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ジャック・ポット・チャンス!~幸運転生者の異世界日記~  作者: 天勝金治
第七章 スーパーラッキーギャンブラーズ
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第96話 VSゴールドグリード

 ━━━フロントの領主、シーナさんのお屋敷。

 そこで待っていたのは四天王ダンテ、そして見たこともないモンスター『ゴールドグリード』。

 黄金に輝く、その一つ目の巨人に俺たちは挑みかかる!



「こ、こんなヤツ一撃で吹き飛ばしてやるわよ! 行くわ、『ロイヤル・ストレート……」

「待てレイラ! どんな相手かもわかんないのにしょっぱなから全ブッパするアホがあるかよ!?」

 いきなり全部使って最大魔法を放とうとするレイラを慌てて引き留める。

「何すんのよ!? なにかされる前に消し飛ばしちゃえば…」

「今回は金治のが正しいよ。魔法が有効かすら分からない未知の敵が相手なんだ、ここは落ち着いて……そうだ。相手はデカブツ1体、こっちは4人、まずはみんなで散って攪乱しよう!」


 シオンが叫んで俺たちは駆け出す。

 デカい一つ目をゆっくり動かし、俺たちの動きを追視しているらしい巨人モンスター。

 やっぱし見た目通り動きはトロいパワー系か。


「よし、相手はこちらをまともに追えていない! チャンスを逃すな、セイヤァッ!!」

 部屋の中心でノソノソ動く巨人を四方から囲むように大部屋に散らばると、ローレンスが先陣を切って魔剣を振りかざして飛び掛かった。

 ドゴォォォン!!

 巨大な爆炎が巻き上がり部屋がズシンと揺れる。


「私だって負けないんだから! 『スマッシュファイア』ッ、いっけぇ!!」

「反撃してこいってことは効いてる…? とにかくチャンスだ、『ギガノ・ホーリーレイ』!!」

 爆風と輝くレーザーがモンスターの巨体を捉える。

 仲間たちの連続攻撃が次々にヒットし、巨人はグラリと前のめりに態勢を崩した。


 俺だって黙っては居られないぜ!

「こういうのの弱点は総じて決まってんだっての! これでもくらいやがれ!!」

 俺はマントを意識し加速、真正面へ回り込むと力の限りジャンプする。

 スライム状の身体と金属質な眼。

 ……その巨体で唯一材質が違う一つ目のようなコア、ゲームだったらコイツの弱点はここでしかねーだろ!

 シュパァァァァン!!

 回転しながら魔剣『ミリオンスター』の一撃。

 素早く振るうほど威力が上がる魔法の短剣、凄まじい閃光を放って固いコアを切りつけた。



 ズズン……と重い音を立てて溶けるように倒れるゴールドグリード。

 最近の敗北が嘘のように、完璧って感じの連携が決まってしまった。

 勝利を確信した三人が駆け寄ってくる。


「ねぇ見た今の! やっぱり私たち強くなったのよ、あんな巨人見た目だけでてんで大したことなかったわね!」

 杖を掲げてドヤ顔で勝利ポーズをするレイラ。

 確かにあっけなく……アレ?

「見たも何も戦ったの僕らじゃん。まぁ見掛け倒しの雑魚相手でも勝ちは勝ちだよね、ダンテとかいったっけ? シーナさんは返してもらうよ」

 そう言って空中で傍観していた四天王を指さすシオン。

 それに対してクスクス笑っているダンテ。

 ……あぁ、コレいつものパターンか…こんな気持ちよく終わったことねぇもんな。

 俺は察してしまったぞ。

「何がおかしい、貴様まだ何かする気か!? 大人しく負けを認めるんだ!!」

 ローレンス、お前ここで更にフラグ盛るか?



「うんうん、なかなかかっこよかったですね。でも僕にも“不死の魔法使い”としてのプライドがありますからねぇ、簡単には負けられないのですよ。さぁ反撃開始と行きましょうか、我が下僕よ!」


 そう言い放つとべチャッと崩れた金色の粘土みたいな残骸に向かって指を向けると怪しい光を放つ。

 すると案の定、ムクムクと起き上がり再び先ほどの巨人の姿を取り戻す。

「な、なんで復活しちゃうのよ!? 一回倒れたんだから死んどきなさいよ!!」

 結構理不尽な文句を叫ぶレイラを愉快そうにあざけ笑うダンテ。

「あぁ、調子付いた人間が絶望に堕ちる瞬間は何度見ても興ですねぇ! ではこちらのターン、軽ーく殴ってみましょうか」

 そう言い放った瞬間、金色の巨人は驚くほどの速さで片腕を上空に伸ばしこちらへ振り下ろす。

 俺たちをまとめて叩き潰す気だ。


「そのデカさで早すぎだろ!? ったくしゃーねぇな、『ワン・モア』!!」


 魔法の光を纏って高速で迫りくる巨大な手のひらに体当たり。

 一瞬凄まじい閃光を放ち、パリーン…というガラスの砕ける音と共にゴールドグリードの金色の腕を周囲に弾き飛ばした。

 スライムのような液体がドボドボと散乱した。


「おいおい、ワンモアが砕けたってことは即死かよ……お前ら大丈夫か?」

 もしもに備えて、いつもの癖で呪文を叫んだのが功を奏したようだ。

 振り返って三人の様子を確認する。

「あ、ああ助かった……だが予想以上に相手は手強い様だな。あの巨体でこのスピードとパワー、これは俺でもマズいかもしれんぞ…」

「コイツの体、液体状の金属みたいだ。自由に形が変わる鉄塊みたいなヤツとなんか勝負にならないよ!」

 身構えるローレンスと破片をつついて絶望の声を上げるシオン。



 だがいくらこっちがビビっても敵はまってはくれないみたいだな。

 腕を戻すと今度は拳を作って構えようとしていた。


「ちょっとまた来るわ! 私ぺちゃんこは嫌よ、ここは逃げるのよ!!」

 レイラが叫んですぐ後ろの来た道へと駆け出す。

「あぁん、逃げちゃいますかぁ。別にいいですけどオススメはしませんよ? 正々堂々戦った方がいいと思いますけど…」

 オーバーリアクションでわざとらしくダンテが声をかけて来た。

「そんなの知らねーよ! お陀仏は御免だぜ、走るぞ!!」

 レイラの後を追って俺たちもダッシュ、すぐ後ろでバキバキと砕かれる音がするが振り返ってらんねぇ!

 来た道を逆戻り、前方の玄関の大広間への扉はそういや閉まってたな。

 先に逃げ出したヤツが必死に扉をこじ開けようとしている。

「どけレイラ! ローレンス、このまま扉を蹴り破れ!」

「おう任せろ! はぁぁ、ウォリャァァァ!!」

 助走を十分に付けた鎧の騎士の飛び蹴りが木製の扉を粉々に吹き飛ばす。


 エントランスに飛び込んだ俺たちは振り返り身構えた。

 一つ目の巨人モンスターは大部屋より狭い廊下をギッチギチになりながらズリズリとこちらに向かってくるところだ。


「おやおや振り出しまで戻っちゃいましたね。どうします? 玄関も破って逃げ出しますか?」

 ボウンと黒い煙とともに俺たちの上空にダンテが現れる。

「に、逃げたいけどシーナさんを助けるわよ! でもその前に……アンタいい加減にその不快な笑い顔止めなさいよね、『ファイアボール』ッ!!」

 レイラは怒り心頭といった感じに杖を空中の四天王に向けて叫ぶ。

 お得意の不意打ちファイアボール……だがレイラの杖からは何も出ない。

「あ、あれ!? どうしたっていうのよ! まさか杖壊れちゃった…?」

 慌てふためいて杖を振り回したり先端の水晶を確認する。


「大丈夫、壊れてませんよ。ただこの部屋では魔法を使えないようにちょ~っと細工させていただいてるだけで、何時も魔法だよりは良くありませんからねぇ」

 つまるところ俺たちの魔法を封じられたってことか。

 ……これはマズいな。

「なっ、卑怯だぞ! 僕ら僧侶は魔法が使えなかったら……いやそれ以上にここに逃げ込むのを読んでいた!?」


 絶望の表情を浮かべるこちらに対し、あざ笑うかの如く空中を漂うダンテ。

 魔法を封じられたってんならシオンとレイラは何もできない、俺も頼みの『ワン・モア』を使えない。

 敵は四天王に加えて廊下をゆっくり前進してくる無敵の巨人。

 これは詰んだか……?


 

「おやおや、降参ですか? う~んでも当然かもしれませんね、いままで全部まぐれとお仲間の力で生き延びてきた最弱パーティですものねぇ」

 俺たちのすぐ目の前に降りて来て、嫌らしく挑発してくる。

 コイツ、何を言いたいってんだ……?


「俺はともかくこいつ等は強いぜ? まぐれでも仲間頼みでも勝ちは勝ちだろ!?」

 思わず言い返すとダンテはわざとらしく手の平を上に向けて驚いて見せる。


「ほほう、流石漁夫の利英雄は言うことが違いますねぇ。最後の最後にいいとこどりして名を馳せて来た卑怯者の英雄、天勝金治様でしたっけ?」

「なっ、言わせておけばコノヤロー! 俺だってちょっとは戦えるっての、馬鹿にすんじゃねーよ!!」

 俺は短剣を振りかざしてダンテの奴に飛び掛かった。

 一発ぶん殴んなきゃ気が済まねぇぞ!


 ズンッ……!

 だがあっさりかわされ、ダンテの拳が俺の腹にめり込む。

 ズキンと痛みを感じた時には俺は後ろへ吹っ飛ばされている途中だったのだ。

「ガッハ……、てめっ…」

 恐らく客観的に見ればさぞかしみじめったらしく俺は床を転がっていた事だろう。

 何が起こったのか分からない、一瞬で反撃を食らったわけだ。


「ふーむ、分かってないみたいですね。ゴールドグリード、やりなさい」

 再び空中に舞い上がったダンテがそう呟く。

 エントランスのすぐ近くまで進んでいた巨人の一つ目がカッと輝いたかと思うと金色の光線が廊下からめいっぱい放たれたのだった。



ゴオォォォォォン……!!


「え……?」

 床で蹲る俺はもちろん、一瞬の事に呆気にとられたシオンたちは動くことが出来なかった。

 光線は廊下から真っ直ぐ伸び、目の前で三人の仲間たちを飲み込んだ。

 叫ぼうにも痛みが走って声すら出ない。



 光線がやむと三人は黄色い半透明の水晶のようなものの中で固まっていたのだった。

「レイラ! シオン! ローレンス!! なんだよコレ!? おいダンテ、何をしたんだよ!!」

 何とか立ち上がってその水晶に飛びつくが完全に固まっている。


「ん~そうですね、ゴールドグリードは人間の欲を糧にするとは言いましたよね? 欲だけを吸収することも人間自体を吸収することもできるわけです、つまり彼ら三人は今あの子のご飯になろうとしているわけですね。ああ、我ながらなんて分かりやすい!」

 なるほど、固めた人間を捕食って訳か……いやまておい!?

「おい食われちゃダメだろ!? このっ! いっつつつ…」

 慌てて短剣で三人を捉えた水晶を殴るがこっちの腕がしびれただけだった。

 僅かに砕けたけどゴールドグリードはすぐそこに迫っている。

 ちまちま発掘ごっこなんてしてたら数日はかかるな。

 どうすればいいんだよ……



「ほらほら、大切なお仲間が食べられちゃいますよ? それどころか君まで食べられちゃうかも、あ~怖い怖い。……助けて欲しい? 欲しい??」


 過ぐ近く、目の前まで降りて来たダンテがベタベタ触りながら問いかけてくる。

「そりゃ助けて欲しいぜ! ……で、馬鹿にするだけして見殺しか?」

 俺はダンテの手を払いのけて睨みつける。


「連れないねぇ、でも助けてあげるのはホントだよ? ただ条件として……君が僕の手下になるって言うならだけど」

 ……ハァ?

 なんか無茶苦茶なことを言い出しやがったなこのフワフワ頭。

 俺なんかなんで手下に…

「“俺なんかなんで手下にするんだよ”って感じの顔だね。僕、君の運は素敵だと思うんだよね。最初に言っただろ、君のことは評価してるって」

 お見通しかよ……でもコイツの仲間も悪くはないか?

 悪いヤツなんだろうけど俺は正義の味方じゃないしみんなで生き延びれるなら…

「あ、その三人は要らないよ? 低能な魔術師に失敗作のアンデット……そんなゴミに興味はないからね。さ、一緒に行こうよ、金治クン!」


 なるほど、手下は俺一人か。

 ……なら答えは一つだ。


「ヘッ、お断りだね。ちょっと良いなって思っちまったけど俺は仲間を裏切る気はないんでね。俺は仲間も助けるし生きてここを出てやるぜ!!」


 俺は無理やり笑ってダンテに言い返してやる。

 ……この時、レイラたちの目が僅かに動いたのを見逃しはしなかった。

「君は賢明なほうかと思っていたけど残念だよ。それじゃあ、君たちの最後を傍観させてもらうよ……せいぜい足掻いて見せることだね」

 無表情にフッと表情を変え、冷たく言い放ったダンテは再び空中へ。




 仲間は全員戦闘不能、魔法は封じられ最悪のモンスターが迫る……これぞ絶体絶命ってわけだ。

 考えろ、俺には地上最強クラスの幸運があるんだ。

 絶対に詰みってことはない、どこかに抜け道があるはずだ!


 まず迫りくる『ゴールドグリード』、倒したと思ったけどそんなことはなく完全復活……いや、一つ目に見えるコアっぽいのにある一閃の傷。

 あれはもしかしなくても俺が切りつけたヤツか?

 そして仲間、水晶みたいのに閉じ込められて身動きできないみたいだが死んじゃいないみたいだ。

 ……ダンテの隙をついて仲間を助け、なおかつゴールドグリードを倒す。

 運しか取り柄のない俺の一発勝負。

 俺はアレに賭ける!



「見せてやるよ、悪あがきをな! くらえ、ダンテェェエッッ!!」

 俺は思いっきり振りかぶると空中に浮かぶ奴に向かって短剣をぶん投げた!

 ……頼む、当たってくれ!

 弧を描いて短剣はダンテの脇を飛んで行く。

「はぁ? 悪あがきにしてももっと何かあるでしょうに……失望しまし…」


 ガシュィィィィン!! バキィッ!!


 残念そうに顔を抑えるダンテの背後で白い閃光が放たれる。


 グワァッシャァァァァン!!


 金属の砕ける音と共に巨大なモノが落ちてきて凄まじい騒音が響き渡った。

「よっしゃ、ビンゴ! 早速やってもらうぜ、ローレンス!!」



 粉々になったガラスや金属の破片の中に立ち尽くす三人の仲間。

 黄色の水晶も砕け散っている。

「はぁぁ! 生き返ったわ、ほんとにもうダメかと思ったわよ。助けられちゃったわね!」

「まさかこんな方法なんて……いや運任せでやったでしょ!? まぁ助かったよ」

 大騒ぎのレイラと呆れ気味のシオン。


「ったく喜ぶのは早いぜ!? 見ろ、あのデカブツの目の部分。あそこを砕けばアイツを倒せるハズだ、頼むぞ!」

「ああ、任せろ。今度こそ我が剣で成敗して見せる……ハァァァァァアッ!!」

 ちょうど、ズルズルと狭い廊下から這い出そうとしていた巨人。

 その突き出した目玉に向かって盛大な縦切りを放つローレンス!


 凄まじい炎を纏ったその会心の斬撃は見事巨人の目玉、金色のコアを真っ二つに切り裂いた!!


 キィィィィン……ドバシャァァァ…

 謎の音を上げ、黄金の巨人は液体となって溶けてしまった。

 どうやら完全勝利みたいだな。



「みたかダンテ! これが俺の運……いや、仲間の力だぜ!!」

「ええ……、お見事です。まさか僕のゴールドグリードを倒すとは。ところで、さっきの短剣を投げたのは最初からアレを狙って?」

 一瞬焦りの表情を浮かべたが、再び微笑んでダンテは問いかけてくる。


「まあそうだぜ、当たるかどうかってか上手く落ちるかも運頼みだったけどな。シャンデリア落とし、大成功だったろ!」


 俺にはナイフ投げみたいなスキルも特技もない。

 上手く投げれたとこでダンテに短剣を撃ち落とされる可能性もあったし、当たったとこでうまくレイラ達の上に落ちてこなかったかもしれない。

 10割運任せの出まかせ、やってやったぜ!



「金治様! 皆様ご無事だったのですね、本当によかった!」

 突如響いた凛とした声。

 なんと向こうの部屋から廊下をかけてくるのはスーツ姿の眼鏡の女性、捕まってたシーナさん!?

「へっ、なんでシーナさんここに? 檻の中だったわよね…」

「ええ、何故かわかりませんけど突然檻が消えまして。貴方たちが開けてくれたのでは?」

 不思議そうに彼女は首をかしげる。

「檻の魔法は解除しましたよ、今回は僕の負けみたいですしね」

 やれやれといった感じのダンテ。

 意外に往生際がいいのな。


「さて今回は君たちに花を持たせたんだけど……、僕も諦めは悪くてね。次は“この大陸で一番欲望が渦巻く場所”で会おう。きっと君たち好みの場所だと思うよ」


 ……次ってまたなんかやる気なのか。

「おいおい、また戦う気かよ? 次はホントに死んじまいそうだし止めてくれよな…」

 げんなりして言い返すと彼はクスクス笑う。

「んー、戦いはもう良いかな。次は君たちの冒険を見たいんだ。大丈夫、絶対に君たちはいずれ行くことになる場所だからね。……それじゃあ、僕はこの辺で。またね!」

 そう言い残して四天王ダンテはボウンと黒い煙を残して消え去ったのだった。



 不思議な感じがする最後の四天王、ダンテ。

 彼が残した意味深なヒント、“この大陸で一番欲望が渦巻く場所”

 謎と面倒ごとが降りかかった気がするけど、とにかく今日は俺たちの勝ち。

 痛みは忘れて祝杯だ!




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