第70話 召喚、大妖精アルカナディア
俺たちが転移魔法で街へ入るとそこは戦場だった。
ワイバーンが防御壁の中を飛び回り、それと戦う冒険者や警備兵。
「おーいッ、お前たち……、って金治とギンガ凄い光ってるな! こっちは警備兵総出で応戦してるがもう限界だ。打開策は……、妖精魔法は見つかったのか?」
正門を潜った辺りで戦っていたデニスが駆け寄って来る。
「うん、保証はないけど僕らなりの答えは出したよ。今からこの街で妖精魔法を発動する、だからもう少しだけ踏ん張って!」
シオンの言葉に合わせて俺たち三人も頷く。
「それなら大丈夫だな。一丁前に覚悟を決めた顔、してんじゃねぇか。ここは任せとけ! でも防御壁も限界が近い、急いで行きな!」
デニスの声援を受けて俺たちは街へ駆け出す。
妖精魔法が発動しなかったら、俺たちの答えが間違ってたらこの街は予定調和で魔王軍の侵略によって滅びることになるだろう。
……見てるんだろ、トラブルメーカーの女神様。
転生者が未来を変えるぞ!
正門から真っ直ぐ、中央広場にたどり着くとそこではレイラたちが戦っていた。
「金治、シオンッ! やっと戻って来たわね、このワイバーンとか言うヤツ全然魔法が効かないのよ! ローレンスがいたからよかったけど」
駆け寄って来る三人。
「ど、どうだったんだ? 妖精魔法ってのは使えそうなのか?」
「ああ、それを使うために俺たちは戻って来たぜ! 絶対大丈夫さ!」
俺は自信を持って答える。
「そうだ師匠、妖精魔法を使うには人数がいるの! この街中が魔法陣になってるの、発動するのを手伝って!」
ワカバがダニエラの手を引っ張る。
それに対し、少し考えてから…。
「なるほど、フェアリーテーブルの区画が古から変わってないのはそのせいね。そんな昔に描かれた魔法陣が今さら使えるかどうか……。考えてる暇はないわよね」
ダニエラは後ろへ下がると振り返って…。
「街が魔法陣なら防御壁が張られてるまま発動は出来ない筈、私が解除するわ。だから妖精魔法を発動するのはレイラ、貴方がやるのよ!」
不安気に話を聞いていた魔法使いを指さした。
「ほへっ、私!? 魔法陣なんて使ったことないわよ。私に出来るものなの?」
「大丈夫よ、魔法陣って言っても新しく描く訳じゃなくてもうある物を使うわけでしょ? だったらその杖を地面に突っ立てて魔力を込めるだけでいい筈よ」
笑顔で励ますダニエラの姿こそ子供なのに凄く頼れるものを感じる。
レイラは大きく深呼吸すると…。
「わ、分かったわ。私やって見る! 今度こそ私に任せなさい!」
覚悟を決めたようだな。
「大丈夫なのかよ、お前そんなに強くはねぇんだろ? 魔力不足で発動しませんはなしだぜ」
銀色に輝くギンガは呆れてため息を付く。
「レイラなら大丈夫よ。意外に大きな魔力を秘めてるわ、この子。……それより何でアンタがここにいるのよっ! 逃げ出したんじゃなかったかしら?」
今更ギンガに気が付いたのかざわつく三人。
いろいろ言ってやりたいとこだけどそんな暇ないよな。
「いろいろあってコイツも今は仲間にしたんだよ。そんな事より早く魔法陣を使おうぜ」
「ごめんねみんな、この馬鹿のせいで話がめんどくさくなってるけど今は深く聞かないで! 一通り僕が説明するからよく聞いてね。まず妖精魔法は…」
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「危ない金治、避けるんだッ! セイヤァッ!」
正面から迫って来たワイバーンを炎の魔剣で真っ二つにする。
「助かったよローレンス。しかしやたらこの辺は敵が多いな」
「う~む、金治がそんなに光ってるから寄って来てるんじゃないのか? まあ仕方ないのか……、ほらあそこが目的地だろう」
俺とローレンスは正門から見て右側にある広場、シグロスモール前に飛び出す。
にぎわってたショッピングモールも今は人の影はなく爆発音とワイバーンの咆哮だけが響き渡っている。
……因みにこの金色の光は消し方は分からない。
「よし、後は防御壁が解除されたら発動の合図だったな。……そう言えば町全体の魔法陣何かを発動させて俺たちや地下に隠れた街の奴らは大丈夫なのか?」
「大丈夫らしいぜ。シオンによると魔法陣から直接攻撃が飛び出す訳じゃないみたいだし。……来たみたいだな、壁が消えるぜ」
街を覆っていた防御壁が点滅し、消えた。
俺は急いで丸い広場の中心へ立つ。
魔法陣の使い方はまず紙にでも地面にでもいいので術式を描く。
そしてそこに魔力を送り込むだけだ。
やり方は魔法の杖か素手で魔法陣を触って念じればいいらしい。
俺はしゃがむと片手を広場の中心に押し付けた。
「魔法陣、発動だァッ!」
強く念じると俺の体を包んでいた金色の光が腕を伝って地面に吸い込まれて行く。
体の光が完全に消える。
シュパァァァァァァッ‼
一瞬の間を置いて俺のいる円形の広場が金色に輝き、複雑な模様を浮かび上がらせた!
広場の光が道を伝う様に街中へともの凄い勢いで伸びて行く。
「す、凄い! これが妖精魔法なのか!?」
俺の力じゃないだろうけど、自分で大魔法を使った気分になっちゃうよな。
ローレンスが遠くから手振って何か叫んでいるが魔法陣の音が凄くて聞こえない。
答えようと俺も手を振ったその時、足元の光が一層強さを増して視界が消える。
何も見えない光の中、体がフッと軽くなった?
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「金治見ろよッ! スゲー事になってんぜ!」
街の反対側に居る筈だったギンガの叫び声が聞こえる。
「何時まで目を瞑ってるのよ! 僕らは妖精魔法を成功させたんだよ!」
「ワカバ、ギンガ……? 何でここに……、うわぁッ、なんじゃこりゃ!?」
目を開けると周りには一面の星空。
ふわふわした不思議な感覚だ。
足元だけ金色に光っていてはるか下には輝く魔法陣……、いや違う。
あれはフェアリーテーブルの街じゃないか!
魔法陣では広場の間が光で繋がり、大きな星が輝いているように見える。
これが『5つの勇気で魔道の星を大地に描け』って奴なのか。
周りにワカバとギンガ、それにシオンとレイラも空中で光の上に立っている。
「やったね金治! 僕らの答えは合ってたんだよ。もう街の中に居たワイバーン軍団は吹き飛ばされたみたいだ、後は周りの奴らだけだ!」
興奮して叫ぶシオンは今までになく嬉しそうだ。
「見て! 魔法陣の光が強くなってる、何か出るわッ!」
レイラの声で下を向くとちょうど魔法陣が最大級の光を発した。
フェアリーテーブルの街、巨大な星を基本とした魔法陣から光の塔が俺たちのすぐ下まで伸び、スライムの如く形を変えて行く。
どんどん人型っぽく変形して行くと一つの形で止まった。
「な、何かしら……、凄く綺麗。女の人よね…」
光の巨人は美しい女性の形へとなり、俺たちを見上げて微笑んでいる。
全て一色の光だが長髪にローブ、背中には大きな羽のようなものがついていた。
「これが妖精魔法の正体だったんだ……。古代の時代に封印されて、街を守るため悪しき者に立ち向かう勇気に答えて召喚された。この巨人こそ『大妖精アルカナディア』!」
シオンの声に思わず唾を飲む。
この世界樹以上に巨大なこいつが大妖精アルカナディアか。
デカすぎるだろ…。
その時、世界樹から黒い光線が俺たちの前方へと飛んで来た。
「ハーハッハッハッ、見せていただきましたよあなた方の奇跡を! これが妖精魔法、なんと美しい! 是非私と一つ勝負していただきたい!」
空中を浮遊し、今までで一番楽しそうなヴァイロン。
仲間たち四人の顔を見回すが誰一人として臆してるヤツはいないな。
「ヘッ、望むところだぜ! 俺様の……、いや、俺様たちの妖精魔法を見せてやるぜッ!」
ギンガの叫びに俺たちは頷く。
ヴァイロンはローブの中から一冊の本を取り出してページを捲った。
「流石私の見込んだ勇者たちですね。こちらも最大のしもべを出させて頂きます。星々の輝きを纏いし伝説の竜、我が呼びかけに答えよ! 『ギャラクシードラゴン』召喚ですッ!」
本の見開きをこっちに向けて彼が叫ぶと凄まじい閃光が発生する。
その閃光と共に本の魔法陣から出現したのは巨大なドラゴン。
黒い体には銀色に輝く無数の星が輝き、その名に恥じない圧倒的な存在感を放っている。
グォォォオォォオオオッ……‼
巨大なドラゴンは雄たけびを放つと口の中が輝き始めた。
そのまま口を開けて放たれた白銀に輝く光線。
はるか上空に居る俺たちにまで衝撃波が来る凄まじい威力だ。
その光線が大妖精に突き刺さる……、事はなかった。
光の巨人に当たる直前で謎のバリアみたいなものが輝き、光線を弾いたのだ。
「なっ、ギャラクシードラゴンのブレスは最強の攻撃である筈……。伝説は伊達じゃなかったって事ですね」
清々しい笑みで呟くヴァイロン。
「凄いでしょ、僕らの魔法は! さあ、今度はこっちの反撃よね!?」
「さあみんな、強く念じるんだ! 魔法はイメージ、召喚魔法を操るのは召喚者のイメージ、つまり僕たちの役目だ!」
シオンの言葉で俺たちは身構える。
伝説の妖精魔法、大妖精アルカナディアの力をアイツに見せてやるんだ!
「いっけぇぇぇッ! ドラゴンをぶっ飛ばせッ‼」
光の巨人、アルカナディアは右手を後ろへと引くと力強く掌をギャラクシードラゴンに突き出した。
その手が強く、さらに強く輝き聞こえないほどの爆音を響かせ極太の光線が発射される。
光り輝く、金色の光線は巨大なドラゴンを軽々飲み込む。
夜空を突き破るかのように世界樹の上を掠めて地平線の向こうまで跳んで行く。
それは一瞬の事だった。
「なっ、なんつー威力なんだ……。あのビームどこまで行きやがったんだよ。さっきのバカデカいドラゴン消し飛んでるし…」
ギンガが呟く。
唖然として言葉も出せない。
封印されてた理由が分かった気がするなぁ。
それより…。
「ほ、ほら、ついでに街の周りにいるワイバーンも吹き飛ばそうぜ! ……なるべく弱めの技で安全に…」
「そうだね……、みんなもう一回念じるんだ。戦いを終わらせよう!」
再びシオンが指揮を執る。
大妖精が今度は祈りでも捧げる様に手を組み合わせた。
……聞き取れないけど何か呪文のような物を呟いてるのか?
かと思ったら腕を素早く交差させ、両腕を高く掲げる。
その瞬間街の周囲から光が噴出し、ワイバーンどもの断末魔が……。
「も、もういいわよね!? 敵は全滅よ? あのヴァイロンとか言うのは大丈夫って言ってたわよね?」
震えながら訴えるレイラ。
他のみんなも恐怖の表情だ。
気持ちはよ~く分かるぞ、俺もスッゲェ怖え。
「だ、大丈夫みたいだね。じゃあみんな魔法を終了するように念じるんだ! 誤爆しない内に大妖精を戻すんだ!」
俺たち五人は慌てて強く願う。
……頼むから早く戻ってくれ!
大妖精アルカナディアは俺たちに一瞬微笑むと薄くなって消えた。
俺たちはゆっくりと下降して行く。
どうやらフェアリーテーブルを守れたみたいだな。
防衛クエスト、完全攻略って言ったところか。
俺たちが下りて行く先、中央広場ではたくさんの人々と仲間が手を振っている。
魔法陣の光が消えるとともに偶然かなの必然かなのか。
太陽の光が地平線から差し込んで来た。
日の光に照らされた仲間たちの顔は勝利の喜びに満ちている。
……もちろん俺もな!




