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ジャック・ポット・チャンス!~幸運転生者の異世界日記~  作者: 天勝金治
第六章 時計仕掛けのプリンセス
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第90話 ロイヤル・ストレート・フラッシュ

 ギシャァァァァァァァアアァッ!!

 ドラゴンに変身した魔王ザディラムが叫ぶ。

 上空からは俺たちをまとめて消し去ろうとベラムスの放った闇魔法が巨大な隕石のようにこちらへと迫ってきていた。


 駆け出した俺は魔法のマント効果も相まって物凄い加速で魔王ドラゴンの下から飛び出す。

 その勢いのまま体を捻って…。

「いっけぇぇぇえっ!! 頼むから届いてくれっ!」

 力の限り手にした短剣、ミリオンスターをその魔弾向けて投げ上げた。


 ……作戦はまず一つ、俺たちを全滅させようと落ちてくる魔法を止める。


 回転した短剣は弧を描いて空高く、ザディラムの上へと飛んで行き…。

 カッッ、シュパァァァァッッ……!!

 金色の光と闇の魔法がぶつかり凄まじい閃光を巻き起こす。

 その光景を唖然として見上げるベラムスに向かって俺は走り続ける。


 ……二つ、ベラムスには少しの間黙っててもらう!


 シュゥゥゥ……、パリーンッ!!

 背後の上空でガラスが砕ける様な乾いた音が鳴り響く。

 自分にでもザディラムにでもなく短剣に『ワン・モア』をかけて魔法を弾く、空想通りに大成功だ。

「なぁっ、テメーか人間めッ! 俺様の華麗な魔法を……」

「うるせぇ! これでも食らいやがれってんだッ!」

 俺は振りかぶって右手に握った四角いものを投げつけた。

 ソレはベラムスに難なく弾かれ地面を転がる。

 止まった立方体の上の面には六つの点…。

「シオンッッ!!」

「……ッ! 任せて、『ギガノ・ホーリーレイ』ッッ!!」

 シュィィン、ドッガァァァン!!

 シオンの両手から放たれた巨大なビームはベラムスを飲み込み大爆発を起こす。


 ……三つ、お姫様をたたき起こす!!


「起きろレイラ……、じゃなくてセイラ! どうなってんだこれ、魔法陣か?」

「この魔法陣の効果だね、眠らされているよ。……ちょっと金治!? 魔法の眠りは叩いても起きないからね! 正しく解除しないと…」

 爆発を横目に俺たちは青白い光に捕らわれたお姫様の前へと駆けつける。

 やっぱりレイラそっくりのセイラ姫は空中に浮遊するように魔法で繋ぎ留められ、スヤスヤと寝息を立てていた。

「解除ってどうすんだよ。お伽話みたいに眠り姫に王子様のキス……、なんて訳じゃないんだろ?」

「いや、あながち間違いとは言えない。こういうローカルな眠り魔法を外から解除するのは難しいけどかけられた本人の意思で解除するのは簡単なんだ! まあ一説ではお伽話で王子のキスで目覚めたのは強制わいせつの危機を本能的に察知して起きたのであって、ロマンなど皆無だと…」


 夢も何もない解説だけどこのファンタジー異世界にもお伽話あるんだな。

「うんちくは後で聞いてやるから! どうすりゃいいんだ?」

「あ、えっと……、人間は寝てても音は聞こえてるんだ。何かセイラ姫が自分から起きるような事を伝えれればいいんだけど、……愛の言葉でも言う? 恐怖で起きるかも」

 そんな馬鹿な。

 愛の言葉って…。

「ンなこと言ったってよぉ……。ダメだ、レイラに見えて…」

「気持ちはわかるけど! 人間としてダメな金治に告白されれば……、やっぱ嫌だよね。う~ん、さっきから派手に爆発とかしてるのに起きてないもんね。寝つきの良さもレイラと同じか」

 シオンめ、さりげなく馬鹿にしやがって!


 性格は比べ物にならないほどお姫様しているセイラ。

 でも顔も寝つきもレイラと同じってか……?

「やっぱ兄弟だから素は同じって事か? だったらレイラと同じ起こし方でいいんじゃね?」

「そんな単純な訳……あるかも。それじゃあ試すよ?」

 一瞬だけ顔を見合わせて頷くと大きく息を吸う。

 フロントのギルド2階、朝食前に寝坊助レイラを起こす日課でいつも叫んでいたワードを…。

「「起きろ! 朝飯の時間だぜ・よッッ!!」」




「う……、うん……。朝ごはん……?」

 ゆっくりと目を開けると伸びをするセイラ姫。

「……あら? そうよ、悪魔がお父様を……、金治さんじゃないですか! ちょうど良かった、悪魔ベラムスが恐ろしい魔法を使って貴方たちを罠にかけようとしているわ!」

 今一歩遅れてるみたいだなこの姫様は。

「残念ながらもう罠にかかった後みたいだぜ? まあいいや、ベラムスの奴を倒したいんだけどサクッと攻略法とか教えてくれない? セオリーならお姫様の役目だろ」


 キョトンとするセイラ。


「ちょっと金治、それは唐突すぎるでしょ! えっとセイラ姫、ここはベラムスの魔法で作られた部屋で街の大時計の中なんだよ。それで…」

「まぁ、いつの間にかここまで来てしまっていたのね! ベラムスは貴方たちと魔王軍をまとめて倒すために『逆転の魔法』を使ってるの!」


 随分と理解が早い姫で助かったな、話が早い。

「逆転の魔法って……、君はこの部屋の秘密を知ってるの?」

「ええシオンさん。ベラムスは魔封じの罠を使うために逆転の魔法でこの部屋の魔力を逆さまに……、つまりは闇の魔力と光の魔力を入れ替える仕掛けをしてあるの!」

「なるほど、だからベラムスだけは悪魔なのに罠にかかってないんだ! ……金治大丈夫?」


 難しい話が始まったのは分かるが意味は分からないなぁ。

 俺、こういう説明は飛ばして読むタイプなんだよな。


「ああ大丈夫大丈夫。で、ベラムスを倒すにはどうすりゃいいんだ? なるべく簡潔に」

「そ、そうでしたわ! のんびり話している時間はありませんよね。『逆転の魔法』は街の大時計全体を使った大掛かりで、かつ精密な魔法です。その一部でもなくなれば機能しません」

 なるほど、デカい魔法陣の一部でも消せばいいって訳か。

「そしてこの私もその魔法の一部に組み込まれているようなのです」

 お姫様も魔法陣の一部と……、ってこの流れはマズいぞ!!


「おい、早まんじゃねーぞ!? お前が死んじまったら…」

「貴様らァ! ゼッテェ動くんじゃねーぞ!! セイラテメェ一歩でも動きやがったら…」

 背後からベラムスの叫び声が響く。

 ニコリと笑うセイラ。

 おい、こんなシリアス展開望んでねーぞ!?

 誰かが犠牲になるなんて……



 スッ。


「はい、これで『逆転の魔法』はお終いです」


 セイラは青白い魔法陣から一歩踏み出すとそう言った。

 次の瞬間、足元や周りの空間がバチバチと激しく点滅して…。

「このクソアマが……、ギャッ、ギェェェェェエッッ!!」

 振り返るとベラムスは黒い電撃に縛られ叫び声をあげていた。


「金治さん、シオンさん! 今がチャンスです! 私がこの魔法陣から出たことで逆転の魔法は効力を失い、ベラムスは自分が仕掛けた罠にかかりました!」

 喜々として叫ぶセイラ。

「そ、そうか! チクショー、無駄に涙を流しちまったぜ! 行くぜシオン、動けない敵を容赦なく袋叩きだ!! そりゃあぁぁあ!!」

 俺は走り、罠にかかって苦しんでいるベラムスの顔に飛び蹴りを食らわせる。

「ぐ、グフゥ……、貴様ァ!」

 まだ『魔法のダイス』の力でコイツは弱くなってる、俺のキックでもかなり痛そうだ!

「これなら僕らでも勝てるね! 『ホーリーレイ』ッ!」

 シュパァァァ、ドゴーンッッ!!

 


「き、貴様! 勇者のくせに正々堂々という言葉はないのか!?」

「悪役の四天王のくせして正々堂々とか言うなよな。それに俺は勇者じゃねぇ! 遊び人だ!!」

 俺はそう言い放つと動けない相手の弱点、股の間を力の限り蹴り上げた。

 ……おおう、我ながらひどい攻撃だ。


「もう……、許さねぇ。 テメェだけは許さねぇ! 全ての魔法を解除……、『ハイド・ディスペル』!!」

 ベラムスを中心に光が駆け抜ける。

 彼の足元から出ていた電撃は止まり、罠にかかっていたローレンスたちも後方でバタバタと倒れてゆく。

「……俺様の作戦はパー。だが金治、貴様だけは許さん!! ハァッ!!」

 ズバァァァァッ!!

 ベラムスが片腕を横に振ると黒い衝撃波が俺たちを襲った。

 少しでも気を抜いたら吹き飛ばされそうだ…。

「ヤバいな! わ、『ワン・モア』……。ありゃ? 『ワン・モア』ッ!『ワン・モア』ッッ!?」


 手を胸に当てて叫ぶが何も起こらない。

 いつも通り、金色の光が俺を包み込むはずなのに。

「魔力が切れたんだ……、クッ、金治! 逃げ、うわぁぁぁっ!!」

「シオンさん! 金治さん逃げて!!」

 隣で踏ん張っていたシオンが衝撃波に吹き飛ばされ後ろへと転がっていく。

 セイラの叫び声も聞こえるが動けそうにないぜ。


「ヒャーハッハッハァ! 俺の魔法で死ねぇ!!」

 ベラムスが両腕を空に掲げて叫ぶとバチバチと黒い光が集まる。

 魔王軍四天王の攻撃魔法、レベル10の遊び人がノーガードで耐えきれるわけがない。

 ……ここまでか?




「『ファイアボール』ッ!!」

 後ろから頬を撫でるように火の玉が飛んできてベラムスに直撃する。

 聞き覚えがありすぎるこの声、間違えるわけがねぇ。


「レイラ! また助けられちまったな!」

「フフン、特別にツケにしといてあげるわよ、金治!」


 振り返ると光の扉。

 そこには赤い踊り子の衣装に身を包んだ、相変わらず露出が多い魔法使いが生意気そうな笑みをして立っていた。


「ふぅ、やっとベラムスの馬鹿が魔法を解除したわね。ほら金治、貴方のうるさい仲間は約束通り連れてきてあげたわよ」

 自慢げに胸を張るシスター。


「ああ、サンキューグラム! でもピンチだぜ、ベラムスの奴が…」

「何かと思えば初級呪文か、馬鹿にしやがってェ! 全員まとめて消えやがれェッ!!」


 ベラムスはそう叫びながら飛び上がると、俺たちに向かって黒い魔法弾を放つ。


「伏せて金治! セイラも! 新魔法行くわよ!!」

「新魔法っておまっ」

 グラムに引っ張られるように地面に這いつくばる。

 レイラが高く掲げた杖に見たことないほど強い光が集中してゆく……



「くたばりなさい! 『ロイヤル・ストレート・フラッシュ』ッッ!!」



 シュイーン……、カッッ、ドゴォォォォォンン……!!

 放たれた四色の光が一つに収束する。

 広い天井を覆いつくすような極太の光線が斜め上空のベラムスを飲み込むように放たれた。

 空気を揺るがし、周りの闇を吹き飛ばすような轟音を轟かせ光の柱は天へと延びる。


 魔法には詳しくないけどこれだけは分かる。

 これは超強力な、この世界で見た中で最強の魔法だ!!




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