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ジャック・ポット・チャンス!~幸運転生者の異世界日記~  作者: 天勝金治
第二章 驚異の侵略者
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第13話 悪魔のチップ

「どうしたッチェか? ゴブリンはともかくゴーストのほうは大事になってるはずッチェ! 知ってるなら隠さず出すッチェ!」

 変な喋り方の二頭身のモンスターが騒いでいる。

 ドラゴンが降りてきたときは静まりかえっていたいた冒険者たちが騒めき出した。

 

「おい、金治。もしかしなくてもゴーストって廃教会で戦ったスカルゴーストの事だよな? ゴブリンのほうは知らないがな」

 シオンが眼鏡をクイッとしながら言ってきた。

 俺とレイラは青ざめていた。

「ね…ねぇ、ゴブリンって前私たちが退治したでっかいのじゃ…」

 まず間違いないだろう、あの時のゴブリンロードだ。

 ……ここは落ち着いて様子を見極めるんだ!

 あの変なモンスターももしかしたらゴーストとかに困っていた良い奴かもしれない!


「せっかく魔王軍がこの街を潰すために用意した手下を全部倒しちゃうなんてお仕置きしてやるッチェ! 隠すなら街を攻撃するッチェ!」

 ……ああ、最悪のパターンじゃねーか…。

 背中を顔を真っ青にして首を横にブンブン振っているレイラが後ろに下がろうとジェスチャーしている。

 ……もう帰るか。

 音を立てないよう静かに後ろを向いてレイラとシオンもともにその場を去ろうとした時だった。



「おい、教会のゴーストって前に表彰されてた奴らだろ?」

 どいつか分からないけど冒険者の一人が余計なことを!

「たしか金治とかいう人のパーティね」

「そう言えばレイラのヤツ、ゴブリンのボスと強えゴースト倒したって自慢してやがったなあ!」

 おい、止めろ止めろ…。

「あら、あの人たちって…」

 周りの一般人までこっちを見てなんか言い出した。

 もうダメだ。


「お、いたいた! おーい、金治パーティの御一行! 何かチンチクリンなのが呼んでるぜ!」

 その場から10mほど忍び足で離れたがついに見つかって、一人の冒険者に呼ばれた。他の奴らも大声で呼んでやがる…。

 ああもう!

 分かったよ、行きゃーいいんだろ行けば!

「……ハァ、行くぞ。仕方ない」

 正門のほうに三人並んで歩き出した。

 ……ああもう、なんでみんないい感じに道開けてくれてんの?




 正門の前でその変なモンスターと対峙した。

 俺たちの後ろでは冒険者たちが固唾をのんで見守っている。

 変なモンスターの後ろには強そうなドラゴンがじっとこちらを見ている。

「へへへっ、来たッチェね。じゃあ、早速死んで貰うッチェ!」

「待てっ!」

 もうちょい遠回しな言い方をしてくると思っていたがもの凄くストレートに死ねと言って来たので静止をかけた。

 ここは腹をくくって堂々と行くぞ。

「やい! お前は何者なんだ! 名前を名乗るのが礼儀だろ!」

 取りあえず相手の情報を聞き出すんだ。

 種族さえ分かればあとはきっとゲームの敵と同じような弱点なハズだ!


「あれはどう見ても紫色色違いのゴブリンでしょ。金治たちはゴブリンとはたたかったことあるんだろ?」

「ゴブリンの子供? モンスターにしてもマヌケなお顔ね。それにしても金治、あんなのに礼儀が通じるわけないじゃない。馬鹿ねぇ」

 ……この仲間たちは指示しなくても全力で相手を怒らせに行くな。



「な、なんだッチェ! ここは人間のお前たちが命乞いする展開じゃないッチェか! まあいいッチェ。俺様は高等悪魔のチップ様だッチェ! お前たちはこの俺様が直々に殺してやるんだから感謝するッチェ!」

 チップだかいうこの50㎝ほどのモンスターはなんと悪魔だというのだ。

 ……まぁ、高等ではなさそうだが。


「おい、悪魔だってよ! ホントに居るんだな」

「何言ってるのよ? 悪魔ってそんな珍しくないわよ。魔王軍に所属してないのは普通に人間の街で暮らしてたりもするのよ」

 なんかとんでもない新情報が仲間の口から告げられた。

「えっとフロントだと裏門近く、ダウンタウンの風俗街にサキュバスとかいっぱいいるみたいよね」

「風俗街って何それ! そんな素晴らしいものがこの世界にもあったのか。……詳しく頼む!」

「おい、あそこは駄目だ。僕はこの間行ったけど子供にはまだ早いと言われて追い出されたぞ! 49歳の僕でも追い出されるんだ、金治なんか相手にされないぞ」

 それはシオンの見た目が小学生レベルだからじゃないのか?


 しかしドラゴンの前に立ってうすうす死を覚悟していたが死ねない理由ができてしまった!

 ここはなんとしてもこのチビ悪魔にドラゴンを連れてお引き取りしてもらわなければ。



「おっお前たち何で俺様を無視してるッチェ! ……もしかして凄いやり手の冒険者ッチェか? チェックするッチェ」

 そういうと悪魔チップはどこからか装飾された虫眼鏡のような物を手に取った。

「シシシシシッ、これは『力量のレンズ』という魔法アイテムッチェ! これを使ってお前たちの強さを暴くッチェ!」

 いちいち親切に説明してくれたチックはその虫眼鏡を通して俺たちを観察し始めた。

 普通そんな道具を敵に使われたら一流の冒険者なら困るはずだ。

 しかし、俺たち初心者冒険者は隠している技も見られたからと言って対策される魔法も特別持ってはいないのだ。

 ……うん、どんな反応されるか予想がつくな。


「な、なんだッチェか! 遊び人が混ざってるッチェ! この魔法使いレベル17もあるのに魔法をたった2つしか持ってないッチェ! ……僧侶はまあ普通ッチェがこのレベルの僧侶がスカルゴーストに勝てるわけないッチェ! お前ら、さては探してる強い冒険者の身代わりで出てきたッチェね!」

 おお、この悪魔ずいぶん想像力豊かだな。

 俺らのことを馬鹿にして終わりかと思ってたぞ。

「別に偽物ってわけじゃないけどそうだよな、俺たちがボスモンスター倒せたのは事故みたいなものだよな。うん、俺たちはこの通り雑魚だからお前は帰っていいぞ」

 このまま呆れて帰ってくれれば万々歳だがそうもいかないんだろーなぁ。


「今日は強い冒険者は諦めてやるッチェ。でも3日後にもう一度来るからちゃんとゴーストを倒したパーティを用意しておくッチェ!」

 おお、帰るか。

「……でも、この俺様を騙した雑魚パーティは血祭りにあげてやるッチェ! 覚悟するッチェよ!」

 ああ、やっぱり戦うのかぁ。




 がっかりしたその時だった。

「『ファイアボール』ッ!」

 なんと隣にたっていたレイラがチップに向けて魔法を放ったのだ。

 見事命中し魔法の爆発で後ろに吹き飛ばされたチップは体に着いた火を消そうと地面を悶絶しながらのた打ち回っている。

 ……あれ? 予想外に効いている?


「さっきから黙って聞いてればあのチョップだかチープだかいうチビ頭にくるわねっ! ゴブリンのボスも強いゴーストも倒したのはこの私たちよ! ……さあ、金治、シオン。あの失礼なチビを粉々にするわよっ! 戦闘開始っ!」

 興奮してレイラが叫んだ。

「全く、数値だけ見て僕たちを甘く見るなんてナンセンスな悪魔だ。それにこの天才僧侶の僕を普通とかゴーストに勝てないとか馬鹿にするなよ! 金治、ガンガン行くぞ!」

 シオンも珍しく怒っている。

 ……冒険者は自分の手柄を認められなかったり実力を過小評価されるとよく腹を立てるイメージがあったがこの二人は妙に自信過剰な上にプライドも高いからな。

 あんなこと言われたらブチギレるわな。

 

「な、なかなかやるッチェね。……もう怒ったッチェ! ぶっ殺すッチェ!」

 そうチップは言うと短い手を前に出して。

「死ぬッチェ! 『ヤミボルト』ッチェ!」

 モンスター特有の闇属性と思われる呪文を唱えると手の先から黒い電撃のようなものがレイラに向けて発射された。

 ……しょーがねーなぁ!


「『ワン・モア』ッ!」

 俺はレイラと飛んでくる魔法の前に割り込んで立って呪文を唱えた。

 光の幕が俺の体の表面を包みこむ。


 ……ゴースト戦の後、この魔法はしっかり調査済みだ。

 この魔法は致死や瀕死に追い込むようなダメージから1回だけ守ってくれるバリアを一人に張るというものだ。

 体力が多い上級職なら本当のピンチにしか効果がないだろうがステータスが平均以下の遊び人の俺とは相性抜群の呪文なのである。

 何故なら大概の強い攻撃を受けたら死んでしまうような貧弱さだからだ!

 

 闇の電撃が迫ってくる。

 そう言えばこの魔法の効果を調べる時にイノシシ型のモンスターの突進や他のパーティの魔法を受けたがあの時も怖かったなぁ。

 ……なんてことを考えながら相手の魔法をもろ受けた。

 ここで体の表面に貼られたバリアが砕けて俺は無傷……、のハズだった。



 しかし、バリアは砕けることなく俺の体に衝撃が走り思わず尻餅をついた。

 体中に強めの静電気が走ったような痛みを感じる。

「金治っ、大丈夫? まともに魔法を受けてたけど」

 レイラが駆け寄ってきた。 

 ……別に何ともないな。

 バリアが砕けなかった。つまり…。

「うん、大丈夫みたい。『ワン・モア』で張ったバリアが砕けなかった。つまりアイツの攻撃は遊び人も一撃じゃ倒せない威力だ! 勝てるぞ!」

 俺は勢いよく立ち上がって叫んで、短剣を手に取った!


「そういう事なら遠慮なく、『ファイアボール』! 『ファイアボール』ッ!」

「僕も威力は低いけど……、『ホーリーレイ』!」

 勝ちを確信した顔でレイアもシオンも魔法を放った。

 連射された火の玉と白いレーザーのような魔法がチップを襲い、大爆発を巻き起こした!

 ボロボロになったチップが無残に地面を転がった。

「とどめだ! 食らえっ!」

 叫びながら走り、間合いに入ると俺は短剣を振り下ろした。

「……っ‼ ちょ、ちょっと待つッチェ!」

 ギリギリで飛び退き、ドラゴンの前に立ってそう言うチップはもう涙目だ。

「お、お前たちなかなかやるッチェね……。こ、こうなったらドラゴンの炎でみんな焼き払ってやるッチェ! おい、起きるッチェ! 戦うッチェよ!」

 丸くなって寝ていたドラゴンを蹴りながらそう叫んだ。



 マズい、ドラゴン居るの忘れてた!

 前戦ったゴブリンロードよりもずっと大きいドラゴンに勝てるわけがない。

 マヌケな悪魔とへっぽこパーティのやり取りを大道芸でも見るような空気で傍観していた冒険者たちも一斉に身構えた。

「早く起きて飛ぶッチェ! 何してるッチェか! ……ん? か、噛むなッチェ! 痛いッチェ!」

 そこで何故かドラゴンがチップの頭に噛みついた。


「ぷっはぁ、死ぬかと思ったッチェ……。何? お腹が空いたッチェってか? さっきあんなにご飯あげたッチェでしょ! ……しょうがないッチェね」

 何かドラゴンと言い合ったチップはこっちを振り向いて…。

「今日のところはここら辺で勘弁してやるッチェ! さっきも言った気がするけど3日後にまた来てやるッチェよ! その時こそお前たちの最後ッチェ! 覚えてろッチェ!」

 そう言い残すとチップは乗って来た黒っぽいドラゴンに飛び乗ると夕焼け空に去って行く。




「……なんだったんだアイツら?」

 誰かがボソッっと言ったその問いに答えられる人は居ない。


 その場に居たみんなが通り過ぎた嵐でも見るようにポカーンとドラゴンが飛んでいく夕日を眺めていたのだった。




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