第16話 パーティ!
この世界の冒険者はモンスターと戦う時、ダンジョンの探索をする時、他の冒険者とパーティを組み自分に出来ないことを仲間と補い合うことで苦難を突破する。
時にいつものメンバーだけではなくそのクエスト1回限りの仲間をパーティに入れて、戦力を補うことで強いモンスターに挑んだりすることもある。
今俺のパーティは臨時パーティとして今回のクエスト限定で仲間を加えている。
……え? どんな人が加わったのかって?
一言で説明するならば、ここフロントの街に今いる冒険者全員だ!
今日、この街を襲撃予告した悪魔のチップがドラゴンを連れてやって来る。
チップはともかく駆け出しの街の冒険者なんかじゃドラゴンには勝てない。
それに対抗すべく街の冒険者全員で力を合わせて立ち向かうことになったのだ。
冒険者たちは街の人々と協力して半壊した正門にバリケードを作ったり、ミラさんの指示で魔法使いたちが設置型魔法を、サモナーやネクロマンサーの冒険者たちが召喚の魔法陣を設置している。
準備が終わった冒険者の内、戦士系は正門を中心にばらけて待機をし、後方の街の壁際では魔法系の連中が後方支援の準備をしている。
俺とシオンは陣営の真ん中で空のほうに注意を向けている。
何やら話していたミラさんとレイラがこっちに駆けてきた。
「お待たせ金治。新兵器も用意したから十分私に期待しなさい!」
いつになく自信が溢れているな。
「準備はだいたい整ったようね。……あ、金治君。ちょっといいかしら」
ミラさんはそう言ってたたまれた黄色い布と六芒星が描かれた鞘に入った短剣を差し出してきた。
「この布は機動力アップの魔法が込められたマントです。こちらの短剣は星々の力が込められた魔法の剣『ミリオンスター』です。きっとこの戦いで役に立つ筈、役立ててくださいね!」
なんと魔法の装備品の差し入れだ。
「ありがとうミラさん! そっちも宜しくね」
ミラさんは作戦どうり街の正門に入っていく。
ギルドと正門の途中にある広場から魔法を放つというのだ。
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マントも装備し準備万端。
レイラとシオンと共に空を見上げていると奴がやって来るのが見えた!
俺は手に持ってた魔法付きのメガホンで後ろの冒険者たちに叫んだ。
「チップが見えたぞ! ダースドラゴンに乗ってる! みんな、戦闘準備だ!」
魔法のメガホンで拡声された声が響き渡った。
……大声で指示をするというのは恥ずかしいな。
冒険者たちから雄たけびが上がった。
士気は十分みたいだな。
俺の少し先にダースドラゴンが着地した。
相変わらず凄い風圧が押し寄せる。
「ほほう、逃げずに待ってるなんて弱っちい人間の癖に感心ッチェね! でも手加減なしッチェ! 今日はこの街の人間を皆殺しにしに来たッチェよ! 泣いて謝っても許さな…」
「『エアバースト』ッ!」
またもやレイラが不意打ちで魔法を放った。
「二度も同じ手を食らうチップ様じゃないッチェ! 残念でしたッチェね!」
そういいながら小さな悪魔は軽々と真上にジャンプしてかわす。
「それはどうかしらね!」
しかし、レイラの放った薄い緑色のオーラを纏った空気の塊はチップが立っていた地面に激突した。
このレイラが使った『エアバースト』はこの3日間の間に試し撃ちして分かったが圧縮した空気の塊を発射する魔法のようだ。
攻撃力はそれほどなく、何かに当たったら炸裂して吹き飛ばすだけの魔法だが…。
ジャンプしたチップはそのまま重力に従って落下する。
地面ではレイラの空気弾がそれに合わせるかのように炸裂した。
巻き起こった風圧に吹き飛ばされチップは空高く飛んで頭から派手に地面に落下した!
「見なさい! 悪魔なんかが人間に勝てるわけないのよ! 分かったかしらチープさん」
「俺様はチープじゃなくてチップ様ッチェ! もう怒ったッチェよ! 本気を見せてやるッチェ!」
……お前の本気は何回あるんだよ。
「手下召喚ッチェ! チェエェェェェイッチェ!」
そう叫ぶとチップの頭の触覚から電気がバリバリと飛び散った。
チップとドラゴンがいる両側の平原に黒い炎が一瞬で広がり、大きく燃え上がった炎が消えるとそこにはたくさんのモンスターが立っているではないか!
ゴブリンやゾンビから大きなサソリのようなモンスターに石で出来た巨人などレパートリーは充実しているな。
俺はとっさにメガホンを口に当てて叫んだ。
「全員、戦闘開始だぁっ‼」
モンスターの集団と冒険者の集団が激突してフロントの街の前は早速戦場になった。
周りで冒険者が各々迫って来るモンスターと戦いだす。
仕掛けられた魔法陣からは炎や竜巻が巻き起こり大騒ぎだ。
「あの生意気な雑魚を殺すッチェ! 行けッチェ!」
そうチップが叫ぶと数匹のゴブリンがこちらに向かって駆けてくる。
俺は短剣を片手に身構えた。
「ここは私に任せて!」
レイラはそう言って俺とシオンの前に立つと杖の先端を相手の方へ向けて…。
「『ファイアボール』! 『エアバースト』!」
二つの魔法を連続で唱えると杖の先端で炎と風が混ざり、渦巻く光の玉がそこに出現する。
「行くわよ~っ! ミラさん直伝合体魔法、『スマッシュファイア』ァッ!」
レイラが叫ぶと光の玉が強く輝き、迫って来るゴブリンに向かって大きな爆風が発射された!
地面を焦がして放った爆撃はゴブリンをまとめて黒焦げにして離れていたチップすらふっ飛ばしたようだ。
「すげぇ威力…。いつの間に覚えたんだよ?」
「ミラさんに習ったのよ。魔法はレベルで覚えるだけじゃなくて持ってるモノの組み合わせで作れる場合もあるってね!」
「ちょっと、二人とも! 雑談は後にして他の人を助けなきゃ!」
シオンの声にハッとし周りで戦う冒険者を援護するため俺たちはバラバラな方向に走り出した。
隣でゴブリン数体を相手にしてる冒険者の横に立って短剣を振り回した。
……この世界のスキルというものは不思議なもので、同じ種類の武器を慣れるまで使うと自然に『短剣』と言ったようなスキルを習得し、冒険者カードに記されるのだ。俺も『短剣』のスキルを入手していたためだいぶまともに武器を使えている。
周りのゴブリンを片付けると…。
「ありがとよ、助かったぜ!」
そうお礼を言う冒険者の後ろに大きな影が!
「危ない! 避けろっ!」
俺はそう叫びながらその冒険者を突き飛ばし、その大きな影の主、石で出来た巨人に短剣を突っ立てた!
しかし俺の短剣は石の体を貫くことなくポキンと折れてしまったではないか!
……終わったな。
「うるぅあああぁぁぁぁっ! …おい、金治! 短剣でゴーレムに勝てるわきゃねーだろぉ! 調子乗んなよっ!」
そう叫んでゴーレムを素手で殴り倒したその男は…。
「バルド!? …助けてくれたのか?」
そう、初めて会ったとき俺をぶん殴って来たバーサーカーのバルドだ!
「お、おうよ! テメーとはまだ決着ついたと思ってないけど今は同じパーティだからなっ! 助けるのは当たりめぇだ!」
「……ありがとうバルドっ! 頼もしいな!」
「…っ!」
絶対分かり合えそうになかったヤツも一緒になってこのピンチに挑んでいる。
ここにいるみんなが一つのパーティ。
そう思うと不思議とドラゴンにも負ける気がしてこないじゃないか!
俺は折れた短剣を投げ捨て、ミラさんがくれた短剣の金色の柄を握って力いっぱい引き抜いた。
空に掲げたその短剣『ミリオンスター』の刀身は真夜中の星空のように深い青が白い光を星屑のようにキラキラと放っていた。
「行くぞモンスターッ!」
バルドに殴り飛ばされたが再び起き上がろうとしているゴーレムに俺は短剣を構えて飛びかかった。
『ミリオンスター』で切りつけるとシュパーンッという爽快な音と共に白い光が飛び散って石でできたゴーレムの頭を真っ二つに切り裂いた!
……これは気持ちいい! 主人公も悪くないな!
周りを見渡すとモンスターはだいぶ減ってきていた。
レイラは派手な爆発を巻き起こし、シオンは広範囲に回復の光を放って前衛の戦士たちをサポートしているのが見えた。
その時…。
「魔法の準備が完成したわっ! 星を降らすわよ、みんなドラゴンから離れて!」
魔法のメガホンで叫んだのかミラさんの声が響き渡った。




