕留めはしなかったが、恐らくチビ女はそこだろう」
礼央「じゃあ早くそこへ助けに行こう」
紅龍「それなんだが、俺一人で行く」
みき「な、何言ってるの!? 沢山敵がいるって自分でも言ってたよね?」
紅龍「そうだ。しかしこれは俺が招いた事態だ。俺がケリをつけねばならん」
礼「お前それ本気で言ってんの?」
礼は少し低めの声で紅龍を睨みながら言った。淡々と、いつもの礼とはかけ離れた声音で。
礼「マジ今更何言ってんだって感じなんだけど?」
紅龍「……」
礼「紅龍はオレたちが友達の、仲間のピンチに助けてもくれねー冷てぇやつだと思ってるわけ?」
紅龍「そういうわけでは……」
礼央「そうだね。もうオレたち仲間だし、さらわれたのがさっつんじゃなくて紅龍だとしても、それが紅龍のせいだとしてもオレたちは行くよ?」
みき「仲間のピンチは皆でかけつけなきゃね!」
礼「そーゆーことだ。あー、本当は戦いたくなんかねーけど、おつむが固い紅龍ちゃんのために一肌脱いでやりますかー!」
礼はいつも通りの高めのテンションで紅龍と無理矢理肩を組んだ。そんな礼に紅龍は一瞬目を見開いたが、すぐにいつも通りのすましたニヤリ顔を見せた。
紅龍「貴様では足手まといだがな」
礼「何ー!? せっかくオレがやる気出してるって言うのに!」
みき「礼ってやる気空回りしそうだよね」
礼「ひでー!」
一夜「俺は行かねーぞ」
皆で頑張ろうという雰囲気が流れたのも束の間、先程から話を無言で聞いていた一夜は鼻でふっと笑いながら冷たい一言を放った。一瞬でその場が沈黙する。
みき「一夜!」
そんな一夜を未來はいつもの様に諭そうと一夜の方を向くが、そっぽを向き一夜は続ける。
一夜「話を聞いてれば全部そいつのせいじゃねーか。炎のレイラーと同じチームなんてごめんだと何回も言ってきたが、狙われるリスクが上がるとか迷惑このうえねーな。今すぐにでもチーム脱退かメンバー交代して欲しいくれぇだ」
紅龍「……」
礼「お前いい加減にしろよ! 紅龍は何も悪くねーだろ!」
一夜「炎のレイラーってだけで罪になんだよ!!!」
─バチンッッッ─
一夜「ーっ!?」
それは一瞬だった。
一瞬にして一夜は座っていた食卓の木椅子から崩れ落ちた。
にぶい音と共に、未來は一夜の頬を思いっきり叩いたのだった。
突然の出来事すぎて一夜は避けることも出来なかった。その場は沈黙が数秒続き、ハッと我に返った一夜が沈黙を破る。
一夜「てめぇ、いてぇじゃねぇか! 何すんだよ!!!」
みき「……一夜はお留守番で良いよ」
一夜「は? 最初から行かねーって──」
みき「最低」
一夜が反論する前に、未來はとても曇りのない笑顔で言葉を放った。
それは顔こそ笑顔なものの、言葉だけはとても冷たかった。そんな未來に一夜は黙ってしまったが、一夜だけではなくその場にいた全員が圧倒された。
みき「行こう、皆。紅龍案内よろしく」
紅龍「あ、あぁ」
こうして、未來、礼央、礼、紅龍は莎子奪還へと向かった。
方針状態の一夜を残して。
─続く─
2018,01,09
2024/06/05(最終加筆)
次回予告
礼「ちょっと! 今回のオレ超カッコよくね!?」
さこ「そうやって自分で言うからいけないんだと思うけど」
礼「えー!? つーかさっつんデートしてくれるんだよね!?」
さこ「本編でも言ってるけど絶対しない。次回笑形第十二輪」
礼「『仲間のピンチを助けるのは』次回もオレが活躍するんじゃね!?」
さこ「そうだね(こいつといると疲れる)」
2018.01.09
2024/06/05(最終加筆)




