19歳男性の場合 part3
1週間後、自分の刑の執行の日になった。予想よりもかなり早く、心の準備はさせないと言わんばかり。まだ自分の中で整理はできていない。しおりにも伝えることはできてない。伝えることができなかった。気持ちを伝えてくれたからこそ、伝えることを躊躇ってしまった。
「これって・・・。」
しおりは自分の資料を見て、呆然としている。
「これ、嘘ですよね?きっと、そうです。上が間違って送ってきたんです。」
しおりは明らかに冷静さを欠いていた。
「嘘じゃない。前に一人で上に呼ばれた時に言われた。黙っててごめん。」
しおりの手から資料が流れ落ちる。しおりは崩れ落ち、その手で自らの顔を覆った。自分の言葉に嘘がないことが分かったのだろう。こんな自分のために涙を流してくれた。それも声をあげて。
「これが俺の最後の仕事だ。俺は何もできないけど、お願いしてもいいかな?しおりの元で消えたいんだ。こんなわがままだけど聞いてほしい。」
自分は顔を覆っていたしおりの手を握り、目を見てお願いをした。しおりの目は真っ赤に充血していて、せっかく綺麗にお化粧した目元のメイクが取れていた。自分の顔を見て、しおりは首を強く横に振った。
「いやです。いやです。絶対に嫌・・・。」
それもそうだ。自分が頼んでいることは好きな人を自分の手で消してほしいと言っているのと何も変わらない。自分はしおりの手を離し、しおりを強く抱きしめた。
「ごめん。本当にごめん。こんなになると思わなかったんだ。俺は罪人で、自分を消すためにこのシステムを提案した。もともと、自分の生に興味がなかったから、自ら望んでたことでもあった。でも、しおりと出会って変わってしまった。こんなに消えるのが怖いと思わなかったんだ。大切な人を残して、消えることが。でも、ここで自分だけが刑から免れたら、今までの人たちに顔向けできない。自分の意思も曲げてしまうことになる。身勝手なお願いなのは分かってる。今、自分がお願いしていることは、自殺と何も変わらない。むしろ、それよりも罪が重いかもしれない。大切な人だけを傷つけて、自分は消える。身勝手極まりない。しかも、それを大切な人にお願いする。最低な行動だ。それを分かっていて、お願いする。しおり、頼む。」
自分はしおりから離れて、深く頭を下げた。
「顔をあげてください。」
自分は恐る恐る顔をあげる。しおりは、自分の顔に手を添える。一発思いっきり殴られるものだと思った。でも、しおりは自分の顔を抱き寄せた。
「最低です。最悪です。でも、わかりました。誰かがやらなくちゃいけないなら、私がします。でも、しばらくこうさせてください。伯斗さんの温もりだけは覚えておきたいから。」
しおりの胸の中で自分は泣いた。泣いている最中もしおりはずっと自分の頭を優しく撫でてくれていた。




