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ジャック・ポット・チャンス!~幸運転生者の異世界日記~  作者: 天勝金治
第六章 時計仕掛けのプリンセス
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第76話 空を貫く魔法

「それじゃあ行きますわよ。晴天の天気魔法、『ソル・ド・ウェズ』!」

 フリーダが手を上げて呪文を叫ぶと頭上に光球が出現する。

 まるで小さい太陽の様に暖かく、そして眩しい。

「準備はいいわね金治君。 それでは……、発射!」

 上空に向かって発射される光球。


 俺は素早くフリーダと立ち位置を入れ替わる。

 輝く魔法陣の付いた右腕をその光球に向けて腰をしっかり入れて構え…。

「行くぞ! ジェットブレス、再発動! ダァァァァッ!」

 魔法陣が強く輝き、右腕から暴風が巻き起こる。

 光を帯びたドラゴンの竜巻が天へと昇る光球を取り込み、ものすごい勢いで空へと延びて行く。

 竜魔法の衝撃で俺も、周りにいる仲間すら吹き飛びそうだが最大出力での放出。

 何とかなってくれ!



 腕の魔法陣が消え、ブレスの放射も止まった。

 空に変化は……、ない?

「ど、どうなったって言うのよ。魔法はしっぱ…」


 レイラが何か言いかけた瞬間、雲に円形の大穴が開き、太陽の日差しが降り注ぐ。

 眩しさに思わず眼が眩むほどだ。

 太陽ってこんなに明るかったっけな。


「や、やったのですね! 吹雪が止んで太陽が……、よかった、よかった!」

 安堵の声を上げるフリーダは嬉し泣きをしていた。

 泣いてばっかりで忙しいな。

「いや、安心するのは早いみたいだね。アレを見てよ、アイツが吹雪を起こしていたモンスターだ!」



 雲に覆われていたその場所に浮かぶ一つの影。

 巨大な雲の様な靄の様な不思議な形状の青っぽいモンスターだ。

 目が赤く輝き、少し不気味だな。

「エレメント系のボス、『フロストクラウド』だね。極度の寒さから生まれるモンスターだけど上空に出現して雪を降らしていたんだ。アイツを倒さないと天気が直ぐに戻っちゃうよ」

 シオンの説明を聞き、俺たちは身構える。

 幸か不幸かフロストクラウドとやらはゆっくりと上空から下降して来た。

 これなら攻撃のチャンスだ。


「氷には炎よね! 私の魔法で、『ファイアボール』ッ!」

 レイラが放つ火の玉は一直線に飛び、見事その巨大なモンスターに命中した。

 しかしその爆炎をくらっても何ともなさそうだ。

「駄目ですわ、威力が足りていません。ここは私の魔法で動きを封じましょう、『デス・ブリザード』!」

 今度はフリーダが強烈な冷気を放つ。

 その攻撃は効かないどころかフロストクラウドの大きな口へと吸い込まれて行く。

「ま、マズい! 氷の魔法はアイツにとっては食事みたいなものなんだ! 反撃が来るよ!」


 冷気を吸い込んだ雲の怪物は大きく膨らんだ、と思ったら俺たちに向かって思いっきり息を吐き出した。

 フリーダの魔法をそのまま跳ね返したのかもの凄い冷気が迫る。


「皆さがれっ! ここは俺が……、ハァァァ、『ファイアウォール』!」

 ローレンスが俺たちとシーナたちの前に仁王立ちして剣を振る。

 すると巨大な炎の壁が立ち昇り冷気とぶつかった。

「くっ、何て威力だ! 長くは持たないぞ。何とかアイツを攻撃してくれ!」



 何とかって言われてもどうすればいいんだ?

 俺は遠距離技を持ってないし、あの冷気の中を走ったら氷漬けになるだろう。

 ここは魔法使いに頼るしかないな。

「おいレイラ、もっと強力な魔法は……、ないよな。だったらもっと強い『ファイアボール』を撃てないのか?」

「もっと強いってどういう事? 魔法の威力はそう簡単に上がらないわよ」

 不思議そうなレイラの前に俺は左腕、黄金の腕輪を突き出す。

「ほら、ミラさんが使った『ファイアボール』はもの凄い威力だったじゃねーか! お前も魔力を込めれば威力を上げれるんじゃないのか? 俺の『ダイスの腕輪』を使え。初級魔法を最大火力まで引き上げるんだ!」


 フリーダも駆け寄って来て…。

「なるほどね。確かに理論上、魔力が大きい人が使えば同じ魔法でも威力が上がるわ。その腕輪は能力強化の魔法アイテムね。だったら私の魔力もレイラちゃんに貸すわ、受け取って『マジックパサー』!」

 不思議な色合いの光がフリーダからレイラに流れる。

 魔力を送る魔法って訳か。


「ありがとうフリーダ! 今までにないくらい力が湧いて来るわ。後は金治、サイコロ借りるわよ」

「おう、いい目を出せよな! 大一番だぜ」

 レイラが俺の左腕に巻かれている『ダイスの腕輪』に触れる。

 強い光と共に魔法のサイコロが出現した。

「かっこよく行くわよ、ダイスロールッ!」

 レイラが放り投げたサイコロは雪の上を転がり、そして止まった。

 そしてレイラの足元から頭上に向けてギュィーンと青い光が走る。


「へぇ、5とはまあまあの目じゃん。どう? 強くなった感じするだろ」

 レイラは少し体を動かすとニヤリと笑みを浮かべた。

「ええ、今までの人生で最高の気分よ。無限に魔力が沸き上がって来るみたい、今なら凄い魔法を撃てそうよ!」



 レイラは杖を掲げて、冷気を吐くフロストクラウドをじっと睨む。

「ローレンス、もう大丈夫よ! 行くわよ、最大最強パワーで『ファイアボール』ッ‼」


 呪文を叫ぶと同時にレイラの杖がもの凄い閃光を放った。

 放たれた巨大な光線は冷気すら跳ね返し、その巨大モンスターを貫く。

 何時もの初級魔法とは明らかに違う、はっきり言って全くの別物にしか見えない閃光は耳をつんざく爆音を響かせてフロストクラウドを粉々にしたのだ。


 

 その超魔法の衝撃で撃ったレイラはもちろん、周りに居た俺たちも後方の雪の中へと吹き飛ばされてしまった。

 何とか雪の吹き溜まりから這い出す。

 空を覆っていた雲は全て吹き飛ばされ、清々しいほどの晴天が広がっている。

 俺同様に雪から這い出した仲間たちとシーナさん、護衛の兵士たち。

 そして倒れて動かないレイラの姿がそこにあったのだった。



   ----------



「で、レイラのその超魔法でボスを倒したって訳? そんな無茶苦茶な事ありなのかな、ただの初級魔法がそんな威力になる何て有りえないんだけど」

 大雪騒動の翌日、俺たちは街の宿屋で朝食を食べている。

 ギルドはモンスターの攻撃で半壊したため当分営業停止らしい。


 俺たちは怪我もなくピンピンしていた。

 レイラもただ魔法の衝撃で気絶しただけで怪我一つない。

 ……ラッキーって素晴らしいな。


「う~む、そんな状態聞いたことないんだが……。新しいスキルを習得したんじゃないか? 確認してみたのか?」

「ええ見てみたわ。でも変なのよねぇ、ほらコレよ。何か新しいスキルが出てるんだけど文字化けしてて読めないのよ」

 そう言って差し出された半透明の冒険者カード。

 彼女のステータス欄の横、スキルが描かれているスペースの一番上に確かに文字化けして読めない一文が表示されている。

 その下には『スマッシュファイア』、『エアバースト』…。

 変なところは文字化けだけだな。

「確かにおかしいね。冒険者カード自体が壊れてるのかもしれないから後で神殿に行ってみなよ。もしかしたら凄い魔法を覚えたのかもよ?」


 それを聞いたレイラは勢いよく立ち上がった。

「そうよね! もの凄い新魔法かもしれないわよね、今すぐ行って来るわ! ……あっ、フリーダちゃんいらっしゃい。みんな奥に居るわよ」




 レイラと入れ替わりで部屋に入って来た青いドレスのお嬢様。

 昨日戦った時とは打って変わってシュンとした様子だな。

「おはようございます金治パーティの皆さん。あの、本日は改めて謝罪に…」


「別に謝らなくてもいいんじゃない? 君が毎回そんな風に謝罪に来てたら時間がいくらあっても足りないよ。決闘を挑みに来るときは普通に来いって毎回言ってるだろ?」

 辛辣な彼女の言葉を軽く流すシオン。

 俺も真面目な謝罪は好きじゃない。

「謝ることなんてないじゃん。フリーダは俺たちと一緒に戦ってフロントに太陽を取り戻した英雄だろ、リックのラッキースケベ事セクハラが一番悪いんだし」

 リックがレイラにコッテリ怒られて、フリーダに謝罪させられたのは昨日の話。

「そうだぞ、どんなに失敗や悪い事をやらかしてもそれを補う善行をすれば許されるんだ。それこそ騎士道だ!」 

 その騎士道はどうなんだよ。


「あ、ありがとう……、昨日の騒動は私のせいなのに許すと言うのですね。でもぎ、ギルドも街もひどい有様に…」

 かなり責任を感じてるのか項垂れてるフリーダ。

 こんな事この世界ならよくあるのに…。

「街を壊したのはモンスターだろ? 大した怪我人も居なかったみたいだしいいじゃん。こんだけ騒動になったのに英雄になって終わったなんて儲け儲け」

 俺はジャムが大量に乗ったパンを頬張りながらフォローする。


「金治……君、貴方たちは優しいのね。私を仲間と言ってくれてありがとう! 今回ばかりはどうしようもないと覚悟してた、助けてくれて本当にありがとう!」

「だいたい君はエルフの里でもいろいろやらかしてたじゃん。僕が相手にしなかったからって天候操ったり雷降らしたり。……黙ってれば優秀なんだから大丈夫だよ。僕の次に優秀なナンバー2だったんだからさ」

 照れながらか、ソッポを向いて呟くシオン。

 コイツなりにフリーダの事を認めてるんだろうな。

 ……シオンも何だかんだ言って周りに女の子多くてリア充主人公気質あるよな。


 

「ところで何か用があって来たんじゃないのか? 謝罪の為だけに来たんじゃないだろ、それは俺たち宛か?」

 ローレンスが彼女の持っている封筒を指さして尋ねる。

 彼女は笑顔になって手紙を広げた。

「ええそうよ、ギルドのマスターさんから預かって来たの。貴方たち、私がフロントに来てる間にフェアリーテーブルを守ったんですってね。凄いわよ、その事で王都から直々に表彰されるらしいわ! この手紙は貴方たちへの招待状。……見て、王都の印鑑が押されてる。本物よ!」


 そういって見せて来た紙には何か豪華な模様のスタンプが押されている。

「表彰式、つまりまた賞金を貰えるって訳だな。四天王を撤退させたんだから今までで一番期待できるじゃねぇか! やったぜ!」

 俺が何時ものヤツか、程度に喜ぶとシオンたちは唖然として固まっている。


「それだけじゃないよ。この印鑑が押されてるって事は王都……、いや、この大陸の王様直々に認められたって事だ! こんな事普通じゃありえないんだよ!?」

「確かにフェアリーテーブルは重要な拠点だがここまで評価されるとはな……。これで金治たちも勇者と呼ばれるんじゃないか?」

 興奮気味に騒ぐ二人。

 よく分かんないけどこの表彰は凄いって事だな。


「サンキュー、フリーダ! これは行くしかないな。レイラも戻ってきたら教えてやろうぜ! きっと一番喜ぶぜ、アイツ」

 俺は彼女から手紙を受け取る。

「ええ、それがいいですわ。私は街の修復を手伝って来るわね、モンスターのせいで私は一応英雄って事にしてもらってるけどやっぱり申し訳ないの。それでは御機嫌よう」

 笑みを浮かべて出て行くフリーダ。

 トラブルメーカーみたいだけど悪い奴じゃないな。


   -----


 暫くしてレイラが戻って来た。

 予想通り、王都からの表彰式の話をしたら飛び上がって喜んだ。


「やったじゃない! これで本当に大金持ちよ! ところで表彰式はどこでやるのかしら?」

 テーブルに広げた手紙の上に首を掲げて答えるローレンス。

「うむ、どうやら王都の側近国、『クロノス・スタッフ』でやるらしい。ここは小さな国だが昔から王都と同盟関係にあって情報管理や重要な役割を担ってる国だったな。俺も一度行ったことがあるが綺麗な良い街だったぞ」


 ローレンスがそう言った瞬間レイラの顔が曇った。

 そして信じられないことを言い出したのだ。


「クロノス・スタッフなら私は行かないわ。金治たちだけで賞金貰ってきなよ」

 

 あの金にがめつく、こういうのに一番乗り気のレイラが賞金を断るだと!?

 おかしい、絶対におかしい。




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