第75話 コンティニュー
短剣を手に青い靄の様なモンスターを切りつける。
魔法の光を帯びた斬撃で真っ二つに切り裂かれ溶ける様に消滅した。
俺は街の正門を守るように並んだ兵士たちの横を駆け抜けて後ろで指揮してる女性の前へと飛び出す。
「天勝金治ただ今参上! 助けに来たよ、シーナさん! 俺たちも戦うぜ!」
「あ、貴方は確か……、フロントの英雄、来てくれたのね!」
黒スーツを着こなして、気の強そうなその目には涙を浮かべていた。
こんな風にカッコつけれるなんて俺も昔とは変わって来てるのかもな。
「何カッコつけてるのよ馬鹿金治! どんどん敵が湧いて来てるんだからあんたも戦いなさいよね!」
魔法を放ちながらも怒鳴るレイラ。
「しょーがねぇなぁ、一貯行きますか! 俺に任せてね、シーナさん!」
相手は一撃で倒せる雑魚。
今回の俺は調子に乗って行くぞ!
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エレメント系モンスター『コールドスイープ』
たまに冷気を吐いてこちらを凍らせに来るけど動きも鈍く、防御力もないようで俺たちでも簡単に倒せる。
しかし全滅させたと思ってもどこからか湧いて来る……。
「くっ、この寒さのせいだ! エレメント系のモンスターは不安定な環境から自然発生するエネルギー体なんだよ。フリーダ、魔法を解除して雪雲を消すんだ!」
「もう試したわよ! 私の魔力とは関係ない、なにか大きな魔力が阻害しているわ。……雲の中にモンスターが居るのかもしれない。私のせいでこんな事に…」
項垂れるフリーダに気が付いたシーナが不審な表情を浮かべる。
「私のせいって……、そう言えば貴方は初めて見る顔ね。何かしたの?」
これはマズいな。
正直に話せばフリーダは恐らく逮捕、下手したら俺たちにもとばっちりが…。
「い、いや何でもないぜシーナさん。コイツは俺の仲間の友達で…」
「友達じゃなくてただの知り合いです。ちょっと勝負に来たみたいで……、ところで雲の中にモンスターってどういう事?」
何とか注意を逸らして本題だ。
フリーダは少し悲しそうに答える。
「と、友達でいいじゃない……。それよりモンスターですわね。天気操作の魔法を解除して、反対の魔法をかけても効力がない。だったら別の何かが天候を操っている可能性が高いわ、エレメント系のモンスターとかね」
空を見上げると不自然な感じに雲が渦巻いている。
……どうしろって言うんだ?
「おい、何とかならないのか!? いくら雑魚でもこう無限に湧いてくると流石にキツいぞ! 空に居るボスを撃ち抜くような魔法はないのか?」
前衛で領主の護衛騎士と共に湧き出して来るモンスターを倒していたローレンスが叫ぶ。
他の騎士たちも限界そうだ。
「流石に雲を撃ち抜く魔法はないわよ! どこにいるかも分からないし…」
「氷のモンスターなんて私の炎で一撃なのに! テレポートの魔法で空に……、なんて無理よねぇ。せめてあの雲が無ければ」
ここまでピンチは全部マジックカード任せで来たけど残りは一枚。
確か竜魔法とか言うのの一つで風のブレスを巻き起こすヤツだったっけな。
「コイツで雲を吹き飛ばしたり……、出来る訳ねぇよな」
「それは確かに強力な魔法だけど空まで届くとは思えないね。魔法陣の効力が切れるまで竜魔法が撃ち放題って言う最強クラスの魔法なんだけど」
これを使えばもしかして。
でもどんなモンスターが居るか分かったもんじゃないし怖いなぁ。
ふと後ろを振り返る。
「このままじゃ私の街が……、フロントが…」
シーナをこのまま悲しませるのもフロントが氷漬けになるのも嫌だな。
……やるだけやるか!
俺はカードを構える。
「上手くいくか分からないけど物は試しだよな! 『ジェットブレス』発動!」
強い輝きがカードから放たれる。
右腕を覆う様に魔法陣が展開した。
「雲を吹き飛ばしてやる! いっけぇっ‼」
空へと掲げた腕から巨大な竜巻の様な暴風が発生する。
その衝撃で俺の方が吹き飛びそうになるのを必死でこらえる。
輝きを放つ風のブレスは真っ直ぐ天へと昇って行くが……、雲に届く事はなかった。
「くっ、ダメかぁ! 風邪で雲を吹き飛ばす、いいアイデアだと思ったんだけどなぁ」
「あったり前だろ! 地面から撃った魔法が空に届くもんか、他の手を考えるよ。何とかして天気を変えないと本当にフロントは氷漬けだ」
騎士たちが次々に沸いて来るモンスターを倒してくれている後ろ、シオンを中心に作戦会議だ。
レイラもシーナも共にああだこうだ言うけど何もアイデアはない。
……誰か絶望ムードをどうにかしろよ。
「飛行の魔法……、なんてあっても空は恐らく超低温。飛び込むのは自殺行為ですよね。地上からの魔法は無意味ですし……、どうしましょう……。お願いです、数々の戦いを切り抜けて来た貴方方だけが頼りなのです! どうかもう一度フロントを守って下さい…」
涙目で訴えかけて来るシーナ。
助けてあげたい……、けど…。
「どうしようもないんだよな。魔法で雪を降らしたって言うのなら晴れにする魔法もあればなぁ、……って言うか普通あるだろ! この世界おかしいわ!」
俺が自己完結して文句を言うとシオンがハッとして指を指す。
「それだよ、魔法で変えた天気には魔法だよ! 天候を操る天気魔法は種類がある、雪を降らすものもあれば晴天に変えちゃう魔法もあるんだ。少しの間だけでも太陽を出せば氷のモンスターはかなり弱体化するはずだよ!」
「そんな魔法あるのかよ! だったら最初っから使えよな。じゃあシオン、頼むぞ」
晴れにする魔法があるなら問題は全部解決だな。
仲間たちの顔にも笑みが蘇る。
「僕は天気魔法を使えない。でも雪を降らす高等天気魔法を使ったフリーダなら初級の晴天は出来るよね? さあ、罪滅ぼしのチャンスだよ」
隅で項垂れていたフリーダの前へと行き、手を差し伸べるシオン。
しかし彼女は尚も俯いて…。
「無理よ……、もう晴天の魔法は試したわ。あのおかしな雲がバリア見たいになってて魔法が空に届かないの! どうすればいいのよ…」
これは困ったな。
「ねえ、天気魔法ってどういうのなのよ? 魔法が届かないって呪文を唱えれば瞬時に天気が変わる、とかじゃないの?」
不思議そうに尋ねるレイラ。
「そこまで簡単な魔法じゃないんだよ。天気魔法っていうのは天候を変える魔力の塊を空に撃ちだして、上空の風や温度を変化させる魔法なんだ。恐らくあの魔力を帯びた雲が天候魔法の介入を阻害しているんだ。……天候魔法に攻撃力はない。微力な魔力でも妨害されちゃうんだ」
暗い表情でシオンは語る。
何とかあの雲を……、抜けれれば天気が変わるって事か?
「もう駄目よ、お終いだわ……。フロントは凍って私は犯罪者、どうしようもないのよ。……ごめんなさい、ごめんなさい!」
フリーダは辛そうに泣きわめく。
ここで諦めるってのも嫌だな。
後味悪いし、何よりフロントは無くしたくない。
……全部俺のものだ。
「まだだ、まだ完全に負けた訳じゃないぞ! 天気魔法は使えるんだろ? だったら協力しろよな。それにどんな間違いを犯してもやり直して正解を出せばいいんだ! ……大丈夫、俺も一緒にやり直すのを手伝ってやるよ!」
俺は胸を張って言うとフリーダに手を差し出す。
「やり直す……、でも天気魔法は届かない…」
「大丈夫だって、まだすべての手を使った訳じゃない。思い付きを全部試すぞ!」
俺は無理やりフリーダの手を引いて立ち上がらせる。
「天気魔法が届かないなら他の魔法で後押ししたらどうなんだ? 例えば風の竜魔法で押し上げるとか!」
俺は右腕で今だに輝く魔法陣を突き出して笑う。
「魔法で後押し、それならもしかして! やって見ましょう、金治君」
涙を拭ったフリーダは再びキリッとした表情に戻る。
やり直し開始だ!




