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ジャック・ポット・チャンス!~幸運転生者の異世界日記~  作者: 天勝金治
第四章 ダンジョンお宝争奪戦
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第46話 対決! バロンパルスの遺跡

 『バロンパルス』の地下ダンジョン。

 盗賊の女の子、ジェリーが俺たち四人の前に立ちはだかる。


「さあ、その『グランドコア』を渡してもらうわよ!」

 んなこと言われてもな。

「渡せと言われて素直にはいどうぞってなる訳ないじゃん。有名な盗賊なら自分で攻略すればいいのに」

「散々探索し尽したわよ! この部屋から出てる通路は全部別の出口に繋がってるだけで地下に進む道がないのよね。私もお手上げよ」

 ほお、いい情報が入ったな。

「よしみんな、この階には何もないってよ。諦めて帰ろうぜ」

「ついてるね、調べる手間が省けた訳だ。あとは戻ってギルドに報告するだけだね」

「遺跡のコアなんかは戻さないと何が起こるか分からないとのことだったが……。まあ、何も異変は無い様だし大丈夫だろう」

「ええ、お宝は欲しいけど先に進めないならしょうがないわよね。ジェリーちゃんだっけ? 教えてくれてありがとね!」

 お礼を言って俺たちはクルリと振り返ると来た道を歩き始める。

 キャンプを楽しんで安全な遺跡を少し探検しただけで終わりとは実に割のいいクエストだったな。



「ちょ、ちょっと待ちなさいよっ! なに普通に帰ろうとしてんのよ。あなたたち今、盗賊に襲われてるのよ? 少しは慌てなさいよねっ!」

 一瞬の間を置いて俺たちの前に駆け込んできたジェリー。


 思わず俺たちは顔を見合わせた。

 慌てろって言われてもなぁ。

「そう言われてもお前ひとりに対してこっちは四人だぜ? それにコアはウチのローレンスがしっかり持ってるんだしお前じゃ取れないだろ」

「ジェリー、あなた盗賊でしょ? 言っちゃ悪いかもだけど盗賊一人が不意打ちする訳でもなくパーティと戦っても勝ち目無いわよ」

 どう考えてもジェリーが俺たちより強いようには見えない。

 しかし、彼女は臆する様子もなく自信たっぷりだ。



「ふふん、確かに戦闘になったら私は弱いわ。でも盗賊の本分は強さじゃなくて技なのよ。そしてその盗賊の天才がこの私なの」

 そう言って片手をレイラの方に向けると…。

「見せてあげる、これが盗賊の上級スキルよ」

 ジェリーがレイラに向けた手で「こっちに来い」とでも合図するかの様にクイクイッと手招きするとその手が突如光に包まれた!

 それと同時にレイラも光に包まれる。

「大丈夫かレイラッ! いきなり攻撃なんて卑怯だぞ!」

 光が消えたがレイラは特にダメージを受けた後はない。


「だ、大丈夫よ。何とも……、アレ?」

 突如周りを見回し、慌てふためくレイラ。

「攻撃なんかじゃないわよぉ。ほら、これなーんだ?」

 そう言って笑いながらジェリーはさっき手招きした手に握られた魔法の杖を大げさに振って見せる。

 どこかで見たことがある杖。まさか…。

「な、なんで私の杖をあなたが持ってるのよっ! 返しなさいよね、このドロボーッ!」

 ハッとしたレイラは怒って叫びながらジェリーに向かって駆けだした。

「それは盗賊にとって褒め言葉よ。そして盗賊の技は物を盗むだけじゃないわ、逃げ足も一流なのがプロの盗賊なのよ!」

 飛びかかって来たレイラを横に飛んで軽くかわす。

 俊敏な動きで距離を取るのは見事だな。

「逃げるんじゃないわ…、っとっと、キャッ」

 盛大に飛びつきをスカり、前のめったレイラはそのまま進む。

 その先にあった色の違う床を盛大に踏み抜いた。


「おっと危ないわよ、気をつけなさい。『バインド』ッ!」

 ジェリーが呪文を叫ぶと杖を持ってない方の掌から光のロープが飛び出してレイアに巻き付く。

 落とし穴の棘の手前で止まったレイラ。

 掌から伸びる光のロープをグイッとたくし上げて、落とし穴に落ちかけたレイラを自分の前へと一瞬で引きずり込んだ。

 一瞬の早業で俺たちは声を出すことも出来なかった。




「はい、おしまい。最後に付け加えるなら罠を使いこなしてこそ一流の盗賊よ。盗賊の技もなかなかの物でしょ」

 ジェリーが指をパチンッと鳴らすと光のロープが消えた。

 何か言いだしそうなレイラの前に杖を突き出して…。

「杖は返すわ。私、どんなに高価な物でも人が使い込んでる物は取らない主義なの」

「あ、ありがとう…」

 怒るタイミングを外したレイラは素直に杖を受け取り、俺たちの方へと戻って来た。

 

 ジェリーは再び、俺たちの前に対面する。

「杖を盗んだ技は『スナッチスナップ』っていう技。今の時代、この技を使える人は殆どいないレアなスキルよ」

「『スナッチスナップ』は聞いたことあるよ。僕もみるのは初めてだけど確か禁止されてる盗みの技じゃないか!」

 シオンの驚きようから凄い技みたいだな。

「へぇ、そうなの。ところで禁止されてる技なんてあるのね。」

「うん、『スナッチスナップ』は呪文詠唱無しで使える盗みの魔法なんだ。自分の目で見えてる物なら手の中に奪っちゃう上級魔法さ。昔、この魔法での犯罪が流行して問題になったんだ……。それより、レイラは魔法使いなんだから禁止されてる魔法ぐらい知ってるだろ?」

 その問いに暫く悩んだレイラは笑顔で答えた。

「全く知らないわ! 私の魔法の知識ってショーで見た奴くらいしか無いのよね。でも魔法を禁止するなんて迷惑な話ねぇ」

 あからさまにガックリしてるシオン。

 ジェリーはその会話を聞いて高らかに笑い声を上げている。



「おふざけはこの辺にして私の技、一部だけど分かったでしょ。この罠だらけの遺跡で私を相手に逃げるのは不可能よ。さあ、『グランドコア』を渡しなさい」

 不敵な笑みを浮かべ、手を差し出す彼女。

 盗賊の技は凄い。

 ……けど罠ってそんなにいっぱいあったか?


「なあ、この遺跡の罠ってまる分かりの落とし穴だけだろ。適当に妨害しながら走れば逃げれるんじゃねぇのか?」

 レイラとシオンの攻撃魔法で邪魔をして走れば不可能じゃなさそうだ。

 俺かシオンが先頭を走ればまず、落とし穴は踏まない。

「はぁ? 何言ってんのよ。この大部屋に来るまでの通路には矢が出たり天井が落ちる罠のスイッチがいっぱいあったじゃない。あなたたちが通って来た通路にもあったわよ?」

 仲間の顔を見てもみんな知らなそうだな。

「俺は戦士職だから罠の知識は無いんだが……。うむ、罠は落とし穴しかなかったな。もしかして貴女が解除してくれたのか?」

 ローレンスの言葉で固まるジェリー。

「そ、そんな訳ないじゃない! 何であの数の罠があって一つも踏まないのよ!」

「私たちとってもラッキーみたいね。きっと見えない罠なんて不幸な人しか掛からないのよ、可哀想に」

「いやいや、見えてる罠にだけかかるマヌケも僕らのパーティには居るけどね」

 お道化るシオンを恥ずかしそうに叩くレイラ。


 まさかダンジョンまでも運だけでクリアしかけていたとはな。

 流石にこれは予想外だ。


「ふ、ふっふっふ……。噂通り常識外れの運を持ってるようね、金治。でもレベルでは圧倒的に私が上。やっぱりあなたたちに逃げ場はないわ!」

 引きつりながらも胸を張るジェリー。

 実際、現状はピンチだ。

 罠は運がいいから踏まないにしてもさっきのスナッチだかをされたら身ぐるみすら剥がされてしまうだろう。

「なんだと。俺の運がいいことを知ってる何ていったいどこで聞いたんだ!」

 俺は周りを注意深く見ながら問いかける。

 ここは逃げる作戦を会話中に考えなければ。

「フロントの街で聞き込みをしたのよ。えっと誰だったかしら? 確かリックとか言う男が鼻の下伸ばして全部教えてくれたわ。あそこまでチョロい男も珍しかったわね」

 リックあの野郎、帰ったら賭けカードで一文無しにしたやるわっ!


 いや、リックの事なんて考えるな。

 色が違う床、落とし穴がこの大部屋には無数にある。

 違いはないか?


 お、あれは…。

「なあ、ジェリー。この『グランドコア』を盗まれると俺たちは怒られるかもしれないんだ。見逃してくれる気はないか?」

「怒られるなんかじゃすまないよ。王都ギルドからのクエストなんだ、下手したら裁判沙汰かも…」

 不安げに言うシオン。

 そりゃ、予想よりかなりマズいな。

「あなたたちの事情なんて知らないわよ。私はお尋ね者の盗賊、人の物を盗むのが商売なんだからね」

 でもここで素直に渡すわけにも逃げる訳にも行かない。

 仲間たちの顔を伺うがみんな不安そうだ。

 ここは運に全てを任せるしかないな。



「なあ、俺たちと賭けをしないか? もしも、俺たちがこの『グランドコア』を最深部に戻せたらもうコアも俺たちも狙わないって約束しろ!」

 俺はジェリーを指さし、決めゼリフの様に叫んだ。

「は? ……ふふふふっ、いいわよいいわよぉ。約束してあげる。でも私があなたたちからコアを盗んでこの遺跡から脱出したらきっぱり諦めてもらうわ。これでどう?」

「いいぜ、賭け成立だ!」


 慌てて止めて来る仲間たち。

 でもこれしか方法はない。

「さあ、俺を信じろ! ついて来い、落とし穴に落ちるぜっ!」

「え? ちょっと、やめなさいよっ!」

 一番渋りそうなレイラの手を引いて俺は走り出す。


「ふっ、はははははっ! 別にあなたたちが死んでも私はコアを盗めるのよ。英雄と聞いていたけどただの自殺志願者だったようね」

 笑い声を上げるジェリーを背に俺は一つの落とし穴を目指す。

 引っ張られてるレイラは泣き叫んでいるが気にしない。

「安心しろよ。言っただろ、俺は勝算のない賭けはしないって!」

「何言って……、キャアァァッ!」


 俺とレイラが一つの落とし穴の上に飛び乗ると色が異なる床は崩れ始める。

 大部屋の中央の落とし穴。

 他の穴とは異なり、穴の周囲が材質の異なるブロックで覆われているのか色が違うのを俺は見逃さなかった。

 俺たちがダンジョンに入って最初に開けた落とし穴に棘は無かった。

 そして今、俺が落ちている穴にも棘はない。

「さあ、入口でのんびりしてるのは終わりだ! とっとと進んでお宝探しと行きますかぁ!」

「ぼ、僕たちも行くぞ!」

「おう、こう言うことだったのか。道が無いわけだ!」

 シオンとローレンスも俺の跡に続いて穴に飛び込んだ。



 ジェリーが何か叫んでいるがもう聞こえない。

 俺たちは暗い闇へと落ち続ける。

 ダンジョンの奥へと続く道は入り口にもあったのだ。

 偽物がたくさんあった様だけど運のいい俺が選択問題を外すことはないのさ! 




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