圧倒的な力
ガシャーン!
紫は巧みにスキマを操り、スキマ中からクナイ、標識を高速で繰り出してレミリアを攻撃。
その直後スキマに、身を隠す。
・・・一方的に紫の攻撃だった。
レミリアは反撃したくても、相手の攻撃を躱した途端に相手は居なくなり、防戦一方になるほかなかった。
・・・気付けば目の前の空間が裂け、スキマから来る攻撃。・・本来、躱す事すらも出来るはずはない。
例えば咲夜・・・彼女が時間を止めて攻撃する物に似ている。
しかし、咲夜のソレとは違い、攻撃速度自体が刹那。咲夜が投げるナイフとは訳が違った。
・・・・しかし、レミリアは避けていた。
・・・そう。彼女は予知で常に一手先を読んでいた。
・・・それでも攻撃が出来ない。
予知を上回るスピードで繰り出しているが、そう来る事を更に先に予知していている。
・・・主の時とは違う。
・・・レミリアは常に先を見て動いていた。
・・・今の彼女には現実を見ている時間というものは一瞬だけだった。
・・・・・。
紫は自分の当たらない攻撃に、なんとなくだがレミリアの能力に気付く。
(先読み・・・かしら?なら・・)
紫が隠れるのをやめる。
レミリアはすかさず爪で斬り付ける。
それを標識で受ける紫。
お互いに手が弾かれる。
レミリアはすぐに体勢を立て直し追撃に出た。
・・・紫も立て直したが、急に腕を引き無防備になった。
勿論レミリアはそれを予測済みだった。これは誘い。
・・・・しかし。余りにも無防備な紫に対しレミリアは意思とは別。狩る者の本能的ななにかで反射的に紫の首を掴み締めあげた。
グググッ。
紫の首を締めあげる。
もう隠れる事も出来ない。狩りは終わった。レミリアは勝利を確信していた。
・・ッ・・・・!?
その時、レミリアはようやく自分の見てた予知と違う事、予知を止めていた事に気付く。
しかし、もう遅かった。
『つーかまえた』
紫は、レミリアの腕を掴み、周りにスキマを出した。
・・逃げれないのは紫ではなくレミリアの方だったのだ。
ドドドドドッ!!
スキマから出てきた大量のクナイに串刺しにされるレミリア。
『ガハッ・・・』
・・・・。
レミリアが人形の様に無気力になった。
・・・。
(・・死んじゃったかしら?)
・・・ッ!?
辛うじて生きていたレミリアは油断し力の弱まった紫の腕を払い除け、コウモリになり、その場を離れ、体勢を立て直した。
そして自己の再生に集中した。
・・・??
『・・修復能力・・・厄介ねえ?』
レミリアは、ニヤリとして再度、紫に襲い掛かった。
『お嬢様!』
スキマに入れられた三人は、隔離された不思議な空間にいた。そこからは、その戦いが見えていた。
『お嬢様!・・・・パチュリー様!お嬢様が!?なんとか出れないんですか!?』
串刺しにされたレミリアを見て、咲夜が取り乱していた。
『・・・この空間、かなり特別なものだわ。私の力じゃどうしようも・・・』
『それに、咲夜?貴女、ここを出てどうするの?・・・・あの戦い、私達がどうこう出来るレベルじゃないわ。桁違いよ?私達がいたほうが足手まとい』
『八雲紫・・・あれは・・前主様を遥かに凌駕している。・・・・正真正銘の化物よ』
・・・・。
咲夜は黙り。祈りながらその戦いを見つめた。
食い縛り、口から血が垂れる様から咲夜の悔しさが伝わって来た。
バキッ!
此方は、相変わらずの展開だった。紫には当たらない。紫が虚を突いてレミリアに当たっても、すぐに再生。進展はなかったが、激しさは増していた。
・・・その時。
『・・・貴女の力は、もう解ったわ。・・・限界も。ね?』
紫はそう言うと、激しくおぞましい殺気を漂わせた。
・・・空気が変わった。
ッ・・・・!?
レミリアの動きが、完全に止まった。
『さて?貴女には何が見えるかしら?』
!!!
『ウ、ウ、ウガアアアアア!!』
突然、レミリアが苦しみ出した。・・・というよりは怯えている感じだった。
ライオンのいる狭い檻の中、放り込まれたウサギ。
・・・絶対的な絶望・・・・。
・・・生まれて初めての強い恐怖。
・・・自分の限界。
レミリアには、もう予知をしても自分の敗北しか見えてなかったのだ。それほどの差があった。覆る事の出来ない力の差。
・・・本気になった紫にとって、今のレミリアは赤子同然だったのだ。
『ふふふ、大したものだったわ、流石はここの主。てとこかしら?』
『・・・でも?相手が悪かったわね?』
『貴女が相手しているのはこの世界その物よ!』
紫はスキマを出し、中から大量のグングニルを出した。
・・・ッ!?
『これが解る?そう・・貴女達の最高の武器でもあり、最高の弱点。』
レミリアは、もう膝をついて諦めていた。圧倒的な力の差。
・・・自分が苦労して作り出した、かけがえの無い咲夜との絆のグングニル。
・・・吸血鬼の戦争を終わらせた最高の唯一無二の武器、グングニル。
・・・それを紫は、容易に100を超える数、繰り出したのだ。
『・・・じゃあね?』
紫はそう言うと、その無数のグングニルをレミリアに向かい発射した。
・・・レミリアは知っている。・・避けても無駄。
・・・レミリアは知っている。・・・再生は出来ない。
・・・レミリアは知っている。・・・死ぬと云うことを。
・・・レミリアは動きもせずに黙ってそれを受け入れた。
グサ、グサグサグサッ!
『お嬢様ああああ!!』
スキマの中にいた咲夜が発狂した。その瞬間、目の前に新たなスキマが現れ、中から紫が出てきた。
ッ・・・・・・!?
『貴様ー!!殺す!!』
咲夜は瞬時に襲い掛かった。紫は、軽くそれを躱し。
『まだ、死んでないわ・・・。あの子、ハーフ・・・でしょ?純血でないなら即死はしないわ。・・でも、魔法使いさん?貴女の治癒魔法次第だけど?』
そう言い、新しいスキマを開け、そのスキマを指を差した。
『後は、貴女達の仕事よ?あー、疲れた。もう帰るわ。』
『・・・それに、少し面白い物も見つけたし。』
紫は、ニヤリとした。が、三人は紫の話を最後まで聞かずに急いでスキマに入っていった。
『さて・・・』
そう言うと紫はどこかへ消えた。
『お嬢様!?』
『レミィ!?』
『お嬢様!!』
三人は、ボロボロになったレミリアに駆け寄った。
慌ててパチュリーが治癒魔法をかける。咲夜、美鈴は再生のままならない外傷の手当てを始めた。
『お嬢様!お嬢様!!』
意識のないレミリアに咲夜が、必死に声をかける。
『・・・・う・・ん?』
・・・・ッ!!
『お嬢様!』
レミリアの目が開いた。
・・・その眼は以前の狂った眼光ではなく、いつもの強く、優しい眼差しだった。
・・・!?
『さ、咲夜?・・咲夜なの?本当に!??』
咲夜を目の前にし、レミリアは、驚く。完全に正気に戻っていた。
・・・彼女が見ているのは予知ではない。・・現実。なのだ。
レミリアは確認するように咲夜をベタベタ触りだした。
『咲夜でございます!!』
・・・。
『・・フフッ・・・・お嬢様・・少しくすぐったいです・・』
『・・なんか昔と立場が逆ですね?』
咲夜は、少し顔を赤らめ喜び、笑顔のまま泣いていた。咲夜の笑顔・・それを見てレミリアも泣いた。
『さくやああああ!!』
その光景を見ていた美鈴とパチュリーも泣いていた。
・・・が、少し暗い表情をしていた・・・。
ホムンクルス。・・・それを知るのは、ここにこの二人だけなのだ・・・・。




