番外編 構築
現実味を出すために試行錯誤しながら書いたのですが、合わないところがあるかもしれませんご了承ください
俺たちは死体を燃やし、車に乗り込んだ。
さすがにこの近くにはいられない。
安全を期して、一つ先の区画まで移動することにした。
しばらく車を走らせていると、エバが口を開いた。
「あの人、置いていって大丈夫なの?」
「まあ、大丈夫だろう」
「でも……まだ生きてたよね?」
「そうだな」
「だったら、誰かに助けられるかもしれないよ」
「それならそれでいいさ。俺たちにはもう関係ない」
そう言いながらも、俺は少しだけ後ろを振り返った。
「骸になってることを願うね」
「……それならいいけど」
エバは納得したような、していないような顔をする。
「でも、あの人たちがどこから来たのかは気になるわ」
カリンが口を挟んだ。
「そうだな。今思えば、尋問するべきだったかもな」
「だったら、戻る?」
「いや、それはない」
俺は即座に答えた。
「さっきの騒ぎで、何が寄ってきてるか分からない。それに、戻ったところで安全とは限らない」
「……そっか」
車内が少し静かになる。
---故郷にて---
故郷では、みんなトラックを用意し終え、農場へ向かう準備をしていた。
時間は十分にある。
「それじゃあ、みんな聞いてくれ」
私は集まった者たちに声をかける。
「これから農場へ向かう。だが、もし帰ってこられなかったら――」
そこまで言って、私は口を閉じた。
「……いや、いい」
不安を煽るようなことを言う必要はない。
そう思い、私たち十五人はトラックへ乗り込み、農場へ向かった。
「お前も不器用だな」
隣に座る恭介が苦笑する。
「いや、不安を煽るようなことは言わないほうがいいと思ってな」
「だったら、最初から言うなよ」
「分かってるよ」
そう言って、私たちはトラックに揺られながら談笑していた。
そうしている間に農場の入り口に着いた。
「計画は話した通りだが、もう一度確認しておく」
私は全員を見渡した。
「まず十人で農場の下見に行く。安全を確認した後、トラックも農場へ入れる。そこで家畜や、必要になりそうなものを積み込む。それが今回の算段だ」
私は続けて名前を呼んだ。
「恭介、山本、ゴウ、シンジ、カズヤ、レン、ジン、リュウト、カイは私と来い。ライト、ショウタ、ノブ、ゲン、マサはトラックで待機してくれ」
頼もしいメンツだ。
だが、農場に何があるのか、まだ分からない。
それに、何人かはタツヒデの友人でもある。
「親父さん、こんな配分でいいのか?」
ゴウが聞いてくる。
「危険な作業は年寄りがやるもんだろ。なるべく若い世代は死なせたくない」
「そうか……」
ゴウが頷く。
すると、ノブが口を挟んだ。
「待ってください」
全員の視線がノブに集まる。
「俺も父さんと行かせてほしいです」
ノブはタツヒデの幼馴染で、ゴウの息子だ。
ゴウは少し照れ臭そうに顔を隠した。
「気持ちはうれしいが、ノブ。危険な作業だ。親父さんの言うことを聞け」
私は少し考えた。
「……分かった。ただし、あまり前に出すぎるなよ」
「はい!」
ノブが嬉しそうに返事をする。
するとゴウが慌てて口を挟んだ。
「待ってくれよ。お前は残れ」
「父さん……」
「危険すぎる」
二人のやり取りを見ながら、私は口を開いた。
「若い世代に経験させることも、完全に捨てるわけじゃない」
私はノブを見る。
「自分で行きたいと言っているんだ。その気持ちは尊重しないとな」
そして、シンジへ視線を向けた。
「じゃあ、ノブとシンジを交代させよう。シンジはトラックで待機してくれ」
「分かった」
シンジが頷く。
「ノブ、いいか?」
「はい」
「絶対に無茶はするなよ」
「分かってます」
私は全員を見渡した。
「トラック組、これをもっておけ」恭介が無線を渡す
「何かあったら呼ぶ」
「じゃあ、行くぞ」皆頷いた
「ノブ」
「なんですか?」
「最近、タツヒデに会ったか?」
「はい。こうなる前に、二、三回飲みに行きました」
「お前から見て、あいつはどう思う?」
「そうですね……タツは昔と変わったようなところもあれば、変わらないようなところもあります」
「そうか」
私は少し考える。
「なぜそんなことを?」
「いや、特には」
そう答えたが、本当は気になっていた。
私があいつに教えたことが、今のタツヒデにとって重荷になっているのではないか。
そんなことを考えていた。
だが、昔と変わらない部分があるのなら、それでいい。
そうしているうちに、農場へと到着した。
「まだ営業してますかーー?」
ゴウが冗談を飛ばす。
皆、鼻で笑った。
そのとき、農場の奥から家畜の鳴き声が聞こえてきた。
「そういえば、ここの家主は一人だったっけか?」
恭介が口を開く。
「確か、女房が死んでから一人だったような?」
山本が答えた。
私たちはさらに奥へ進んでいく。
やがて、家畜小屋の前に着いた。
すると――
「……あんたら、誰だ?」
八十歳くらいの爺さんが、家畜小屋から姿を現した。
「俺が話すよ」
恭介が一歩前に出る。
そして、恭介が事情をこと細かに説明していく。
しばらくして、恭介がこちらを振り返った。
「OK、話はついた。中に入れだと」
どうやら恭介の話では、爺さんはテレビもラジオもなく、この農場でずっと過ごしていたらしい。
いつも来る業者も来なくなり、不安に思いながら過ごしていたようだ。
私は無線でトラック組へ連絡する。
「トラック組、安全は確保した。中に入ってこい」
私たちは農場の事務所のようなところに入ってこれまでの顛末を話した。
「んで、俺たちがここまで来たってわけだ」
恭介がそう説明する。
「ほう……そんなことが起きていたとはな。だが、なぜここへ来た?」
爺さんが尋ねる。
「私たちは周りに柵を立てて、生活区域のようにして暮らしているんだ。だが、食料がな……。そこで、ここの家畜をもらおうと思ってな」
私は続けた。
「なんせ、あんたが生きていることを知らなかったからな。どうだ? 私たちと取引しないか?」
「……なぜだ?」
「外には善人ばかりじゃない。簡単に言えば、私たちが用心棒になる。その代わりに、家畜を提供してもらい、飼育や管理の技術を教えてほしい」
爺さんは少し考え込んだ。
やがて、ゆっくりと頷く。
「分かった。人に教えるのも悪くはない」
「交渉成立だな」
恭介が笑う。
「ところで、爺さん。名前は?」
「フミオだ。あんたは?」
「トモヤスだ」
そう言って、私たちは握手を交わした。
その後、トラック組にも事情を説明した。
「っていうことで、家畜の移送はやめだ。ここをそのまま使う。広い土地もあるしな」
恭介がそう告げる。
「じゃあ爺さん、もっと高い柵を配置するが、いいか?」
「構わん。計画は任せる」
爺さんはそう答えた。
「じゃあ、作業場に道具を取りに行ってくる」
「恭介とショウタ、ライト、ゲンはここに残れ」
私たちはトラックに乗り込み、村のはずれにある私の作業場へ向かった。
作業場で必要なものを人数分積み込み、再び農場へ戻る。
「ああ、しまった」
「どうした?」
恭介が尋ねる。
「村に報告するのを忘れていた」
「後ででもいいだろ」
恭介が言う。
「いや。詳しいことは終わってから話すが、これからはみんなにここで何人か働いてもらう。私たちだけじゃなく交代でな」
「じゃあ、俺たちが報告してきますよ」
ショウタが申し出た。
「一人じゃ危ないぞ」
私はライトを見る。
「ライト、付いていってやれ」
「はい」
二人が頷く。
私はフミオさんに声をかけた。
「爺さん、村に何人か戻らせたいんだが、軽トラを借りてもいいか?」
「ああ。鍵は挿しっぱなしじゃ」
「サンキュー」
私は村に伝えることを、ショウタとライトに事細かく説明した。
「こんなところだな。着いたら、別に戻ってこなくてもいい」
「いえ、俺たちも手伝いたいんで」
ショウタが元気よく答えた。
「そうか。気をつけてな」
そう声をかけ、私は二人を送り出した。
小一時間ほどして、二人は元気そうな顔で戻ってきた。
「報告、終わりました」
ショウタがそう言う。
「反応はどうだった?」
「まあ、嫌そうにしていた連中が何人かいましたが、大半は良さそうな反応でした」
「そうか。よかった」
それから数時間が経った。
「そろそろ日が落ちてきたな」
私は作業の進み具合を見渡した。
「まあ、三分の一ぐらいはできたんじゃないか?」
「そうだな」
恭介も周囲を見ながら頷く。
すると、ゴウが口を開いた。
「親父さん、もう今日からここにいたほうがいいんじゃないか?」
「確かにな」
私も頷いた。
「誰が残るんだ?」
恭介が尋ねる。
「私と合わせて、五人くらいでいいんじゃないか?」
「俺もそれでいいと思う」
恭介が答える。
「じゃあ、レン、リュウト、カイ、ゲン。私と一緒に残ってくれ。いいか?」
四人がそれぞれ頷く。
「じゃあ、恭介、山本、ゴウ。村を頼むぞ」
「おうよ」
「はいよ、親父さん」
山本は何も言わず、黙って頷いた。
「じゃあ、今日はここで寝てくれ」
フミオがそう言って、私たちを空き部屋へ案内してくれた。
「爺さん、飯はあるか?」
「まあ、残り物が少しある」
「それで十分だ」
私たちはフミオが出してくれた飯を食べ、寝る準備を始めた。
「じゃあ、みんな早く寝ろよ」
そう言い残して、私は外へ出た。
一服しながら、これから忙しくなるな、と考えていた。
やがて吸い終わり、私は部屋へ戻って床に就いた。
だが、その夜。
あんなことが起こるとは、このときの私はまだ知らなかった。
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