第31話 再開のクロム
突然パーティへの勧誘を受けたデュラハン、ローレンスは固まった。
そりゃそうか、いざ戦うって相手からの仲間にならないか?だもんな。
これが通れば強い仲間が増えて戦闘も無しだ。
「な、何言ってんじゃ! 俺はモンスター、しかもアンデッドだぞ! 人間と一緒に何かいられるか、コノヤロウッ!」
と、叫んだローレンスは心なしかかなり嬉しそうだな。
兜の隙間から見える口がにやけてやがる。
「魔物も人間も関係ねーよ! フロントの街にもサキュバスとか居たもんな」
「さ、サキュバスは悪魔じゃねーか! 悪魔とモンスターは違うぞ!」
そうなのか?
悪魔もモンスターも変わらない気がするけど。
取りあえず仲間にも何か言ってもらうか。
俺は肘でシオンを突いた。
「へっ、僕? ……うーん、僕の知ってる限り人間と仲良しのスライムも居るらしいしね。元人間のローレンスなら楽勝なんじゃない?」
いいこと言うなシオン。
……人間と仲良しなスライムってのが無茶苦茶気になるけど。
「そうよ、人もモンスターも関係ないわ。仲良くしましょうよ!」
レイラもいい押しだ。
「そうだ! 無駄な抵抗は止めて俺たちと仲良くするんだ!」
「に、人間なんて。騎士なんて…」
おおっ、もう少しだ。
「俺たちのパーティは名声や人助けが目的じゃないぞ。お金持ちになるのが目標だ! ぞのために自由に、楽しく冒険中だ。さあ、君も一緒に世界を見に行こう!」
ローレンスは頭を捻って本気で悩んでいる。
……どうだ、行けるか?
「ああ、もう分からねぇっ! おい、お前ら! 俺に勝ったら仲間の事、考えてやる。いざ勝負だ!」
剣を構えるローレンス。
……ええっ、戦うのかぁ。
「結局こうなるのか。仕方ない、みんな戦闘開始だっ!」
調子は狂いまくってるが相手は強敵だ。
油断したら即死だぞ。
「えーいっ、『スマッシュファイア』ッ!」
「甘いわっ!」
レイラが放った爆風を剣で簡単に吹き飛ばす。
やっぱ強いぞ、こいつ!
「それならば数で勝負だ! 『パラレル・ホーリーレイ』!」
おお、シオンの新呪文。
たくさんの細いレーザーがマシンガンの様に連射される。
これならば…。
「甘い、甘いわっ! ハアッ! 『ダークスペース』ッ!」
ローレンスの斬撃の後に黒い線が出現し、飛んでくるレーザーを吸い込んだ。
なんて魔法だ。
だったら俺が…。
「剣で勝負だ! 『ワン・モア』ッ!」
魔法をかけた俺は、短剣『ミリオンスター』を手に飛びかかる。
「ほう、この闇騎士に剣で勝負を挑むとはその心意気よし! 受けて立つぞ!」
ローレンスの黒い剣と俺の短剣の青い刀身が激突する。
黒い稲妻と白い閃光が激しく飛び散った。
ヤバい、押される…。
「まだまだだな。セイヤッ!」
俺は壁の方まで飛ばされて、『ワン・モア』のバリアが音を立てて砕けた。
……ああ、ここまでか。
「金治ッ!助けに来たぜっ!」
造船場の出入り口の方から声が響いた。
振り向くとたくさんの冒険者を連れたラッセルが立っている。
「ヘヘヘッ、ここは『ブリッジロビー』だぜ? 物だけじゃなく、冒険者もいっぱい集まる! 仲間のピンチには何時でも飛び入り参加だぜ!」
なんて頼もしいのだろうか。
……やっぱり一人より数の暴力だよな!
「大丈夫ですか、金治さんたち!」
一番に駆け寄って来た10人ちょっとのこの冒険者たちは…。
「お前らはキャラバンの時の…」
「そうです! みんな金治さんパーティの勇気ある行動で命を救われた者たちです! キャラバンの護衛だったのにあなた方に頼り切ってしまいすみませんでした」
「気にしないでよ! 私たちは同じ冒険者じゃない。ね、金治、シオン!」
「「おうっ!!」」
「ゲゲッ、何だお前らは!」
ローレンスはもう冒険者に囲まれている。
「俺は表彰を受けにこの街に来た冒険者だ!」
「私たちが来たからにはもう好き勝手させないわよ!」
おお、あの数名の男女が俺らとワタル以外の表彰を受ける冒険者か。
……うん、分かっちゃいたけど俺らの10倍は強そうだな。
「しょうがない。今日はひとまず退散だ! ……いいかよく聞けっ! 俺は明日、この造船所の動力、『フレイムコア』を奪いにまた来るからな! さらばだっ!」
そう言い残したローレンスは高くジャンプし、造船場の窓から外に逃げて行いく。
「待てッ! みんな逃がすな、追うぞっ!」
強そうな冒険者たちはその後を追いかけて走って行った。
……アイツ明日も来るのかぁ。
「ねぇ、ラッセルさん。『フレイムコア』って何なの?」
ふと気になり隣にいたラッセルに聞いてみた。
「『フレイムコア』ってのは、あのボイラーの中にある半永久的に燃え続ける石だ。アレを奪ってもボイラーの燃料にするくらいしか役に立たない筈だけどなぁ。……何か大きな機械でも動かすのか? まあいいか。それよりお前たち無事でよかった! お前らのおかげでここの連中はみんな怪我一つなかったぜ! 礼を言うぜ、ありがとなっ!」
そう言ってラッセルは俺の頭をワシャワシゃして来た。
……うーむ、この年でソレされるとかなり照れるな。
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「…で、何で突然クロム様の祠に行くのよ? 確かにいろいろあったけどこのタイミングでお祈りでもする気?」
歩き疲れた様子のレイラ。
セブンスブリッジを渡る俺たち。
「いや、一言文句言ってやるんだ。流石に今回のトラブルは大きすぎる。このままじゃフラグ的にも何かデカい要塞モンスターとか出て来るだろう。……その前に食い止めるんだ!」
俺は力を込めて言い放った。
いや、マジで嫌な予感しかしないのよ。
このままじゃ流れでとんでもないのが出て来るだろ、絶対。
……しかし、このセブンスブリッジって長いな。
「そんなアホな。女神なんかにホントに会える訳ないでしょうが。金治の夢には付き合いきれません、寝言は寝てから言ってください」
もうヘトヘトなシオン。
「大丈夫。俺の運なら何とかなる、絶対だ」
俺は領主の娘、リリーの話を思い出している。
確かに「運がいいとクロム様に会える」と言われてるとか話してたよね。
干からびそうになりながら俺たちはやっと橋を渡り切った。
看板に従い、珍しく寄り道無しで真っ直ぐ祠に到着した。
今日は俺ら以外の訪問者はいないらしい。
徐に中に入ると狭い石造りの祠の中心には見たことある女性にそっくりの石像が立っていた。
足元のプレートには『女神クロム様』と彫られている。
俺は大きく息を吸い込んで…。
「出てこいクロムッ! 出てこないとこの銅像を粉々にするぞっ!」
そう叫んで短剣を構えた。
レイラとシオンはそれを見て大慌てだ。
それでも俺は叫ぶ。
「早く出てこないと首が飛ぶぞっ! ほら、じゅ~、きゅ~、はち…」
俺がカウントダウンを始めると突然目の前の空間が輝き出した。
バシュゥゥン…、と言う音と共に一人の女性が現れた。
透き通る様な長い金髪に人間より美しい顔、体。
間違いない、冥界の入口で出会った女神クロムだ。
「ちょっと、どう言うつもりよ! 私の宗教はないからこの像壊れても直してくれる人いないんだからねっ!」
「出たなこの、覗き魔女神」
レイラとシオンは呆気にとらえて口をあんぐり開けているがかまってる暇はない。
「覗き魔とは何よ、覗き魔とは! 私はねえ…」
手を顔の前に突き出し黙らせて、
「お前が見てる奴には幸福と未知の冒険が与えられるんだってな。で、冒険者が好きだと。間違いないな?」
「そ、そうよ。文句ある? 私が見てると何故か毎回ちょうどハプニングが起きて面白いのよね。今の一番のお気に入りはあなたよ、金治! こんなヘタレな根性の癖に当たりのイベントばっかり引いて逃げ腰なのに勝って行く、あなたの冒険大好きよ」
この女神、無自覚かよ。
立ち悪いな。
「そうか、俺の冒険のファンなのはすげー嬉しいぜ。……じゃあ、クロム。今回はその冒険にアンタも参加してもらおうか!」
俺の発言にその場の全員が驚いた。
そりゃあそうか、女神様をパーティに誘ったんだから。
「な、何言ってるのよ金治! コレ、本物の女神クロム様でしょ! それをこんなわけ分からんヘナチョコパーティに誘うなんて…」
「そうだよ金治、失礼過ぎるよ! ごめんなさいクロム様っ!」
仲間がいろいろ言ってるが俺は引かないぞ。
……そもそもシオン、お前神様とか信じないんじゃなかったのか?
「あのな、クロム。俺を見て喜んだり、俺の冒険が波乱万丈になるのも許せる。でもな、今回の規模は大きすぎる!俺が死ぬだけならともかく周りを巻き込むのは許さないぞっ!」
シンと静まり返った。
俺の発言にかなり驚いたようだ。
だがこれは本心だ。
見栄でも虚勢でもない。
「俺は一回好きになったものは死ぬまで、……死んでも好きなんだ。俺はこの街と人々が大好きだ。それを壊させはしない」
俺の言葉に三人から笑顔が溢れた。
「へ~、金治。たまにはかっこいいこと言うじゃない!」
「確かにその通りだよね。巻き込まれた街はたまったもんじゃないよな。…いいぞ金治! もっと言ってやれ!」
仲間が加勢してくれる。
でもクロムも笑顔だ。
「ふーん、しょーがないわねっ! 珍しく勇者っぽいこと言うあなたに免じて無事表彰式を迎えるまであなたのパーティに入ってあげるわよ!」
「クロムッ!」
へっぽこパーティに女神が加入した瞬間だった。
……これは感動的だ。
「じゃ、私も冒険者っぽい格好にならないとね。えいっ!」
クルッ1回転するとクロムは羽衣を背負った神様の衣装からよくいる女冒険者の服へと変身した。
美貌や髪はそのままだからどこか気品が漂っている。
「なかなかかわいいじゃん!」
「うん、もっと褒めていいわよ! ……あ、人間に変身してる間は心とか読めないからちゃんと言葉で会話してね。それじゃよろしくっ!」
女神クロムと握手した。
「胸は私のが大きいとか考えてたレイラちゃんにエッチな服だな~とか考えてたシオン君ね。これから少しの間だけどよろしくっ!」
「え、ええ! よ、よろしくねっ!」
「ぼ、ぼぼぼ僕がそんな破廉恥な事考えるわけ! ま、まあよろしくお願いします」
お前らそんな事考えながら俺を怒ってたのかよ。
レイラとシオンはまだ不思議そうだけど予想通りクロムに会えた。
……俺は好きなものを何一つ失いたくないタイプの人間なんだ。
守り切ってもらうぞ、女神様に!
表彰式まで、あと3日。




