第62話 決着、お仕置き完了!
ローレンスは伝説の騎士、そして今はアンデッドモンスターデュラハン。
面白半分で彼をカードに出来てしまったというのは秘密だ。
「な、なぁ金治……、ソイツってお前の仲間なんじゃねーのか? なんでカードから出てくんだよ、これは一対一の決闘だろ?」
なんかギンガは驚いてる。
「お前だってモンスター召喚しただろーが! コイツは俺の仲間だが分類はれっきとしたモンスターだぜ、もし俺にケチつけるんなら先にモンスターを召喚したお前の反則負けだぜ」
「そうだな、ロックリザードが許されるんならデュラハンの俺も問題よな」
俺たちがニヤニヤしながら言い返すとギンガは悔しそうな表情を浮かべた。
してやったりって感じで爽快だな!
「よしローレンス、あの岩トカゲをやっつけるんだ!」
しかし彼は不安げにこっちを振り返る。
「それは難しくないか? あのロックリザードはあんまり動かないが本当に固い皮膚を持ってるんだ。俺の剣でも切れるかどうか…」
「分かった分かった、俺もアポートするから行くぞ!」
俺が左腕を突き出すとローレンスは察したのかニヤリと笑う。
「行くぞロックリザード! お前を弱くするぜ、ダイスロールッ!」
『ダイスの腕輪』から取り出したサイコロを岩トカゲに投げつける。
跳ね返り、転がって出た目は6。
うん、予定調和の最高の出目だな。
「くらえっ、ティヤァッ!」
赤く輝いたロックリザードを炎を帯びた魔剣の一振りで上空へと吹き飛ばした。
「な、なんだそのパワーはっ! ってこっちに来んなぁぁあ!」
見事自分のモンスターに潰されたギンガに背を向けて俺は観客の声援に手を振って答える。
いや、もうコレ俺の勝ちだろ。
「やるじゃない金治、でもなんかアイツらまだやる気みたいよ!」
レイラに言われて振り返るとブチ切れたギンガが立ち上がっていた。
「おいおい、まだやる気かよ。降参した方がいいんじゃねーか? いくらチート主人公でも伝説には敵わないぜ!」
「テッメェ……、マジでキレたわ。行けロックリザード、アイツらをぶち殺さねーと俺がお前をぶっ殺すぞ!」
態勢を立て直した岩トカゲが俺たちの方へと突進を始める。
「お、おい金治どうするんだ? やっぱり吹き飛ばしたくらいじゃアイツ死んでないぞ!」
「まあまあ、慌てんなよ。ギンガはブチ切れてるしあのトカゲは突進しか能がないデカブツだぜ。取りあえずアレを避けたらこのカードで沈めてやるよ」
俺とローレンスは横へ走り突進をかわす。
狙いを外したロックリザードは地面を転がった。
「なにをやってるんだ! とっととその雑魚を捻りつぶせっ!」
「おいおい、そんなに俺に近づくと危険だぜ? ……召喚」
俺は地面にカードを伏せるようにしてソレを召喚した。
カードは輝いて消えたが召喚したものは現れない……、と言うか見えない。
予想通り上手く言ったかな。
「そんなハッタリは俺様には効かないぜ! やれ、ロックリザード!」
起き上がったトカゲは俺たちに向かって再び走り始める。
「どうする気だ金治、また避けるのか?」
「ああ、避けなきゃ死んじまうだろ。でも今度はこっちに逃げるぜ!」
俺はローレンスを引っ張って岩トカゲと同じ方向に駆け出した。
直ぐに追い付かれるけどこれでいい。
「ヘッ、馬鹿め! そんな逃げ方じゃすぐに……、なんだとっ!」
俺がさっき召喚した場所を通過したトカゲが爆炎に包まれた。
作戦通り、地面には大きな穴が開き、ロックリザードは首だけ出す形で穴の中に落ちている。
体が重い岩トカゲはそこから抜け出せないらしくもがいているな。
「な、何をしやがった! 設置型の魔法か? 地雷の魔法なんて聞いたことねぇぞ!」
「そりゃそうだろうな。このカードはお前がモンスターを盗んだ研究所で作った特製カードだからな! 俺が呼び出したのは『爆裂瓶』っつう爆弾だ! 上手く地面の中に召喚出来て落とし穴を作ってくれたみたいだな!」
魔法道具をカードにする機械。
それで俺は残っていた『爆裂瓶』をありったけ一枚のカードにしたのだ。
地面に押し付けてそれを召喚したところ、表面の石の床をすり抜けて内部の土の中へと出現してくれた様だ。
本当はただ爆弾を踏んずけさせるつもりだったが予想以上に上手く言ったな。
「どうしたギンガ、もう降参した方がいいんじゃないか?」
「ヘヘッ、一体動けなくなったら次を出すまでだぜぇ! 俺様が頂いたモンスターは一体だけじゃないのさ、『ガンヘッド』召喚だぜ!」
往生際悪くギンガはカードを構えてモンスターを呼び出す。
バトルステージの中心に現れたソイツは全身機械で出来た人型モンスターで頭は巨大なキャノン砲の様になっている。
銃口の上に着いた赤いライトが俺たちを見つめる様に輝いていた。
「コイツはガンヘッドって言う自立型機械モンスターだぜ。コイツに操作の為の魔法は必要ねぇ、なんたって前方に生き物を見つけたら片っ端から攻撃する戦闘メカだからなぁ!」
赤く輝くレーザーポインターが俺の額を指している。
マズいな。
「ローレンス、避けろッ!」
咄嗟に横へ飛び込むとガンヘッドが発射したレーザーが俺の立っていた場所に着弾し爆発を巻き起こした。
これは本当にヤバい敵だな。
研究所のカロラが盗まれたのは全部雑魚って言ってたけど嘘じゃねーか!
連射してくるレーザーを走り回ってかわしながらカードケースから数枚のカードを取り出す。
何か役に立つ魔法は……、おっ?
「なんて攻撃だ! ここは俺の剣で…」
「待てよローレンス、面白い事思いついたから俺に任せろって!」
俺はローレンスの前に立つと一枚のマジックカードをピストル野郎に向けた。
「無駄無駄ァ! 機械系のモンスターには魔法はあんまり効かねぇって知らねーのかよ!」
「ふん、そんな事身をもって知ってるぜ! そして補助魔法はバッチリ効くって事もなぁ! 発動っ、『サイコパニック』ッ!」
俺の持ったカードからいくつもの光の輪が催眠術の様に放たれる。
光の輪をまともに受けたガンヘッドはさっきまでとは打って変わっておかしな機械音を漏らしながらフラフラし始めた。
「これは混乱の魔法だぜ! ガンヘッドはしっかり掛かってくれたみたいだな、それじゃあよっと! ……おぉ痛ぇ」
俺はガンヘッドに駆け寄るとソイツの足元を思いっきり蹴飛ばした。
鉄の塊を蹴ったら逆に俺のがダメージ受けてるけどまあいい。
バランスを崩したモンスターはふらふらと回り始め、同時に攻撃した相手を倒そうと無茶苦茶にレーザーポインターを放つ。
「さぁ、誰が撃たれるかお楽しみ! 地獄のルーレットの時間だぜ!」
「な、何してんだ金治ッ! 俺たちも危ないじゃないか!」
「大丈夫だと思うぞ。俺は運がいいからな、ほら俺の後ろに立ってな」
さっきサイコロで6が出たこともあり俺は調子に乗っている。
大丈夫、調子に乗った俺は本当に調子がいいんだぜ!
「くっ、クソッ! こうなったら変なことになる前に破壊してやる! おいロックリザード、あのキチガイガンヘッドにブレス攻撃だ!」
穴にハマって顔だけだしている岩トカゲは大きく息を吸い始める。
……コイツ、体当たり以外にも脳があったのか。
真っ赤な炎がガンヘッドに向けて放たれた時、丁度ルーレットも止まったみたいだな。
ガンヘッドがレーザーを放った先にいるのはまさに今、炎を吐き出しているロックリザードだった。
激しい炎と強力なレーザーが交差する。
二体のモンスターにそれぞれ当たると大爆発が巻き起こった。
バトルステージの中心にいたガンヘッドは爆発して粉々になり、レーザーで貫かれたロックリザードは絶命している様だ。
「な、何だとぉ!? 俺様のモンスターが全滅だと? ……チッ、まだこっちには高値で買った切り札があるんだ、これでお前らをぶっ殺してやる!」
本当に諦めの悪いギンガが再びカードを構えたのだった。
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その後はギンガが雷に炎、氷に爆発と様々な攻撃魔法を撃ち込んで来たがその全てをローレンスが軽くいなしてしまった。
もうすぐアイツのカード無くなるんじゃねえのか?
「ハァ……ハァ……、ま、まだだぜ! 俺にはまだ武器がある……。おっ? 来たみたいだな、こっから先、お前らが俺にする攻撃は全て無駄になるぜ!」
よく頑張るよなぁ。
コイツがもう何枚切り札を出したのか20から先は数えてねぇよ。
「なあ、早く降参してくれないか? 俺たちもう飽きたんだけど」
「そうだな、お前は切り札ばかりじゃなくもっと別の技も考えるべきだと思うぞ」
逃げ回るのも疲れた俺とローレンスの文句にも負けない自信でギンガは叫ぶ。
「見ろっ! これこそ幻のスーパーレアカードだぜ! これを使った瞬間からお前らの攻撃は自滅になるんだぜ、発動「ミラーテクスチャ」ッ!」
ギンガの体が虹色の光に覆われた。
彼が発動したのは一枚金貨100枚で売られているスーパーレアカードだ。
勿体ねぇなぁ。
「どうだ遊び人! お前らみたいな半端者じゃここまでの本気は……、なにぃ!?」
俺は無言で虹色に輝く6枚のスーパーレアカードを見せつける。
「店の高い奴は全部買ったぞ」
「な、何でお前らなんかにそんな金が……。まっ、まさかドラゴン退治やブリッジロビー防衛、さらには禁断の遺跡の踏破をやってのけた無名の冒険者がフロントに居るって噂があったが。それってまさか……」
「よく知ってるな、お前。もしかして俺たちのファンか? ファンでも勝負は勝負だからな、そのバリア剥がさせてもらうぜ。『魔水晶』召喚!」
俺は一枚のカードを突き出して黒い水晶玉を出現させる。
ボーリング玉ほどの大きさの水晶は意外に軽い。
「おいギンガ、ちょっとこれ持てよな」
「なんだそれは……、おい投げるな、あぶねっ!」
投げ渡すと親切にナイスキャッチしてくれたギンガ。
しかしそれを持った瞬間、黒っぽい水晶玉が強く輝いた。
「なっ……、アレ? 何ともないのか?」
「おーい、その玉返してくんね? それ間違えたわ」
腑に落ちなそうなギンガがまたまた親切にその玉を投げ返してくれる。
「センキュー、ギンガ! 続きましては『マジックマテライズ』召喚!」
俺はワクワクしながら今度はプリンターみたいな箱を取り出して地面に置いた。
その箱の上の窪みに水晶玉を乗せると水晶の光が箱の模様を伝って輝く。
そして下の隙間から一枚のカードが出て来た。
「ほいローレンス、カード一丁上がりだ」
「おおっ、なるほどな、こうやってマジックカードは作られているんだなぁ!」
「見ろよレイラ! 1枚で金貨100枚になるカードだぜ!」
「やったわね、決闘が終わったら売りに行って美味しい物でも食べましょうよ!」
そのカードを掲げてレイラたちに見せびらかすと歓声が上がった。
「な、なぁ……。お前何したんだ?」
唯一取り残されてるギンガにそのカードを見せつける。
「何ってお前の魔法を頂いたんだよ。お前初めて会った時言ったよな、俺は盗賊だろって。どうやら当たりだったみたいだぜ! よかったな!」
そのカードにははっきりと『ミラーステクチャ』と書かれている。
やっと察したギンガは慌てて自分の体を見回して叫んだ。
「俺様のバリアが消えてるだと!? おかしい、魔法を全て跳ね返すバリアだった筈なのに……、そうか、あの水晶はマジックカードを作るための道具か! テメェ、返しやがれっ!」
「返せと言われて返す盗賊はいないぜ? それに魔力は誰のものでもないだろ、ほらよ、どこかにお前の名前でも書いてあるのかよ!」
今までイラつかされてた分、とことん嫌味ったらしく返答してあげよう。
観客は魔法都市の研究者も多かったのか俺が使った機械に気が付いてあちこちからクスクスと笑い声が上がり始めている。
これは恥ずかしいぜ、ギンガよ。
「……せねえ、許せねえよこの野郎ッ! 覚悟しやがれ!」
だんだん笑い声が大きくなるスタジアムでギンガはついに限界を超えたのか背負っていた大きな刃の付いた槍を手に取った。
薄く輝くあの槍は魔法の武器だな。
「おいおい、まさかその武器で俺を攻撃する気か? ルールをもう忘れたのかよ」
鼻で笑って挑発するとギンガは悪そうな笑みを浮かべる。
「そのまさかだ! もうルールなんて関係ねぇ! お前は俺をとことん怒らせた、死に値するほどになぁ! 死ねぇッ!」
強い光を纏った槍を掲げて突っ込んでくるギンガ。
「危ない、金治は早く俺の後ろに!」
「いや、俺がやるよ。ルールすら守れねぇDQNにはお仕置きをしないとな」
全く、こうなるとただのキチガイじゃねーか。
でもここまでされたからには手加減無用でいいよね?
「コレで終わりだぜ! ヒャッハーッ!」
飛びかかって槍を振り下ろすギンガに俺は一枚のカードを突きつける。
「忘れたのかよ、これは魔法の決闘だぜ? 『ミラーテクスチャ』!」
ギンガから奪った魔法を発動させた。
俺の体が虹色に輝く膜に覆われるのと同時にギンガが光を纏った槍を俺に叩きつける。
その瞬間、俺の体は強く輝きギンガを槍ごと吹き飛ばした。
「グハァッ! な、なんて威力だ……、倍返しかよ…」
バトルステージの端っこまで吹き飛ばされたギンガにもう容赦は要らないよな。
「じゃあ、ローレンス。止めはお願いできるかな? 大丈夫、殺さない程度にビビらせばいいから」
俺は一枚のカードをローレンスに見せると彼は強く頷いた。
「ああ、任せろ! ギンガをチビらせてやるぜ!」
少し下がるとローレンスに輝くカードを向ける。
「行くぞ、最後の魔法だ! 『サラマンダー』ッ!」
俺が呪文を叫ぶと赤い光の玉がローレンスに飛んで行き、突然激しい炎に彼は包まれた。
でもこれは攻撃じゃない、ローレンスの技だ。
「うぉぉぉぉおっ! 凄い魔力だ、行くぜぇっ!」
ローレンスが魔剣を空に掲げると彼を包む炎が空中でドラゴンの首の様な形へと姿を変える。
そして剣を振るとその炎のドラゴンがギンガに向かって発射された。
「や、やめろぉぉおぉぉッ!」
ドッゴォォォォン……。
ギンガの叫びを引き裂き爆発音が響き渡る。
爆炎が引いてゆくとギンガのすぐ隣の地面がバトルステージごと深く抉れていた。
その隣では気絶して倒れるギンガの姿が。
「ねぇ、司会のおじさん! アイツ気絶したけど勝敗はどうなるの?」
俺がわざとらしく唖然として固まる司会に声を掛けた。
「そ、それはもちろん……、この決闘、フロントから来た冒険者、金治の勝利ですッッ!」
静寂から一遍して大歓声響くスタジアムで俺はローレンスと拳を合わせた。
最高のパートナーと勝利の喜びを分かち合って。




