第10話 デタラメな結末
『神様の箱』で一応魔法を貰えたがほとんどスカのような結果だった。
自棄になってスカルゴーストに向かって走って行き、持っていた壺の中の聖水を浴びせてやった……、がすり抜けてただ地面を濡らした。
聖水も効かないのかよ。
「退いてなさい、『ファイアボール』ッ!」
レイラの魔法は相変わらず通用しない。
「よし、そのまま注意を引くんだ! この隙に……、『セイン・ヒール』!」
回復の光に包まれ相手は煙を上げる。
ヘイトがシオンに行ったようだ。
右手で攻撃しようとしている!
後ろに込んで…
「こっちだ、モンスター! 『ワン・モア』!」
呪文を唱えるともう一度自分の体の表面がまた一瞬輝いた。
その光でスカルゴーストは振り返った。
……なにこれ、光で敵の注意を引く魔法か?
なんて考えてると振り返ったスカルゴーストはそのまま俺に向かって振り上げた右腕……、というか右骨を振り下ろした!
赤い半透明なその腕が当たると赤い電気みたいなものが周りに飛び散る。
俺は衝撃で吹き飛ばされて地面を転がるとパリンッ、という音と共に周りに光でできたガラスのようなものが飛び散って消えた。
「金治! 嘘でしょ金治……! こんなことって…っ!!」
「スカルゴーストの攻撃をもろ受けたんだ。遊び人なんかじゃ耐えれるわけがない……、今はこいつに集中だ。……クッ!」
……ああ、すぐそこでレイラが泣いてる声が聞こえる。シオンが魔法を唱えて戦っている声がする。
俺、また死んだのか。
ゲームオーバー……、か。
なんて思いながら目を閉じた。
……おかしい、死ねないぞ。
それに不思議と攻撃で切り裂かれたと思われる部分も全く痛くない。
傷を負ったと思われる部分を触ったが何ともなってない。
なんだかアホ臭くなって来たぞ。
スッと立ち上がると仲間の悲鳴が響き渡った。
スカルゴースト、お前も今一瞬ビクっとしたぞ。
「ぎゃぁぁぁぁあああっ!! 死体が! 動き出し!? ……おばけぇぇええ!!」
「なっ! 金治までアンデッドに……。ここは僕の魔法で成仏を…」
「成仏なんてしてたまるか! ……なんか生きてたわ」
レイラがダッシュで抱き着いて来て、シオンもこちらに駆けてきた。
うん、なんかうれしいけど敵さんこっち見てるな。
「よし、わかったからほら、戦うぞ!」
また、俺とレイラが気を引いてシオンが魔法撃ち込むループが始まった。
うまく回り途中俺が吹き飛ばされて何故か死なないということ何回かあったがシオンの強力な回復魔法がスカルゴーストの体、というか骨を燃やしていった。
しかし、3回ほどシオンの魔法が決まったころに…
「悪いけどあと1回で魔力が底をつきそうだ…」
シオンの魔力が切れかけてる様だ。
ここまでのシオンの攻撃で確実にダメージを受けてるようだ。
さらにスカルゴーストも散々役立たず二人に煽られ、体当たりも打撃も避けられまくり、近くでうろちょろしてる遊び人にはたまに当たるが全く死なない。
……相当怒りがたまったのだろう。
スカルゴーストは突然俺たちから距離を取って両手を上げると…。
「…ギ、ガ、マ…グ…」
と呪文のようなものを唱える。
するとスカルゴーストの頭上に巨大な黒い光の玉が現れた。
バチバチいってるし絶対ヤバい魔法だ。
「闇の魔法……、ここまでか…」
……俺より先に俺より出来るヤツが諦めると何かイラッとするな。
俯くシオンをドついて言ってやる。
「もう一発は魔法撃てるんだろ。だったら全部撃つまで諦めるなよ! 自分の実力を証明するんだろ!?」
シオンははっとして顔を上げた。
「チャンスは俺が作ってやる!」
ゲームだったらMP切れ間際、アイテムも無し、敵のHPは残りいくつか予想もつかず、何か凄い魔法をいざ撃とうとしている。
……すぐにリセットボタンを押したくなる状況だ。
しかし不思議と何とかなる気しかしない。
負ける気は一切しない。
あんなかっこつけたセリフを吐いたのも全てこの『何となく』のせいだ。
それに死なない自信もある。
「行くぞスカルゴーストっ!」
そう叫ぶと真っ直ぐ駆け出した。
相手は頭上の黒い魔法をそれに合わせて発射した。
それでもその魔法弾に向かって走る。
そしてぶつかる寸前に全身に力を込めて、
「『ワン・モア』ッッ!!」
呪文を叫んだ!
体がまた一瞬光る。
そしてそのまま敵の放った魔法弾に体当たり。
シュバァァァ、バリバリバリッッ!!
吹き飛ばされることはなかった。
体の表面に光の壁が現れて黒い魔法とぶつかり激しくスパークする。
腕を顔の前で交差させるようにして前に踏み込む。
黒い魔法が破裂して自分の体を覆っていた光もガラスのように砕けた。
それでも前に進む。
貰った魔法の効果は逃げ回ったり吹き飛ばされるうちにうっすらとだが分かっていた。
この『ワン・モア』は一度だけ致命傷から守ってくれるバリアを貼る呪文だ。
その証拠に絶対死んだなって攻撃を喰らった時だけバリアは砕けて無傷。逆に避けて転んだ時や敵の攻撃が地面を砕いて飛んできた破片なんかは泣くほど痛かったぞ。
囮役にこれほどぴったりの魔法はないだろう!
爆炎を抜けると無傷でスカルゴーストの横に出た。
だがもうへとへとで魔法の光で注意は引けそうにない…。
……いや、まだだ。
魔法のアイテムから出るものはきっと魔法の筈だ。
シュィィン、ポンッ!!
俺は左手の『ダイスの腕輪』を叩いてサイコロを呼び出す。
それをモンスターに思いっきり投げつけた!
そのサイコロはすり抜けることなくスカルゴーストに跳ね返り地面を転がる。
スカルゴーストはこっちを向いた、作戦成功だ!
サイコロが転がり4の目が出る。
しかし今回はパワーアップはどうでもいい。シオンが最後の魔法を撃つ時間は稼げただろう……。
なんて思ってると予想外の変化が起きた。
転がったサイコロは赤く光って消え、俺ではなくスカルゴーストの頭から足元にかけて赤い光がドィイインという低音と共に走ったのだ。
……なんかスカルゴーストが慌てている?
「これが最後だ! 悪しき悪霊に聖なる祝福をっ! 『セイン・ヒール』ッ!!」
カッッッ、バシュゥゥゥゥ……!!
後ろから放たれたシオンの魔法が包み込んだ。
また少しダメージが入るからそれで退散してくれることを俺たちは強く願った。
しかしそうはいかなかった。
今までとは比べものにならないほど派手に燃え上がり…、
「ギ…ガガ…ガァ……、コンナ…トコロデ…ェ…」
断末魔を残して何とスカルゴーストは燃え尽きたのだった。
……これまでの戦いが嘘のように呆気なく、まるで誰かがイカサマでもしたかの様に。
燃えカスすら残さずに消えるのを見届けた。
ちょうど悪夢が終わるかの様に俺たちを照らす朝日が輝き始めている。
魔力も体力も残ってない三人は驚きのあまり動けなかった。
でもきっとこの後、歓声が響くのだろうな。




