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ジャック・ポット・チャンス!~幸運転生者の異世界日記~  作者: 天勝金治
第三章 対決!勇者様!!
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第38話 明日をもう一度

 轟音を響かせて稼働する巨大な動力炉。

 その表面は怪しく輝いているが魔力の影響だろうか。

 沢山のパイプがあちこちから飛び出しどこかへ続いている。

 現代で言うところの軍艦くらいの大きさの超巨大モンスター工場『スペリオル・ラボ』の心臓部、動力室へたどり着いた俺たち。

 これを壊せばこの戦いが終わる、……ハズだ。

 ……と言うかこんな怖い場所からおさらばしたいんだ、俺は!


「さあ、ワタルやってくれ」

「分かったぜ! 俺が決着をつける、この街を守るんだ!」

 ワタルが一歩進み出て、魔剣『ギガノカイザー』を抜いて頭上に掲げる。

 この構えは勇者ワタル最大の技、ラボの進撃を止めた技だ。

 こう、堂々と構えるワタルは本当に物語の勇者のようだな。

「行くぞ…、『ゴッドソード』ッッ!」

 掲げた剣に光が集まり巨大な剣を作り出す。

 バチバチと電気を帯びたその光の巨剣は高い動力室の天井ギリギリまで伸びる。

 後ろで見ている俺にももの凄いエネルギー圧が押し寄せて来た。

「いっけぇぇぇぇぇっ!!」

 力強くワタルが剣を振り下ろすと頭上の光の剣が倒れる。

 倒された光は巨大なビームとなって発射された。

 動力炉に激突すると激しい閃光が動力室いっぱいに炸裂する。

 ……凄い威力だ、これならひとたまりもないな…。



「や、やったか…!」

 ……ワタルよ、何でそんな失敗フラグみたいなセリフを!

 動力炉の周りは煙に包まれて見えない。

 でもこう言う場合って大概…。

「無駄じゃ、無駄じゃ! そんな攻撃じゃ一生壊せんぞい!」

 振り向くと俺たちが入って来た入り口で息を切らしたギラが叫んでいる。

 どうやら補助魔法で強化された俺たちを必死に追いかけて来たようだ。

「その動力炉にはな、外装よりも強力な防御の魔法が掛けられてるのじゃ! 強力な魔法を何百発撃とうと破れはせんわい!」

 高笑いするギラ。

 ……やっぱそう簡単にいかないよな。


 ボス戦を無視してステージクリア何て聞いたことがない。

「クソッ、どうしろと言うんだ! おのれギラめっ!」

「まあ、まてよワタル。ここはだな。……おーい、ギラ! この動力炉ってどうすりゃ止まるんだ? このままじゃ俺たちに勝ち目がないぞー、死んでしまう」

 適当に聞くとやはり反応してくれる。

「フハハハハッ、馬鹿な勇者共め! 教えてやろう、止めるだけならまず動力室の周りにコアが入った4つのカプセルがあるじゃろう!」

 あー、親切に教えてくれるか。

 確かに動力炉の周りに4つのカプセルが設置されてるな。

 それぞれ別の色に光っていて、パイプで動力炉に繋がれている。

 一つは造船場で見た『フレイムコア』だな。

 恐らく魔法のエネルギー結晶とかそんなんだろう。

「それらがこの動力炉のエネルギーじゃ! それを外せば止められるが安全装置がかかっており、無理に外すと…」


 バギッ…。

「よしっ、取れたぞ!これでお前の企みも終わりだな、ギラ!」

「「……はぁ?」」

 ワタルの言動に俺とギラがシンクロした。

 振り返ると『フレイムコア』が入ったカプセルを持ったワタルが満面の笑みで立っている。

 隣には力ずくで外された後の壊れた装置が…。

「……なあ。もしも無理に外された場合はどうなるんだ?」

「……安全装置が作動してこのラボは、…自爆するんじゃ」




『ビーッ、ビーッ、動力炉に異常発生! 安全装置を解除、自爆シークエンスに移行! 乗組員は直ちに脱出して下さい! 繰り返します…』

 突如けたたましい警報音と機械的な音声が響き渡り、部屋の中は赤い光がパトランプの様に点滅し始めた。

 ……ヤバい、絶対ヤバい展開だ。

 どうしよ…。


「ちょ、ちょっと! どーすんのよコレッ! どこが安全装置なのよ、自爆よ、自爆! あんたのラボでしょ、今すぐ何とかしなさいよっ!」

「くっ、くるじい…っ! わ、わしはただ昔人間に壊されたこのラボを修理して使ってただけじゃからそんな方法しらんっ! それにこれは秘密漏洩防止のための安全装置らしいからわしのせいじゃないぞいっ!」

 怒り狂うクロムに首を絞められたギラは必死に叫ぶ。

 止まらんのか、この自爆。

「な、何だと! お前が魔王軍の刺客としてこの街を襲いに来たんじゃないのか?」

「わしはこの街を壊すくらいの手柄を立てれば出世出来ると思ったから来ただけじゃい! そこに噂の勇者がやって来たから関わったらこのザマじゃ、何でわしの努力は報われないんじゃ…」

 ワタルは真面目に驚いてるけど随分アホ臭いな。

 賢くないモンスターだと思ってたけどコイツアホすぎるだろ。

「貴様騙したのかっ! この作戦を成功させれば魔王軍に掛け合ってこの俺の待遇をよくするって話だっただろうがっ!」 

「成功してればわしは幹部に出世、その頼みも聞ける筈だったんじゃ! わしには部下も居ないから必死にこのモンスター製造機を復活させたのに…」

 ローレンスも災難だったな。

 このギラってヤツは恐らくブリッジロビーの街襲撃を成功させてたとしても幹部にはなれないタイプの存在だろうなぁ。


 ……あんまりギラの茶番に時間はかけられなさそうだな。

「おい、この自爆は止められないんだろ? どれくらいで爆発するんだ?」

「そ、そうじゃな、まずこの自爆は解除できんわい。爆発までは恐らく5分ほどじゃな。エネルギーをこの動力炉に集中させて爆発させる機能じゃから自爆まで少しは時間があるはずじゃ。近くなるとまた何か放送されるじゃろう」

 なるほど、この動力炉がそのまま爆弾になるってわけか。

 ……壊せないよなぁ。

「で、その爆発は強いのか? それなら早く逃げたいんだけど」

「そりゃあ、余裕でここから海まで吹き飛ぶ超爆発じゃ! 伊達にこのラボの全エネルギーを使う自爆じゃないわいっ!」

「威張るな!」

 鞘に入れたままの短剣でギラの頭をぶん殴っといた。

 これはマズいぞ。

 どうしようもなくなったぞ。

「フハハハハッ! そもそもこの街が吹き飛べばわしの作戦は大成功じゃ! せいぜい足掻くがいいわい、さらばじゃっ!」

 そう言い残してギラは来た道を飛んで引き返していく。

 いや、アイツにかまってる暇はないな。

 今はこの自爆を何とかしなきゃ!

 警報は鳴り続けている。


「取りあえず脱出するか? ここにいちゃ間違いなく死ぬぞ」

「いや、逃げる前に残った3つのコアを回収したほうがいいだろう。アレは俺が盗まされた物だがどれも莫大な魔力が圧縮されたものだ。爆発に巻き込まれたらどうなるか分からないぞ!」

「そうね、私もアレからは強い魔力を感じるわ。急ぎましょう」

 俺とクロムとローレンスで残りの三か所の元へ行く。

 カプセルが固定された装置の足元には何やらレバーが付いている。

 それを引くとカプセルを固定していた金具がガチャンと外れた。

 俺は青く輝く玉が入った大きなカプセルを抱えて出口へ走る。

「みんな、まずは一旦外へ出るぞ!」

 ワタルに続いて階段を駆け上がり動力室まで来た通路に入った。

 赤いアラートランプが点滅する廊下を俺たちはひたすらに走る。

『ビーッ、ビーッ、動力炉に…』

 ……ロボットアニメとかでこういうシーンあるけどマジで怖いなコレ。




 来た道を駆け戻り、ローレンスの体が摑まっていた独房へ。

 壁に開いた穴から飛び出し、急斜面のラボの外壁を転げ落ちるように落下した。

 外にも警報が響いている。

「あ、戻って来たわ! 金治ッ、なにか大変なことになってる見たいだけど大丈夫?」

 大きく手を振るレイラ。

「見てください、アーロンは僕らがバッチリ助けましたよ!」

「ええ、何とか意識を取り戻してくれたわ。完全回復には睡眠が必要だけど」

「おお、ワタル! こいつらのおかげで助かったんだ。お前ももちろんやったんだろ?」

 装備はボロボロのままだが復活したアーロン。

 シオンとリリアンはやり切った感を出して誇らしげだ。

「見てくれお前たち! 街のモンスターを駆除して駆けつけてくれた冒険者たちがここの残った雑魚を狩るのを手伝ってくれたんだ!」

 フェイの言う通り周りや崖の上には沢山の冒険者の姿が。

 ……最悪だ。


 でも何故か大部分で歓声が上がっている。

「何でこんなみんな喜んでるんだ?」

「だって、倒したから自爆するんでしょ? やったじゃない」

 嬉しそうに答えるレイラ。

 そうか、外の奴らはギラの話を聞いてなかったか。

「何言ってんだ、この要塞はもうすぐ自爆する。それも海まで届くほどの大爆発を巻き起こしてだ!」

 ワタルの言葉で全員が静まり返る。



 その時、ラボからアナウンスが爆音で流れた。

『自爆まで残り100秒、直ちにこの場から離れて下さい! 繰り返します、自爆まで残り100秒…』

 冒険者たちは叫びだす。

 逃げ出したり、崩れ落ちたり、泣きわめいたり…。

 まさに地獄絵図だ。

「ど、どうするのよっ! もうどうしようもないじゃない!」

「本当にどうしたらいいんだっ! 俺は勇者なのに成す術はないのか…?」

 みんなも絶望ムードだ。

 その時、ラボの独房にあいた穴からギラが飛んで出て来ると…。

「全く、円盤の魔力も全部吸収するなんて無茶苦茶な機械じゃ。……おや、勇者諸君、まだこんなところでのんびりしていたのかね? わしの様に空でも飛べば逃げられるかもしれんぞ? ……おっと、人間は飛ぶことも出来んのじゃったな! わしはとっとと逃げるとしよう、さらばじゃ!」

 嫌味を言い残して真っ直ぐに空へと飛んで行く。

 冒険者たちは怒って石を投げるが当たる訳がない。

 ……くそっ、俺も飛べればなぁ。


「そうだ金治、あの魔法を僕らに掛けてよ! そうすればどんな爆発も大丈夫だよ!」

 シオンが大声で言うと仲間たちはおおっ、と声を上げた。

 確かに即死を防ぐバリアを貼る魔法、『ワン・モア』を使えば生き延びれるだろう。

 でも…。

「無理だよ。俺の体力は残り少ないし、1,2回しか使えそうにない…」

 俺の体力は限界だ。

 魔法は体力がないと発動も出来ない。

「そ、それなら俺たちが魔力回復のポーションを持ってるぞ! リリアン、高価なものだからと言ってケチってられないぞ、出してくれ!」

 ワタルが慌てて言って来るが…。

「いくつそのポーションはあるんだよ? お前と俺の仲間たち全員に掛けてもそれ2本は必要だぞ。…それに俺たちが助かっても街も、他の冒険者は終わりだぜ?」

 海まで届く大爆発。

 そんなものが起きたらこの辺に居る冒険者はもちろん、ブリッジロビーの街に残ってる人々やグライドさんたちは一溜りもないだろう。


 確かに俺だけでも生き延びたいと思って生きて来た。

 死ぬ前の世界でも俺だけは、という考えで何時も生きていた。

 ……でも、実際にそんな選択の出来る状況になると後味悪すぎるじゃん。

 こんな悔しい選択、俺の勇気じゃできそうにないや。


 何か、何か手はないのか?

 誰もが絶望の表情を浮かべているこの終末に。

 答えが出る訳もないな。

「何で、何でだよ。俺は勇者の筈なのに、みんなを救えなかった。……それに最後の最後で自分たちだけでもって考えちまった俺がいる。金治のがよっぽど勇者じゃないか……。たった一体のモンスター相手にこんな終わりを迎えるなんて…」

 膝をつき、絶望の叫びを上げる勇者ワタル。

 地面を殴る彼の拳からは血が出ているほどだ。

 ……それほど勇者というのは、重い使命を背負っているのだろう。




 俺も悔しいさ。

 確かに大きいとはいえこの一体のモンスターに全てを壊されるなんて。

 たった一体の……。

 ……一体?

「最後に俺にチャンスをくれないか?」

 みんなが俺を見るが答えられる奴はいないか。

 俺はスペリオル・ラボの前に進み出た。


『ビーッ、ビーッ、自爆まであと10秒! 自爆まで…』

 鳴り響く警報。

 俺の撃てる魔法はあと一発。

 正真正銘のラストチャンスだ。

 俺は真っ直ぐ両腕をその要塞に突き出す。

「大きくても一体のモンスターだ。なら、補助魔法も効くはずだ!」

 ……ゲームだと数人のチームでも巨大なものでも一体と表示される敵には単体に効果がある魔法が普通に効く。

 きっとこれも同じである筈だ。

 いくら大きくても一体。

 あと一発の魔法を自分に撃てば確実に生き延びられるだろう。

 この作戦が成功するかどうかも完全に運任せだ。

 もしかしたら効かないかもしれない。


 ……でも、俺はこの唯一使える魔法に全てを賭けようと決めた。

 俺はまだこの世界を笑って冒険したい。

 この仲間たちとまだまだ見てない物をみたい。

 いつもの様に笑える明日を迎えたいんだ。

 何も失いたくないんだ。

「明日をもう一度見たいんだっ、『ワン・モア』ッッ!!」



 …………だって、俺は欲張りだからな。



 警報が鳴りやみ、スペリオル・ラボ全体が赤く光った。

 独房の穴から光線の様なものが飛び出してゆく。

 その瞬間、それを覆い隠すように金色に全体が輝く。

 その輝きはどんどん強くなり何も見えないほど強い閃光がその場を包んだ。

 どうなる…?





 パリーンッッ……!

 ガラスの割れる音が響いた。

 目を開けると粉々に砕けた『ワン・モア』のバリアが金色にキラキラ光りながら消えてゆく。

 続いてスペリオル・ラボはもの凄い音を立てて崩れ始める。

 ガラガラと巨大なモンスター工場は崩壊して行く。

 数秒もたたない内に目の前には瓦礫の山が出来上がっていた。

 

 ……戦いは、お終いだ。




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