第44話 一番乗りチャンス
「あ~あ、なんか楽にレベルアップする方法ねぇのかなぁ」
何時ものギルドのカウンター席。
俺は冒険者カードを天井の明かりに透かしながら呟いた。
「突然どうしたのよ金治? レベルアップなんてそんな積極的な事言い出して、悪い物でも食べたの?」
「金治ならやりそうだね。商店街拾い食いしたでしょ?」
本気で心配するレイラと呆れ顔のシオン。
どうやら俺は仲間に信頼されてるようだな。
「そんなに心配することもないだろう。それに先日のスライム大討伐でレベルは上がったんじゃないか? 俺もこの通りだ」
そう言ってローレンスはカードを突き出してきた。
なんとクエストの前の彼はレベル1だったのにカードには『ダークナイト、Lv.13』と表示されているのだ。
……上がり過ぎじゃないか?
「そうよね、私もレベルが2つも上がったわ。もうレベル21よ!」
「ふふん、僕なんてもうレベル27だぞ! 経験値は止めを刺した人に多く入るからスカルゴーストを倒した時にはもうレベル24だったもんね」
みんな予想外にレベル高いな。
これは恥ずかしくなって来たぞ。
「で、金治はレベルいくつよ? ドラゴンもラボもみんなあんたが止め刺したんだから結構上がったんじゃないの?」
純粋な顔で聞いて来るなよ…。
「……お、俺はこれだ」
恐る恐るカードを出した。
『遊び人、Lv.10』
何度見ても変化はない、この数値。
「なっ、活躍に対して低過ぎない? 確かに職業によって上がりやすさはあるけどこれはいくらなんでも…」
「うむ、低いな。あのスペリオル・ラボは相手の自爆だったから経験値がなかったと考えても低いな」
「金治はスライムの時も結構倒してたのにね。どうしてかしら?」
何時もふざけた仲間も真剣になる数値だ。
勇者にはなりたくない俺も悲しくなるぞ。
「お前ら、レベルってのは戦いで上がるだけじゃないんだぞ」
話を聞いていたマスターが声をかけて来た。
「戦いだけじゃないってどういうこと?」
「職業によっては経験によってレベルが上がることもよくあるんだ。例えばシオンなんか勉強とかしてるうちに上がったり、『旅芸人』だったレイラも経験あるんじゃないか? もちろん、剣の稽古なんかでも上がるだろうな。要は工夫も必要ってことだ」
そう言い残してマスターはギルドから出て行った。
納得の表情の三人。
なるほど、戦闘以外にもレベル上げの方法があるのか。
「確かに私も旅芸人時代には戦闘なんか殆どしなかったのに芸を磨いてたらレベルは上がってたわ」
「僕も経験あるな。本を読んで新しい魔法を覚えたらレベルが上がってたもん」
「俺も騎士の訓練をしてレベルが上がってたんだろう。そのおかげで今、レベルが上がりやすいのかもな」
よし、ここは俺も戦闘以外でレベルアップだ。
『遊び人』のレベルを上げるには…。
「それなら俺は遊びまくればレベルが上がるのか? 十分遊び呆けた毎日の気がするんだけど上がってないなぁ」
突如レイラが立ち上がって言う。
「それじゃあダメよ、遊びでレベルを上げたいなら徹底的にやらなきゃ! と、いうわけでカジノにいきましょう! きっとすぐレベルアップよ」
「それはレイラがカジノで遊びたいだけだろ。いくら遊び人でもただ遊んでたんじゃレベルアップはしないよ」
自信満々の彼女の意見はすぐに却下された。
そりゃ、遊んでレベルアップしてたら日本に居た頃の俺なんてレベルカンストしてるだろうしな。
「おい、金治! お前宛に荷物が届いたぞ!」
レベルアップを諦めてため息をついていると突然ギルドの外からマスターの大声が聞こえた。
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仲間と共に外に出ると冒険者や通行人で人だかりが出来ている。
その中心には大きな木箱があり、隣で手紙を持ったマスターが待っていた。
「来たなお前ら。これは金治とそのパーティに宛てたものらしいぞ。差出人は王都の冒険者ギルドだな」
その言葉に周りがザワついた。
「なんだ、どうしたんだみんな? 凄い事なのか?」
「みんな騒ぐのも当然だよ。なんたって王都の冒険者ギルドはこの大陸中のギルドの総本山だもの。そこから届く荷物っていうとパーティ指名の特別クエストか特別報酬か…」
「特別報酬っ! きっとブリッジロビーでの戦績を称えて追加のご褒美が届いたのよ。早く開けてみましょう!」
俺たちが止める間もなくレイラは素早く木箱に飛びついた。
長さ1mほどの箱を開けると中には見覚えのあるものが入っている。
上下に金属製の蓋が付いた全長70㎝ほどのカプセル。
中には黄色く輝いている光の玉が1つ入っている。
「これって確かラボの…」
「う、うむ。俺たちが動力室から持ち出したコアだな。『フレイムコア』は造船場に戻されていたがなんでこれがここにあるんだ?」
1つで工場のボイラーを半永久的に稼働させ、4つまとめて使えば超巨大な要塞モンスターすら動かす魔力の塊だ。
こんなの報酬で貰っても使い道ないぞ。
「あ~、続けていいか? この荷物についてた手紙によるとお前たちへのクエストみたいだな。内容を具体的に言うとこの『グランドコア』ってヤツを元あったとこに戻して欲しいらしい」
めんどくさそうなクエストだな。
いや、そんな事より…。
「何でそんなクエストを俺たちなんかに頼むんだ? 王都が総本山なら優秀な冒険者もいっぱいいるだろ」
「そうよね、お使いくらい私たちに敢えて頼むことないわよね」
「恐らく僕たちの実力が買われたんじゃないかな。一応戦績だけは上げてるし」
戦績を上げたからって迷惑な話だな。
俺たちは言う程強くないし優秀でもないんだぞ。
「いや、俺のせいかもしれん。コアを各地で盗んだのは俺なんだ。『グランドコア』はフロントの近くの遺跡で取って来たんだ」
暗い顔をして言うローレンス。
王都にはそこまでバレてるのか?
「いや、ローレンスのは関係ないだろう。ただ目的地に一番近くにいて名前が挙がって来てるパーティだからだと思うぞ」
マスターがフォローに入ってくれた。
でも遺跡に返しに行くとかめんどくさそうだな。
「うーん、でもこのクエストはパスかなぁ。大変そうじゃん」
仲間たちも頷く。
俺たちにはお金の余裕があるから面倒事に関わる必要はないのだ。
しかし、俺の言葉にマスターは首を傾げて言う。
「いいのか? 王都からの指名クエストは報酬がかなり旨いぞ。それに目的地も美味しいと思うんだがな」
その言葉に食いつかない俺たちではない。
「ねぇ、マスター! 報酬が美味しいのは当然として目的地もいいってどういう事よ?」
「ああ、この遺跡はダンジョンになってるんだが殆ど探索されていないんだ。どんな遺産があるか分からないから上が立ち入りを制限していてな、こう言う機会じゃないと探索出来ない場所なんだ。誰も踏み入ってないし、宝箱も開けられてない、一番風呂ダンジョンは冒険者じゃなくても憧れると思うがな」
俺たちは顔を見合わせてニッと笑った。
未開の地の宝箱。
お宝の匂いがプンプンするじゃねーかっ!
「みんな、行かない手はねーよなっ! ダンジョン探索、行こうぜ!」
「当然よ! 宝箱は一番に開けないとね、古代のお宝は私たちの物よ!」
「誰も踏み入ってない遺跡かぁ。ロマンがあっていいね! レアなアイテムもあるかも」
「うむ、俺も罪償いになるしな。それにこう、お宝探しでダンジョンに行くのは初めてだ。夢がある冒険って憧れてたんだよな!」
俺たちが盛り上がるとマスターも笑って言う。
「うん、良かった。これで俺のギルドの株も上がって、ボーナスも入るってもんよ! ま、一回コアの部屋に入ったローレンスが居るんだから心配はないだろ」
ここで来たか。ファンタジー世界名物、ダンジョン攻略。
次のクエストは古代遺跡でお宝探しだ!




