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ジャック・ポット・チャンス!~幸運転生者の異世界日記~  作者: 天勝金治
第五章 世界で一番大きな魔法
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第63話 絶望の訪問者

 俺たちが泊まっているレディオホテルの地下にある酒場。

 決闘の勝利を称えて仲間内で乾杯していると次々に決闘を見ていたと言う人々が集まって来た。

 俺の奢りだとか言い出すヤツも現れてオシャレな酒場はもう大騒ぎだ

 

「よう、詐欺師退治のお次は決闘とはお疲れさん! しかしまたスゲェ騒ぎだな」

「デニスさん久しぶりね! お陰様でなんとか勝ったけど等の金治はあのザマよ。ミーハーな元ギンガのファンだとか言う女どもが今度は金治のファンだってほざくのよ!」

 何故かご機嫌斜めのレイラは剥れて俺の方を指さして来る。

 俺はテーブルの上から飛び降りると…。

「ちょっとごめんね、仲間のとこ言って来るよ! おいおいレイラ、あのザマは無いだろ。お前も助かって嫌なヤツには仕返し出来た。ローレンスもああ何だからいいじゃん」

 さっきまで俺に黄色い歓声を上げていた女の子たちに手を振って酒場の隅で不機嫌になってる仲間の前へと行く。

「もっと勝者らしくシャキっとしなさいよね! 仲間として恥ずかしいわよ、あんな連中にデレデレしてさ。ほら、ミーハー女にローレンス取られちゃうかもよ! 今日勝てたのも8割方彼のお陰じゃない!」

 ローレンスにも結構ファンがついたらしい。

 まさか仲間がそんなのに取られるわけ……、と思ったがアイツ首を抱きしめられて至福の笑みを浮かべてやがる!

 ……少し心配になるじゃないか。

「だ、大丈夫よ! ローレンスは私たちの仲間じゃない! それに少しはギンガと戦ってくれた事、感謝してるんだからね……、ありがと」


「おーい、金治! 紹介するよ、こいつ等は僕の研究者仲間なんだ」

 シオンが白衣を着た二人のエルフを連れて駆け寄って来た。

 二人のエルフはどちらもシオンより頭一つ分背が高い。

「始めまして金治君、君たちの決闘見させて貰ったよ。流石シオンが認めた冒険者だ、勇気、閃き共に素晴らしかった!」

「ええ、私も感動したわ。シオンがあなたの仲間になったのも納得しちゃうわ、悔しいけど」

 俺は二人のエルフと握手をする。

「へぇ、君たちがシオンの昔の仲間なのか。って事はシオンって研究者?」

「あれ、聞いてないのかい? シオンは僕らとマジックカードの初期型を研究していたんだよ。エルフの里で魔法学校に通いながら僕らの研究を手伝ってくれてね、とても優秀なんだよ」

「そうよ、シオンは超難関の魔法学校で主席だったんですから! それなのに名を上げて無宗教でも世界一の僧侶になれることを証明するんだって言って学校を中退して旅に出ちゃうんだからまた凄いのよ。かっこいいわぁ」


 そう言えばシオンの過去とかなんにも知らなかったな。

 冒険者は自分の過去に興味がない物だって聞いたけど、本当に仲間の過去すら俺は何一つ知らない。

「シオン、お前って凄かったんだな」

「まぁね! 初めて会った時にも言っただろ、エルフの中でも特別優秀だって!」

 腰に手を当て、誇らしそうに笑みを浮かべた。


 考えてみると俺の仲間って凄いな。

 伝説の騎士に魔法学校の首席と来たぞ。

 ……と、言う事はこのレイラももしかして凄い過去が…。

「見なさいよ金治、デニスさんが高いお酒奢ってくれるってよ! ううん、いい香り」

 ひと際美味しそうにお酒を飲むレイラ。

 うん、凄い過去なんてコイツにだけは無さそうだ。



「ほら、金治君も一杯いかがかな? 今年の初物だぞ」

「ありがとうデニスさん! ……うん、見た目はアレだけどしつこくなくて旨いな」

 木製のジョッキに注がれた青いお酒を飲んだが美味しい。

 アルコール強いものは苦手な俺も余裕で飲めるフルーティな味わいだ。

「そう言えばデニスさんって最近見なかったけどどうしてたの? 事件?」

 デニスは警備兵の仕事をしている。

 彼が出動するのはモンスターが街の近くに出現したときや街に犯罪者が現れた時に逮捕するなど警察の様な役割も担っているのだ。

「いや、大したことじゃないさ。この街の侵略を目論む魔王軍が近づいてる噂があってね、街の周りを調べたけど特に異常はなかったよ。それにこの街はダニエラ様が守っていてくれるしな」

 少し悩んだが彼は笑って答えた。

 ……嫌な予感がすること言うなぁ。

 フラグになったらどうするんだよ、まぁ大丈夫だろうけどさ。


「そう言えばダニエラって50年前の勇者パーティとか言うのの一人だよな。アイツ、見た目は子供だけど本当に強いのか?」

「おいおい、彼女を舐めてると痛い目にあうぞ。ダニエラ様含む当時の勇者パーティはこの大陸中の精鋭を王都に集めて、その中からさらに選び抜かれた四人で結成されたそうだ。実際、この街をモンスターから幾度となく守ってくれたことがある。彼女がいればこの街はあんぜ……」




 ドゴォォンッ、ゴゴゴゴゴゴ……。

 デニスの話を遮る様に突如、酒場全体が激しく揺れた。

 あちこちから悲鳴が飛び交う大参事だ。

 ……何でこうタイミングよく次の事件が起こるんだよ。


「な、何よ地震かしら!? お酒がこぼれちゃったじゃない!」

「この辺には火山とかは無いし地震なんて起きたことも無い筈だよ! それにこの揺れ、ただの地震じゃない!」

「うむ、外の方も騒ぎになってるみたいだな! モンスターか?」

 思い思いに宴を楽しんでいた仲間たちも駆け寄って来た。

 ……ああああ、もう嫌な予感しかしねぇ。

 俺は決闘後で疲れたし眠いんだから明日にしてくれよ…。


 デニスは急いで荷物を持つと立ち上がり俺たちを呼ぶ。

「どうやら緊急事態みたいだ。金治君たちも一緒に来てくれ、人手が必要かもしれない!」

 俺たちは頷くとデニスの跡に続いて地上への階段を駆け上がった。



   ---------



 地上に出るともの凄い光景が広がっていた。

 街を覆う様に出ていた光の幕が輝き、それの外で次々に爆発が起きている。

 空をよく見ると無数の数の何かが街を囲む様に飛行して火炎弾を街に向かって発射していた。

 その何かは俺も見たことがある生き物だ。

「あ、あれはドラゴン! もしかしてデニスさんが言ってた魔王軍って奴じゃないのか!? ……何でこんな目に合うんだ」

「ああ、恐らくそうだろう。まさかこんなに早く襲撃を仕掛けて来るなんて……。クッ、ここで悔やんでも仕方ない! 街の正門へ急ぐぞ!」


 街の大通りも広場もパニックになった人々で大騒ぎだ。

 上空に張られた防御壁が守ってくれているがアレってずっと耐えられるものなのか?

 とにかく俺たちはそんな街の中を駆け抜けた。




 正門へ近づくとちょうど門が爆破される。

 吹き飛ばされた門から飛び出すとそこには沢山のドラゴンが囲んでいた。

 その中心で俺たちと対峙したのは黒いローブに身を包んだ長髪の男。

 一見ただの痩せた男だが顔の左半分と片腕がドラゴンの鱗のようになっている。

 ローブの下も半分は鱗なのか?


「フフフ、無謀な冒険者諸君、私たちはこの街を滅ぼすつもりで来ました。おとなしく降伏しなさい、……と言っても聞きませんよね?」

 見た目的にも魔法使いなのか冷静で知的な感じの奴だな。

「聞く訳ないだろ! お前たちは魔王軍だな!? 直ちにこの街から離れるんだっ!」

 毅然とした態度でデニスは叫ぶ。

 だが鱗の男は微笑んで余裕層に続ける。

「そうですか、でもこのドラゴン軍団を前にして戦えますか? 無謀でしょう。いくらこの街の防御壁が丈夫と言っても一晩も攻撃を続ければ壊すことは可能です」

 あくまで余裕そうなソイツは高ぶることなく淡々と話す。

「ですが流石に一晩攻撃を続けるのはめんどくさいものです。……そこで私たちと交渉をしませんか? この街に東の勇者なる者が訪れていますね。その者の身柄を引き渡しなさい、そうすれば我々は攻撃を止めて引き揚げましょう」



 ……随分親切じゃないか、魔王軍って。

 あのろくでなし勇者を引き渡せばこの街を見逃すって言うのだ。

「なあ、ギンガってどこにいるんだ? とっとと差し出して帰って貰おうぜ」

「そうよね、あんなのでも一応勇者な訳だし街の為なら自分から行くでしょうし……。ところでアイツはどこに行ったのかしら?」

「金治との決闘で気絶するまでは見たけど……、その後僕らが帰った時にはいつの間にか居なくなってたね。どっかに逃げたんじゃない?」

 あの自称チート主人公、逃げやがったのか。

 決闘で負けたら俺の言う事何でも聞く約束だったんじゃねーのかよ。


「どうするんだ金治、あの男には出直して来てもらうしかないんじゃないか?」

 ローレンスの言葉に俺は頷き一歩前へ進み出る。

 そうだよな、アイツ無茶苦茶強キャラ感出してるもんな。

 俺たちが戦ったら間違いなく死んでしまう、ここはお引き取り願おう。

「あの、魔王軍さん? 今あのろくでなし……、じゃなくて東の勇者はどっか行っちゃってるんだよな。次来た時にはちゃんと捕まえておくから出直して来ていただく訳には…」

 俺が縮こまってゴマをするように申し出るとその男は少し考えて…。

「そうですか、今は居ないと。フム、出直してもいいのですが……、あなたたちが匿っている可能性もありますねぇ。それに勇者の居場所を知らないのならあなた方は用なしです」

 そう言って鱗の付いてない方の腕で持った大きな杖で俺たちの方を指す。



 ……え、コイツ今俺らは用なしだって言ったか?

 それってヤバいんじゃ…。

「最後に私の名を教えて差し上げます。私は魔王軍四天王、魔導士ヴァイロンと申します。以後お見知り置きを……、と言いたいところですがあなた方にはここで死んでいただきますね。やりなさい、ドラゴンどもよ! あの冒険者を焼き払うのです!」


 四天王ってこのタイミングで来るかよ、俺はまだレベル10なんだぞ!

 ヴァイロンの声と共に俺たちを囲んでギャーギャー飛んでいたドラゴンが一斉に口を赤く光らせる。

 もう逃げ場もないじゃないか…。

「みんな、僕の近くに集まって! 一旦逃げるよ、『テレポーテーション』ッ!」

 突如すぐ後ろに居たシオンがカードを掲げて叫ぶ。

 俺たちは光に包まれて空中へと高速で飛び出して行く。

 それと同時に俺たちが立っていた場所が炎で覆いつくされた。



 夜空を光の矢となって飛んで行く俺たちはあっという間に街の入口から離れて山の上に佇む、派手な装飾の城の前へと降り立つ。

 ワカバたちの澄む魔女の城だ。

 振り返るとフェアリーロビーの街を覆った防御壁はドラゴンの炎を撃ち込まれるたびに強く輝きを放っている。

 俺たちを追いかけて来る気配はない。


 一目でわかるよな。

 本当の本当に今回は俺たちじゃどうしようもない大参事だ……。

 何でいつもこうなるんだよ。




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