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ジャック・ポット・チャンス!~幸運転生者の異世界日記~  作者: 天勝金治
第五章 世界で一番大きな魔法
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第60話 最も厳しい戦い

 マジックカードの研究所で研究されていた新しい発明はモンスターを呼び出す魔法の道具だったのだ。

 俺たちが研究室の隅で待たされてるとカロラが戻って来た。

 白衣も髪もボロボロのその姿は自業自得とはいえ哀れに思えるなぁ。


「いや~、お待たせみんな! 予想以上にコッテリ怒られちゃったわ。……そうそう、カードの話だったわよね。えっと、さっき見てもらった通りモンスターを呼び出せるカードを研究してるのよ。まぁちょっとした、本当にあと少しだけまだ調整が足りてなくて召喚したモンスターが言う事を聞かないのよねぇ。カードに封じ込める所までは成功してるんだけど……、どう? 使ってみたくない?」


 言う事聞かないモンスターを召喚できるアイテムなんかあってもなぁ。

 しかも普通それを勧めるか?

「いらないかな、使ったところで意味無さそうだし」

「そうよねぇ、そんなの使ったらわざわざ敵を増やすようなものだものね」

 俺とレイラが断るとカロラはあからさまにがっかりした。

 いや、使い道無いもん。


 シオンがハッとすると落ち込む彼女に声を掛ける。

「ねえ、そう言えばギンガはそのカードを盗んで行ったんだよね? そのカードもまさか言う事を聞かないモンスターカードじゃ…」

 俺らの冷たい視線に視線を逸らしながらカロラは…。

「え、ええそうよ……。いや、仕方ないのよ! アイツら説明の途中で盗んで行っちゃったんだもん! だから今回は説明しながら実演したまでよ」

 仕方なくないんだよなぁ。

 めんどくさい予感しかしないじゃないか。

「つまりギンガは自分の言う事を聞くモンスターを召喚できると思ってるんじゃないか? 確実に決闘で使うつもりだろうな」

「だよなローレンス。ところで何のモンスターが盗まれたんだ? ドラゴンとかとんでもないのが盗まれてたら俺が死ぬだけじゃ済まないだろ」


「理論上はそう言う強いモンスターを入れることも可能だけど実際は無理なのよね。カードに入れるモンスターは生きたまま連れてこないといけないからそんな強いモンスターで成功したことはないのよ。だからアイツらに盗まれたのも雑魚モンスターよ。……残念ながら」

 コイツ、何故残念がる。

 ……別に決闘で暴走するカードを使ったからと言ってアピールにはなんないと思うぞ。



「ここは無駄足だったな。使えるアイテムは無さそうだし別の店にでも行ってみようぜ」

「わあぁぁっ、待って! 待ってったら! 次は役に立つの紹介するから! お願いだからもう少し話聞いてよぉ!」

 俺らがとっとと研究室を出ようとすると泣いて抱き着いて来た。

「あのさぁ、俺達には時間が無いんだけど。なんか他にあるの?」


 俺がため息をついて振り返るとカロラは満面の笑みを浮かべる。

「あるわ、取って置きのが! これを見なさい、これこそ魔力カード化マシーンよ!」

 彼女はやたら身軽に大きな機械の前へとジャンプした。

 魔力カード化マシーンとの事だが見た目は大きなカプセルの様な機械だ。

「マジックカードを作るための機械か? でもこれが何の役に…」

 俺が言いかけるとカロラは自慢げな笑みで首を振る。


「魔法をカードに込められたマジックカードは普通に売ってるわよね? でもそれ以上のまだ市場に出回ってない、これこそ世紀の大発明! なんと魔力を帯びた物なら何でもカードに封じ込めることが出来るのよ!」

 ほお、何でもカードにねぇ。

 さっきの失敗を目の前で見た俺たちは胡散臭い物を見る目でジッと見つめた。

 この人、自分で召喚したモンスターにボコボコにされてたもんな。

「な、何よもっと驚きなさいよね! 魔法はもちろん魔力の塊だから当然として、強い魔力を帯びてればどんなものでもカードに出来るのよ。例えばモンスター! 全てのモンスターは魔力を元に構成されてるわ。さらには強い魔力の込められた魔法道具なんかもカードに出来るわ!」



 自慢げに言いきりおったが凄いのかどうかわからんな。

 シオンがスタスタとその機会の前に進み出ると…。

「ふーん、でも何でこんなにバカでかいんだ? マジックカードなら水晶玉みたいなアイテムに魔法を撃ち込めば出来るじゃん。……あ、あっちがマジックカード作成機でしょ」

 ガンガンとそのカプセルを叩きながら文句を言った。

 確かに人一人が余裕で入れるほどに大きい。

「へぇ、これでマジックカードが出来るの?」

 レイラが持ち上げたのはボウリング玉ほどの黒っぽい水晶玉。

「そうだよ、魔法を撃ち込むとその球が魔力を蓄えるんだ。それをその隣にある箱の上に置けばカードを作れるって訳さ」

 そう言ってレイラの隣に置いてあるプリンターみたいな機械を指さす。

「凄いねシオン君。こんな専門的なことまで知ってるなんてもしかして研究者かなにかしてたんじゃないの?」

 ワカバも素直に驚くほどの知識らしいな。


「ちょっと、私を無視しないでよね! この機械がこんなに大きいのは中にモンスターや道具を入れてカード化するからよ。……えっとそれで、迷惑かけたお詫びにこの機械を好きに使わせてあげるわ。強いモンスターを捕まえて来てカードを作ってもいいし、大きな魔法道具をカードにして簡単に持ち運ぶことも出来るわよ! まぁ、このカプセルに入る大きさまでしか無理だけど」


「う~む、役に立つのかコレ? 普通に魔法屋でマジックカードを買った方がいいと思うのだが」

 ローレンス同様仲間たちもコレの使い道を思いつかないか。

 俺も全くアイデアが出ないな。

「まあ、タダで使えるってならいいか。取りあえず戦いならパッと出てきて相手を困らせるものをカードにしとけばいいんだろ? ここ、一応魔法の研究所っぽいし何か使える道具がないか探して見ようぜ」




   --------




「じゃあみんな、決闘頑張ってね! この研究所の宣伝はあなたたちにかかってるんですからね」

「うん、あんまり期待しないで待ってろよな。それじゃあ俺たちは準備しに行くわ。……あ、コレは多分決闘終わった返しに来るぜ」

「多分じゃなくて絶対返しなさいよね! 壊したら許さないわよ!」

 怒鳴り散らすカロラを背に俺たちは研究所を後にする。

 散々探しただけあって数枚のカードを作れた。

 まあ、何があるか分からないし備えがあったほうが嬉しいよな。


「しかしあのカロラとか言うのは何だったんだろうね。若さ的にも新米研究員ってとこかな? ……アレ、何だろコレ」

 研究所の門を出たところで門の前に何か落ちているとシオンが気が付いた。

 茂みの中から何か鉄のプレートみたいなものを引っ張り出す。

 その大きめのプレートには『Dr.カロラ 研究所』と書かれていた。


「アイツ、あんなのでもこの研究所で一番偉い奴だったんだな…」

 看板が門から剥がれ落ちていた研究所を振り返ると少し切ない気持ちになる。

 いろいろと可哀想だなぁ。



   --------



 その後、街で数件の魔法店を回り幾つかのアクセサリーなどを買い込んだ。

 夕暮れ時のホテル前でワカバは…。

「明後日の決闘は絶対応援に行くからね! ……逃げる気になったらお城にかくまうから安心してね」

 と言って例の城に帰って行った。

 夕食も食べたし、後は買ったものの確認だな。


「えっと確かこのポーチにカードを入れとくのよね? 結構オシャレじゃない」

 レイラが革製のカードケースを渡してきた。

 このケースは魔法店で買い物をした時、サービスでくれたものだ。

 何でもマジックカードを大量に持っているとふとした会話がきっかけで暴発することもあって危険らしい。

 そこでこのケースに入れとけば呪文を唱えても発動しないんだとか。

 確かこの街に来た時に会ったデニスもこのケースを持っていたな。



「うん、防御力アップに詠唱速度アップのアクセサリー。装備はばっちりだね! じゃあ残った時間をフルに使って魔法の名前と効果を叩き込もうか」

 恐ろしい事を言って来たのは分厚い本を何冊か抱えたシオンだった。


「え? いや、アイテムはあるんだし、それに俺、勉強は…」

「何言ってんだよ! 金治はカードをいっぱい買ったよね? でも殆ど全部効果を知らないじゃないか。当てずっぽうで魔法を使ってちゃどんなに高価なアイテムを用意しても勝ち目はないよ。今回の決闘はお金だけじゃなくて知識が重要になる勝負なんだから」

 キッツいなぁ。

 このマジックカードの束を全部覚えろって言うのか。

 数十枚の束になってるカードを俺は適当に捲る。

 当然、名前と絵柄だけじゃ効果が予想できそうにないものばかりだ。


「それに戦略も立てなきゃね。戦闘中にどのカードを使おうかのんびり悩んでる暇はないよ、もう順番を決めてケースに入れとかなきゃ。大丈夫、戦闘用の魔法道具の中じゃマジックカードは一番簡単に扱える部類だからね」

 なんてこった!

 俺はこのカードを構えて適当に呪文を叫んでれば勝てると思ってたぞ。

 カードゲームじゃないんだから何でそんなに頭を使う羽目になるんだよ。



「へ、へぇ……。が、頑張ってね金治、私は邪魔にならないよう外で風に当たって来るわね! いやあ、決闘するのが私じゃなくてよかったわ」

「ズルいぜレイラ! お前の為の決闘なんだから一緒に苦しめよな」

 俺の叫びを聞いてシオンは何を思いついたのか…。

「そりゃいいね! レイラは魔法使いなんだからこの際一緒に魔法の勉強をしなよ。知識を増やせばちょっとぐらい新しい魔法を覚えれるかもよ?」


 俺とレイラが死にそうな顔をして席に着くとシオンが本を開く。

「な、何でこんな子供に先生をされなきゃなんないのよ…」

「うう、癪だけどシオンのが知識は上だろ、諦めろよな…」

 大人二人が見た目小学生のヤツに勉強を教わるその姿はさぞかし滑稽だろうな。

 俺たちは泣きそうなのにシオン先生はノリノリでカードを1枚差し出してくる。

「さあ無駄口は叩かずにまずはこの魔法からだよ。このカードの魔法は……」




 派手な魔法アイテムをブッパする楽しい決闘……。

 と思ってたけどオツム酷使する、今までで一番厳しい戦いになりそうだ。

 明日一日は勉強かぁ。


 ……ギンガのヤツ、何で2日後じゃなくて3日後って言いやがったんだ。

 恨むぜ。




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