略奪者
現実味を出すために試行錯誤しながら書いたのですが、合わないところがあるかもしれませんご了承ください
明日、ミナとリオを探す。
そう約束した俺たちは、疲れ切って泥のように眠っていた。
俺は二階。
カリンとエバは一階。
今思えば、それが間違いだった。
俺だけでも起きて見張りをしていれば――。
その後悔は、一生消えないかもしれない。
――バキッ。
玄関の扉が壊れる音で目が覚めた。
「……っ!」
寝ぼけた頭では何が起きたのか理解できない。
体を起こし、一階へ向かおうとした、その瞬間だった。
「きゃあっ!」
カリンたちの悲鳴が建物中に響いた。
俺は反射的に拳銃をホルスターへ差し込み、階段を駆け下りる。
一段飛ばしで一階へ降りると、玄関には二人の男が立っていた。
どちらも痩せ細っている。
だが、その目だけは獣のようにぎらついていた。
一人はエバの首にナイフを突きつけ、もう一人はカリンを羽交い締めにしている。
「動くな。」
男が低い声で言った。
「食い物を全部よこせ。」
エバとカリンは震えながら必死に涙をこらえている。
俺はゆっくり両手を上げた。
幸い、左足を半歩前に出していたおかげか、暗さのせいか。
ホルスターに差した拳銃には気づかれていない。
「分かった。」
「食料なら渡す。」
俺はできるだけ冷静に答える。
時間を稼げ。
少しでも隙を作れ。
そう自分に言い聞かせる。
ポケットへ手を入れる。
残っていたカロリーメイトを取り出した。
だが、その時だった。
「……あと、その女二人も連れていく。」
男は薄気味悪い笑みを浮かべた。
その一言で、頭の中が真っ白になった。
何をするつもりなのか。
考えるまでもない。
俺の中で何かが切れた。
俺は男たちの少し横へカロリーメイトを放り投げる。
「おい!」
二人の視線が一瞬だけそちらへ向いた。
今だ。
俺は床を蹴る。
距離を一気に詰めながら拳銃を抜いた。
狙うのはエバを押さえている男。
引き金を引く。
乾いた銃声が建物中へ響いた。
弾は男の頭へ命中する。
男は何が起きたのか理解する間もなく、その場へ崩れ落ちた。
残った男は目を見開く。
慌ててカリンの首へナイフを押し当て直そうとする。
だが、もう遅い。
俺は銃身をナイフと首の間へねじ込み、そのまま力任せに弾き飛ばした。
ナイフが床へ転がる。
「今だ!」
カリンは男の腕から飛び退いた。
男は勢い余って尻もちをつく。
「ま、待ってくれ……!」
「頼む……見逃してくれ!」
さっきまでの威勢は消え失せ、情けない声で命乞いをしてきた。
だが、俺の耳には届かなかった。
俺は床へ落ちたナイフを拾う。
そして、一瞬のためらいもなく男の頭へ突き立てた。
男は短く痙攣すると、そのまま動かなくなった。
静寂が訪れる。
聞こえるのは、自分の荒い息遣いだけだった。静まり返った部屋。
俺はその場に立ち尽くしていた。
手に握ったナイフから、血がぽたぽたと床へ落ちる。
その音だけが、やけに大きく聞こえた。
「……俺は」
視線を足元へ落とす。
そこには、さっきまで命乞いをしていた男が倒れている。
その瞬間、ようやく理解した。
俺は、人を殺したんだ。
急に胃の奥が締め付けられる。
吐き気が込み上げ、呼吸が浅くなる。
頭の中に、昔の記憶がよみがえった。
親父と初めて狩りへ行った日。
仕留めたイノシシを前に、震えながら立ち尽くしていた自分。
あの時も命を奪った。
だが、今とはまったく違う。
動物と人間。
その違いはあまりにも大きかった。
「……うっ」
吐きそうになる。
その場から一歩も動けない。
誰かが俺を呼んでいる気がした。
だが、何も耳に入らない。
しばらくして、肩にそっと手が置かれた。
「……タツヒデさん。」
カリンだった。
「大丈夫?」
その一言で、ようやく現実へ引き戻された。
「あ……ああ。」
かすれた声しか出ない。
エバも不安そうな表情で俺を見つめていた。
俺は深呼吸を一つして気持ちを落ち着かせる。
「今日は二人とも二階で寝てくれ。」
「もう一階は危ない。」
二人は何も言わず、静かにうなずいた。
俺は男たちの死体を両腕で引きずり、建物の外へ運ぶ。
玄関の前へ転がし、周囲にゾンビがいないことを確認してから中へ戻った。
壊された扉を棚や机で塞ぎ直す。
作業を終えた頃には、体中から力が抜けていた。
俺は一階の部屋へ座り込み、さっきの出来事を何度も思い返していた。
人を殺した。
あの時、ほかに方法はあったのか。
何度考えても答えは出ない。
気づけば、そのまま意識を失うように眠っていた。
……
目を覚ますと、窓から差し込む日差しが眩しかった。
時計を見る。
午前十時。
ずいぶん寝てしまったらしい。
口の中には嫌な味が残っていた。
窓を開け、溜まった唾を吐き出す。
窓を開けた音で、二階にいた二人も気づいたようだった。
階段を下りる足音が聞こえる。
「おはよう。」
カリンが少しぎこちなく笑った。
「ああ、おはよう。」
「ちゃんと寝られた?」
俺が聞くと、二人は顔を見合わせて苦笑した。
「……あんまり。」
それもそうだ。
あんな出来事のあとで、ぐっすり眠れる人間なんていない。
それでも二人は、無理に笑顔を作っていた。
その強さに、俺は少し救われた気がした。
もし一人だったら。
俺はきっと、昨日の出来事に押し潰されていただろう。
残っていたカロリーメイトを三人で分け合い、簡単に朝食を済ませる。
荷物をまとめ、出発の準備をする。
最後に俺は洗面所へ向かった。
鏡に映る自分を見る。
目の下には濃い隈。
返り血は洗い流したはずなのに、まだこびり付いているように見えた。
「世界は変わった。」
鏡の中の自分へ言い聞かせる。
「もう昨日までの俺じゃ生き残れない。」
守りたいものがある。
カリンとエバ。
そして故郷で待っている家族。
そのためなら、もうためらわない。
必要なら、人も殺す。
そう心に誓い、俺は洗面所を出た。
車へ乗り込む。
エンジンが唸りを上げる。
「行こう。」
二人は静かにうなずいた。
俺はアクセルを踏み込み、ミナとリオを探すため、再び走り出した。
文書力なさすぎてところどころわけわかんないかもしれないです




