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ジャック・ポット・チャンス!~幸運転生者の異世界日記~  作者: 天勝金治
第四章 ダンジョンお宝争奪戦
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第43話 スライムパニック!

「ま、まだ出るのか、喰らえッ!」

 振り下ろした短剣がスライムに当たると白い閃光と共に真っ二つい切り裂く。

 簡単に倒せるから最初は面白かったけどだんだん飽きて来た。

 いくら何でも多すぎるだろ!


 フロントの街の近くでひたすらスライムを狩る俺たち四人。

 リックたちは街の東側、俺たちは西側と言うことでスライム退治を始めてもう昼過ぎになるがまだどこからか湧き出してくる。

「はぁ~、もういいんじゃないの。体中ベトベトよぉ、早く帰って綺麗になりましょうよ」

 その場に座り込んでレイラは嘆く。

「いい加減数も減って来たしね。一旦リックたちと合流して今日は帰ろっか」

 ヘトヘトな様子のシオンも近くへ戻って来る。

「いや、まだだ! この俺に屈辱を与えた奴を許す義理はないっ! この世のスライムを絶滅させるぞっ!」

 もう肩で息をしてるのに剣を振り続けるローレンス。

 スライムなんかに不意を突かれたことがまだ許せない様だ。

「悔しいのは分かるけど俺たちはお前より多くスライム塗れになってるんだぜ。お前は初めの1回だけじゃん。そろそろ機嫌治そうぜ」

 スライム狩りを始めてから俺とレイラとシオンは何度かスライムに纏わりつかれて助けを呼ぶ羽目になっている。

 ホントにベタベタで気持ち悪いから着替えたい。

「お前たちはよくても俺は許せん! 騎士の誇りに掛けてもだ。俺をアダルト譲みたいな扱いにしやがって…」

「アホなこと言ってるけどローレンスはもうプライドも騎士道もないって言ってたじゃん。早くリックたちの方に行こう、向こうはもう片付いてるかも。そしたら手伝って貰えるよ。ほら金治、首だけでももってちゃおう」

 怒ってるローレンスの首をシオンが放り投げて来た。

 いや、そんなことより…。

「おい、アダルト譲って何だよっ! この世界にもスライムをエッチなことに使う文明でもあるのか? おい、待ってってば」

 シオンたちを追いかけて首を持って追いかける。

「金治、首を返してくれないか?」

 腕の中の首がなんか言ってるが構うことなくリックたちがいる東側に向けて俺たちは歩き始めた。

 後ろを首のない騎士がガシャガシャと追いかけてきていた。




   --------




「おーいっ、金治! 助けてくれっ!」

 街の正門からリックが俺たちへ叫んで手を振って来た。

 彼も全身汚れているが怪我一つなさそうだな。

「あら、リックじゃない。もう東側は終わったの?」

「いや、まだだけど…」

「困るよリック。サボっちゃダメじゃないか」

 レイラとシオンが指摘する。

 そんな事よりリックなら。

「なぁ、アダルト譲って何だ? エッチなものか? こいつら教えてくれねーんだよ」

「いや、後で俺が教えるから手を放してくれ…モガッ」

「金治お前、アダルト譲も知らないのかよ。人生の半分は損してるぜ! アダルト譲ってのは要はエッチな映像を撮ったり男の相手をする…」

 満面の笑みで語り始めたリックの肩をレイラは突くと…。

「そう言う話はレディーのいないところでやりなさいよね。それよりさっき助けてくれ~とか言ってたけど何かやらかしたの?」

 怪訝な顔をしたレイラに問われてハッとするリック。

「そうだ! 大変なんだ、スライムが合体しやがった!」

「合体って大変じゃないっ! どこで出たのよ?」

「スライムは集まると強敵だよ、何でそんなになるまで放っておいたんだ! それよりそんな大変なことは早く言ってよ!」

 仲間たちが真剣な顔で叫ぶ。

 どうやら本当に大変なことになったようだ。

「早く言えってお前らが…。いや、それより今はバードたちが戦ってるんだ! 急いで来てくれっ!」

 リックの後を追って走り出す俺たち。


 ……また面倒ごとの予感だな。



   ----------



 街の東側の草原に出ると青い大きなものがうごめいているのが見えた。

 バードとバルドがソイツと戦っている。

「あ、あれは『ユニオンスライム』ッ! かなり大きいぞ」

 シオンが叫ぶ。

 ユニオンスライムとか言う奴は見た目はただ巨大なスライムだ。

 バードが魔法で、バルドが光を纏った拳を叩き込んで攻撃しているが全く効いている様子がない。

「おう、リック遅いぜっ! コイツどんな攻撃も効かねーんだ!」

「た、助かったっす! もう少しで食べられるところだったっす!」

 バルドとバードが駆け寄って来た。

 二人とももう限界といった感じだ。

「なあ、シオン。アイツって人間を食べるのか?」

「いいや、人や物を食べることはないよ。攻撃手段も持ってないヤツだ。でも水分を求めて触ったものを包み込んでくるんだ。中に取り込まれたら窒息死は確実だぞ!」

 その声にみんなが一歩後ろへ下がった。

「な、なによっ! そんなヤツどうしろって言うのよ!」

「この『ユニオンスライム』はただのスライム以上に攻撃は効かない上に合体前より魔法耐性が高いんだ。でも放っといたら増殖するぞ!」

 無茶苦茶なやつだな。

 確かにゲームでも合体したスライムは体力も攻撃も桁違いにパワーアップするものだけどリアルで出たら倒しようがないじゃん!


「だが戦うしかない。金治、俺の首を。同時に攻撃するぞ!」

 手を差し出すローレンス。

 俺も魔剣を持っている。

 それにローレンスの攻撃ならば…。

「ほらよ。さあ行くぜっ!」

 首を渡して俺とローレンスは走り出した。

 流石は伝説の騎士、魔法のマントで早く走れる俺に負けない速さで敵に迫る。

「これでも喰らえっ!」

「我が剣の錆にしてくれるわっ!」

 動きは鈍い巨大スライムの左右を駆け抜ける間際に切りつける。

 俺の『ミリオンスター』の白い閃光が右側を、ローレンスの『プロミネンス』の炎の斬撃が左側を襲った。

「やったか?」

 ローレンスの声と共に振り返る。

 確かにスライムの左右には切り裂かれた跡があり、炎上していた。

 しかし、直ぐに炎は消えて斬撃の後も元に戻ってしまった。

「なっ、全く効いてねぇじゃなーかっ!」


「くっ、元々スライム系には物理は効きにくいんだ。魔法の剣でも限界があるよ。ここは魔法で攻撃だ! レイラ、同時に行くよ!」

「ええ、分かったわ。遅れないでよシオン!」

 二人は距離を取った場所で魔法の詠唱を始めた。

 魔力が集中して行くのが分かる。

「行くよっ! 『ホーリーレイ』ッ!」

「吹き飛ばしてやるわっ! 『スマッシュファイア』ッ!」

 シオンの放ったレーザーがスライムの中心を貫通し、レイラの爆風がその巨体を包み込んだ。

 これはどうだ?

 煙が晴れていくとそこには無傷のスライムの姿が…。


「何よ何よっ! 全く効いてないじゃないっ! アイツ、タフすぎるのよ」

 地団駄を踏むレイラ。

 みんながうつむき、不安を露わにしている。

 このまま放っといたらこの無敵のスライムが増殖するというのだから大変だ。

 でも攻略法は思いつかない。

「お、おい。お前らドラゴンもでっかいメカも倒したんだろ? スライムぐらい何とかなんないのか?」

 リックが恐る恐る聞いて来る。

「やっぱり僕たちは弱いんだ。まぐれで勝って来たけどここまで実力がなきゃどうしようもない相手にはどうすることも…」

「そうよね、工夫と運でなんとか生き延びてきただけだものね…」

「くっ、俺たちでは力不足なのか? アイツがもう少しモロければ俺の魔剣で…」

 悔しがる仲間たち。

 確かに運だけで何とかして来た俺たちに強い魔法や技は無いし、頼みのローレンスの剣も効かなかった。

 ……でも工夫でいいなら何かないのか?




「みんな一旦離れるっす! スライムが攻撃してくるっすよ!」

 バードの叫びでハッとして見るとスライムが激しく動いている。

 ただの水の塊の様だった表面は波打ち、何かするようだ。

 離れないと…。

 いや、相手を弱くすればローレンスが何とか出来るんだろ?

 それなら…

「こうなれば運任せ、俺が弱体化させてやるっ! 久々のダイスロールだっ!」

 俺は『ダイスの腕輪』からサイコロを出して巨大スライムに向かって投げる。

 これが決まれば相手は弱くなる…。

 しかし、サイコロはスライムの表面に当たるとドポンという音と共にスライムの中へと沈み込んだ。

「あ、あれ? どうなるんだ?」

 暫く待つとサイコロは光になって消えてしまった。

 このパターンは初めてでどうすればいいか分からないぞ。

「忘れたの金治? スライムは自分の体に当たったものを取り込むんだ! サイコロなんて投げたら取られるに決まってるだろ!」

 シオンが叫んでハッとしたが既にスライムは白く輝く二つの目で俺の方をジッと見ていた。

 巨大スライムは体の形を変えて大きな手の様な形にして、空高く広げた手を伸ばして行く。

 その手の様な形に伸びた体を俺の方に倒してくる。

 ……これは叩き潰されたな。


 その時後ろに強く引っ張られた。

 迫っていた巨大な手は目の前に叩きつけたれ、水の様にバラバラに弾ける。

「大丈夫か金治っ!安心しろ、俺がついてる!」

「た、助かったぜローレンス…。ん、あれは…」

 弾けたユニオンスライムの腕は幾つかの小さな塊になる。

 それぞれに白い目が開き本体の方にゆっくり戻って行く。

 これ、ただのスライムか?

「ちょっといいか?…そりゃっ!」

 ローレンスに離してもらい、巨大な本体に戻って行くスライムの一体を剣で切ってみた。

 白い閃光と共に真っ二つになると水に戻ったように落ちる。

「これってただのスライムだな。集まってるだけで全部さっき狩ってたヤツらなのか?」

「当り前じゃない、何言ってるのよ金治。巨大スライムは普通のスライムが合体して出来てるんだから」

 レイラが呆れて答える。




 これ、アイツを倒す答えじゃないのか?

 いくらデカくても弱いスライムの集まりなんだ。

 ならば…。

「アイツをバラバラにしちまえば俺たちでも勝てるんじゃねーか? レイラの魔法で出来るだろ!」

「た、確かに元はスライムだから合体を止めさせれば倒せるけど…。そんな倒し方聞いたことがないよ! それにレイラの魔法は効かないよ」

「さっきの見てたでしょ? スライムは水の塊だから私の炎の魔法はあんまり効かないのよ。合体前のスライムならともかく、あの大きいのは…」

 なるほど、前例がないのか。

 楽しくなってくるじゃねーか!

「いや、使うのは爆発じゃなくて炸裂の魔法だ! あれならあの巨大スライムの中に入れれるんじゃねーか?」

 少し考えてハッとするレイラ。

「その考えはなかったわ! やって見る価値はあるわね」

 顔を見合わすと俺たちはスライムに向かって駆けだした。

「お、おいっ! 何する気だよっ!」

「いいからお前らも戦う準備しとけよなっ! スライム相手なら勝てるんだろっ!」


 状況を飲めないリックたちを置いて四人でユニオンスライムの前にやって来た。

「この魔法を使う事になるとはね。『エアバースト』ッ!」

 レイラが呪文を唱えるとオーラを纏った空気の塊が出来上がる。

 これは圧縮した空気を破裂させるだけのダメージはほぼ無い魔法。

「いっけぇっ!」

 杖を振り下ろすと空気の玉はスライムの表面にぶつかり…。

 ドプンッ、と音を立てて内部に入り込んだ。

 次の瞬間玉は輝き、ユニオンスライムを粉々にして破裂した。


 空に舞った大量のスライムが降り注ぐ。

 近くにいた俺たちはもちろんスライム塗れ。

 でもこうなればこっちのものだ!

「さあ、スライムを狩るぞっ! リックたちも戦えよっ!」

 驚いて固まっていたリックたち三人も慌てて近くのスライムに武器を振りはじめ、俺たちは大量のスライムを次々倒してゆく。

 もう一度合体される前に。

 武器を軽く振っただけで水に代わって行くスライム狩りは正しくフィーバーモードだ!


「凄いな、金治! よくこんな方法思いついたな!」

 スライムを切りながらローレンスは嬉しそうに言う。

「フフン、俺としたことが忘れてたぜ! 合体スライムでも小さい敵が集まって出来てるんだ、バラして雑魚を片すのはゲームじゃよくある敵さ!」

「ふーん、ゲームってのはよくわかんないけど金治の作戦、最高よ! さっきまであんなにタフだった敵が一撃よっ!」

 強い敵が弱くなった。

 こんな楽しいことはないよな!

「そうか! 合体するスライムなんかと戦う冒険者はみんな高レベルだったんだ! レイラみたいな初級魔法なんか使おうとも思わなかったんだろうね。これは工夫と発想の勝利だっ!」

 魔法を放つシオンも嬉しそうだな。


「さぁ、とっとと片付けてギルドで打ち上げだっ!」

 俺の叫びにみんなが答える。



 スライム討伐のクエスト、完全攻略だっ!





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