愛か偽りか
『すまぬ・・・私はそれしか言えぬ』
『私は、お前にならその手で殺されても良い。・・・日光に焼かれろと言うなら喜んで焼かれよう』
『・・・』
『・・その代わり・・今の話を、信じてほしい』
『・・貴方?本気?』
『・・・ああ、本気だ。それに、お前は父に良く似ている。その気質。素質。まるで昔の十六夜の様だ。そんなお前の願いなら喜んで受けよう』
『・・・日光でなんて真っ平ごめんだわ。貴方は私がこの手で殺すのだから』
『・・・では、どうする?お前の銀のナイフで私は倒せぬ』
『・・・』
沈黙が続く中、主が口を開いた。
『・・・私の正室にならないか?』
ッ・・・!?
『なにを言ってるの!?なるわけないでしょ!!』
何を言いだすかと思えば、まさかの求婚だった。そんなもの、姉が受けるはずはなかった。主は父の仇なのだ。しかも吸血鬼。万が一にも可能性はない。しかし、主は
『・・・私は、お前の気質に惚れたのだ。今のやりとりでお前がどういう奴かも分かった。・・・お前の父と瓜二つだ』
『あ、いや、別にお前の父が好きというわけではないぞ?勿論、罪滅ぼし等でもない。純粋に惚れてしまったのだ』
『十六夜の為にも幸せにしてやると約束する。間違っても嘘などではない!』
『・・・お断わりよ!』
そこには吸血鬼と吸血鬼狩人でもなく、仇と仇討ちでもなく、男と女のやりとりが繰り返されていた。
頼みこむ男。渋る女。そんな感じだ。私は、その光景をただ唖然と見ていた。
その時
ガバッ
・・・ッ!!?
何者かに私は捕まった。
『主様!今のうちです!』
(くっ・・)
私は不覚にも、忍び寄る兵に気付かず、捕まってしまった。
続々と、集まる兵達。
『おのれ!卑怯な!騙していたのね!?』
主に対して、怒りを露にする姉。
すると主が小声で言った。
『これは、私の指示ではない!・・しかし、伯爵ともなると、威厳が必要。このままでは示しがつかぬ。二人共に殺さなければ、スカーレット家が内部崩壊しかねん!だが、私は、おまえを殺したくない!信じてくれ!』
『じゃあ、どうすれば・・・』
『・・・・おまえが妻になるのならば、ここで婚姻を結び、その様を兵に見せれば、弟子のほうも助けることが出来るだろう』
『ッ・・・!くっ・・・・・・本当にこれはあなたの策ではないのよね?』
『高貴な吸血鬼が、このような姑息なことするわけがなかろう?断じて違う!』
・・・・・。
『〜〜〜あー!もう!わかったわよ!その代わり、弟子は必ず助けなさいよ!?そしていつか必ずこの手で貴方を殺すからね!』
主は、小さく頭を下げた。
『いつでも寝首を掻くがよい。・・こんな形ですまん。』
『・・・・・・兵達よ!よく聞け!私はこれより、この女を我が正室に迎える!』
そう言い、姉の首筋を噛み、血を吸った。
そして吸い終わると兵士達に
『無礼者!そこにいるのは、我が妻の従者ぞ!?離れぬか!』
私は自由になった。
・・・しかし姉はこれで主の眷属であり、妻でもある下位吸血鬼になった・・吸血鬼狩人の血筋のおかげか、効果は薄く、2割吸血鬼8割人間といった感じだった。
そして又、私も眷属になり、名前を奪われ従者として生活することになった。
・・・・そして。
すぐにレミリア様が生まれ。私はレミリア様の教育係になった。
姉の子・・・。
目に入れても痛くないとは正にこのことだと思った。姉も主の優しさを受けて、仇討ちの事など忘れていた。
時折、父の昔話を聞いたり、主の言った通り、私達は幸せだった。
・・・そんな時、主が他種族への威厳の為に純血の妃と娘がいると言い、とある吸血鬼が側室スカーレット妃となり、暫らくしてフラン様が生まれた。
・・・・この辺りから、主は変わってきた。
そして、私はスカーレット姉妹の幽閉の話を聞いた。勿論、その事を姉に聞いてみた。
『姉さん!なぜですか!?』
姉は、慌てて口を塞ぎ、赤い瓶を渡してきた。
『まずは、これを飲みなさい』
早く返事が欲しかった私は、それをすぐに飲み干した。
『まず、大きな声で姉さんと言うのをやめなさい。これは内緒のはず・・・』
と、こちらを睨んできた。
・・・が、私はそんなことよりもレミリア様のことが心配でならなかった。
『あの人は、もう昔のあの人じゃないわ。・・・私がなにを言っても駄目だった。でも、最後まで私は反対するわ。だから、貴女も協力してちょうだい?』
当たり前である。そのつもりで進言したのだから。
私は、強く頷いた。
『念の為、これを貴女に託すわ』
姉は懐中時計を取り出して、渡してきた。
これは十六夜家だけが扱える能力・・・。
私は姉の覚悟が分かった。この能力は十六夜家の一人しか使えない。使用者が死ぬまで次の世代は使えないのだ。
・・・姉は死ぬ気だ。
・・・そうはさせない。
姉は死なせない。
レミリア様も救い出す。
私は心に決めた。
それから暫らくして・・。
・・・姉の死を知った。
私のやることは決まった。
一つ目の誓いは守れなかった。
だが、二つ目の誓いは必ず守る。そして真相を突き止め、仇を討つ。
この2つを成す事に命を賭けると決め。一人、内密に捜査をした。
・・・・そして、(十六夜咲夜)この運命の名を[再び]耳にするときがやってくる。




