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新訳 東方紅魔記  作者: グレ
紅魔記・狩(咲夜外伝)
18/29

私の家系は代々、吸血鬼狩人を生業にしている。

十六夜家と言えば、村の誰もが知っている名家だ。今は父と7つ歳上の姉と私の三人で暮らしていた。

父は強かった。目標にした吸血鬼は必ず倒して戻って来てた。


姉は15歳になってから、父の仕事を手伝い始め、一緒に吸血鬼を狩っていた。父曰く、姉は100年に一人の逸材らしい。


最強の父のお墨付き。

そんな姉を誇りに思っていた私は姉の訓練を見て、二人がいない間にこっそりと戦闘の練習していた。

二人が仕事から帰ると私が食事の準備等をしていた。家事は戦闘より得意だった。

・・生活は貧しかったがそれなりに平和に暮らしていた。


それから3年の月日が流れたある日。父がいつもの様に姉と仕事に出掛けた。


そして・・・・父が死んだ。


傷だらけの姉が死んだ父を背負い、帰ってきた。

最強であるはずの父の死。

私は信じれなかったが、冷たく固くなっている父に触れ、現実を見た。私は父の死について聞いた。


スカーレット家。

・・・それが私の父を殺した吸血鬼一族の名前だった。

・・その名を私は知っていた。相手にしてはいけない吸血鬼。何人もの先祖達が挑んだが、全て返り討ちにあったと云われる最強の一族。

・・十六夜家の禁忌。・・・父はなぜかいきなり討伐する事を決めたらしい。


父の墓を作った後、私と姉は、父の使ってた銀のナイフを手に取り、父の仇を討つと墓前に誓った。


私がまだ11歳の時だった。

私は吸血鬼に対して、スカーレット家に対して、最早憎しみしかなかった。


私は姉と二人、すぐに父の仇のいる紅魔館へ向かった。紅魔館は前回の父の活躍で兵が不足していた。

兵をやりすごし、楽に玉座にまでついた。

そこに父の仇、紅魔館の主。スカーレット伯爵がいた。

彼は手になにかを持ち、それを静かに見つめていた。


ッ・・・!?


私達に気付いた。気付いた時に持っていたものを落とした。


・・・写真だった。

そこには、若い頃の父、そして主の二人が肩を組んで笑顔で写っていた・・・。


姉は写真に気付いてなかった。


『お前は、十六夜の娘か・・そうか・・・仇討ちだな?・・そこのは・・・妹か?』


主は姉とは面識がある。姉のことは、すぐに分かった。しかし私については知らなかった。


『この子は・・私の一番弟子よ!今から貴方を倒し、この子に吸血鬼の倒し方を教える所よ!』


事前に話して決めていた。なにかあったときの為に、妹と云う事は伏せると。


『十六夜の娘・・私を倒せると本気で思っているのか?』


『じゃないと、来ないわよ!』


ッ・・・・・・!


主と姉の戦いが始まった。


・・というよりは、姉が一方的に攻めていた。しかし、主はその全てを躱していた。

主は哀しそうな顔をしていた。

・・・私はあんなに憎く、殺したかった奴が目の前にいるのに、その気迫だけで怖くて一歩も動けなかった・・。


その時、姉が写真に気付き、動きが止まった。


『な・・に?これ?・・・』・・・・・・


主が近寄ってきた。そして、姉のナイフを手に取り、自らを刺した。


ッ・・・・!?


しかし、傷は直ぐに修復された。主は泣いていた。


『こんなものでは、私を殺せないのだ、十六夜の娘・・・』


姉は動けないようだった。主が写真を手に取り、語りだした。


『信じなくてもよい。十六夜の娘・・・私は、昔、十六夜という男と友であった。』


・・・ッ!?


『世迷事を!誰が仇の言うことを!?』


姉が、ナイフで刺す。


・・・何度も。


しかし、その都度、主の傷は再生されていた。主は刺されながらも話を続ける。


『私は吸血鬼、十六夜は吸血鬼狩人・・。友など有り得ぬ話だ。誰も信じなくて当然。だが、これは私にとっては真実だったのだ。・・私が気まぐれで、ある人間が妖怪に襲われてる所を助けたことが、きっかけだった。』


姉は、まだ刺し続けていた。


『そこに十六夜が現れた。どうやら助けたのはあいつの彼女、そう、お前達の母親だったのだ。しかし、十六夜は吸血鬼狩人、私を狩らないわけにはいかない。当時の私は弱く、あっさりやられたよ。しかし、殺されなかった・・それどころか、なぜか治療をされた。』


・・・・・姉の手が止まっていた。


『私は聞いた』

『なぜ殺さない?』

『十六夜は言った』

『今はまだその時じゃない。・・それに今は仕事中じゃない』


『・・・』


『散々ボコボコにしておいてよく言う奴だと思ったよ。・・まあ、照れ屋のあいつの事だ。素直に借りを返したとは言えなかったんだろう。立場上の都合もあるしな。』


『・・そして、なぜかそのまま共に暮らすようになった。・・共に飯を食い。・・共に寝。・・共に訓練をし。・・幸せだったよ』


『・・・だが、先代スカーレット伯爵が私を探しにこちらに軍を送ってきた。私は迷惑をかけまいと、出ていく事にした。』


・・・姉が泣いていた。


『しかし、一旦戻ればもうこのようなことは出来ない。私は吸血鬼でもあり、次期スカーレット伯爵だったのだ。その時に、十六夜と約束をした』


『・・・必ず再戦をする。そして、その時はお互い本気で殺し合うと』


『・・・男と男の約束だ。私はその約束を秘め。圧倒的な強さを誇ったあいつをガッカリさせない様、死に物狂いで鍛えた。せめて対等でいたい一心で。』

『そして鍛え上げた自分をあいつに見せたくて、あいつに文を贈った』

『・・私は死ぬつもりだった。それくらい当時のあいつは強かった』


『だが・・・私は、その約束を破った。・・・手を抜き、殺されるつもりだった。』


『・・かつては雲の上の強さだった男が、今となっては赤子のように感じるようになっていた。・・・年月は私を強くし、彼を老わせ弱くしていた』


『私は・・・虚しさを覚えた。戦うのをやめ、ひたすらあいつに刺され続けた。しかし、まったく死ななかった』

『・・・あいつは斬り付けながらも、本気を出さない私を見て泣いていた』

『悔しさ?・・いや、違う。あの目は悲しさだった。そして約束を違えた私への怒り』


『何度も逃げる隙は作った。しかし、あいつは逃げず、約束を全うした』


『私はあいつの弱さが哀れで仕方なくなった。見ているのが辛かった。ならば・・せめて最後に約束だけでも守ろうと、私は本気を出した』

『そして・・・私は十六夜を・・・・』


『私は・・・あいつの娘まで、殺したくない!これ以上あいつから奪いたくない!』


・・・・・


・・・・・


『じゃあ!私はどうすればいいのよ!?仇も討てない!殺されもしない!』


姉が号泣していた。・・・私も泣いていた。・・・・


主も泣いていた。

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