第9話 フロント対霊戦線
再び地下室から階段を駆け上がって礼拝堂へ顔を出す。
あのスカルゴーストはちょうど出口から外に出ていくところだ!
俺たちは顔を見合わせるとソイツを追って出口から外へ飛び出した。
明るい月の下、スカルゴーストは赤く輝き、真っ直ぐフロントの街を見つめていた。
……マズい。
「おいっ! スカルゴーストッ! 俺たちが相手だ、勝負しろっ!!」
叫ぶとスカルゴーストはこっちを振り返って両腕を上げて戦闘態勢を取る。
……戦闘開始だ!!
今回の作戦は至ってシンプル。
まず、俺が地下室から持ってきた『神様の箱』を開ける。
中から神様やスカルビーストと相打ちになるような強力なモンスターが出てきて、相手が消えてくれたら戦闘終了、万々歳だ。
次に箱がスカだった場合、唯一効いたシオンの魔法を連射して撃破を目指す。
俺とレイラは全力でそのサポートだ。
シオンの話だとさっきの魔法は魔力の消費が大きいから数発しか打てない。
でもスカルゴーストのような賢さが高いモンスターは大きなダメージを受ければ逃げ出してくれるだろうとのことだ。
この場合、スカルゴーストの討伐はまず不可能だが追い払えればひとまず作戦成功。
急いで街に連絡して強い冒険者を呼んでもらえば何とかなる。
最後に最悪なパターンとして『神様の箱』からモンスターが出てきて、ソイツがスカルゴーストと一緒になって襲い掛かってきた場合だ。
この場合はどうにもなんない。
ゲームオーバーだ。
そう、全てはこの『神様の箱』から何が出てくるかにかかっているのだ。
横では涙を浮かべながらも歯を食いしばり覚悟を決めたレイラ。
相手を鋭くにらみつけ手を突き出しいつでも魔法を唱えられるよう準備してるシオン。
この二人も俺に賭けてくれたんだ。
……負けるわけにはいかない!
「よし。『神様の箱』を開けるぞ!」
そう言って俺は箱のリボンをほどいて蓋を開けた。
ボボボボボボムッ……!!
開けた瞬間に輝き、中から大量の煙が自分たちを取り囲むように出てきた!
暫くして収まったようだ。
思わず閉じた目をそっと開けた。
その光景を見て驚いた。
自分と隣にいた二人を囲むように光の幕で円状に壁ができていて、その向こう側は草木も空の星や月もスカルゴーストもすべての色が消えているのだ!
そしてよく見ると色が無くなっている部分はスカルゴーストも含めて止まっているようだ。
レイラもシオンも慌てて周りを見回している。
「フフフッ……。箱を開けたのは君だネ。何にもわかってないみたいダケド」
声の方向を探して下を向くととそこには小さな人型のスライムのような何かが立っていた。
「『神様の箱』は魔法の箱。僕は魔法の神様。開けてくれた人に必要な魔法を一つだけ教えてあげるヨ。……ウン、君はとっても自由な心を持ってるネ。でも、ピンチみたイ」
自分の周りで形を変えながら歩き回って話すスライムに呆気に取られて何も言えない。
「大丈夫! この魔法を使ッテ。神様は人間に必要以上肩入れできナイ。でも自分を信じれるならば君たちみんなでここを突破できるハズさ!」
そう言ってその『魔法の神様』を名乗るスライムは強烈な閃光を放って、俺が目を開けた時には消えていた。
「……何があったのよ? さっきのはなんだったの?」
「あんな神様がいるもんか! ……金治は見たところ変わってないね。この魔法を使えって言ってたけど」
レイラはあたりを不思議そうに見回して、シオンは俺のことをじろじろ見まわしてくる。
「何も変わって……ねぇよな? 魔法がどうとかってなんだったん…」
魔法、散々確認してきた冒険者カードのスキル欄。
念じてカードを出して確認する。
三人で息を飲んだ。
空っぽのはずのスキル欄には一つ『ワン・モア』と記されていた。
「そんな馬鹿な! 神様に魔法を貰ったっていうのか? ありえない!!」
「聞いたことない魔法ね。取りあえずカードのスキルのとこ突っついて見てみましょうよ!」
言われるがままカードを突っついて見るとパソコンのウィンドのようにメッセージが書かれた四角い枠が出現した。
『ワン・モア、聖なる光で失われる命を一度だけ守る』
…………?
「……えっと、どういうことだ?」
この文章が魔法の説明のようだが意味があまりわからない。
魔法使いと僧侶も不思議そうな表情だ。
「取りあえず使ってみたら? 危険な魔法じゃなさそうだし」
「確かに文章的には守りの魔法……かな? 唱えてみなよ。もし魔法なら集中してその呪文を唱えれば発動するはずだから」
そう言って二人は何故か後ろに下がって身構える。
「やってみるか……。えっと、わ、『ワン・モア』!」
シュパァァン!
呪文を叫ぶと自分の体の表面が一瞬金色に光った。
……それ以外は何も起きないな。
「ステータス見てみたら? その腕輪みたく強化魔法なんじゃない?」
レイナの言う通りカードを出してみたが数値は平均以下のままだ。
「……これ、失敗作の呪文かただ光るやつなんじゃないの?」
真顔で言ってくるシオン。
いや、これホントに光るだけじゃん!
初めての魔法がちょっと光るだけとか!
あ、こいつらニヤけだしてるし!
「……クソ魔法じゃねぇか!!」
あまりに残念な結果に言い合ってるとふと背後にもの凄い殺気を感じる。
振り返るといつの間にか色が戻って動き出していたスカルゴーストがこっちを睨み付けているではないか!
「おい。何時からアレ動いてた?」
小声で尋ねる。
「確か金治が魔法使って光った時には周りの色戻ってたような…」
レイラよ、気が付いたときに教えてくれ!
「金治の失敗魔法貶して笑ってた辺りから睨み付け初めてたな」
この仲間たちだよ!
「あーもう! 緊張感吹っ飛んだけど戦闘再開だぁ!!」
俺たちは武器を手にして敵う筈のない敵と再び対峙した。




