第26話 貿易都市ブリッジロビー
ここはどこだろう?
足元には光り輝く魔法陣。
その周りは真っ暗だ。
「起きなさい、金治。みんなが待ってるわよ」
光で顔は分からないけど誰だ?
いや、会ったことはあるなこの人。
「私との再会はもう少し先よ。……機会があったらだけどね」
魔法陣の光が強くなる。
「じゃ、いってらっしゃい。愉快な遊び人君…」
……名前くらい名乗れよな…。
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目覚めるとベッドの上だ。
だだのベットじゃない、元いた世界でもなかなか見ないぐらい大きくてフカフカなベッドだ。
「気づいたか金治! 今度こそ死んだかと思ったけどしぶといな」
直ぐ近くには嫌味を言うシオン。
「よかったぁ! やっぱり生きてたのね! ……あ、待ってて、直ぐに領主様を呼んでくるからね」
喜んで飛び上がるレイラ。
「みんな…、何か知らんけどありがとう。……で、領主って何だ?」
周りを見渡すと高級なのはベッドだけじゃない。
高そうなタンス、絨毯、天井にはシャンデリア…。
そうだ、思い出してきたぞ。
俺たちは暴走したキャラバン隊の列車で街に突っ込んで…。
「これはマズいな。逃げよう」
そう言って高級ベッドから飛び起きると窓に向かってダッシュする。
シオンが何か言ってるが知らん。
……こう言う気が付いたら高級な場所にいるパターンは大抵何かの罰金だったりお説教とか下手したら逮捕の流れじゃねーか!
俺が大きなガラス張りの扉に飛びついたとき…。
「おや、金治さん。お怪我は大丈夫ですか?」
振り返るとドアの前に高身長で顎に髭を生やした貴族っぽいあの髪型をした男性が立っていた。
……ああ、手遅れだったか。
「どうせ勘違いしてアホなこと考えてたんでしょ。この人は『ブリッジロビー』周辺の領主、グライドさん。あんたが気絶してたからこのお屋敷に泊めてくれてたのよ。感謝しなさい」
あれ、違った?
「え、泊めてくれた…? えっと、ありがとうございますグライドさん」
このおじさん、貴族なのに珍しくいい人だ!
……オレ、ハズカシイ。
「いやいや、気にすることはないよ。君は私の、そしてキャラバン隊の英雄だからね!」
「……はい?」
キャラバンはともかく、お前は知らんぞ。
初対面だ。
「ほら、金治。右か左で二択を迫られたでしょ。それで当たりを引いたのよ!」
「いや、運じゃ無くてちゃんと理論的な思考の結果だったそうじゃないか。あの噴水の広場で左に進んだらちょうどこの私の屋敷に一直線でね。あの時私は門から屋敷に歩いてたところだったからこっちに来られたら間違いなくひき殺されてたんだよ。……いや、私の事なんかよりキャラバンのみんなを、特に私の娘と父を助けてくれて本当にありがとう」
……よかった、本当によかった。右を選んで!
でも…。
「よかった…、けど娘と父って?」
「フッフーン、驚くわよ金治! おいでリリーちゃん!」
そうドアの向こうにレイラが呼びかけると…。
「冒険者のお兄ちゃん、キャラバンで助けてくれてありがとう!」
「ホホホッ、やはり素晴らしい若者だったのう。わしからも礼を言わせてくれ、ありがとう!」
キャラバンで冒険談を聞きたがったり、クロム様について教えてくれたお爺ちゃんとその娘の女の子だ。
……こっちのお約束路線で来たか。
たまにはクロムの加護もいい方向に働くのな。
「いえいえ、偶然ですよ偶然」
「そんなことはない! その、お礼と言っては何だけど…」
来た来た来たぁ!
『お礼』、なんて言い響きだろうか。
何をくれる? 金? アイテム? それとも…。
「あなた方は表彰式にご招待された冒険者らしいですね。そこでこの街に滞在の間このお屋敷のお部屋をお貸しいたします。どうぞ宿代わりにお使いください。今夜は僭越ながらディナーをご用意させていただきます、是非ご期待ください!」
うん、モノじゃないのか…。
……いや、無茶苦茶良いんじゃないか?
この豪華なお屋敷が宿代わり?
これちょっとお礼にお金貰うよりもずっと安くつくじゃん。
それにこの世界の高級な料理とか…、気になるな!
「ありがとうございますグライドさん! ディナー楽しみにしてますね!」
「おお? そんなに喜ばれるとは私も嬉しいですなぁ」
「決まりね金治! 今日からここが私たちパーティのブリッジロビー探索拠点よ! ……いやぁ、貧乏臭い金治だからこんなお屋敷やだとか言い出すかもって心配してたのよ、私たち」
「ほんとだよ、こんないい条件なかなかないもんね」
……お前たちは俺を何だと思ってるんだ…。
「がめつく欲張らないなんて今の時代の若者なのに金治殿はよい心をお持ちなようで。わしはよりあなた方をより気に入りましたぞ。……夕食までまだ少しありますな。どうです、我々自慢のブリッジロビーの街を散策されて見ては? きっとフロントには無いものがたくさん見れますぞ」
お爺さんすみません、がめついです、かなり。
「私、案内してあげるわね!」
そう言ったりリリーに手を引かれて俺たちは夕焼けのブリッジロビーの街へと繰り出したのだった。
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ブリッジロビーの街は貿易都市と言われるだけあってフロントより大きく、より沢山の店が立ち並び活気に満ち溢れている。
……フロントは田舎だったんだなぁ。
「ねっ、見て見て! ここが噴水広場よ。ここから色んな場所に行けるんだけど……、あちこち修理中ね」
石畳が馬車の車輪でえぐれたり傷ついたりしているのを見ると俺のせいじゃないけど申し訳なるなぁ。
だが、商人たちは気にせず露店を並べ食べ物や見たことない物を売っている。
「あら? あれ美味しそうね、何かしら」
レイラが一つの屋台を指さして言った。
何か青い触手のようなものを中にいれて専用らしい鉄板で丸い球状の黄色い焼き物に仕上げ、緑色のソースをかけたものを売っている。
これはもしや…。
「あれはこの街の名物のニュルニュルって言う生き物を使ったキュー焼きって言うお料理よ。…そうだ、みんなで食べましょ! 大丈夫よ、4人で分ければ夕食は食べられるわ」
そう言うリリーの提案で銅貨3枚で8個入りの『キュー焼き』なる物を注文してみた。
うん、粉モノっぽい黄色い生地の中に色は真っ青だけどタコの様な触感のニュルニュルの足が入っていて、甘酸っぱい緑色のソースがかかっている一口サイズのソレは間違いない。
元の世界で言うタコ焼きだ。
色は不気味だけど具も大きくてなかなか旨いな。
「あれが造船場って言う船を作る工場で、その近くにあるのがセブンスブリッジって言う橋よ。魔法の機械が付いてて特別な日には七色に光るのよ!」
……レインボーに輝くセブンスブリッジねぇ。
近くには煙突が突き出た大きな建物があり、それが造船場らしい。
俺たちはキュー焼きを食べ終えて海辺に来ていた。
そう、キャラバンの列車が突っ込んだ砂浜だ。
列車は大破したままその砂浜にまだ置いてあった。
「うわ、随分派手にぶっ壊れたなぁ。よく生きてたな他の奴ら」
「きっとクロム様のおかげだね。セブンスブリッジを渡った先の島にはクロム様を祭った祠があるのよ」
そうリリーは指を指して言った。
「あの祠にはいつも沢山の人がお祈りに行くんだって。特に冒険者さんたちが」
ほう、あそこにクロム様がねぇ。
「言い伝えだけどね、運がいいとクロム様に会えるって言われてるんだよ! クロム様は人間が大好きだからたまにこの世界に遊びに来るんだって!」
……我慢できなくなったらあそこに文句言いに行こう。
「後ね、怪我した人はシオンお兄ちゃんたちの魔法で治して貰ったから全然平気よ!」
シオン、お前いい事するなぁ。
等の本人は照れたのかそっぽを向いた。
「そ、そんなことよりあれ、あの建物は何だい? あの崖の上のさ」
シオンが向いた先、ブリッジロビーの向こうの崖の上に大きな神殿、と言うかコロシアムみたいな外見の白い建物がある。
「あれはロビーホールって言う建物よ。あそこでたまにコンサートがあったり、もう少ししたら領主様たちのお話合いがあるんだって」
なるほど、あそこが会場か。
確かに大きくて立派なロビーホールなる建物は裁判所やコンサートホールに見えなくもないな。
「私たちね、あそこで今度表彰されるのよ! 沢山の人を助けたから偉い人に褒められるの」
「へぇーっ、やっぱりすごいのね! お兄ちゃんたちって勇者様? ……ううん、違っても私にとっては勇者様よ!」
そう素直に喜ぶリリーちゃん。
本物の某勇者様、ワタルたちを見たらちゃちな俺たちにリリーちゃんがっかりしそうだな。
でも、純粋に助けた人から勇者って呼ばれるのは嬉しいな。
……戦いは御免だけどね。
真っ赤な夕日が海に沈んでいく。
「ほら、リリーちゃん。もうすぐ夕食じゃないかな? 俺、楽しみだな豪華なディナーって。元の世界でもそんなちゃんとしたのは食べたことないもん」
そう言って、不思議そうな顔をしたリリーと共にお屋敷に戻った。
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お屋敷に帰るとディナーが待っていた。
大きな長いテーブルにはたくさんの見たことがない料理が次々に並ぶ。
あのデカいエビみたいなあれは何だろう。
この黄色いスープ凄くいい匂いだな。
うわ、鉄板で焼かれてる分厚い肉がでてきたぞ!
目をキョロキョロさせ感動してると。
「ハハハッ、待ちきれないようだね金治君。冒険者風に料理を並べてみたけど気に入って貰えたみたいだね。それじゃあ、いただこうか」
そう言ってグライドさんはグラスを掲げて…。
「勇気ある冒険者への出会いを感謝して、乾杯!」
「「「かんぱーい!!!」」」
今までで一番グルメな晩餐が始まった。
俺たちの冒険談に花を咲かせて、楽しい時間は過ぎてゆく。
……やっぱり俺、ラッキーだな!




