第59話 お金の力で勝つ決闘
「で、どうすりゃあのギンガとか言うのに俺が勝てるんだ?」
俺たちはホテルの部屋に戻って作戦会議。
東の勇者とか言われてるギンガと俺はレイラを賭けて決闘する事になってしまった。
「うむ、普通に戦えば金治に勝ち目はないな。ソイツの『スーパースター』って職は遊び人や旅芸人の上級職に当たるものだ。多彩な特殊スキルと大概の武器をそれなりに扱えるのが特徴だった筈だな。レベル的にも運だけじゃ金治は勝てないぞ」
「なにまともに分析しちゃってるのよローレンス! 少しはその実力差を埋める方法を考えなさいよ、私の運命がかかってるのよ!」
「あの、僕も勝ち目はないと思うよ。もういっそ逃げた方がいいかもね。……僕のお城に暫く隠れる?」
ローレンスとワカバから見ても俺の勝ち目はないと。
そんな事分かり切ってるんだよなぁ。
「だからルールをこの街流にしたんじゃないか。そんなに悩むことはないよ」
唯一楽観的なシオンが説明を始めた。
「普通『決闘』って言ったら強さをはっきりさせたり、モノを賭けて戦う事を言うよね? でもこの街では昔から『決闘』を新しい魔法の道具や発明を試す場に使うっていう考え方があるんだ。この街が魔法都市と呼ばれ魔法の研究や学問の中心になっているのが由縁だね。……でだ、フェアリーテーブル式の決闘って言うのは武器や体術、本人の魔法による直接攻撃を禁止して魔法の道具のみで戦うというものなんだ!」
「魔法の道具だけでの戦い? でもそんな道具俺にはこの『ダイスの腕輪』くらいしかねぇぞ」
不安げな俺にシオンは首を振って答える。
「分かってないな、この街のルールだと言っただろ。この街には魔法の道具を扱った店は無数にあるさ。それに金治、僕らにはお金だけは腐るほどあるだろ?」
「つまり金にモノ言わせて最強アイテムを揃えてぶん殴るってことか?」
シオンは満足げに頷く。
「何それ、楽しそうね! 私たちの財力なら実際なんでも買えるわね。ところでシオンはどんなアイテムを買えばいいと思ってるの? 魔法の道具っていってもそれこそ無限にあるわよ」
「もちろん考えてあるよ。といってもマジックカードを大量に持ち込むのがベストじゃないかな? 後は魔法付きの装備品なんか買っとけばまず無敵だと思うよ」
「よし、そうと決まれば買いに行こうぜ! まずは前に行ったカードショップだ」
俺は金貨の入った重い袋を掴むと元気を出して立ちあがった。
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以前にも来た魔法店の看板が輝く店にやって来た。
扉を開けて中に入ろうとした時、誰かが店から出て来る。
「おや、レイラちゃんじゃないか! それに遊び人の金治か。ふん、勇者の俺に魔法道具で勝負を挑むとはマヌケだったな。悪いが金なら大量にあるんだよ、いくらお前らが知恵を巡らせたところで俺様の財力には敵わないがな! ……じゃ、こんなマヌケどもはほっといて宿に行こうか、子猫ちゃんたち」
自信満々で去って行くギンガの背中を見送る。
そう言えば仮にもアイツは勇者と呼ばれてるんだよな。
それなりに活躍して賞金を持ってるに決まってるじゃないか。
「なあシオン、本当に大丈夫なのか?」
「う、うん大丈夫さ。この街と魔法の事なら僕はあんな奴に負けないよ。さあ、店に入ろう。店主に聞けばギンガがどんなカードを買ったか分かるかもよ」
俺らは魔法屋の中へ再び足を踏み入れた。
ギンガとの対決は金の使い方次第になりそうだな。
「いらっしゃいませ……、あなた方はこの間の! マジックカードをお探しで?」
エルフの店主は俺たちを覚えてたようだ。
「さっき偉そうなチャラいヤツが来ただろ? 俺、今度アイツと決闘するんだけどなんか有利な魔法とかないのか?」
俺の問いに店主は驚くと悩ましい表情を浮かべる。
「あの、まことに申し訳ありませんがあのお方に勝つのは難しいかと……。それに私は彼の応援をすることに…」
なんであんな奴の味方をするんだ?
俺らが悩み始めるとシオンが一歩進み出て問いかける。
「ねぇ、店主さん。もしかしてアイツはもの凄い高いアイテムでも買って行った? だから贔屓してるんじゃないの?」
「そうなの? そんなのズルいわ!」
シオンの問いにギクッとした店主に俺たちは詰め寄った。
「は、はい……。でも店としてはやはりお得意様にはご贔屓を…」
「いいから僕らにもアイツが何を買ったか教えてよ!」
店主に案内されたのは一つのガラスケース。
マジックカードは込められた魔法の強さによってだいぶ値段が異なる。
以前俺が試し撃ちした『ファイアボール』なんかは銅貨3枚で売っているが、ここのケースに飾られてるものはどれも金貨数枚で売られている高級品だ。
「えっと、こちらのスーパーレアカードを1枚買われて行きました。当店ではこちらの5枚だけなのですがその内の1枚をお買い上げになられたのです」
そう言って指さされたのは虹色に輝く、特に厳重に飾られたカードだった。
この5枚だけ他のカードとは扱いが違うな。
「これって見たことがあるな。……あった、コレだろ?」
俺はポケットから1枚のカードを取り出す。
「おお、これは前に金治が当てた奴だな。確かに同じ輝きを放っている」
「凄いわね金治。見てよコレ、1枚で金貨100枚ですってよ? これだけお金を払えばボロい家の一つも買えるわよ」
「なっ……、それは『サラマンダー』のカード! 凄いレアカードですよ!」
店主も驚いてるがコレ1枚で金貨100枚。
日本円換算でこの世界の物価を比較すると約100万円かぁ。
……かなりヤバいな。
「あれ店主さん、ギンガたちは1枚買ってったんだよね? まだここには5枚あるみたいだし他にも在庫があるの?」
「いえ、あの方がお買い上げになられたのはこちらの『ミラーテクスチャ』だけですよ。このカードだけたまたま在庫が1枚あったんです」
ワカバの問いに店主さんが答える。
つまりギンガの野郎が買ったレアカードはこれだけって事か。
「なぁ、やっぱりレアカードって言うくらいなんだから強いんだよな? なら取りあえずこの5枚は買ってもいいんじゃないか」
「そうだね。カードの色は魔力の強さで変わるんだ。この虹色は最大クラスって事だし買っといて後で効果を調べようか」
俺はローレンスに持ってて貰った金貨が詰まった重い袋を受け取り店主を呼んだ。
「すみませーん、取りあえずこの5枚下さい」
俺が何気なく言うと店主はひっくり返り、別のお客さんも驚きの表情を浮かべる。
……え、俺なんかやっちゃった?
「ほ、ほほほ、本当でございますか? これ全部で金貨500枚ですよ!」
「ああ、数えるのめんどくさいけどほら」
金貨で膨れ上がった袋を差し出すと店主はガックガクしながらも飛び上がった。
「あっ、ありがとうございますっ! 旦那様のおかげで当店始まって以来の利益ですよ! ささっ、こちらへどうぞおかけください、今すぐお品をご用意させていただきますので!」
もの凄い変貌だな、店主。
お客の金使いで態度変え過ぎじゃないか?
「あ~、えっとまだカード見たいからまとめてでいいかな? あと決闘に有利な強い魔法道具ある場所を知ってたら教えて欲しいんだけど」
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「結局あの店主、掌クルックルだったわねぇ。あそこまであからさまなのは私も初めて見たわよ。決闘では金治様を応援いたします、だってさ」
俺たちは次の魔法道具を求めて魔法店の店主に教えて貰った道を進んでいる。
マジックカードはある程度買えたぞ。
「店主はマジックカードの研究所を教えてくれたんだよな。ここはもう研究所ばかりの地区みたいだがどれがそうなんだ?」
ローレンスが首を高く掲げて辺りを見回す。
「地図によるとこの辺なんだけど……、あっちかな? いやこっちか?」
ここ出身のシオンですら迷う程だ。
この街はたまに無茶苦茶めんどくさい作りになってる場所がところどころある。
「何でこの街はこんなにめんどくさい作りなんだ? ちゃんとした道を作って建物の位置も考えて建てればいいのに」
「それは仕方ないそうよ。師匠が言ってたんだけどね、この街の建物は古代の街の区画を全く変えずに建てられてるんだってさ。言い伝えだかで悪き者からこの地を守るおまじないがあるんだとか、区画ぐらい変えてもいいと僕は思うけどね」
「めんどくさい事信じてるのねぇ、見た目はこんな先進的な街なのに。……あら? アレじゃないの地図に描いて貰った場所って!」
レイラが指さした場所には確かにそれっぽい研究所がある。
地図の場所とも多分一緒だ。
「へぇ、デケー建物だな。取りあえず言ってみるか……、なんだ? 変だぞ」
俺らが近づいたとき突如ビービーと激しい警報が鳴リ響いた。
その瞬間、研究所の左側で爆発が起きる。
「なにか起きたのかしら!? 僕らも急いで行ってみようよ!」
俺たちが急いで入口に飛び込むと思ったほど中は騒ぎになっていなかった。
「何があったんですか? 僕らが見た時は爆発が起きてましたけど」
「ああ、ワカバちゃんじゃないか。いや~、参ったよ。魔法店の紹介で冒険者一行が来たんだけど研究中のカードを盗んで行っちゃったんだ。まぁ、あまり強力なカードではないしこの街の中で被害を起こせるとは思えないからいいんだけどね」
魔法店の紹介で来た冒険者ってもの凄い心当たりがあるけどまあいい。
それより何でこの白衣はモノを盗まれてこんな冷静なんだよ。
「えっと、じゃあ壊れた施設とかあったら僕が直すけど…」
「大丈夫だよ。別に機械を壊されたりしてないし、さっきの爆発も煙幕の魔法を使っただけみたいだからね。……そうそう、君たちが金治君御一行かい? 私の名前はカロラ。魔法店の店主から連絡が入ってるよ、さっき盗んでった奴らの事も言ってたけどアイツらは気にしなくていいそうだよ。何か店であったのかな?」
あの店主、客によってとことん対応を変えていく気だな。
「俺たち強い魔法道具を探してるんですけど。決闘で勝てるようなヤツ」
「大丈夫、全部連絡来てるから。ここは聞いての通りマジックカードの研究、作成をしてる施設の一つさ。似たような研究はあちこちでやってるけど私たちは特別な研究をしてるんだよね。盗まれたのもそのカードさ、君たちにもぜひ見せてあげよう! と、言うか自慢させてくれ!」
なるほど、このカロラって人が突然来た胡散臭い冒険者ことギンガにも自慢感覚でお披露目したら盗まれたって訳か。
なんというお間抜けな。
「新しい研究ってのは気になるね。ほら金治、早くついて行こうよ。ギンガたちの盗んで行ったものは知っておいた方がいいよ」
シオンに押されて俺は通路を進んでいく。
連れて行かれたのは機械がいっぱい置かれた大部屋。
真ん中にはガラス張りのドームで覆われた闘技場のステージみたいなものがある。
「ここが我々の研究室だ! ここではマジックカードに続く新たな種類のカードを研究してるんだよ」
自慢げに言うカロラの跡を俺たちは歩いて行く。
「ねぇねぇどんなカードを作ってるのよ? そんなに言うなら見せなさいよね」
レイラの言葉を待ってましたとばかりの笑顔でカロラは手を叩いた。
「もっちろんいいわよっ! 寧ろ見て欲しいわ! 私たちが研究してるのはこのカードよ」
そう言ってカロラさんは1枚のカードを見せびらかしてきたが赤いそのカードは別に何の変哲もない。
寧ろ俺がさっき買った輝くカードのがレアっぽいぞ。
「あら? その顔はコレの凄さが分かってないわね。それなら実際に使って見せるわ、ついて来て!」
駆け出したカロラの後に続いてガラス張りのステージへと入る。
見た感じここがマジックカードの試し撃ちをする場所だな。
「いい、行くわよ? 『デーモンアイ』召喚ッ!」
カロラが唐突にカードを構えて叫ぶと強く輝き、煙が吹き上がる。
そしてその中から大きな一つ目に二本の触覚を生やした丸い生き物が飛び出してきたのだ。
「これも魔法か? それにしては生きてるような…」
「ちょ、ちょっとこれモンスターじゃないかっ! 悪魔系の低級モンスター『デーモンアイ』だよ! なんでマジックカードから…」
俺らの中で一番詳しい筈のシオンも慌てて叫ぶ。
「驚いた? 驚いたでしょ! これが私たちの研究してる『モンスターカード』よ! ああ、早くたくさんの人にお披露目して驚かしたいわぁ」
俺たちは呆然としたまま固まった。
魔法が込められたマジックカードに続いてモンスターを召喚するモンスターカード。
……完全にカードゲームだな。




