第50話 動け! 巨神兵!!
目の前に浮く光の玉の中にひし形のクリスタル。
感じた事のない不思議な感覚だ。
「これが初代勇者の宝? 魔法のアイテムかしら…、キャッ!」
光の玉に伸ばした手を電撃が発生して弾き飛ばした。
弾き飛ばされたジェリーは尻餅をつく。
「防御の魔法がかかってるわね。これじゃ中のクリスタルを取れないわ」
手を摩るジェリーはため息をついた。
クリスタルを囲む光球は触れば電撃が発生するバリアの様だ。
でも、こういうのは大抵宝箱を開けた本人ならば…。
「よし、取れたぞ。……ところでこれは何なんだ?」
その俺の言葉に答える様に突如部屋の壁に描かれた壁画が輝き始めた。
「何かしら、壁画が浮き出て光が絵を映し出してるの? これは人型の絵…、こっちのはもしかしてマップじゃないかしら!」
4面の壁すべての壁画から光が出る。
それが交差して立体映像の様なものが出現したのだ。
そこにはジェリーの言う通りこのダンジョンのマップみたいなものが、そして中央には巨大な人型の図が記されている。
「この人っぽいヤツはそこにある馬鹿デカい巨人だろ。マップを見た感じ階段とか梯子は無いけど……、ここの俺たちがいる部屋の隣にある部屋とこのみんながいる上の場所にある部屋に同じ記号見たいのが描いてあるのが怪しいな」
「へぇ、確かに怪しいわね。それにしてもよく気づいたわねぇ」
素直に感心するジェリー。
実を言うとゲームの攻略書に乗ってるようなマップに非常に似てるんだ。
ゲームと一緒ならこの記号は…。
「さ、早くいきましょうよ! 何か上に戻る方法が分かるかも」
「あっ、待てよジェリー。……ああもう、仕方ないなぁ」
とっとと部屋を出て行くジェリーを追う。
最後にもう一度振り返ると特に理由もないけど巨人の図面が気になった。
特に頭の当たりに金色で描かれた空洞。
単なる直感だが気になって仕方がない。
「なーにやってんのよ金治! やっぱり隣に部屋があったわ、早く調べましょうよ!」
「分かった分かった、すぐ行くぜ!」
俺はクリスタルをポケットに突っ込んで隣の部屋へと駆け出した。
「うわっ、この部屋も眩しいな。中央のアレがやっぱり怪しいよな」
「ええ、私も怪しいと思うわ。でもどうすればいいのかしら?」
部屋の中央には光を放つ台座が目立つ。
壁にはさっきの部屋同様、壁画が描かれている。
「使い方って多分乗るんじゃねーのか? これワープ装置だろ、さ、乗ろうぜ」
ゲームとかで出るこういう光に乗って別の場所にワープするアレ。
さっきの部屋のマップを見る限り恐らくその類の装置だろう。
「ホントに大丈夫でしょうね? 乗った瞬間罠にかかるとか笑えないわよ」
不安げなジェリーを引っ張って台座に乗ると強い光に俺たちは包まれた。
転生した時に似てるこの感じ、間違いなくワープだな。
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光が消えると立っているのは同じ台だが部屋が変わっていた。
「ううん、変な感じねぇ。ワープが成功したって言うの?」
足取りが覚束ないジェリー。
「恐らくな。さ、早く部屋から出ようぜ、みんなを助けないとな。ほら鍵がかかってる扉だ、ジェリーの出番だぜ」
正面にあるのはさっきの部屋にあったものと同じ扉だ。
「ええ、任せなさい。『アンロック』、発動よ!」
紫色の光に照らされ扉の模様が点滅する。
「よし、開いたみたいだな。さぁ行くぞ!」
自動で扉が開き、それに合わせて俺たちは飛び出した。
右側にコアを置いて来た部屋へと続く門がある。
あちこちにゴーレムの残骸が転がり中央には巨大な石像の肩から上の部分が佇んでいる、間違いなく上の大部屋だ。
「あっ、金治! どうやって戻って来たのよ? まあいいわ、早速だけど大ピンチよ!」
門の陰に居たレイラとシオンが駆け寄って来る。
「今ローレンスが『ロストガーディアン』と戦ってるんだけど押されてるんだ。僕らもサポートしてたんだけど僕らの魔法じゃ何の役にも立たないよ…。どうしよう金治…」
余程激しい戦いをしたのかボロボロの二人。
「ローレンスはどこにいるんだ? 早く助けに…」
ドッゴォォォン……。
突如もの凄い爆音が響いた。
巨人の裏側から煙が上がり、そこからローレンスが駆け出して来た。
「おっ、金治やっぱり生きてたか! 流石俺が見込んだ男だ! ……ところでアイツを何とかできないか?」
叫ぶローレンスを追う様にロストガーディアンが現れた。
傷だらけだが壊れてる様子は全くない。
「ちょっと、ローレンス! こっちに来ないでよね、ガーディアンも来てるじゃない!」
レイラが叫んだが確かに真っ直ぐこっちに向かって来るな。
赤い一つ目を輝かせてガーディアンが迫って来る。
「やっべぇ、とにかく戦うぞっ! レイラとシオンは魔法で支援だ! 取りあえず時間稼ぎしてここから出る方法を考えなきゃ」
「そうだね、逃げててもどうしようもないんだ。ローレンス避けてっ! 『パラレル・ホーリーレイ』ッ!」
「私だってまだまだ行けるわよ! 『ファイアボール』ッ!」
たくさんの白いレーザーと炎の玉が直撃し爆炎を巻き起こす。
「ふう、助かった。でもアイツは今のくらいじゃ傷一つないだろうな。でもやっぱりここで倒すしか道はないぞ」
首を片手にローレンスも近くへやって来た。
「やっぱりそうか…。悪いけどここはローレンスに頼るしかない。俺たちも全力でサポートするからあのバケモノともう少し戦ってくれ!」
「そう真っ直ぐ言われちゃ騎士として断れないな。もう少しって事はまた大逆転の作戦を考える気だろ、俺は信じるぜ!」
彼はそう言って拳をグッと突き出す。
レイラとシオンもさっきの弱気な顔とは打って変わって力強く頷く。
「な、何でよ? あなたたちなんでそんなに強気なのよ…」
座り込んで泣きそうなジェリーが呟いた。
「必死になって運よく上に戻って来られたのに待っていたのはカイブツよ? ここからさらに上に出る方法は分からない、絶望じゃない! ……もうおしまいよ…」
……むっ。
「それは聞き捨て出来ないぜ、ジェリー」
彼女の言う事は何一つ間違ってはいない。
絶対敵わない死の恐怖が目の前に迫っているんだ、俺も怖いさ。
「お前、俺にさっき説教したよな。なのに何で先に諦めてるんだよっ!」
俺はかなりダメダメな自信がある。
いつも一番に諦めて、最初に逃げ出すのが俺だ。
でもそんな俺より凄い奴が先に諦める。
何故かそれにイラッと来た。
「死んじゃったら本当に終わりさ、でもまだ生きてるだろ。俺は命を賭けてでも『命って言う切り札』を守り切る! 俺のカードも、仲間のカードもな。出口がないならブチ破ってやろうぜっ! 大丈夫、俺は運がいいからな!」
「そうよ、金治はラッキーボーイなのよ! 今までどんなピンチもまるでご都合主義の様なラッキーで切り抜けて来たんだから!」
「二人ともよくわかってんじゃん。金治は特に弱いよ、でもだからこそコイツが言う大丈夫は何故か信じられるんだ」
「うむ、不思議と負ける気がしないもんだ。どんなに強い騎士の仲間との戦いより不思議と勇気が湧き出て来るんだよな。……アイツに似てる感じだ」
三人の仲間が俺の後ろで声を上げた。
「ほら、立てよジェリー! 諦める気はないだろ?」
涙ぐむ彼女に手を差し伸べる。
「う、うん、わたしも戦うわっ! 切り札を無くしてたまるもんですかっ!」
その手を握って立ち上がり涙を拭うジェリー。
ジェリーは突然駆け出し…。
「『アクセラ・バインド』ッ! ほらなにボケっとしてるのよ、相手は動き出してるわよっ! 私を焚き付けたからには何か作戦考えなさい!」
レイラたちの魔法で倒れていたガーディアンが起き上がろうとしていたのをすかさず光のロープで雁字搦めにする。
彼女の目には光が蘇っている、これなら大丈夫だ!
「流石ジェリーだ! よっしシオン手伝ってくれ、俺たちも賭けをするぞ!」
「どうせデタラメな賭けだろ? 僕に任せてよ」
俺とシオンは走り出した。
「こっちは私たちに任せなさい! 時間稼ぎは得意よ!」
レイラの声を背に目指すは大部屋中央に佇む石の巨人。
背中側が一番通路と近いな、あそこからなら飛び移れそうだ。
「行くぞシオン! あそこからジャンプだっ!」
「なっ、賭けってあの巨人を使うの? って、ちょっと!」
シオンの手を引いて全速力で助走をつける。
魔法のマントも相まって十分すぎる加速だ。
「いっくぞぉっ! とどけぇっ!」
悲鳴を上げるシオンを引っ張って全力で飛び出した。
大穴を見事飛び越え、巨人の肩へと着地する。
「えっと、どこかに…。あっ、あれだな」
首の後ろに当たる位置に光を放つ扉を見つけた。
俺たちはそこへ駆け寄り、扉の中心にあった丸い模様を触ると自動で開く。
中には頭へと続く階段がある。
「ビンゴッ! さあこの上に登るぞ、ほらシオンも早く!」
唖然とするシオンを引っ張って階段を駆け上がった。
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「な、なんだこの場所は…。こんなにたくさんの財宝見たこともないよ! それにこの光の絵は…、もしかして外が映ってるのかな」
巨人の頭に当たる部屋。
大量の金銀財宝が山積みにされていて眩しいくらいに輝いている。
そして中央には石で出来た王座みたいな椅子があり、周りには下の部屋で見た立体映像が浮いており外の様子が映っていた。
見たことない空間。
でも俺はこれに近いものを見たことがある。
そう、某巨大ロボットアニメのコクピットそっくりなのだ!
「よっし、この巨人を動かすぞ! シオン、その辺に操作方法とか書いてないか? ほら、ここにも何か文字があるしお前なら読めるんじゃないか?」
俺は石の座席に飛び乗り、輝く立体映像を指さしてシオンを呼ぶ。
分厚い辞書をカバンから取り出した彼は映像の文字を見ながらページをめくる。
「えっと、これがこの巨人の全体図みたいだね。僕たちがいる部屋に制御室って書いてある! 凄いよ金治、よくわかったね!」
操縦席の右側に映った映像には下で見たものと同じ図が映っていた。
「これがこの巨人の名前かな…。『巨神兵 アトラス』、この一番上にそう書いてあるよ。その椅子のひじ掛けの部分の模様で操作するみたいだけどどうすれば…」
悩み始めたが迷ってる暇は無さそうだ。
外を映した映像ではレイラたちがガーディアンから逃げ回っている。
「もうどうでもいいから動け! 動けよ、この巨神兵! 何とかいってくれよアトラスッ!」
俺は無茶苦茶にひじ掛けの部分に浮かんだ光の模様を触りまくる。
すると部屋全体が激しく揺れ始めた。
「やったよ金治! 見て巨神兵の腕が上がってる、外のレイラたちも驚いてるよ!」
なるほど、今弄ったこの左右対称にある模様をなぞることで腕が動くんだな。
「腕が動けばこっちのものだ! いっけぇアトラス!! ロストガーディアンを叩き潰すんだっ!」
俺は巨神兵の左腕を振り下ろすように模様をなぞる。
凄い振動と共に左の腕が倒れて行くのが映像に映し出された。
「あ、危ないよ! ちゃんと狙わないとレイラたちがペチャンコになる!!」
「やっべっ! それろ、それてくれっ!!」
慌てて外の方に模様をスライドすると拳は左方向へカーブし、誰も居ない地面を叩きつけてもの凄い振動と砂煙を巻き起こす。
レイラたちが何かこっちに怒鳴ってるようだが気を取り直してもう一度だ。
「今度はしっかり狙って……。ここだっ、いっけぇっ!」
ジェリーのバインドを喰らって動けなくなってるガーディアンに狙いを定めて右の拳を振り下ろす。
俺たちより何倍も大きかったロストガーディアンをさらにその倍くらい巨大な拳が叩き潰す。
ドッッゴォォォォォン……!!
叩きつけられた拳に潰され大爆発を起こした。
「お、おおおぉおぉ! きっもちいいなぁ、コレッ!」
「うんっ! 僕もこんなに爽快な気分は初めてだよっ! 大きいっていいなぁ」
思わず感動しちゃうね。
だってアニメで見るような巨大ロボットに乗ってさっきまで苦戦してたヤツを一捻りだぜっ、最高だろっ!
「よし、ついでに脱出用の出口を開けてやるか。やれっ、アトラス!」
地面に突き刺さった右腕を上げて今度は天井を斜めに殴る。
天井に轟音を立てて穴をあけると太陽の光が差し込んで来た。
「さ、腕を登って脱出しようぜ。もちろんお宝を持ってな!」
俺とシオンは仲間を呼びに階段を駆け下り始めた。




