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終末世界で俺は  作者: やまてい


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3/8

生存者

現実味を出すために試行錯誤しながら書いたのですが、合わないところがあるかもしれませんご了承ください


高速道路を諦めた俺は、下道へと車を走らせた。


人気のない道路を進みながら、周囲を警戒する。


信号は消え、道路には乗り捨てられた車があちこちに転がっていた。


街は静まり返っている。


聞こえるのはエンジン音だけだった。


しばらく走っていると、道路脇に人影が見えた。


女が二人、男が一人。


距離があるせいで顔までは分からない。


俺はアクセルを踏んだまま、そのまま通り過ぎようとした。


この世界で他人と関わるのは危険だ。


助けた相手に裏切られるかもしれない。


余計なリスクは背負いたくない。


そう自分に言い聞かせる。


だが、その三人は必死に両手を振りながら助けを求めていた。


その姿がバックミラーに映る。


「……くそっ」


思わず舌打ちした。


見捨てることができなかった。


俺は急ブレーキを踏み、路肩へ車を寄せる。


窓を開け、大声で叫んだ。


「早く乗れ!」


二人の女はすぐにこちらへ駆け出した。


だが男だけは動かない。


女たちは必死に説得しているようだったが、男は周囲を警戒しているのか、それとも俺を信用できないのか、なかなか車へ向かってこなかった。


「早くしろ!」


焦りが募る。


その瞬間だった。


物陰から三体のゾンビが飛び出した。


男は反応する間もなく喉元に噛みつかれる。


「ぐっ……!」


悲鳴すら上げられず、その場へ崩れ落ちた。


二人の女は悲鳴を上げながら車へ飛び込んでくる。


俺はドアが閉まるのを確認すると、アクセルを床まで踏み込んだ。


タイヤが悲鳴を上げ、車は一気に走り出す。


バックミラーには、倒れた男へ群がるゾンビたちの姿が映っていた。


助けられなかった。


だが、あれ以上はどうすることもできなかった。

俺はアクセルを踏み込み、その場を離れた。


バックミラーを見る。


さっきの男はもう動いていなかった。


助けられなかった。


だが、あの状況では仕方がない。


そう自分に言い聞かせながら、人気のない場所まで車を走らせた。


ようやく周囲が静かになったところで、俺は二人の顔を見た。


「……え?」


思わず声が漏れる。


見間違えるはずがない。


一週間前、東京で復刻ライブを見に行ったアイドルグループのメンバーだった。


「嘘だろ……」


こんな偶然があるのか。


俺の鼓動はさっきまでとは違う意味で速くなっていた。


だが、同時に疑問も浮かぶ。


グループは四人組だったはずだ。


ここにいるのは二人だけ。


残りの二人はどこへ行ったのだろうか。


聞きたいことは山ほどあった。


だが今は、まず安全を確保することが先だ。


俺は何も言わず、車を走らせ続けた。


しばらくして、人の気配がない建物を見つける。


周囲を確認し、車を止めた。


「ここなら少しは安全だろ」


俺は車を降り、大きく息を吐く。


張り詰めていた緊張が一気に押し寄せてきた。


深呼吸をしていると、二人も車から降りてきた。


「さっきは、本当にありがとうございました」


俺は黙ってうなずく。


なぜかうまく言葉が出てこない。


推しを目の前にして緊張しているなんて、自分でも情けなかった。


そのまま逃げるように建物の中へ入る。


中を一通り見回り、安全を確認する。


「よし……誰もいないな」


一息つこうとしたところで、一人が遠慮がちに口を開いた。


「あの……あなたのお名前は?」


「タツヒデ」


短く答える。


すると、二人も頭を下げた。


「私はカリンです」


長い黒髪が印象的な女性だった。


「私はエバです」


ショートボブがよく似合う、笑顔のかわいい女性だった。


俺は思わず笑ってしまう。


「知ってるよ」


「え?」


「ライブ、見に行ったから」


二人は顔を見合わせる。


「本当ですか?」


「ああ。」


その瞬間、二人の表情が少しだけ明るくなった。


終末なんて嘘だったかのように、しばらく三人で他愛もない話をした。


こんなに自然に女性と話したのは、自衛隊を辞めて以来かもしれない。


気づけば一時間ほど経っていた。


そこで俺は、ずっと気になっていたことを聞いた。


「そういえば、さっきの男の人は?」


カリンが静かに答える。


「私たちのSPです」


やはりそうか。


「じゃあ……ミナとリオは?」


二人は俯いた。


しばらく沈黙が続く。


やがてエバが震える声で話し始めた。


「避難所へ向かう途中で、事故があったんです」


「私たちは二人ずつ別々の車に乗せられていて……そこではぐれてしまって……」


言葉が詰まる。


カリンが続きを話した。


「私たちだけじゃ探せなくて……だからSPさんについてきたんです」


そして二人は俺を真っすぐ見つめた。


「お願いがあります」


「ミナとリオを、一緒に探してもらえませんか?」


俺は黙った。


正直、危険なことはしたくない。


余計なリスクを背負うのも好きじゃない。


それでも。


四人で笑っていたライブの光景が頭に浮かぶ。


「……分かった」


気づけばそう答えていた。


二人はほっとしたように笑う。


「ありがとうございます」


外を見ると、もう日が傾き始めていた。


「今日はもう遅い」


「探すのは明日にしよう」


「今日はここで休む」


二人も素直にうなずいた。


この時の俺たちは、まだ知らなかった。


この世界で本当に恐ろしいのは、ゾンビではない。


――人間だということを。




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