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ジャック・ポット・チャンス!~幸運転生者の異世界日記~  作者: 天勝金治
第四章 ダンジョンお宝争奪戦
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第45話 盗賊ジェリー

 フロントの街から東に真っ直ぐ進んで森を超えた先。

 遺跡として封鎖されている『バロンパルス』のダンジョンを目指して俺たちはひたすら進んできて、今は森の中でキャンプ中。

 夜空には東京じゃ見られないような無限の星が瞬いて眩しいくらいだ。


「ああ、こんなに平和な野営を出来る日が来るとはな。実に感慨深い」

 手に持った首がため息と共に呟いた。

 夕食を終えた俺たちはたき火の跡を囲むように横になって夜空を見上げる。

 森の開けた場所でキャンプを張ったがなかなか居心地良いな。

「俺、キャンプって初めてだ。外で寝るっていいもんだな」

「ホント、良い夜ね。まあ、私の知識に基づいた的確な準備のお陰で素敵なキャンプになってることは忘れないでね!」

「珍しくレイラの旅芸人時代の経験が役にたったね。まあ、有り余るお金で準備して来たから外でも不便は殆どないね」

 ミラさんの店の高価な魔法道具を金に物を言わせていろいろと持ってきたのだ。

 アイテムの効果でモンスターは寄ってこないし虫よけもバッチリ、大量の水だってポケットに入れて持ち運べるものさえある。

 下手したら現代より便利かもしれないな。


「そろそろ寝ましょうか、明日はお宝探しよ。しっかり寝て万全の態勢で行くわよ、おやすみなさい」

「古代の遺跡か、楽しみだね。じゃあ、おやすみ」

 レイラとシオンが毛布に包まったようだ。

「よし、俺もおやすみ!」

「金治はなんで俺の首を…。まあいいか」

 特に理由はないけどしっくり来るから持ってるローレンスの首も眠ったようだ。

 星空の下で俺も瞼を閉じるとしよう。



   ----------



 翌朝、俺たちは森を抜けた。

 そこには小さな山をそのまま城にしたような建造物がそびえ立っていた。

「こ、これが『バロンパルスの遺跡』なのか?」

 古代文明の宮殿の様な遺跡。

 その宮殿はひどく風化いているが殆ど崩れていない。

 自分たちのいる場所の前方には入口らしき大きな門が口を開けている。

「この中を全部探すの? 流石に広すぎるんじゃないかしら?」

 さっきまでお宝がどうとか言ってご機嫌だったレイラも呆然としている。

「いや、そうでもない筈だよ。調べて来た情報によると地上部分の遺跡は既に調査されているらしいんだ。僕らが調査してお宝探しするのも、『グランドコア』が元あったのも地下のダンジョン部分だよ。そうだよね、ローレンス?」

「ああ、俺が『グランドコア』を盗んだのはこの遺跡の地下ダンジョンの恐らく最深部だ。前に来たときはギラの魔法で一気に奥まで転送したから最深部以外の構造は俺も知らないぞ」

 シオンの問いかけに頷き答えるローレンス。

 調査するのは未開の地下ダンジョンか。


 ……あれ?

「なんでコアのある場所が最深部だってシオンは知ってたんだ? ローレンスが今の話をしたの初めてだろ」

「コアと一緒に来たクエストの依頼書に書いてあったんだよ。モノがあった場所を調べる魔法を使ったんだってさ」

「その魔法なら私も聞いたことがあるわ。王都の魔法協会が装置を使う大魔法で、……あら? 確か転送の魔法もあった筈よね。それを使えばよかったんじゃないかしら?」

「それが謎の結界が張られてて魔法が弾かれるんだってさ」

 面倒な事になってるのな。

 ふとローレンスが肩を突いて来て。

「あ~、その結界は俺のせいかもしれないんだが……。コアを盗んだとき時間稼ぎ用のバリアを張ったんだよな。……すまん」

 ……コイツのせいか。

 仕方ない、お宝探しのついでに面倒事をお片付けといきますか。


 俺たちは遺跡の入口からダンジョンへと踏み込んだ。

 誰かが見ている気がしたけど気のせいだ。

 気にしたら負けだ。


 ……フラグはもう立てないぜ。



   ---------



 ランタンを持ったレイラが先頭に暗い地下へと階段を下りる。

 テレビで見たピラミット内の通路みたいな道が続く。

 ところどころ壁が崩れたり苔が生えたりしていて長い間、誰も立ち入っていないというのが分かるな。


「気をつけて進んでよ、レイラ。ダンジョンなんだからどんな仕掛けやモンスターが居てもおかしくないいんだよ」

 ズンズン進んで行くレイラにシオンが注意する。

「大丈夫よ、今回はみんなが居るんだから。前にフロント近くのダンジョンに一人で行ったときは罠にはまって死にそうになったけど」

 何でそんな不安になることを自信満々に言えるんだよ。


 ん? あれは…。

「なあ、あれって絶対罠だろ。……おいレイラ、踏むなよ」

 明らかに色の違う石の床を踏もうとするレイラを引っ張って止めた。

 ランタンの明かりが照らす通路の真ん中に正方形の色が異なってる部分がある。

「金治ったら心配性ねぇ。こんな何もないところに罠何てある訳ないじゃないのよ」


 レイラの前に出て落ちないように注意して色が違う床を蹴ってみた。

 軽く蹴っただけなのに色の違う部分は砂の様に崩れて落ちて行く。

 四角く開いた穴を覗き込むと底が見えない暗闇が広がっている。

「あらら……。まあこう言うこともあるわよね! 流石金治、でかしたわ!」

「やっぱりレイラが先頭じゃ危険だね。僕が明かりを持つよ」

 誤魔化して笑うレイラからシオンがランタンを取り上げる。

 なるほど、こう言う感じに罠にはまって死にそうになったって訳か。


「おお、よくわかったな金治。俺なら間違いなく落とし穴に落ちていたぞ」

「偉そうに言うなよな、ローレンス。ダンジョン探索は初めてじゃないんだろ、どうやって攻略して来たんだ?」

 ローレンスは片手に持った首を傾けて悩むと答えた。

「勇者パーティで潜った時は罠を発見する高等魔法を使える奴が居たんだが……。うむ、騎士としてダンジョン攻略する時は盗賊を雇ってたな」

 罠を見つける魔法なんて俺たちは使えないな。

 やっぱ探索に有利な職業や技がゲームみたいにあるんだろうな。


「僕らはダンジョン用のスキルなんて無いから普通のパーティ以上に慎重に進まなきゃ。それに強い敵が出たら勝ち目はないんだから…」

 理詰めに攻略を進めるために必要な事を説明するシオン。

 でもそんなちゃんとした作戦でどうにかなるとも思えないよなぁ。

「そう言っても落とし穴一つでこう考え込んでちゃいつまでたっても進まないだろ。一応、罠は見れば分かりそうだしちゃっちゃと進もうぜ!」 



 シオンを促し、再び通路を進む。

 途中幾つか色が違う場所があったが簡単に避けることが出来た。

 先を見ると、真っ直ぐだった道の先が右へ直角に曲がっている。

 床に注意を払いながら曲がるとその先に何かここまでの壁とは異なる影の物があるな。

「何だろうこれ……。こ、これは『ロストガーディアン』ッ! 遺跡を守る古代のゴーレムはよくあるけどコイツは強力だよ! みんな構えてっ!」

 その声に慌てて身構える。

 シオンがランタンの明かりを向けた先には巨大な石の巨人が佇んでいた。

 中心には大きな一つ目の様な穴が開いていて両手には斧と棘の付いた鉄球を持って構えている。

 コレ、絶対強いヤツだ。


 ……あれ?

 動かないのか?

 身構えて暫く待ったがそのゴーレムはピクリとも動かない。

「な、なによ? 何もしてこないじゃない。ただの飾りなんじゃない?」

「いや、コイツは確かに『ロストガーディアン』だ。遺跡に居るゴーレム系の中ではかなり強い方だ、俺も生前に戦ったことがある」

 レイラが杖で突いても全く反応を示さない石像。

「なあ、これ壊れてるんじゃねーのか? 苔も生えてるし暫く動いてなかったぽいぞ」

 見た感じ、コイツも遺跡同様かなり古そうだ。

「このタイプのゴーレムが居るってことはかなり難しいダンジョンの筈なんだけど…。古すぎて機能が死んでるのかな」

 慎重にロストガーディアンを調べ始めるシオン。

 動かないと分かって蹴りを入れるレイラ。

 本当に何もないただの苔落としなのか?



「コイツは動かないみたいだけど慎重に進もう」

 壊れた石像の後ろは行き止まり。

 石造の横にある別の通路へと向かう。




 ……そうは言うけど案外簡単なダンジョンなんじゃないの?

 そんなことを思いながら動かない石像の横を通り抜けて隣の部屋に入るとその希望は打ち砕かれた。

「な、なによこれぇ! どっちに進めばいいのか全く分からないじゃないのよ!」

 思わず叫ぶレイラ。

 そこは大きな長方形の部屋となっていて、別々の方向へ4本の通路、上に向かって2つの階段が部屋の中に見える。

 更に床を見るとさっきの落とし穴らしき、色の違う正方形があちこちに存在していた。


「これは困ったね。こう広大で更に未開のダンジョンとなると僕らだけで全部を探索するのは無謀だよ。……諦めた方がいいかも」

 このような部屋が他にもあると考えたら正しくここは迷宮だ。

 何とかヒントでも見つかればなぁ。

「なあ、ローレンスが『グランドコア』を見つけた最深部ってここからどっちに行けばありそうか分かったりしないのか?」

「う~む、魔力の感じからもっと地下深い場所にある部屋だった気がするが……。駄目だ、前来た時より魔力が薄くなっている。俺がコアを外したからかもしれんな」

 首を持った手と反対の腕で抱えているグランドコアのカプセルを眺めながらローレンスは答えた。

「しょうがない。取りあえずこの部屋を探索してみようよ。運が良ければ古代文字とかで案内が書かれてるかもしれないしね。……あ、みんな落とし穴には注意して。特にレイラ」

 シオンの提案で部屋の中からヒントを探すことになった。


  -----


「何でもいいから何か見つけた人いる?」

 シオンの問いに答える奴は俺を含めて誰も居ない。

「駄目だな、ただ老朽化した遺跡だ。先に進むヒントは無さそうだぞ」

「俺もダメだったぜ。オセリー通りなら何か隠されてそうな階段裏とかまで探したけど何もないな、この部屋」

「私も収穫ゼロよ。強いて言うなら色の違う床はやっぱり落とし穴だったわ。うっかり落ちそうになって死ぬかと思ったわ……。だって穴の中に棘が敷き詰められてるのよ!」

 一人癇癪を起してるけど自業自得だから気にしないぞ。

 そういえば落とし穴に棘なんてあったっけな?


「どうする、運任せで通路を進んでみる? でもだいたいこういう迷路タイプのダンジョンには答えを見つけれず、適当に進んだ人向けの罠があるものだけど」

 絶対嫌だな。

 ここは諦めるしかないな。

 だが、一人は悩んだ後顔を輝かせて…。

「運任せねぇ。……そうよ、運だわ! 金治あなた運だけはアホみたいに良いわよね? 適当にすすんでもお宝がある部屋に行けるんじゃないかしら!」

「いくら運が良くてもそんな都合良く行くわけないだろ。俺は勝算がない賭けはしない主義なんだ。ほら、帰るぞ」




 俺は駄々をこねるレイラを尻目に元来た道を戻ろうと通路へと踏み込もうとした時だった。

「おい、金治! そっちは来た道じゃないぞ。戻るならあっちだろ」

「おっと、危ない危ない。レイラみたいにポカをやらかすところだったぜ」


 ゴガガガ、ズシャァァ……。

 ローレンスに呼び止められて笑いながら振り返った時、俺が入ろうとした通路の方向から落とし穴が崩れ落ちる音が聞こえた。

 慌ててもう一度振り返ると崩れたのは俺がいる場所からずっと先の通路の中にある落とし穴だ。

 その崩れた落とし穴の近くの空間に人一人分、モザイクでもかかったように歪んだ空間がビクリと動いたのを俺たちは見逃さなかった。

「何か居るわね! 先手必勝よ、『ファイアボール』ッ!」

「キャァァァァッ! 何するのよ、危ないわねっ!」

 モザイクの掛かった空間に真っ直ぐ火の玉が飛んで行くと、そのモザイクの中から叫び声を上げて人が飛び出してきた。


 魔法の爆発を背に俺たちと対面したのは黒いマントをたなびかせた若い女の子だ。

 赤紫色をした長めの髪、背丈は俺より小さいくらいか。

 ブーツにホットパンツ、短めのベストと全身を黒でまとめたスタイリッシュなファッションを着こなし、頭には黒地に髑髏が絵描かれたバンダナを巻いている。


 彼女は俺たちを強く睨み付けながら話し始める。

「あなた、いきなり攻撃魔法はないんじゃない? 全く、なんでこの私がこんな目に合わなきゃならないのよ」

「ご、ごめんなさい。モンスターかと思ったのよ。ところであなたは誰?」

 おお、レイラに謝罪させるとはコイツなかなかやるな。

「ふん、名前を聞くなら最初に名乗るのが礼儀じゃないかしら? 英雄パーティのダンジョン攻略って聞いたから待ち伏せしたのにこんなボンビーそうな連中が来るなんて……。おまけに盗賊職も居ないで諦めて帰るって情けない連中ね」

 うん、確かに俺たちはお金はあるけど装備は初心者の街でしか買ってないから見た目は十分貧乏臭いのだろうな。


「俺は天勝金治。この魔法ブッパしたのは仲間のレイラだ。お前は何をしに来たんだ? 俺たちみたいな情けないパーティを狙っても意味ないぞ」

「な、普通自分で情けないって言うかしら。まあいいわ、私の名前はジェリー。聞いたことが有るんじゃないかしら、名の知れた盗賊よ」

 胸を張って自信満々に自己紹介するジェリー。

 んなこと言われてもな…。

「知らねぇよな。それに情けないのは事実だしな」

 頷く仲間たち。

 恐らく、こいつら自分はともかく仲間は情けなくないって思ってやがるな。

 全員情けないわい。

「盗賊ジェリーの逸話を聞いたこともないの? 本当に?」

「ああ、知らねぇ」

 驚きの表情で固まる彼女。


 しかし、首を振ってまた話始める。

「ま、まあいいわ。私はあなたたちの事を知ってるわよ。ブリッジロビーを救い、他にも大活躍してる英雄でしょ? 金治とレイラにデュラハンになった元伝説の騎士ローレンス、それに逃げ出した天才のシオンね」

「何を言うか、俺は正真正銘伝説の騎士ローレンスだ! 元じゃないぞ」

「僕だって逃げたわけじゃない。学園にはもう用がないから出たまでだ」

 慌てて反論する二人。

 気になることを言ったがそれどころじゃないな。

 このジェリーって女は俺たちの事を調べつくしてる訳だ。


「おい、ジェリー! 一体何が目的なんだ。遊びたいなら付き合うぞ」

 彼女は少し悩んだ後、再び胸を張って答える。

「名の知れた英雄パーティなら『バロンパルスの遺跡』の奥へ進む方法を見つけると思ったけど見当違いだったわ。あなたたちにこっそりついて行ってこのダンジョンのお宝を頂こうと思ってたんだけど…」

「何言ってんのよ、このダンジョンのお宝はぜーんぶ私たちのものよ! そんなセコいことしても無駄なんだからね!」

 お宝というワードに反応するセコいレイラ。

「このダンジョンを狙ってたって、お前さては違法冒険者だな! 古代の謎を解くカギが遺跡にはあるかもしれないんだ。金銭目的で禁止されてるエリアに入るなんて駄目だよ!」

 シオンは毅然とした態度で怒鳴る。

 そう言えば特例で俺たちはここに入ってるんだったな。



「無駄なのも全部わかってるわよ。こうなったらターゲットを変えるわ」

 そう言うとローレンスの持っているカプセルを指さして…。

「その『グランドコア』を頂くわ。裏ルートに流せば大金になる代物よ!」


 俺たちは咄嗟に身構える。

 マヌケそうな盗賊、ジェリーは俺たちの敵みたいだな。

 遺跡の外からつけて来たみたいだが向こうは一人、こっちは四人。


 今回は余裕じゃね?




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