第77話 億万長者の大チャンス
「マスター、俺たち表彰式行くことにしたぜ! ……ギルドは大変だね」
太陽が照り付け、雪も溶け始めてる商店街を抜けてギルドへとやって来た。
見事に崩れかけの廃墟だな。
「よう、やっぱり行く気になったか。ほらこれ、フリーダの奴に渡し忘れてたけどキャラバンの乗車券だ。特等席の券をタダで付けてくれるなんて太っ腹だよな」
マスターはポケットから4枚のチケットを差し出す。
「へぇ、王様って随分気前がいいんだね。え~っと、明後日の朝にフロントに立ち寄るキャラバンだ。……意外と直ぐだな」
シオンが受け取って表記を確認する。
「うむ、しかし随分ひどく壊れたものだな。金は足りてるのか?」
「ああ、お前らがダンジョンで取って来たお宝を使わせてもらってるが……、本当に良かったのか? 殆ど使っちまうぞ?」
修復が大工によって始まってるがギルド再開には時間がかかりそうだな。
お金の面は置いといたお宝で何とかなるらしいけど。
「大丈夫だって、俺たちずっとギルドの二階借りてたしそのお礼だよ。言っとく事としては二階の俺たちの部屋、治して貰ってくれよな!」
「フッ、いい感じの事を言ってさりげなく今後も居座る気でいるのが素晴らしいな。任せときな、お前たちが帰ってくる頃には前よりも立派なギルドにしといてやるよ! ……ところでその紐つけて引きずられてるのはどうしたんだ?」
俺たちの後ろでブツブツ言ってるレイラを指さして不信な顔をした。
「何故だか知らないがこいつ、表彰式に行きたくないと駄々をこねてな。苦肉の策でこうして引きずって来たのだが……、クロノス・スタッフで何かあったのか?」
紐とレイラを引っ張って来たローレンスがため息交じりに答える。
それを聞いてますます不思議そうな顔をするマスター。
「はぁ? クロノスからは毎月、知り合いの商人が来てるが変な噂は聞いてないな。あそこは小国で領土も狭いがこの大陸最大の国家である王都と友好的な同盟国だ。王都から重要な仕事がしょっちゅう舞い込むから生活は豊かで犯罪率も少ない平和な国だろ。それに別名花の都と言われるくらい綺麗な街で飯も旨いのが多いぞ」
う~ん、聞けば聞くほど訳わかんないな。
何でそんな良さげな街に行きたくないんだ?
「ほらいい国みたいだよ? もしかしてレイラ、他の街と勘違いしてるんじゃないの。とにかく一緒に行こうよ、酷いところなら賞金だけさっさと貰って僕らも帰るからさ」
「だよな。キャラバンのチケットも人数分用意してもらってんだし行こうぜ? それにほら、また悪い奴らやモンスターが出ても俺の幸運があるから大丈夫だって」
俺たちがいろいろ説得してもレイラは不安そうだ。
「ううう……、分かったわよ。一緒に行くけど私はあんまり宿から出ないからね。表彰式にはあなたたちだけで出てよね」
何でそんなに嫌なんだ?
まあ、取りあえず行く気にはなったからいいか。
「今日のレイラは本当にどうしたんだ? ……まあいいか。ほらお前ら、行くって決めたんならちゃっちゃと準備しろよ! 出発は明後日の朝なんだろ」
マスターの掛け声で準備開始だ。
冒険の準備って一番ワクワクするよな。
……レイラは今までにないくらい落ち込んでるけど。
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二日後、キャラバンに揺られて俺たちはフロントから東へと進む。
特等席の乗車券だけあってフカフカのソファーや豪華なテーブルの付いた馬車丸々一台を俺たち四人で乗っている。
備え付けのお菓子やフルーツも美味しいし文句はないな。
……そんな豪華な旅なのにレイラは馬車の隅で落ち込んでいた。
「本当にどうしたんだよレイラ、そんなにクロノス・スタッフってマズい場所なのか?」
俺の問いに首を横に振る。
「そんなんじゃないわ。いい街よ、きっと金治も気に入るわよ」
ますます謎だ。
「まさかとは思うのだが何かやましい事でもあるのか? 多少お尋ね者になってるくらいなら俺の権力で何とか出来るかもしれなんだが」
「おいおいローレンス、伝説の騎士の権力を無駄に使うなよな。でもレイラならあり得るか、……食い逃げでもした?」
「そんなんじゃないわ、食い逃げくらいなら堂々と行くわよ! それに私は犯罪なんかしてないんだからね!」
アホな会話をしてるとシオンが手を叩いて…。
「もしかして冒険者カードを神殿で見てもらった時何かあったの? 確かあの後からだよねレイラが変なの」
「ほらカードはこの通り文字化けのままよ。何か新しいスキルを覚える前兆かもしれないって言われたけど詳しい原因は分からないそうよ。別にこれは気にしてないわ。それにクロノスには嫌な思い出があるだけ、レディーの過去に口出ししないでよね」
「「「れ、れでぃー???」」」
俺たちは顔を見合わせる。
「何よ! 文句あるって言うの!? 失礼しちゃうわね」
……まあ、嫌な思い出があるだけなら問題ないか。
レイラは怒ったけどまあ元気になった。
俺たちは直ぐにその会話を忘れて豪華な旅を満喫し始めたのだった。
「まあまあ、ほらこのクッキーみたいな焼き菓子、謎の味だけど美味しいよ。美味しい物でも食べれば機嫌も良くなるでしょ」
「人の事を何だと思ってるのよ。まあいいわ、旅はうじうじしててもしょうがないわよね。楽しみましょうか……、うん美味しいわ!」
「元気になってよかったよかった。それに表彰式でまた賞金がもらえるんだろ? 今度はいくらもらえるか、考えるだけでにやけちまう」
「そうだぜ、賞金だぜ! もしかしたら今回で一生遊んで暮らせるくらいもらえちまうかもしれない。俺たちの冒険の目的だろ!」




