第87話 逆転開始!
銀色の鎧をまとった兵士たちに俺たち四人は立ち向かう。
ヴァイロンたちの強力な攻撃魔法を掻い潜って近寄ってくる奴らを切り付ける。
俺の短剣『ミリオンスター』で切り付けるといつも通り凄まじい閃光を放ちながら銀色の鎧を切り裂いてゆく。
魔法剣のおかげで俺も戦えてるけど……、不気味な相手だ。
「おいおいおいおい、何でこの鎧ども中身が空っぽなんだよ! うぉぉい、また蒸発しちまったぞ! 倒していいものなのかこいつら」
真っ二つに鎧を切り裂いても中身は空っぽ、すぐさま黒い煙を巻き上げて跡形もなく消えてゆくのだ。
中身は操られた兵士とかじゃなかったのか?
「これは予想外だったが恐らくベラムスの奴が魔法で作り出した兵隊だろうな。ここまで自由に闇の魔力を操るとは……、恐ろしい奴だ!」
「カッコつけて言うことッチェか! 路地裏からブリブリ出てきてるッチェよ!? このままじゃこっちの魔力が切れちゃうッチェ!」
無限に湧き出してくる鎧兵に押され始めている。
モンスターを呼び出すってのは四天王とかボスの特権なのは常識だけどこんなところで物量戦術するんじゃねーよ!
「うう……、敵が多すぎるよ。ザディラムに助けてもらうのは嫌だし何とか……。そうだ金治さん、ヴァイロンさん! 少し隙を作って頂ければ僕の魔法で離脱できます!」
ラディアが叫ぶが隙を作るって言っても…。
「何で俺様だけ除け者にするッチェか! それよりこの状況で隙なんかあるわけないッチェよ!」
珍しくチップの正論。
ヴァイロンの魔法なら一層出来そうだけど彼は近寄ってくる鎧の始末で必至だ。
強力な魔法ほど詠唱に時間がかかる、この世界に来てからさんざん聞いてきた。
何とかチャンスがあれば……。
ズシャァッ!!
とうとう詰め寄られたヴァイロンが鎧の騎士から強烈な一撃を受け倒れる。
魔法使いは接近戦は苦手、これはゲームと同じってか。
「ぐぬぬ……、仕方がないここまでか。私が暫く時間を稼ぐ! 君たちは逃げるんだ!」
切り付けられた右腕をかばうように竜の鱗に覆われた左半身を突き出し、ヴァイロンは俺たちの前に立ち上がる。
……コイツ、自分を犠牲にする気だな。
させてたまるかよ!
「何カッコつけてやがるんだよ! そんなベッタベタのお約束セリフ吐いてたら死んじまうぜ! 俺は仲間を失う気はない!」
俺は飛び上がるとヴァイロンを切り付けようとする鎧に短剣を突き刺した。
黒い煙になり爆散する鎧。
……我ながらクッサイセリフ吐いちまったけど嘘は言ってないぜ。
俺は欲張りだから金だろうが仲間だろうが奪われたくないんだ!
ヴァイロンが何か言いかけたようだが無視して近くの鎧を切り裂く。
カッコつけたはいいけどピンチだな、大ピンチだ。
とうとう俺たちは囲まれていた。
死を覚悟する場面……、だろうけど不思議と大丈夫な気がする。
……何とかなるだろ、ってかなれ!
「みんな伏せてっ! 『エア・バースト』ッ!!」
遥か頭上から響く聞きなれた声。
緑色のオーラを放つ球体が目の前に落ちてきた……、と思ったらそれは炸裂し凄まじい暴風を巻き起こす。
ヴァイロンに押し倒されるように地に伏せて風をしのぐ。
鎧兵どもは見事に吹き飛ばされそこらに転がった。
「いまだ! みんな僕に掴まって、『シャドー・トランス』!」
ラディアが呪文を唱えると彼の足元から影が立ち上り俺たちを包み込む。
影に包まれる瞬間、建物の屋根を見上げるとそこには露出の高い踊り子の衣装に身を包み真っ赤なマントを棚引かせた女性が笑みを浮かべて親指を立てていた。
俺はその女性、俺の最高の仲間に笑い返してグッと拳を突き上げる。
カッコよすぎだぜ、レイラ!
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どこかの地下室だろうか、薄暗い部屋に放り出られた。
恐らく移動用であろう魔法を使ったラディアは息切れしてゼーハー言ってる。
「ここはどこッチェか? あの鎧の化け物どもはいないッチェよね……」
「う、うん……。魔法で移動したから追いかけては来れないはずだよ。ほ、ほんとはお城まで行きたかったんだけどやっぱり四人も一度に運べる魔法じゃなかったみたいだ」
死にそうな声で語ると近くに置かれた樽にもたれかかった。
「大丈夫かラディア、ありがとな。でも城に向かって移動してくれたんだろ? だったら急いで向かおうぜ!」
彼が城に向かってくれたのは凄くありがたいぞ。
「正気なのか金治君! 私もラディア様もとても戦える状態じゃないぞ。私は魔法すらロクに使えそうにない……、今の状態でベラムスに挑むのは無謀だ!」
流血する腕を抑えて辛そうなヴァイロン。
確かにこの二人は暫く戦力になりそうにない。
でも…。
「大丈夫、俺に考えがある! 城には俺の仲間が捕まってるはずだ。レイラが生きてた、だったらあいつらも無事に決まってる!」
一番の問題児が元気だったんだ、優秀なあいつらなら…。
「俺の仲間のシオンに会えればお前らに回復魔法をかけてもらえる。それにローレンスは最強の騎士だ、ベラムスにも次は負けない!」
もし生きて捕まっているとしたら俺も一度捕まった地下牢だろう。
希望が見えてきたぞ。
「す、すごいッチェ! もうお終いかと思ったッチェけど何とかなりそうッチェね! 行くッチェ、急ぐッチェ! 早くするッチェ!」
嬉しそうに騒ぎ、地上へ続くであろう階段に駆け寄るチップの尻尾を掴むヴァイロン。
「待て! 確かに金治君の仲間が無事なら、会うことが出来れば大きな助けになるだろう。だがそいつらが無事の保証はあるのか? 城へ行くのが無駄足になったら俺たちは逃げることもできないだろうな」
そう言ってため息をつく。
言いたいことは分かるけど俺はそれでも自信がある。
「大丈夫って言っただろ。俺には仲間の他にも頼もしい味方いるんだ! 絶対大丈夫さ。それに俺は……、超ラッキーなんだぜ!」
俺はそう言ってヴァイロンの手を引っ張って立ち上がらせる。
なんだか無性に自信が沸いてくる。
きっと絶対大丈夫、まるで勇者にでもなったように何も怖くない。
思わず笑顔になっちまうほどにな!
ヴァイロンは一瞬ポカーンとしたが…。
「フッ、そうか。いいだろう、もう一度君に賭けて見るとするか。根拠は何もない筈だが君が言うと何故か本当に大丈夫な気がするな」
ニッと悪そうな笑みを浮かべて俺の頭を軽く叩く。
「目標はお城ッチェよね? 善は急げッチェよ!」
急かすなチップ。
俺は地下室の隅に座り込んでいるラディアを引っ張り上げる。
「ほらおぶってやるから行こうぜ。シオンに直してもらったらまた俺のこと守ってくれよな。それまでお前のことは守ってやるから、任せろって!」
少年はうっすら笑みを浮かべて力なく頷く。
相当限界のようだな……、急がないと。
「不思議……。この気持ちなんだろう。温かく……、どんな奴にも負ける気がしない、強くなったような……。これは金治さんの魔法?」
背負ったラディアがしんどそうだが嬉しそうな声で呟く。
「俺はそんな魔法使えねーぞ。なんとなくってヤツだろ、大丈夫ってことだぜ! さあ、出発だ!」
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俺たちは地下室から階段を駆け上がった。
一階に出て気が付いたがここ、俺たちが泊まってた宿屋じゃん。
……って事は城はすぐ近くだ、ラッキー!
通りに出ると相変わらず白黒世界の街並み。
城に向かって走り出したが前方に銀色の鎧が見えたので慌てて路地に飛び込む。
「戦いになったら死んじゃうッチェよ。ここは俺様に任せるッチェ、いたずらマスターにとってスニークは基本だッチェよ! おっさんに日々仕掛けた成果を見せるッチェ!」
偉そうに宣言するチップに続いて路地を駆け抜ける。
「そんなことばかりやってるから魔法の勉強が疎かになっているんだろうが……、珍しく役にたったな。お仕置きは後にしてやる」
ふと振り返るとヴァイロンがすごい形相でチップをにらみつけている。
……アイツなにやらかしやがったんだよ。
「お城の入り口ってあれッチェよね? 金治の仲間はどこにいるッチェか」
建物の間から城の正門を覗き込むが見張りっぽいのはいない。
強いて言うなら門番の兵士っぽいのが白黒になって固まっている。
今なら侵入できるな。
「捕まってんなら城の地下牢だろ。俺も一度捕まってるし場所は分かるけど……、近道の隠し通路があるからそこに行くぜ」
地下牢を脱出させてもらった時の隠し通路、今度は潜入に使うぞ。
正門に向かって駆け抜ける俺たち。
ヴァイロンが城の大きな扉を蹴り開けてそこに滑り込む。
城の中も色がなくなって人も物も止まってやがるな。
「あっ、金治さん危ない! 早く離れ…」
背中のラディアが何か叫びかけたその時突如真上で赤い光が点滅し、けたたましいサイレン音が鳴り響く。
慌てて見上げるとぎょろりとした大きな目玉に触手が生えたようなものが天井から俺たちを見下ろしていた。
目玉は赤く点滅し、凄まじい音を放っている。
「なんだよおい、ヤバいんじゃねーのか!?」
「くっ、マズいぞ! あれは魔王軍の監視用モンスター、『セキュリティーアイ』だ! これでベラムスに完全にバレたな」
「ご、ごめんなさい……、僕がもっと早く気が付けば…」
「オメーのせいじゃないッチェ! とにかく急いで進むッチェよ!」
慌てて駆け出す俺たち。
まっすぐ進んで中庭に飛び出す。
俺は確か隠し通路の出口だった城の壁に駆け寄る。
「ここだ、ここに隠し通路があるぜ! ここを通れば地下牢まで一直線だ!」
「やったッチェね! ……ところでどこが入り口ッチェか? 早く開けるッチェ」
……開ける?
そーいえばどうやれば隠し通路を開けれるんだ?
確かアイツはなんか壁に触って呪文を唱えてたよな。
……俺、呪文なんて知らねーぞ…。
「お、おい金治君? 顔色が青くなっていくが……、まさか…!」
絶望の眼差しで俺の顔を覗き込むヴァイロン。
残念ながらその通りだ…。
「悪い、開け方わからねぇや! すまん!!」
ヴァイロンとチップの絶叫が響く。
ふと気が付くと周囲を銀色の鎧たちに囲まれていた。
鎧の隙間からは黒い炎を吹き出し、如何にも臨戦態勢って感じだ。
「仲良くできる雰囲気じゃ……、なさそうだな。しくったな」
絶体絶命の大ピンチのだろうけど残機山盛りのテレビゲームでミスっちゃったくらいの軽い気持ちしか湧きあがらない。
まあ、なんとかな……。
シュイィィーーン、バシュゥ!!
突如、目の前の壁に長方形の光が現れた。
その光がまるでドアのように開かれて見覚えのある顔が中から出てくる。
「全く、なにドジってるのよ! 早くこっちに入りなさい。まだ死ぬ気はないでしょ?」
紺と白のシスター衣装に身を包んだ女性はそう言って手をさし伸ばして来た。
病的なほど色白の肌に赤く輝く目。
俺はもちろんその手を取る。
「会いたかったぜ、グラム! ほらヴァイロンもチップも急げ! 逃げる……、いや、仲間を助けに行くぜ!」




