19歳男性の場合 part2
しおりからの告白を受けた自分は正直戸惑った。しおりに対する気持ちが好きという感情なのか、それとも、ただの好意なのか。なんせそんな経験は生前もなかったからわからなかった。その場は一旦保留にしてもらった。次の日からの雰囲気が心配だったがしおりは自然だった。変に意識してしまっている自分が恥ずかしくなってしまうほど彼女は変わらなかった。
あれからしばらくたち、いまだに自分は答えを出せていない。そんな中、珍しく上に呼ばれた。問題行動とか、処罰がないと滅多に口を出してこない腰の重い上が、何も心当たりのない自分を呼び出した。
重っ苦しい扉を門番に開けてもらうと偉そうに座る上の面々がいた。
「なんですか?これでも忙しい身なんですけど。」
自分はあまり上に対していいイメージを持ってない。その理由が天災についてだ。自分たちが情報を流してしまったくせに簡単に天災を起こして強引に問題解決をしようとする。こいつらこそ裁判を受けるべきなのに、天界のシステムを作ったからと言ってそのことには誰も触れない。どんなところでも上が無能だと下請けが苦労する。
「なんだその態度は?」
「いいえ。なんでもないです。時間がないので早めでお願いしたいです。」
「こっちだってお前の顔はあまり見たくはない。要件だけを伝える。お前の裁判の日程が決まった。以上だ。」
時間が止まった気がした。そうか。しおりがいれば自分は用済み。何百年も前のことだったし、最近、濃い記憶しかなくて頭の中から抜けていた。せっかく、うまく行き始めたのに。せっかく、楽しいと思える日々が来たのに。せっかく、大切な人との時間ができたのに。せっかく・・・。
「どうした?元はと言えばお前が望んだことだぞ。後任が育てばすぐにでも自分の裁判をしてくれってな。」
確かにそうだった。自分の生にはあまり興味がなかったし、仕事自体が辛く苦しいものだったから、さっさと誰かに押し付けて自分は楽になりたかった。でも、今は当時とは違う。
「しおりはまだこの仕事について1年も経ってません。」
「おかしなことを言うな。お前が望んだことでそれを叶えてやると言っているんだ。それに彼女は十分できてる。お前がいなくなっても問題はない。」
「しかし・・・。」
「これは決定事項だ。変えることはできない。」
自分は強制的に部屋から追い出された。どうやら上の決定は変えられないらしい。それもそうか。目の上のたんこぶがなくなるのだ。上にとっては利点しかないか。
その後、自分は仕事場には行かずに自分の家に戻った。ベッドに寝転がり突きつけられた現実と、自分の運命に絶望した。自分は枕に顔を埋めて言葉にできない声を荒あげた。