狂人
現実味を出すために試行錯誤しながら書いたのですが、合わないところがあるかもしれませんご了承ください
俺は二人の服を新調させるため、大きなショッピングモールへ車を走らせた。
店に入る前、俺は二人に一つだけ言った。
「服を選ぶなら、噛まれても歯が通りにくいものにしろ。それだけ気を付けてくれ」
「わかった」
二人はうなずき、服売り場へ向かっていった。
その間、俺は一人で館内を見回ることにした。
通路を徘徊していたゾンビを何体か始末し、ついでに以前買えなかった雑貨を探す。
しばらくすると、二人が買い物を終えて戻ってきた。
さすがアイドルというべきか。
終末世界になっても、その服装はどこか華がある。
「……似合うじゃん」
気の利いた言葉は出なかった。
それでも二人は照れくさそうに笑ってくれた。
服を積み込んだ俺たちは、隣のホームセンターへ向かった。
「少し見てくる。車で待っててくれ」
二人を残し、一人で店内へ入る。
工具売り場を歩いていると、一際目を引くものがあった。
スレッジハンマーとバールだ。
どちらも手に取ると、重さも握り心地もしっくりくる。
「試してみるか」
近くを歩いていたゾンビへ向かった。
まずはバールを振り抜く。
鈍い音とともに頭蓋が砕けた。
思った以上の威力だった。
続いてスレッジハンマーを振り下ろす。
一撃で頭が潰れ、ゾンビはその場に崩れ落ちた。
「……すげぇな」
そう呟いた自分に少し驚く。
こんな状況で、武器を試すことに高揚している。
俺は少しずつ、この世界に順応してしまっているのかもしれない。
店を出ようとしたとき、煙草売り場が目に入った。
自衛隊を辞めてから禁煙していたが、ふと一本吸いたくなった。
火をつけて吸い込む。
久しぶりの煙が肺に染みる。
頭がくらくらする。
ヤニクラだった。
その感覚に身を任せていると、灯油缶が目に入った。
「……試してみるか」
灯油を床へ流し、吸い終えた煙草を放り投げる。
一瞬遅れて炎が床を走った。
オレンジ色の火が勢いよく広がる。
その光景を、俺はただ眺めていた。
綺麗だと思ってしまった。
客観的に見れば、今の俺は狂っているのかもしれない。
炎を背に店を出ると、煙の中から現れた俺を見て、二人は不安そうな顔をしていた。
俺は何も言わず車を走らせた。
しばらくすると、一軒のパチンコ店が見えてきた。
車を止め、二人に声を掛ける。
「景品に食料や水があるはずだ。取ってくる」
店内から食べ物や飲み物を運び出したあと、俺はハンマーを持って再び中へ戻った。
目の前には、昔何度も負けたパチンコ台。
自然と笑みがこぼれた。
「今なら文句はないよな」
思い切りハンマーを振り下ろす。
ガラスが砕け、筐体がひしゃげる。
もう一台。
さらにもう一台。
気が付けば十台近く叩き壊していた。
不思議と胸が軽くなっていた。
昔の鬱憤を晴らしているようだった。
車へ戻ると、エバが心配そうに聞いてきた。
「さっきから大きな音がしてたけど、大丈夫だった?」
「ああ。待たせて悪い」
少し笑って続ける。
「これで少しスッキリした」
二人は顔を見合わせ、苦笑いを浮かべた。
俺は車を走らせる。
こんなことをしている場合じゃない。
本当の目的は、ミナとリオを見つけ出し、故郷へ帰ることだ。
それでも――。
こんな寄り道をしながら進む旅も、悪くないと思ってしまう自分がいた。
俺は少しずつ、この終わった世界に染まっている。
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