第51話 さらばバロンパルス
「おーいっ、こっち来いよ! 古代のお宝見つけたぜっ!」
驚き戸惑っていたレイラが一番に反応する。
「お宝ですって! 今すぐ行くわっ、ほらローレンスもジェリーも急いで!」
三人は直ぐに巨神兵の肩へと飛び移って来た。
しかし、ジェリーはともかく何でレイラはこういう時だけそんなに素早いんだよ。
「ほらみんなこっちだよ! 操縦室は凄いんだよ」
シオンに続いて階段を昇る。
「な、何よこれ、凄すぎじゃないのよっ! これ全部黄金なの? ワァオ見てよコレ、こんなおっきいダイヤ見たことないわっ!」
「凄いわ、こんな場所に財宝を隠してるとは思いもしなかったわ。これだけあれば一生遊んで暮らせるわねっ!」
お宝の山にダイブして歓声を上げるレイラとジェリー。
「しかし凄い量だな。持って帰るのはどうにかするにしても分配はどうするんだ?」
「そんなの決まってんじゃない」
ローレンスの問いに不敵な笑みを浮かべるレイラ。
……ま、まさか!
「もちろん早い者勝ちよっ! 早く取らないと全部私が貰っちゃうわよぉ」
「そりゃねーだろレイラ、俺が貰うぜっ!」
「ぼ、僕だって今回はたくさんもらわないと割に合わないよ!」
俺たちは一斉にカバンにお宝を詰め込み始めた。
いくら仲間でもこれは譲れねぇな。
「あなたたちよくそんなんでパーティ組んでられるわねぇ。連携なんて無さそうなのに戦闘になれば息がぴったりなんだから不思議だわ」
「むっ、ジェリーも今回は連携バッチリだったぞ。それに俺は肩書や強さで差別しないこんなパーティだからこいつらが大好きだ。お前もそう思うんじゃないか?」
「確かに私みたいなお尋ね者も仲間みたいに…」
「おい、ジェリー! 早くしないとお宝を全部回収しちまうぜ!」
俺がしんみりしてる彼女に声をかけてやると慌ててお宝をカバンに仕舞い始める。
「負けないわよっ! こっちはプロの盗賊なんですからね」
ブ、ブゥゥゥウン……。
突如制御室の光が音を立てて消えた。
それと共にガタガタと揺れ始める。
「な、何なのよぉ? もしかしてお宝を盗ったからじゃないでしょうね」
不安げなレイラの声に思わず唾を飲む。
「みんな大変だ! 大部屋の方を見て見たんだけどこのダンジョン、崩れ始めてる! 多分天井に穴を開けたから脆くなったんだ」
階段の下からシオンが叫んだ。
これはまたまたピンチだな。
「早く脱出しましょう。お宝は勿体ないけど全部は持っていけないわ。確かこの巨神兵の腕を登れば外に出られるのよね?」
「あ、ああ、そうだけどまだお宝がこんなにあるし…」
「そうよ、ここにあるの全部積むまで出ないわよ!」
レイラが力強く乗っかって来る。
まだ半分以上あるお宝の山に背を向けるのは俺の意地汚さが許さない。
「馬鹿じゃないの! もう知らないわよ、私は先に脱出するからね」
駆け出してゆくジェリー。
「そうは言ってももうカバンはパンパンだぞ。どうするんだ?」
ローレンスが膨れ上がった大きなカバンを見せつけて来る。
ここは何か…。
「そうだシオン、ミラさんのお店で買った魔法道具で一番高かったヤツ、お前が持ってたよな。アレ使い追うぜ」
「そっか、その手があったか。任せて、今出すから」
シオンが取り出した小さめの青い袋に財宝をみんなで詰め込む。
詰め込みまくれ!
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「ヤバいな、もう崩れ始めてるぞ。急げ!」
ローレンスの声で俺たちは慌てて巨神兵の腕を駆け上がる。
上から瓦礫が降り注いで痛いが立ち止まってる場合じゃねぇ。
「ああもう、痛いわよもう! あそこが出口ね、もう少しよっ!」
光り輝く出口へ俺たちは飛び込む。
眩しい太陽の光を浴びて俺たちが出たのは遺跡の裏側の様だ。
「あっ、やっと来たわね! その辺は崩れるわよ、ここまで走ってっ!」
前方で手を振って叫ぶジェリーが居る。
俺たちは必死になってその場へと急ぐ。
地面は揺れ、あちこちがひび割れるが無視して駆け抜けた。
「あ、危なかったね。……ああっ、遺跡が…」
シオンの声で振り返ると巨大な遺跡が地面へ沈みこんで行くのが目に入った。
地下の広大なダンジョンが崩れたから上に建っていたものも落ち始めたのだろう。
爆音を立てて崩れゆく様は身動き一つできないほど壮観だ。
砂煙が収まるとそこには瓦礫の山があるだけだった。
俺たちがさっきまで冒険していたダンジョンも、勇者の宝箱も、巨神兵アトラスも全てがもう地面の下だ。
『バロンパルスの遺跡』、地下ダンジョンの攻略はこれで完了だな。
「全てが終わったな。これからどうする?」
俺は呟いた。
静まり返った空気に耐えられない。
「もう夕日が沈むよ。もう一度キャンプをしてからフロントへ戻ろう。クエストはクリアしたもんね」
シオンが太陽を見て答える。
「クエストクリアね。……やったわ、やったのよ私たち! ほらボケっとしてないで宴の準備よ、ほらジェリーも!」
レイラの合図で歓声を上げながら俺たちは駆け出した。
もちろん、うろたえてるジェリーも連れてキャンプ地を目指す。
勝利の喜びを噛みしめながら!
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「旨いっ! ジェリーもなかなかやるじゃん!」
具材がたっぷり入ったスープを啜りながら感想を述べる。
「あなたたちものも美味しいわよ。ギルドのマスターに習ったんでしたっけ? 相当な料理スキルの持ち主ね」
マスター直伝の肉料理を頬張るジェリー。
「ああ、お宝を手に入れた日はお酒も美味しいわねぇ! 最高の気分よ」
レイラが盛大に酒瓶をラッパ飲みする。
「おお、なかなかやるな。俺も飲むぞ!」
片手に持った首に瓶を押し当て酒を飲むローレンス。
見慣れていたけど改めてみると変な構図だな。
「お宝ってあなたたち何も持ってきてないじゃない。どこに仕舞ってるのよ」
不思議そうなジェリーにシオンが青い袋を見せつけた。
「それって『マジックバック』じゃないのよ! 高級品よね、それ」
「うん、お金には余裕があったから一応買っておいたんだ。見た目の何倍もたくさんの物を入れれるコレを使えばこの通りさ」
少しだけ袋の口を開けると幾つかのお宝が飛び出して輝く。
そう、この袋には部屋いっぱいにあったお宝を全部詰めて来たのだ。
「あ、あなたたち本当に凄いわね。盗賊の私よりも儲けを出すなんて…」
今までで一番驚くジェリー。
意地汚さの功名って奴だな。
この『マジックバック』はもしもダンジョンで持ちきれないほどの財宝を見つけたら使おうってことで買ったものだ。
まさか本当に使うことになるとはな。
たき火を囲んだ冒険者たちの宴。
話のタネはもちろん自慢の冒険談。
酒に酔いつぶれて眠るまでその大騒ぎは続いたのだった。
朝日に照らされて目を覚ます。
なんか重いと思ったらレイラが上で寝てやがる。
酔っ払いをどかして見回すとたき火は消え、シオンとローレンスも眠っていた。
「あれ? ジェリーはどこだ、おーいジェリーッ!」
その問いに答えは無かった。
近くの切り株に一枚の紙切れが黄金のナイフで止められているのを見つけた。
黄金のナイフはきっとダンジョンのお宝だろう。
紙切れはジェリーの書置きだった。
『さようなら金治とその仲間たち。お尋ね者は一足先にとんずらさせてもらうわね。賭けに負けた私はもうあなたたちの物を狙わないわ。でもいつか金治のハートを手に入れて見せるわ、次は逃がさないわよ。 盗賊ジェリー』
「へっ、こういうのも悪くないな、お約束感あるけど。……よっし、お前ら起きろよ、朝だぜっ!」
仲間たちを叩き起こして帰る場所へ向かう。
フロントに戻ったら忙しくなるな、なんたって今回の冒険の武勇伝をみんなにしないと行けないからな!




