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ジャック・ポット・チャンス!~幸運転生者の異世界日記~  作者: 天勝金治
第五章 世界で一番大きな魔法
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第58話 最低? ハーレム主人公

 悪い魔女がフェアリーテーブルを支配した。

 それはファンシーな魔女師弟が広めた街を守るための嘘だったのだ。

 ここに来た目的も単なる取り越し苦労だったし、後は今日から暫くこの街を平和に観光してフロントに帰るだけかな。


「う~んっ、今日もいい天気ねぇ! 昨日の魔法ショーも面白かったし、今日は何を見に来ましょうか?」

 ホテルの朝食を食べて今日も街に繰り出す俺たち。

 この街に来て3日目、まだまだ観光したりない大都市だ。

「そうだね、おすすめとしてはシグロスモールとかどう? 大きなショッピングモールなんだけどシアターやアクアリウムなんかも一緒になってる巨大施設だよ」

「へぇ、この世界にもショッピングモールってあるんだな。いいじゃん行こうぜ」

「うむ、俺はそのアクアリウムなるものが気になるな。確かこの街では魔法と共に生物学の研究も盛んだったよな」

 俺たちは広場のベンチから立ち上がると歩き始めた。

「ねぇローレンス、アクアリウムの魚は食べられないと思うわよ。残念だけど」

「なぬっ、好きなだけ取って食べていい施設じゃないのか!」

 こいつらほっといたら本当になにしでかすか不安になって来るよな。



   --------



 シグロスモールの外見は幾つかのドームが組み合わさって出来た巨大な建物。

 魔法式の立体映像でカラフルな広告が大量に周りに浮かんでいる。

 そして大量の人、人、人……。


「スッゲェ込んでるな! この世界に来て初めて現代っぽいもの見たぜ」

「ここはフロントで言うところの商店街みたいな場所だからね。街の人々の生活の中心にもなってるし観光の目玉でもあるんだ」

 巨大デパートは魔法の輝きに包まれていて未来的にも見える。

 建物も美しいし、エルフが多いからかオシャレなその風景はどこぞの若者と流行の街みたいだな。

 こういうシャレオツでウェイな街には近寄りづらかったけど面白そうだ。

「さ、早く入りましょうよ! まずはショッピングよね!」

「このモールの中にも魔法の店があるんじゃないか? ほらこの広告にもある、マジックカードのセールだとよ。行ってみたいな」

「そうなの? まあ見たいものが違うのは当然よね。それじゃあ別行動する?」

 レイラの提案に俺はシオンと顔を見合わせた。

「いや、みんなで行こうぜ。その方がきっと面白いぜ」

「そ、そうだね。それにここは広いし複雑で迷子になりやすいから一緒にいったほうがいいよ! さあ行こうか」

 こいつ等をここで野放しにしたら一人一つは問題を引っ張ってきそうだ。

 観光先でまでトラブルを巻き起こまれるのは御免だね。




 内部は現代でもよくあるショッピングモールらしく様々な店がジャンルも内容も関係なしに立ち並んでいる。

 俺たちは片っ端から店に入って物色した。

 女性の服選びに付き合ったり家具を眺めたりするのは退屈なものだ。

 だがここはファンタジーの世界、煌びやかなコスプレっぽい衣装に魔法で特殊機能が付いた道具や家具と興味深いものが溢れている。

 さらには冒険者向けの武器や防具の店もモール内に入っていてフロントではお目にかかれない魔法の武器や派手な鎧など高級なものがたくさん売っていた。

  

「いやぁ~、流石に疲れたわ。永遠に見てられそうなくらいの品揃え、全部見るには1年くらい必要なんじゃないかしら?」

「流石にそこまで広くは無いと思うけど。でも数年前より新しいエリアが増設されて店もずいぶん増えてたよ」

 歩き疲れた俺たちは屋台のジュースを飲みながら座り込んでいる。

 モールの中央に当たるこのエリアには様々な食べ物の屋台が並んでいる、要はフードコートだな。

「しかしさすが魔法都市、見たことない物ばかりだな。このジュースも何故か光っているのだが妙に旨いな」

 ローレンスは手に持ったカップを軽く振って見せた。

 この透明なカップに入ったジュース、魔法が掛けてあるんだとかで光を放っている。

「ふぅ、でも半分くらいは見れたんじゃないか? この後はアクアリウムでも行って……、おっ、あれはなんだ?」



 俺はふと向こうに人混みが出来ているのが目に入った。

 妙に女性が多いのは気のせいか?

「何だ、またワカバが来てるのか? それにしては以前と空気が違うような気がするが…」

「あの騒がしい感じ、大道芸かなんかかしら? 行ってみましょうよ!」

 近づいてみたが思ったよりの騒ぎでまるでライブ会場だ。

 人混みが凄くて何が起こっているのか全く見えない。

「何だよコレ? 有名人でもきてんじゃねぇのか、ワカバの時とは違った感じで凄い人気だな」

 周りで騒いでるのが女性ばかりだし、女性人気の歌手でも来てるのか?

「そんな有名人が来るなんて聞いてないけど……」


「やあ、君たちも勇者を見に来たの?」

 突然後ろから声を掛けて来たのは派手なローブを着たワカバだった。

「あれ、ワカバじゃん。 お前コレ何が来てるのか知ってるのか、勇者ってワタル?」

「ううん、違うみたいよ。この大陸の西側で勇者って呼ばれてるヤツが来てるらしいんだけど、ここからじゃ全く見えないのよね」

「西側の勇者? ……ああ、そう言えば勇者は他にもいるって言ってたよな」

 勇者って事はワタルみたいな凄いヤツなのか?

 確かに凄い人気者みたいだけど。

「勇者ねぇ、こういっぱい勇者が出て来るとなんだか凄い事じゃない気がしてくるわね。……でも、気になるからどんなヤツなのか見に行きましょうよ! ほら、通して通してっ!」

 レイラが人混みを力強くかき分けて進みだした。

 俺たちも慌ててその後に飛び込んだ。




「ほら、金治! こっちよ、こっち!」

 人混みに埋まりかけているとレイラが俺の手を掴んで最前列へと引っ張り出した。

 後ろを振り返ったがシオンたちはどこかへ流されてしまった様だ。

「ありがとレイラ。……えっと、アレが勇者?」

 人だかりが出来ていた中心で歓声を浴びていたのは一人の男だった。

 ソイツはワタル並みに背が高く、ワタル以上に筋肉質、そしてワタルが茶髪っぽい金髪と言うなら彼は完全にギンギラの銀髪だ。

 派手な色の服に輝く黒革ジャン、ゴテゴテのシルバーアクセを大量に身に着けて黒いグラサンまで掛けている。

 見た目は完全にめんどくさいウェイだな、関わりたくねぇ!

 そのウェイは魔法を使っているのか派手なエフェクトとロックなサウンドをまき散らしながらキレッキレのダンスを踊っていたのだ。


「凄いわねぇ、ファッションは悪趣味だけどあのダンスは高レベルよ! 勇者じゃなくて人気のダンサーだったのね」

「まあちょっとはかっこいいけどさ。ここまで人気になるかねぇ」

 チャラいウェイなのにこんなに女性から声援を貰えてる。

 なんか嫌なヤツだな!




 ダンッ、と決めポーズで止まり指を鳴らすと鳴り響ていた音楽が消える。

 それと共に周りから爆音で歓声が上がった。

 そんなにいいかねぇ、コイツ。


 ソイツは手を振りながら観客をぐるりと見まわすと俺とレイラの方へと歩み寄って来たのだ。

「ハァイ、お嬢ちゃん! 俺様は名高い西の勇者、スーパースターの神風ギンガ様だぜ! 今夜一緒に遊ぼうぜ?」

 ……は?

 いきなりナンパかよ、しかもレイラに。

「はぁ? な~に言ってんのよ、何で私があんたなんかと」

「テレちゃってかわいいねぇ! 勇者様と遊べるなんて超ラッキーだぜ遠慮すんなよ」

「触らないでよ、この女たらしっ!」

 タトゥーが入った腕をレイラの肩に掛けようとするがレイラはそれを引っ叩く。

 このじゃじゃ馬にナンパとは勇気あるプレイボーイだなぁ。


「あぁ、大丈夫ですかギンガ様!」

「ギンガ様のお誘いを断って、しかも叩くなんて信じられないわ!」

 なんだなんだ?

 後ろの方で見ていた女の子二人が出て来たぞ。

「大丈夫さ、安心して見てなよ俺の子猫ちゃんたち!」

 そう言ってその子たちの頭を撫でるチャラ男ことギンガ。

 コイツあれか、ハーレム作ってるタイプのクソだな。

「へへっ、その反抗的な目も気に入ったぜ! 名前は何て言うのかな? 俺様は君を手に入れるって決めたぜ!」

「私はレイラよ! 貴方なんかのモノになるもんですか、私には仲間がいるんだからね!」

 ほう、仲間か。

 しかしアレに対して果敢に言い返せるレイラは凄いな。



 ……あれ、なんでコイツは俺を見てるんだ?

「ほら、金治。あなたもなんか言ってやりなさいよ!」

「あ、俺?」

 典型的なナンパの流れをアホみたいに見ていたら突然呼ばれたぞ。

「んなこと言われてもなぁ……。え~っと、ギンガだっけか? お前、レイラは止めといた方がいいぞ。見た目に騙されるな!」

「何言ってんのよ! そんな事じゃなくてこの女たらしに文句を言いなさいよっ!」

 あ~、そっちかぁ。

 なんだかどうでもよくなって来てるんだよな、俺。


「ほぉ、お前がレイラちゃんの連れって訳か。こんな軟弱男より俺様にしとけよな、俺様について来るだけでシケた生活から脱出させてやるぜ! どうせロクな生活じゃないんだろ?」

 どの言葉に反応したのかは知らないがレイラが怒鳴る。

「なに勝手に人の人生決めようとしてるのよ! 私は最高の生き方をしてるわ、貴方なんかに……、キャアッ! 何するのよっ!」

「そう言ってないで来いよ! 忘れられなくさせてやるからよ!」

 ギンガとか言う男は強引にレイラの腕を掴んだ。

 しょうもないけどそろそろ止めるか。

「おい、止めろよな! ソレは俺の仲間だ、それに強姦まがいのやり方はどうかと思うぞ」

 ギンガは手を放すとニヤニヤ笑いながら俺の前へ立った。

「おいおい、お前みたいなチビが生意気にナイト気取りかよ。……そうだなぁ、ここでこの子を連れてくのは簡単だがお前にもチャンスをやるか」


 そう言ってギンガは指輪から冒険者カードを出してそれを見せ付けて来た。

「お前に決闘を申し込むぜ! 俺が勝ったらレイラちゃんは俺のモノだ。俺が負けたら何でもお前の言う事を聞いてやるぜ! ……まぁ、俺様に挑む勇気があるならだけどなぁ。お前、見た感じ盗賊かアサシンだろ。華やかさも遊び心もないそんなんじゃ上級職の俺様に敵うわけないけどな!」

 なるほど、俺の短剣や盗賊用の装備からの判断だろうな。

 冒険者カードには『スーパースター、Lv.36』、そういやスーパースターだとか言ってたけど職業のことかよ。

 ステータスもレベルも高いしスキルも大量に記されている。

 コイツ、手の内を晒すほど余裕があるって事だな。

 さらに名前の欄には『神風 銀河、20歳』。

 コイツってもしかして…。


「ふん、戦ってやるよ。でも遊び心なら俺は負ける気がしないけどな!」

 俺も冒険者カードを突き出した。

「おいおい、遊び人ってマジかよ! そんな低レベルじゃ俺様の相手に……、天勝金治だと? お前まさか転生者……、それだけじゃねぇな。お前か、東の勇者を倒したってのは」

「東の勇者……、ああ、ワタルの事か。でもあれはたまたま…」

「やっと見つけたぜ! 元々ワタルと戦うつもりだったがソレを倒した奴がいた。つまりお前を倒せばこの大陸最強の勇者は俺様って訳だ! 戦ってもらうぜ!」



 うっわぁ……、めんどくさい事になって来たなぁ。

 適当にお茶を濁した決闘をするかとっとと逃げるつもりでさっき調子のいい事言ったけど止めとくんだったな。

「決闘のルールはもちろんどちらかが…」

「ちょっと待ってよ! 勝手に僕らの仲間を賭けの対象にされちゃ困るんだけどな」

 静まり返った人混みの中から出て来たのはシオンだった。

「それにここはフェアリーテーブルだ。どうせ決闘するって言うならこの街のルールでやるって言うのはどうだ? それとも変則ルールじゃ怖いかい?」

 自信満々に挑発して行くシオン。

 ギンガはそれに簡単に乗っかって行く。

「俺様に怖いものなどあるかよ! いいぜ、フェアリーテーブル式のルールで決闘だ! 勝負は3日後、中央スタジアムを貸し切っといてやる、逃げるんじゃねーぞ!」

「うん、いい度胸だね。君こそウチの金治にやられて惨めな姿を晒したくなかったら逃げることをお勧めするよ」




 去って行くギンガを最後の最後まで見事に挑発しきったシオンが駆け寄って来た。

「おい、シオン! あのギンガとか言うヤツのレベルは36だったぞ、俺より20も高い! それなのにあんなに挑発しちゃって、どうすんだよ!」

「いいや大丈夫さ。僕も全力でサポートするし、この街のルールなら金治でも十分勝ち目はあるのさ」

 そう言うシオンは意味ありげな笑みを浮かべている。

「ちょっと、絶対勝ってよね! 私、アイツは生理的に無理よ!」

「だから安心してって、金治は物の応用は得意だよね。ここは魔法都市、決闘も魔法式。それにあんな奴は許せないよね? さあ猶予は2日間だ、金治を勝たせてレイラを守る準備をするよ!」


 シオンに続いて街へと歩き出す。

 俺より圧倒的に強い西の勇者、ギンガとの決闘が決まってしまった。

 しかもよく分からん特別ルールだと。

 俺、大丈夫なのかよ?




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