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ジャック・ポット・チャンス!~幸運転生者の異世界日記~  作者: 天勝金治
第六章 時計仕掛けのプリンセス
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第73話 ライバル登場?

 キャラバンから降りた時より天気が荒れて、吹雪いている。

 街には人影一つ見えない。


「ねぇシオン、明日にしない? ギルドに入って温かいスープでも……、グェ!」

 逃げようとしたレイラの襟元を素早くつかむシオン。

「早くしないと手遅れになっちゃうよ。……あれがさっき言ってた氷の城だね。アイツは妙に強情だから僕らが止めないとこの辺一帯氷の世界になっちゃうだろうな」

 ギルドの裏側から見下ろすと近くの山が氷の城になっていた。

 意外によく出来てるけど…。


「なんか小さくねぇか? それにあそこってずっと前にレイラとゴブリン退治した洞窟だよな。もしかしてあの城って外見だけなんじゃねーの?」

 シオンは頷いて答える。

「そうだろうね。流石に氷の中に住める人間はいない、本人はその洞窟の中だろう。アイツは魔法でもう僕らを監視してる筈だ、用心しながら急ごう」

 

 俺はレイラとローレンスの顔を伺う。

 二人とも怪訝そうな表情だ。

「なあシオン、そのお前が言うアイツってどんな奴なんだ? お前の知り合いなのか?」

 ローレンスが訪ねるとシオンは深いため息を付いた。

「ああ、そうとも言えるね。アイツってのは恐らくフリーダ・グランデス、エルフの里では天才的な魔法使いだったんだ。魔法学校ではやたらと僕に突っかかって来たナンバー2だよ」


「それってあなたのライバルって事? 凄いんでしょ?」

「いや、僕には全然届かないレベルだよ。ただ嫉妬してちょっかい掛けて来てただけだと思うし。戦ってもまず負ける気はしないよ」

 ああ、フリーダってのはシオンをライバル視してたのに全く相手にされてなかったと。

 コイツ結構きつい事平気で言うしストイックだからヘイトも溜まるだろうなぁ。

 そう言えば…。

「なあシオン、確かそのフリーダとか言うヤツ、俺たちを見てるとかさっき言ってなかったか? 魔法かなんかか?」

「ああ、自分の周囲の景色を見る索敵魔法があるんだ。彼女の職業は恐らくビジョップの筈だ、使ってきてるだろうね」

 シオンは真剣に答えた。

 ……それ、マズくないか?



「その魔法で俺たちを確認してて、天候を操る程度の魔法を使うんだろ? ……まさか攻撃を仕掛けてきたりは…」

「なっ、マズいぞ! みんな走れ…」

 シオンがセリフを言い終える前にソレは来た。

 空が一瞬輝いたと思ったらギルドの前に立つ俺たち目がけて氷の塊が降り注ぐ。

 俺たちは全力で前に飛び退く。


 ズガガガガガッ、バキバキバキィッ……‼

 間一髪避けれたが大きな氷の塊がギルドを半壊させた。

 中からは冒険者の叫び声が響く。

「ここにいちゃ街が崩壊しちゃうよ! 急いで外に出よう、フリーダを止めるんだ!」

「なんで私がこんな目に……、キャアァァッ!」

 俺たちは商店街に続く坂を転げ落ちるように駆け抜けた。

 すぐ後ろに氷の塊が隕石の様に落下してくる。

 シオンを狙ってるのか知らないがとにかく今は死ぬ気で走れ!



   --------



 街の外へ飛び出すと氷の砲撃は止んだ。

 振り返ると商店街はひどい惨状、人が外に出てなくて本当によかった。

 レイラじゃないけど何で俺までこんな目に…。


「な、なによあれっ! 雪の中から何か出て来るわよ!」

 レイラが指さす方、雪が盛り上がったと思ったらバキバキと氷の塊が出来上がって行く。

 それは歪だが人型になると目を赤く輝かせ、両腕を高く上げた。

「こ、コイツは『アイスゴーレム』だ! 雪を媒介に魔法で作られるモンスターだよ。マズいぞ、コイツは簡単に作れるくせに力が強く、砕いてもすぐ復活するんだ!」

 うろたえるシオン。

 なるほど、氷で出来た人形って訳か。


「おいローレンス、お前の武器と技ならアイツを簡単に倒せるんじゃないか? 氷属性は炎に弱いのが定石だろ!」

 俺が目配せすると片手で持った首は笑みを浮かべる。

「ああ、その通りだ! 行くぞゴーレム、『フレイムバーン』ッ!」

 ローレンスは魔剣に巨大な炎を纏い、巨大なゴーレムに切りかかった。

 爆炎と閃光を起こして一撃でソイツを粉々にする。

 アイスゴーレムの立っていた場所の雪まで溶けて地面が見えていた。



「やるわねローレンス! これなら雪のモンスターは楽勝ね! ……あら、シオンどうしたの? そっちに何か…」

 街の裏山、目的の洞窟への道。

 そこには無数の赤い光が吹雪の中で輝いていた。 

 まさかこいつ等全部…。

「マズいぞ、あの数を全部相手にしてたらいくらローレンスでも……、僕らが戦っても裏山に着く前に体力切れになっちゃうよ!」

 敵はどれだけいるか予想もつかない。

 それにこの悪天候に積もった雪で俺たちはまともに動けない。

 どうする…。


「ここで引く訳にもいかない。だがあの数を相手にするのは無謀だぞ! シオン、何か別の手はないのか? まさか正面から行くわけには…」

「ごめん皆、そのまさかしか選択肢は無さそうだよ。迂回しても相手は空から攻撃を仕掛けて来る。アイスゴーレムは雪があれば湧き出すし、街から離れれば野生のモンスターに出会うかもしれないんだ。何とかあのゴーレム軍団を突破するしかない!」



 マジかコイツ、真正面から行く気か。

 今回のシオンは何時になく焦って作戦も何もない、こんなのガリ勉キャラのアイツらしくないぞ。

 ここは何か……、おっ、この魔法は…。


「まあ待てよシオン。お前が何を焦ってるのか知らないが真正面から行くなんて脳筋戦法、俺たちの戦い方じゃないだろ。正面から殴りこむなんて無双ゲーでも物語でもないんだから馬鹿の所業だぜ。ここは俺達らしくズルをしようぜ!」

 俺は意味ありげに一枚のカードを取り出す。

「た、確かに無謀さ。でも正面から行く以外に方法は…」

「大丈夫、実質真正面から行くが戦闘は避けるぞ。この魔法を使えば出来るんじゃないか? マジックカード、『ディグディグ』ッ!」


 俺は七色に輝くレアカードを空に掲げて叫ぶ。

 残り1,2枚のマジックカードをここで使う。

 出来ればフェアリーテーブルで補充しときたかったんだけど忘れてたんだからしょうがない。

 カードは強く輝き、俺の両腕に金色の光が巻き付く。


「さぁ、俺らは奴らより一段下手に行くとしようぜ!」

 俺は光を纏った腕でローレンスが雪を溶かした地面を殴る。

 固い筈の土は豆腐のように柔らかくすくえた。

 地底探査に行くとしますか!



   --------



「そろそろいいんじゃないかな。この上あたりが裏山洞窟の筈だよ」

 ドリルの様に光を纏った腕で地中を掘り進む俺をシオンが呼び止める。

「そうか、じゃあ上に向かって掘り進めるぞ」

「えっ、もう出ちゃうの? 地中は暖かいし安全だしもう少しここに居ましょうよ。この作戦、金治らしいけど今回は最高に冴えてたし」

 ランタンを持つレイラは不安げに呟く。


 俺が今回使った魔法『ディグディグ』は腕に魔法を纏い、地中を掘り進める魔法だ。

 使える者はダンジョン攻略から工事現場まで重宝されるという上級魔法。

 この魔法さえ使えれば一生安泰とさえ言われてるんだとか。


「大丈夫、まさか相手は地面から出て来るとは思っていない筈だ。君も魔法使いなら分かると思うけど魔導士は接近戦に弱い。僕ら四人で囲めば難なく勝てるさ」

 シオンの言葉に俺たちは頷く。

「じゃあ一気に地上まで穴を開けるぜ。いっけぇっ!」

 俺が両腕を力任せに天井へ突き出すと簡単に土は吹き飛んだ。

 覗き込むとちょうど洞窟に入った辺りの場所らしい。

 外では吹雪いてるのが見える。



 俺たちは素早く穴から洞窟へと上がる。

「さあ奥に進もう……、いやそこまで深い洞窟じゃなかったね。フリーダ、そこに居るんだろ! 僕はシオン、お前の暴走を止めに来た!」

 シオンが洞窟の奥を指さして叫んだ。

 その瞬間、暗闇が青白い光で打ち消される。

 壁に掛けられたたくさんのランタンが一斉に輝き始めたのだ。


「やっと会えましたわねシオンさん。貴方が学園を去ってからこの日が来るのをずっと待っていましたのよ。さあ、どちらが真に優秀か決着を付けましょう!」


 洞窟の一番奥、氷に囲まれた王座に座る女の子。

 シオンより少し高いくらいの身長で濃い青のドレス、銀髪で縦ロール、色白の肌でエルフ特有の長い耳。

 堂々としたその風貌はいかにもお嬢様と言った感じだな。

 コイツがそんな凄い魔法使いなのか?




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