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ジャック・ポット・チャンス!~幸運転生者の異世界日記~  作者: 天勝金治
第二章 驚異の侵略者
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第15話 決戦前夜

 『ミラ魔法雑貨店』の店主らしい女性はカウンターに座り尚も俺たちに微笑みかけている。

 彼女は何故かこっちの事情を全て知っているようなのだ。


「私は魔法使いのレイラ! あなたももしかして魔法使い?」

 全てを悟ったように話す女性にレイラは名乗った。

 魔法使いだから同じように魔法を使う人が分かるのだろうか?

「ええ、私も魔法使いよ。私はミラ・ゴルゴーム。人々は私をミラと呼びます」

「やっぱり! ミラさん細いから魔法系職かなって思ったけど当たったわね!」

 ……見た目からの判断かよ。

「ふむ、ゴルゴームとはどこかで聞いたような…。まあいいか、僕はシオン。僕からもダースドラゴンの討伐をお願いしたい。…その強さがあなたにあるのでしたらだけどね」

「俺は天草金治です! 俺からもお願いします!」

「そうですね、冒険者ならカードを見てもらったほうが理解が早いですよね。ではこちらを…」

 シオンの問いに答えると冒険者カードを差し出してきた。

 

 一番上にはミラ・ゴルゴームと名前があり、その隣には67歳と年齢が…。

 67? 見た目は30くらいの女性だけどこれも魔法かな。

 職業は『ハイウィザード、Lv.76』

 ……聞いたことがない職業だがゲームとかだと魔法使いの上位職に出てくるやつだな。

 それにしてもレベル76って!

 スキル欄には長ったらしい魔法と思われるものが連なっていた。


 レイラもシオンもさすがに驚いている。

「ハイウィザードって魔法系の最上級職じゃない! すごいっ! 魔法もこんなにたくさん覚えてるなんて、いいなぁ」

「って、え? 67歳って年上? 人間の年上なんて…。み、ミラさん失礼ですみませんでしたっ!」

「シオンお前敬語とか礼儀とかあったのか! ……でもこれだけ凄そうな人がいればドラゴンも怖くないな。ミラさん明後日はよろしくお願いします!」

 これで安心だ。

 チップがドラゴンを連れてきても強烈な魔法で撃ち落としてもらえるな、なんて思っていると…。

「駄目よ、あなたたちも戦うのよ。私は確かに多くの魔法を持っていますけど体はもう歳、一度にたくさんの強い魔法を使うことは出来ません。……水晶であなた方の昨日の戦いは拝見させていただきましたが恐らく強敵はダースドラゴン一体だけ。本来魔法はあまり効かないモンスターですが私の持っている星降らしの魔法なら一撃でしょう」

「星降らしの魔法って物語や歴史に出てくるあの最強魔法の!?」

 レイラが驚いている。

 最強魔法って聞こえたがマジか。

「それなら先制でその魔法を打ち込めば…」

 シオンも驚いてるしこの人はかなりすごい魔法使いのようだ。

「それならミラさん一人が一発魔法を打てば終わりじゃないのか?」


「確かにそうですが強力な魔法は魔力を溜め、詠唱するのにも時間がかかります。…恐らく昨日のモンスターは再び正門に来るでしょう。そこであなた方、現役の冒険者には何とか街の侵入を阻止して貰いたいのです。今回使用する星降らしの魔法は強力ですが範囲も大きく、街で放ったら非常に危険な魔法なのです!」

 その星降らしの魔法ってのが気になるな。

 ……それよか俺たちじゃ1分も持ちこたえられない自身があるんだが。

「あの、俺たちじゃドラゴンの足止め何かしたら一瞬で蒸発させられると思うのですけれど?」

「そうだな、僕の回復魔法でも一瞬で蒸発されたら助けられないぞ」

「私の魔法も効かないだうしなぁ。……私たちだけじゃ無理そうね」

 さすがの仲間たちもここで虚勢をはる気はないようだ。

「それなら大丈夫。水晶で未来を見ましたがきっとなんとかなるでしょう! …それにあなた方が戦うことになるのは恐らくあの悪魔の方です」

 あのチビ悪魔だけなら俺たちでも勝てそうだぞ!

「ですがあの悪魔も何か奥の手があるようですが……、大丈夫。あなたたち冒険者はいつだって一人じゃないんですからね」


 


  ーーーーーーーーーー




「不思議な人だったわね、ミラさん」

 魔法がかかったアクセサリーを物色しながらレイラが言った。

「確かにそうだけど前向きに協力してくれるいい人だったじゃないか。……まぁ、全部ミラさんに押し付けて街を守ってもらうのは失敗したけど」

 棚に並べられた剣を試しに持ってみながら答える。

 ……やっぱ剣って重いな、こんなの何でみんな振り回せるんだよ。

「年上の人間にもいい人はいるんだな。もっと利益主義の汚い大人ばかりだと思ってたよ」

 ポーションの瓶を見比べていたシオンも呟いた。

 俺たちはミラさんのお店を後にして商店街に装備を見に来ていた。

 レベルはともかく、お金だけはたくさんあるんだから装備の面で強化を試みてみようということになったからだ。

「う~ん、君に剣は向かないみたいだねぇ。この辺の短剣なんかいいんじゃないかい?」

 剣に振り回されていた俺を見かねて太った武器屋の店主が声をかけてきた。

 見てみたがレイラからもらった短剣と大差ないものばかりだ。

 ……いくらお金があっても初心者ばかりのこの街でそんな高級高性能装備が売ってる訳がないかと思い直した俺たちは店を後にした。




 買い物を終えてギルドに戻った俺たちは少しはまともな装備に身を包んでいた。

 俺はこの世界によくある布の服に盗賊など素早さを資本にする職業が好むという軽くて丈夫なレザーベストを装備した。

 レイラはボロくなっていた赤いマントを捨て、守りの魔法が込められた赤いマントに魔法強化のイヤリングを装備してご満悦だ。

 シオンも服を買い直し、これまでの青い服から聖なる魔法が込められているという青いローブに着替えていた。

 ……二人に聞くと一番かっこいい色はそれぞれ赤と青なのだと答えてくれた。

 

 ギルドは相変わらず冒険者は一人もいなかった。

 ……やはりみんな街を捨てて逃げたのだろうか。




   ---------ーー




 それからアイテムを準備をしたり、剣の素振りをしたり、ダウンタウンのサキュバスがいるというお店に行ったらチップの襲撃予告に伴い臨時休業してたのを見て戦意が倍増したりしている内にあっという間に襲撃前日の夜になっていた。

 街の人も襲撃の日が近づくに連れて不安をあらわにしていた。

 そんな街の人に会うたびにミラさんが何とかしてくれると元気づけて回った。



 相変わらずガラガラなギルドでマスターの作ってくれた夕食を食べているとギルドのドアをノックする音が聞こえた。

 いつもノックなんて無しに誰でも入ってくるのに誰だ……、あ、ハイ。

 これアレだ、お話しの中でこういう今の俺たちみたいな状況に訪ねてくる連中は決まってるよな!

 王道の展開じゃないか!




 扉が開かれゾロゾロと入って来たのはもう顔なじみになって来たいつもギルドでたむろしている冒険者たちだ。

「…えっと、あの、…俺たちが悪かったっ! 俺たちは逃げ出したのにこのギルドで一番弱いパーティのお前たちが戦おうと準備しているのを見て俺たちみんな目が覚めたぜっ! 俺らも戦う! それがここに集まった全員の答えだ!」

 代表としてかリックが大声で宣言した。

 取りあえず俺たちがこのギルドで最弱パーティと思われてるのは理解できたぞ。


「うん、やっぱり戻ってきてくれたのね! …やっと私を守ってくれる気になったのね! 遅いわよアンタたち! 作戦会議は始まってるわよ!」

 レイラ、途中の一言がなければ最高にかっこいいセリフだぜ!

「その、俺たち話し合ったんだけどよ。……レイラさんがあの時、喝を入れてくれたから戻ってこれたと思うんだよ。だからよ、この戦いレイラさんのパーティに俺たち全員を入れてくれねぇか?」

 リックが一歩進み出るとレイラに向かって言った。

 しっかりレイラの顔を見つめて…。

「私のパーティに? …いいけどリック、私の胸はこっちよ? 顔なんか見てどうしちゃったのよ?」

 レイラが自分の胸を指さしながら答えた。

 ……リックが別に女性と話すとき胸しか見てないのは敢えてじゃなくてただスケベなだけだと思うぞ。

 冒険者の集団から笑いをこらえる声と女性冒険者たちの罵倒が小声で聞こえてきてリックは真っ赤になって手で顔を覆ってしまった。

「ともかく、俺たちはみんなで協力してこの街を守りたいッス! 俺とリックはこの街で生まれたから思い出がいっぱい詰まってるッス! 他にもこの街の生まれや長くここに住んでる奴らばっかりッス! みんなこのフロントの街が大好きなんッスよ! ……でも俺たちじゃドラゴンには敵わない、だからレイラの姉貴のパーティに入れて欲しいッス!」

 赤面したリックに代わってバードが語った。

 相変わらずセリフは下手に出てるのに動きは自信溢れるナルシストっぽい動きだが言ってることはもっともだ。

 レイラのパーティに…。

「凄いなレイラ、ここに居る奴ら今からみんなお前のパーティに入るってよ。これだけ居れば時間稼ぎもなんとかなるな。お前、大集団のリーダーだな! 一番後ろの見張りは俺に任せろ!」

 ……ふと何か嫌な予感がして取り繕ったが手遅れな気がするなぁ。

 

「ふん、レイラが今回のリーダーとか僕は嫌だね! こんなマヌケよりならまだ卑怯でずる賢い遊び人のがいいよ! それにレイラは僕らのパーティのメンバーなんだからリーダーはこいつだろ。……なあ、金治!」

 おい、シオンちょっと…。

「リーダーが金治なら俺も参加してやる! 俺様は一回負けた奴にはゴマをするぜ!」

 懐かしいバーサーカーのバルドまで来てるのか。

 ……てか、お前にプライドはないんかい。 

「そうね、私たちのリーダーは金治だものね。うん! 金治リーダーよろしく!」

「そうだぜ! 金治は運のバケモノだ! きっと今回もラッキーで勝てるぞ!」

 レイラ! リック! …あぁ……。

「ゴースト退治のパーティの司令塔だぜ! これは勝ったな!」

「表彰されてたパーティね!」

「確かアイツ、死なねぇ魔法を覚えたとか言ってたな! 無敵じゃねーか!」

 あああぁぁぁぁぁぁああ……、何でもう…。

「「「「キーンージーッ! キーンージーッ!!」」」」

 俺の名をコールするなっ!


 ……俺は一番後ろで何もしないうちに事が自然に済むのを見守ろうと思ってたのに、…雑魚モブとして魔法を放つミラさんを見守ったらギルドで打ち上げをする、そんな予定だったのに、…なんでこう主役という貧乏くじを引く羽目に…。




「ほら金治! 黙ってないでリーダーとしてパーティのみんなにほら、一言!」

 レイラに突き飛ばされて前に出た。

 俺をそんな嬉しそうに見ないでくれ、冒険者たちよ。

「……ハァ、しかたないか。……よし冒険者ども! 作戦会議を始めるぞ!」

「「「「おう!!!!」」」」


 

 静かだったギルドは大騒ぎになった。

 騒がしい冒険者の作戦会議がランプの光の下始まったのだ。

 ……こうなったらこの数だけは居る奴らをフル活用してドラゴンからこのフロントの街を守り切って見せるまでだな!

 もう自棄だ!




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