第68話 お前に奇跡を見せてやる
ギンガが何度吹き飛ばされてもめげずに魔槍で殴り掛かる。
俺も諦めずに分身を盾にし、短剣で切りかかった。
しかしその全てをヴァイロンは軽く避けて時に防いで見せる。
「クッソッ! おいワカバ、魔法陣はまだか!? 俺様の攻撃は全く効かねぇ!」
「なに偉そうに報告してんのよ! いくら描いても全然発動しないわ。もうちょっと試して見るから頑張って!」
ここまでの戦い、実力は大人と子供。
続けたところでらちが明かない。
ヴァイロンは魔法使いだ。
それでいてドラゴンだからか悪魔だからか知らないが勇者ワタルより筋肉質でゴツいギンガすら片手で吹き飛ばすパワーを持っている。
何か弱点は、隙はないのか?
このイケイケムードの内に何とか状況を変えないとお終いだ。
チャンスを逃したら次があるかどうかすら分からねぇ!
……そう言えば魔法って言えば俺が初級魔法を初めてカードを使って撃った時。
ならば…。
「よし、この作戦に賭けるぜ! おいヴァイロン、次の攻撃でお前を倒す! 最大魔法でも使って抵抗してみることだな!」
俺はヴァイロンを指さし宣言する。
賭けると決めたら全力で行く、それが俺流だぜ。
「な、何言ってやがるんだ! ここまでアイツにはかすりもしてねぇんだぞ!」
「魔法陣は発動しそうにないのよ!? 強がりなんか言ってカードももうないんじゃ…」
不安気な二人の声を背に相手と向かい合う。
「フフフッ、いいでしょう。私の得意呪文の中で最大のものをお見せいたしましょうか。ですが貴方は疲れが見えてボロボロ、そんな状態で何が出来ると言うのです」
確かに俺は転げ回ってるうちに服は汚れてボロボロ。
体力も限界寸前だ。
でも…。
「ヘッ、悪あがき強がりは俺の得意技だぜ! 今お前の元に行ってやる!」
俺は直ぐにスタート出来るよう身構え、ヴァイロンも両手で杖を掲げた。
自力で使える魔法は体力的に一発、分身も残り2,3体。
これをフルに生かす。
「楽しい時間もこれでお終いですか……、名残惜しいですが仕方ありません。あなたの足掻きを見せて見なさい、『ダーク・ヘル・メテオ』ッ!」
厨二病っぽい呪文を叫んだヴァイロンの頭上に巨大な闇が渦巻く。
狙い通り直線的な攻撃魔法で来てくれたな。
「分身集合だッ! 行くぜ、『ワン・モア』ッ!」
「受けて見なさい、これが最大の闇魔法ですッ!」
俺は光に包まれると巨大な闇の塊に向かって突っ走る。
後ろで仲間の悲鳴が聞こえるがそれも笑いに変えてやるさ。
キュィィィィン、ドゴォォオォォ!
闇の爆発に光を纏って飛び込む。
バリアが砕けて、激しい閃光を巻き起こす爆発をバックにヴァイロンの前へと飛び出した。
「いっけぇ、魔法を撃った後の今がチャンスだッ! お前は反動で動けない!」
俺が叫ぶとヴァイロンに切りかかる。
「フッ、甘いですよ! その程度の小細工、私にはドラゴンの力があるのです! ……なっ、なんですとっ!」
短剣片手に切りかかる俺を鱗に覆われた左腕で振り払うと煙のように消滅する。
分身に翻弄されて隙だらけだ。
俺はすかさず地面を蹴ってヴァイロンに体当たり。
押し倒したソイツに馬乗りになると短剣を喉元に押し付ける。
「どうだヴァイロンッ! 俺の勝ちだ、いくら悪魔でもドラゴンでも首を切られたら終わりだぜ!」
静まり返る戦場。
静寂を切り裂く様にヴァイロンが笑い声を上げた。
「フフフフフッ、ハーハッハッハッ! これは驚きましたねぇ、まさかこの私を追い詰めるなんて。……ところで何故あなたは私に止めを刺さないのです? 私の力なら一振りであなたを振り払う事も出来るのですよ」
俺はヴァイロンの上から立ち上がると短剣を鞘に仕舞った。
「どうせお前はコレで降参だろ? 何となくだけどお前はそんなに悪い奴に思えないんだよなぁ」
俺は倒れているヴァイロンに片手を差し出す。
「俺の仲間にもいるぜ、金が大好きなヤツ、勉強好きのヤツ、剣を振るのが好きなヤツ。お前はただ魔法が好きなんだろ? 今から俺は奇跡を起こすぜ! 見て行けよ、俺たちの妖精魔法を」
差し出した手を掴んでヴァイロンは微笑んだ。
「面白い、私は悪魔ですよ? それを信じると言うのですか。……是非見せていただきましょうか、伝説の妖精魔法! 貴方なら出来る気がします、何となくですけれどね」
よかった、上手く行った!
もし短剣を首に振り下ろしても俺の力じゃ刺さりすらしない気がしてたんだよな。
それにやっぱし俺の『何となく』は宛になるなぁ。
ヴァイロンと並んで立つとギンガとワカバも駆け寄って来た。
「お、おい、お前なんで四天王と仲良くしてるんだよ!? これでいいのか?」
「戦いはコレでお終い……。ね、ねぇ金治、ソイツ大丈夫なの?」
ビビッて引け腰の二人にヴァイロンが進み出る。
「ええ、戦いは終わりです。金治が言いました、妖精魔法を見せてくれるとね。あなた方が街をドラゴン軍団から守れるのか、はたまた妖精魔法はただの伝説なのか、私の目で見定めさせて頂きます」
呆れ気味のワカバに頭をかきむしるギンガ。
「ああ、もう! これで妖精魔法が結局発動しなかったらどうすんだよっ! 四天王はついて来るし意味分かんねぇ! こうなったら自棄だ、どうにでもなりやがれ!」
「安心しろよ、俺の仲間のシオンはスゲェんだ! きっともう頂上で妖精魔法の答えを見つけているさ。ほら、上に進もうぜ!」
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俺が上に続く枝に進もうとした時、突然背後が光った。
最初にヴァイロンが壊した壁画前の地面が2か所、金色と銀色に強い光を放っている。
「な、確かあそこって魔法陣を描いた……、って何!?」
ワカバの叫びへ答える様にその地面から金と銀、二つの光が飛び出した。
シュィィィィーン……。
その二つは弧を描いて俺たちの方へと高速で飛んでくると…。
「うわっ、何なんだコレ!?」
「うぉい、どうなってんだ!?」
俺とギンガに直撃した。
一瞬眩しい光に視界を覆われたが何ともない。
ダメージを受けた感じもしないし、状態異常と言うわけでもステータスが変化した感じもないな。
ただ俺の体が金色に、ギンガの体が銀色に輝いている。
「なんだこの光、なんともないけどただ光ってる……。これが出て来たのって俺とギンガが描いたあの魔法陣か?」
「お、おう、そうみたいだな。しかしなんでこのタイミングで発動したんだ? 妖精魔法ってただ体を光らせるだけなのかよ」
うろたえていると魔法陣を確認しに行ってたワカバが戻って来た。
「確かにあなたたちが描いた魔法陣から出たみたいよ。僕が描いた魔法陣には何も変化がなかったけど君たちのは薄く光ってた。……でもなにかしらこの魔法?」
俺たちが騒いでいるとヴァイロンは驚愕して立ちすくんでいる。
震えながらやっと言葉を発した。
「た、太陽と月……? いやそんな訳は……、妖精魔法を発動したというのか? ……金治、早く頂上に行ってみよう。その光が妖精魔法の鍵を握っているかもしれない、君の仲間は優秀なんですよね?」
俺たちは頷く。
「ああ、早くシオンにコレを見せよう。妖精魔法が発動したんだ!」
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俺たちはヴァイロンと共に世界樹を駆け登った。
頂上の遺跡らしい部分に着くと独り言をブツブツ言いながら壁画を見回しているシオンが見える。
「この魔法陣は……、いやこれがこう…」
「お~い、シオン! 妖精魔法の謎は解けたか? こっちは何か光るようになったぜ!」
俺が大声で呼んで駆け寄るとシオンは驚いて振り返る。
「君たちまさか四天王を倒し……、はぁ!? 何でソイツがここにいるんだよ! それに金治たち無茶苦茶光ってんだけど何!?」
「いや、なんか魔法陣から光が出てな。あとコイツは妖精魔法の見物するってさ」
「ごめん金治、頭が痛くなって来たよ。僕は帰ってもいいかな…」
頭を押さえて深いため息を付くシオン。
「ちょっと金治、その説明じゃなにもわかんないでしょ! 僕が説明するよ、実は…」
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シオンとワカバがむつかしい魔法学の世界に入ってしまったので俺とギンガはヴァイロンと共に頂上の遺跡を見て回る。
「この辺は特に壁画が多いな。シオンの後ろにあった奴が目的の魔法陣だとしてこの辺は何が描いてあるんだ?」
俺が何気なく呟くとヴァイロンが楽しそうに答える。
「ここには妖精について書かれていますよ。妖精は自由と楽しさを愛した魔界の種族、妖精魔法は妖精召喚の魔法とありますね」
壁画の一か所を指さして読み上げる。
俺とギンガは思わず顔を見合わせるほど驚いた。
「なっ、オメェこのウニョウニョした文字を読めるのかよ! それに妖精が魔界の奴だってそんなの呼び出したらマズいんじゃねーのか!?」
「全く、失礼ですねぇギンガ君。魔界に住むもの全てが悪人ではないのですよ? 一部は魔王軍として地上侵略を狙っていますが大半は自由に暮らす種族なのです。中には人間と共存する魔族も居ますしね。……第一、魔族が全部悪だと言うなら魔界への扉を開ける魔法陣や召喚魔法は成り立ちませんよ」
魔族全体が魔王軍って物かと思ってたが違ったか。
確かに魔法陣は魔界へ入口を繋ぐ魔法だって言ってたもんな。
「へぇ、って事はヴァイロンみたく魔王軍に居る奴らは自分の意思でやってるって事か。じゃあ妖精は敵じゃないんだな」
「そうですね、私は魔王軍に入れば普通では見れない魔法の資料が見れると言う事で入りました。本当に人間へ憎悪を持つ者は少ないでしょうね。……因みに私は妖精文字を読めるのではなくこの遺跡の文字は殆ど覚えてしまったのですよ。研究段階でかなり調査しましたからね」
このデカい遺跡の文字全部って凄いな。
ヴァイロンは本気で妖精魔法を手に入れようとしてたんだろうなぁ。




