偽りの人間
目の前に咲夜がいる。その現実に歓喜しているレミリアに一つの疑問が浮かび上がった。
『・・・でも、どうやって生き返ったの?・・何度予知を見ても咲夜は生き返らなかったのに・・?』
レミリアは咲夜に聞いた。いや・・・聞いてしまった。
当然と言えば当然である。自分が成そうとしていた事を自分が成さずとも成ったのだ。
むしろ、自分では成せ得ない事を。誰が、いつ、どうやって。全てが疑問だった。
・・・考えれたのは八雲紫がやったのか?という事だけだった。
・・・では、その八雲紫はどこで出会い、どの様にして。
・・・。
レミリアの疑問に対し咲夜は予想外の返事をした。
『・・・やっぱり・・私は死んでいたのですね・・・?』
『・・え?』
咲夜も、薄々はその事に感付いていた。しかし、自分の事よりもレミリアの事を最優先とし、その事には触れず、ここまで来ていた。
『パチェ?どういうこと?』
『・・・』
『美鈴?どういうこと?』
『・・そ、それは・・・』
・・・言葉が詰まる美鈴をパチュリーが止めた。
・・愚直な美鈴に隠し事は無理だった。・・パチュリーはそれを思い出し、自ら口を開いた。
『・・私から説明するわ。・・・レミィ?落ち着いて聞いて?』
・・・・・・・・ 。
パチュリーはレミリアと咲夜に全てを話した。八雲紫の事、生き返らせるのは無理だった事、そして・・。目の前の咲夜は創りだされたホムンクルスだということ。
・・・全てを。
レミリアは[生き返らせる]という未来だけを探していた。だから見えなかった。
そして・・・ひたすら予知を見ていただけで、時間は過ぎ、予知による改変は行われずそのまま歴史は進んだ。
・・結果。今に至る・・。
そう・・・今、目の前にいる咲夜は生き返ったわけではないのだ。[十六夜咲夜]という中身を別の入れ物に入れただけ・・・。[十六夜咲夜]というオリジナルの人間は死んだまま・・。・・・・二度と生き返りはしない。
ッ・・・・・!!?
『な、なによそれ!?落ち着いて聞け!?パチェ!?貴女なんてことをしてくれたの!?これで咲夜はもう!!』
レミリアはパチュリーを激しく罵倒した。
他に方法はなかったと美鈴がなだめる。それでも、有ったかも知れない。とレミリアは怒り狂う。
レミリアは激しく罵り続けた。
『貴女達のせいで、咲夜はもう戻らないのよ!?貴女達が咲夜を殺したの!』
『・・・私は・・・・貴女達を・・許さない』
パチュリーは覚悟していた事だった。
どんな罰も受けるつもりだった。ここで死ねと言われても・・・。
狂うレミリアを止めて、レミリアを生かす事が出来た。彼女はそれだけで良かったのだ。
・・過去に自分の弱さが招いたレミリアへの罪・・。それを返す時だったのかも知れない。パチュリーは甘んじてレミリアの罵倒を受けた。
美鈴も、解っていた。・・だが、美鈴はパチュリーと違う点が一つだけあった。
・・・フランの事。彼女は自分の死に対しては未練はない。最善を尽くした結果であったし、自分の我儘で留守にしたせいとも考えていた。彼女自身も咲夜に対して申し訳ない気持ちで一杯だった。故に、レミリアの言う事も分かる。パチュリーが始めた事とは言え自分も同罪だ。主レミリアが死を命ずるならそれを受け入れる。
・・しかし、そうなるとフランが心配である。ただ、それだけが気がかりでレミリアを説得していた。
『お嬢様、落ち着いてください』
『五月蝿い!偽物が私を呼ぶな!おまえは咲夜じゃない!すぐに消えろ!偽物!』
間髪入れずにレミリアが、咲夜を罵った。
・・・・
ツーーー。
咲夜は、レミリアを真っ直ぐ見たまま、涙を流した。
『レミィ!!』
バシッ
レミリアは、パチュリーに手の平で叩かれた。
『この子は、咲夜。人でなくとも、心は咲夜なのよ?こんなことになったのには私に非があるわ。私は、いくらでも謝るし、どんな罰でも受ける、貴女が死ねというなら死ぬ。・・でも、今の貴女の咲夜に対しての発言については謝って!』
・・・・・・・
レミリアは、少し冷静になり頬の痛みを感じてきた。
(・・・咲夜・・。)
・・・。
・・・。
(私は貴女に・・・。)
・・・。
・・・。
レミリアは咲夜に頭を下げた。
『咲夜。ごめんなさい。・・私は、貴女に何もしてあげれてない。それどころか皆に迷惑を・・そして貴女にあんな事を・・』
『・・・私も、ごめんなさい。咲夜。全ての元凶は私なのよ。私が、こんな技術に手をつけなければ・・・・もしかしたら貴女は・・』
『私も、すいませんでした!八雲紫さんを見つけて、後はどうにでもなると、正直少し浮かれてました。結局ダメで、なんの役にも・・』
・・・・・。
咲夜は涙を拭き、三人を見た。そして
『皆、勘違いしてますよ?』
・・・???
『私は皆に感謝しているのです。今、こう話せているのもその皆の気持ちのおかげなのです。ホムンクルス?私は大歓迎ですよ?それなら、人より長くお嬢様にお仕え出来ます。仮に一つ一つが短命でも、その全てを移せるなら・・今のこの気持ちも移せるんですよね?心も記憶もずっと私なのです。お嬢様は幼き頃、よく泣いてましたよね?今でも鮮明に覚えています。あの頃のお嬢様、私は覚えてます』
・・・。
『私は逆にお嬢様が私のようになっても今のお嬢様の気持ち、心があるなら、喜んで仕えます。だから・・・・』
『美鈴?ありがとう。私の心が残るように紫さんを見つけてくれて』
『パチュリー様?ありがとう。私が生きられる道を作っていただいて』
『そして、お嬢様?ありがとうございます。そんなになるまで、自分が壊れるまで、私を心配していただいて。私はその気持ちだけで幸せなのです。私はその気持ちだけで何でも出来ます。その気持ちが私の生きる活力です』
『それに、これを見てください。』
咲夜は腕をまくり、自分のNo.を見せた。
『貴女・・気付いてたの?』
パチュリーが聞いた。
『はい・・・。だから自分の生に疑問を持ったんです。』
『No.1341398・・・』
レミリアは番号を読んだ。
『そうです。1341398番目の実験で成功した。という事ですかね?・・・凄くないでか?・・・・・・・お嬢様のくれた名前が、ごろあわせで今の体の唯一の成功番号・・・。まるで名前を忘れない様に腕に彫られたみたいです』
咲夜は腕を擦りながら嬉しそうにしている。
『お嬢様が名前を与えくれたあの時に、・・もうお嬢様は私に未来を与えて下さっていたのです。・・きっと、この名前じゃなかったら成功はしなかった。・・・私は、そう思います。お嬢様の与えてくれたこの名前じゃなかったら私はもういなかったと。・・これが私にとって、お嬢様の運命の力なのです。ありがとうございます。そして・・・』
『・・・これからもお嬢様にお仕えさせていただけたら嬉しいです!』
咲夜の目から涙が零れた。
美鈴は自分のやった事が咲夜にとって喜んで貰える事だったと云う事に安堵した。
パチュリーは咲夜が自分を恨んで等いないと云う事に感謝した。
そして、レミリアは昔と変わらない忠誠心溢れる[十六夜咲夜]の言葉を聞き、胸が熱くなった。
・・・咲夜自身がこの事を一番受け入れていたのだ。他の三人の罪悪感、猜疑心、それらは全て杞憂だった。
体が違っても、心が本人なら、それは本人。一番大切なものは[気持ち]。つまりは心・・・三人はそれを咲夜の言葉から学んだ。
『咲夜』『咲夜』『咲夜さん』
『はい。』
『うわああぁぁん!!一生仕えなさいよ!?咲夜ぁ!!』
四人は、一晩泣き明かした。
ホムンクルス。そんな事は些細な事で、[今]この現実にレミリア、パチュリー、美鈴、そして咲夜の4人が居て、皆で触れ合える。
その[今]が一番大切で尊い物なのだ。・・これが皆が望んだ光景なのだから。
・・その頃 ・・・・・
『ハックシュン!!門番は寒いなあ・・・』ズズッ
『おねぇちゃん、、誰?』
『ふふふ、誰かしらねえ?』




