第28話 勇者再び
俺たちはワタルパーティの『ウォーロック』、フェイさんを仲間に加えてなお山道を登っている。
途中に頑丈な機械系のモンスターばかり現れてなかなか進めない。
「なんでこう、消火栓ばっかり相手にしないといけないんだ! いっその事ボスでも出てきてくれればいいのに!」
……あ。
消火栓ことピカットに爆裂瓶を撃ち込みながら叫んでしまった。
……言い終えたあとになってしまった、と思ったがもう手遅れみたいだ。
なんでこう自分でフラグっぽいことを言ってしまったんだろうか?
目の前の地面を切り裂いて現れる巨大な機械の敵は、見ながらにして思わず頭を抱えてしまう程だ。
「何なのよアレ? あんなデカいの吹き飛ばせないわよ!」
「アレはもしや、『クラッシュマシーン』! 魔王城の近くで確認された筈のモンスターが何でこんなところに。……ところでアレ、今子供を中心に人気沸騰中のモンスターなんですよね。やっぱり大きくて強そうなメカだから?」
涙目のレイラには悪いけどどの時代、どの世界でもかっこいいロボットは人気がある様だな。
この『クラッシュマシーン』はゴツい二本の足にメカメカしい体、片方の腕には巨大な光り輝く剣が握られ反対側の腕に手はなく大きな銃口が腕から生えている。
そして頭には赤い一つ目の様に輝くロボットアイ…。
全身が無機質な金属で出来たその姿は某ロボットアニメに出てきそうなキャラの頭身を下げた様な見た目をしている。
……かっこいいっ‼
こいつは敵じゃなくて味方として欲しかったなぁ。
残念ながらこの世界にはモンスターテイマーや魔物使いと言ったモンスターを仲間にして戦う職業は存在していないと言う。
『サモナー』等召喚をメインとする職もあるが呼び出すのは専用のソレらしい。
どうせ異世界に来たんだから魔法に加えてモンスターと仲良くなったりして見たかったけど仕方ないよね。
「ほら、来たわよ金治! ボケっとしてると潰されちゃうわよ!」
ハッとして前を向くとクラッシュマシーンは剣を振り上げている。
これはマズいな。
急いで後ろに飛び退いてかわすと振り下ろされた剣は地面を砕き、バチバチと激しいスパークを巻き起こした。
……確か魔王城の近くで見つかったとか言ってたな。
んな強いモンスターにレベルが二桁も行ってない遊び人なんかが殴られたらそりゃ、死ぬだろうな。
確実に。
何でこうボスって強いんだろうなぁ。
たまには弱いボスがいても良くない?
「あー、うん。倒さなきゃ死ぬな。よしみんな、戦闘開始だ」
「了解。僕は素早さアップの魔法でも掛けとくね。『クイックムーブ』っと」
シオンの魔法で俺たちみんなの体が青く光る。
……なんかこう強敵が多いと慣れて来るね。
「なっ、なんで君たちのパーティはこんなにも落ち着いているんだい? 君たちのレベルの冒険者がこんな強敵に出会ったら普通泣いて逃げ出すぞ! コイツはレベル30以上のパーティで連携してやっと倒せるかってレベルの強さなのに…」
「あ~、大体いつもこんな強敵が出てくるので慣れました」
フェイさんは絶句している。
勇者パーティなんだからこの程度といつも戦ってるんじゃないのか?
……それよりもまずは死なないことが最優先だな。
「よし、レイラ。アイツデカいから二人で同時に行くぞ。準備はいいな?」
俺はそう言ってパチンコを、レイラは杖を構える。
「じゃ、行くわよ! 『スマッシュファイア』ッ!」
「『爆裂瓶』発射っ!」
レイラの魔法と爆裂瓶が混ざって特大の爆発になって相手を包み込んだ。
炎と煙が散っていき中からは無傷のクラッシュマシーンが。
「やっぱ効かないかぁ。お前デカすぎるもんな」
「わ、私も攻撃だ! 『エンチャント・ボム』!」
我に返ったフェイさんが魔法の矢を放った。
しかし、クラッシュマシーンはそれを剣で弾き飛ばして…。
ガシュイン、キィィーン……。
フェイさんに向かって突き出された左腕の銃口に青白い光が集まっていく。
……これはヤバいやつじゃね?
仕方ない、助けるか。
「っと、来い! 『ワン・モア』ッ!」
クラッシュマシーンが極大のレーザーを発射した。
青白い光線はフェイさんの前に割り込んだ俺に向かって高速で飛んで来て、激しい閃光と音に包まれた。
体の表面が金色に輝き、レーザーを四方に弾いている。
最終的にレーザーは打ち切られて、体を覆うバリアが砕けた。
……ふう、やっぱ怖いな。これ。
『ワン・モア』が砕けたってことは実質死んだって事だもんな。
色んな敵と戦って分かったこととして、『ワン・モア』のバリアは物理だろうが魔法だろうが致命傷の攻撃を確実に1回は無効化する。
物理の場合は痛くはないが衝撃は来るため後ろに吹き飛ばされて、魔法の場合はその1発を完全に弾いてしまう様だ。
そのため、今はゲームに出て来るレーザー攻撃特有の貫通や爆発で全体ダメージになる、ということを気にすることなく盾になることが出来たのだ。
「な……、何だと……? なるほどワタルの攻撃を防いだバリアか。おい金治、何でそんな無茶をするんだ! 私のせいで死ぬかもしれなかったんだぞ!」
潔く覚悟を決めていたらしいフェイさんは目を開けるとその現状に驚いたのか叫んだ。
……何でって言われてもな。
「そりゃ、何とかなるって思ったからだよ! 俺は臆病だから絶対に勝てそうな賭けしかしないぜ! ……それにフェイさんが今のパーティの最大戦力なんだから今リタイアされるわけにはいかないんだよね」
俺たち三人が束になってかかってもフェイさんには敵わないだろう。
それだけレベルの差が大きいのだ。
「……そんな、私なんか…」
ヤバいな、フェイさんがパニックムードだ。
早く何とかしないと…!
……何故か俺は落ち着いている。
何故かって?
この目の前にいるモンスター、ボスじゃないだろ。
確かに強い設定みたいだが登場が早すぎる。
そう、コイツは『中ボス』だ!
ゲームならそう苦戦するポイントじゃない筈なのだ。
「よし、魔法じゃ無理なら力で勝負だ!」
「何言ってるのよ馬鹿金治! あのデカいのが見えないの? 金属で出来た化け物よ? 敵うわけないじゃない!」
必死に止めようとするレイラ。
でも俺にはコレが…。
「大丈夫さ、俺運いいから! 『ダイスの腕輪』を使う。シオン、俺の強化が切れたら直ぐに回復魔法を撃ってくれ!」
「え、……なるほど! 分かったよ!」
数分だけ出た目の数ステータスが倍増する魔法のアイテム。
使った後はまとめて来る疲労で毎回気絶してたけどそこに回復魔法を使うことで復活しようという即席の作戦だ!
「行くぞ! ダイスロールッ!」
サイコロを放り投げる。
岩肌を転がり出た目は5、悪くないな。
青い光に包まれ、強化が完了するとクラッシュマシーンの懐に飛び込んで掴みかかった。
いつもなら、大きな目が出ればほぼほぼ押し勝てて来た。
しかし今回は違った。
「くっ、こいつ重い。もしかしなくても俺の力が何倍になったところでロボットに力勝負を挑むのは無謀だったと言うのか!」
「当ったり前でしょーがっ! アンタやっぱり馬鹿でしょ!」
レイラのヤジが飛ぶがやっちまったものはどうしようもない。
ズルズルと押し返されて…。
クラッシュマシ-ンは突如胴の部分から上の部分がまとめて一回転し俺を弾き飛ばした。
ぶっ飛ばされた俺はレイラとシオンの前まで戻された。
クラッシュマシーンは剣を振り上げ、蒸気をプシューッと関節の隙間から噴出した。
目の赤い光が強くなりいかにも何か来そうな雰囲気。
……もうこれ終わったんじゃね?
何で逃げなかったんだろ。
普通に考えりゃ中ボスでも強いのはかなり強いじゃないか!
……あ、そもそも俺たちのレベルが不適切なのか。
俺たちが完全に諦めたその時…。
「大丈夫かぁぁあああっ! 『プロテクション・シールド』ォォッ!」
金色のゴツい鎧に身を纏った男が俺たちとクラッシュマシーンの間に落ちてきて巨大な盾を相手に向け、呪文を唱えた。
俺たちを守るように。
その背中は頼もしく、戦闘中とは思えないほど安心感があった。
……タンクに守られるってこんなに頼もしいものだったのか…。
「あなたは……、ワタルの仲間のアーロンさんね!」
レイラの言葉でハッとした。
そうだ、この人ワタルの仲間の…。
「そうだっ! 俺は『パラディン』のアーロン! 助けに来たぜ、我が友をな!」
……何だコイツ、かっこよすぎだろっ!
クラッシュマシーンの剣をアーロンが盾で受け止めると緑色のハチの巣の様な模様の光の壁が出現して弾き返した。
それでもビクともしてないアーロンさん、スゲーッ!
……戦士職の仲間、いいな。
「止めは俺が貰うよ! 『ライトニング・スラッシュ』ッ!」
もう一人、どこからか飛び降りて来た男はそう叫んで、稲妻を帯びた斬撃をクラッシュマシーンに食らわせる。
派手な攻撃をモロ食らった相手は火花を散らして高速回転したと思ったら爆散した。
青い鎧に稲妻を帯びた魔剣。
間違いない、かっこつけてるコイツは…。
「ワタル! 来てくれたんだ!」
「ああ、友のピンチを助けるのは当然だろ! 金治もかっこよかったぜ、俺の仲間を守ってくた時とか最高に勇者だったぜ!」
「ワタル……。あれ?」
お前の仲間を守ったってフェイのことだよな。
見てたのか?
「ガハハハハッ! お前らがクラッシュマシーンと対面した時には俺たち崖の上から見てたんだけどな、この勇者様がお前らの戦いを見るって聞かなくてな。すまんな、もう少し早く助けれたんだがな」
「何よそれ! 金治が居なかったら私もう少しで死ぬところだったのよ! 何遊んでるのよ、ワタルの馬鹿っ!」
そう怒鳴ってワタルの頭をひっぱたくフェイさん。
……この勇者は何だかな。
「いつつつつ…、ゴブリンロードより力が強いんじゃないかフェイ。……いやいや何でもないぞ! そうだ金治、さっきの戦い見させて貰ったけどお前は本当に勇者だったぞ。勇者ってのは強いからなるんじゃない、立ち向かう勇気があるから勇者なんだって勇者伝説を記した書記にもあったもんな!」
……立ち向かう勇気があるから勇者、か。
王道なセリフでも本物の勇者に言われると嬉しいな。
「痛い痛いっ! ……さあ、みんなここは危険だからロビーホールで休憩するとしよう。金治たちにもこれは話しといた方が良さそうだからね。さあ、出発だ! ……あの、フェイさん? 痛いからそろそろ抓るの止めて……、痛い痛い痛いっ!」
「さっきはみっともないとこ見せちゃったわね。さあ、ロビーホールはもうすぐよ」
勇者の腕を力いっぱい抓り続けるフェイさんに続いて坂道を進む。
……ワタルたちはかっこいいな。
俺たちもいつかはあんな風に強くなれるのかな。
デュィィン……。
低音と共に俺の体が光った。
……あ、サイコロ振ったの忘れてたな。
「シ、シオン。……回復…」
「え? ……あ、しまった! 間に合ってよ! 『ヒール』ッ!」
「何だ金治? 大丈夫か! 俺も『ハイ・エクステンション・ヒール』ッ!」
「うわ、死にそうよ金治君! 『エンチャント・ヒール』ッ!」
大量の回復魔法が飛んでくる。
何とか意識は飛ばなかったけど、……なんかもうフラフラだ。
……ああ、気絶以上に何か死にそう…。
「しっかりしろ金治! 急いでやるから頑張るんだぞ!」
ワタルは俺を背負って走り出した。
後ろにはみんなも続いている。
……たまには元気に戦闘を終わりたいな。




