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終末世界で俺は  作者: やまてい


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番外編 犠牲

現実味を出すために試行錯誤しながら書いたのですが、合わないところがあるかもしれませんご了承ください


私は夜更けに目が覚めた。


なぜか、嫌な予感がした。


部屋を出ると、フミオさんも起きていた。


「はあ……爺さんも目が覚めてたか」


「ああ。家内が死んでから、この時間になると目が覚めちまう」


「そうか……煙草、吸ってもいいか?」


「じゃあ、わしにも一本くれ」


「あいよ」


私は煙草を一本差し出し、二人で火をつけた。


しばらく無言で煙を吐いていると、自然と身の上話が始まった。


「爺さん、せがれはいたのか?」


「いいや。家内が流産してな。そのあとは……作る気にもならんかった。あんたは?」


「二人いる」


「ほう。あの中にはいなかったようだが、どこにいる?」


「東京だ」


「ん? 出稼ぎか?」


「いや、なんかのイベントに行ってな。そのまま、こうなっちまった。生きてるかどうかも分からない」


私は煙草を口に咥え直した。


「まあ、あいつらなら大丈夫だろう」


「そうか」


フミオさんはそれ以上、聞かなかった。


しばらくして、私はふと思い出したように口を開いた。


「少し昔話をしてもいいか?」


「ああ。懐かしい話なら大歓迎だ」


「昔、犯罪都市の刑事だったんだ」


「ほう」


「あそこは酷いところでな。警官は汚職まみれ、街はヤクザや犯罪組織が実権を握っているような場所だった」


「……ああ、あそこか」


フミオさんがすぐに答えた。


私は少し意外に思いながらも、話を続けた。


「噂なんだが、そこには変な衣装を着た男がいてな。そいつは、犯罪者に立ち向かうかのように、どこからともなく現れては、犯罪者や汚職警官を裁いていったそうだ」


「ふーん。物騒な話だな」


「もうそいつは現れてはいない。だが、その男がいた頃は犯罪率がゼロだったらしい」


「そいつはすごいな」


「そのあと、わしは家内と結婚して警官を辞めた。家内の実家だったここに住むようになった」


「なぜ警官を辞めたんだ?」


「まあ……あの社会にうんざりしてな。土いじりがしたくなったのかもしれん。動物は正直じゃしな」


「そうか」


フミオさんは煙を吐きながら、遠くを見つめていた。


そして、しばらくして口を開く。


「……もう一つ」


「なんだ?」


「あんた、あの町のことをすぐに『あそこか』と言ったな」


「……」


「今の話は、表向きの話じゃない」


「くっ……」


私は言葉に詰まった。


フミオさんの目が、鋭くこちらを見据えている。


「あんた……何か知っておるな」


その鋭い問いに、私は少し固まってしまった。


「なあに、ただの戯言じゃ。何も構える必要もなかろう」


その言葉に、私は少しほっとした。


「そんな探るようなことを言わないでくれ」


私は少し苦笑しながら言った。


すると、そのときだった。


――ドス、ドス、ドス。


外から、いくつもの足音が聞こえてきた。


一つや二つじゃない。


数えきれないほどの足音が、こちらへ近づいてくる。


「なんじゃ?」


フミオさんが顔をしかめる。


「眼鏡あるか?」


「ああ」


フミオさんが眼鏡をかけ、外の様子を窺う。


「まずい」


「どうした?」


「道に死骸があふれてる。歩いてる奴らがな」


「……感染者か」


「爺さん、若いもんを起こしてくれ」


「お前はどうする?」


「私は奴らを引き離す」


「分かった。だが、どうやって?」


私は自分の七つ道具を指差した。


「これでだ」


「……やっぱり、あんたが」


フミオさんが呟く。


「ああ。もう隠す必要もなくなったんでな」


私は苦笑する。


「だが、なぜ分かった?」


「背格好と、マスクを着けていたときの骨格。それに、話し方かな」


フミオさんが答える。


私は思わず、にやりと笑った。


「……なるほどな」


外から聞こえる足音は、さらに大きくなっている。


「さて……どうしようか」

ふと、軽トラが目に入った。


「……いい手だ」


私は軽トラに乗り込み、群れの中へ突っ込む。


何体かを押しのけながら、そのまま群れを引っ張るように走り、先頭へ出た。


「こっちだ!」


大声で叫び、クラクションを鳴らす。


やはり、こいつらは音に寄ってくるように見える。


群れがこちらへ向きを変え、次々と追ってくる。


そのとき、無線が鳴った。


「もしもし」


「もしもし、カイです。俺たちはどう動けばいいですか?」


「私が群れをここから遠ざける。お前たちは、まだ閉じていないところと門までの道に二人ずついて、家畜に被害が出ないようにしてくれ。何でもいい」


「了解」


私はそのまま軽トラを走らせ、群れを農場から引き離していく。


数キロ走ったところで、無線を入れた。


「そっちはどうだ?」


「……すみません」


「なんだ? 何があった?」


「ゲンが……」


少し声が震えている。


「ゲンが、死んじまいました」


「……何?」


「すいません。なだれ込んできたやつらは食い止めたんですが、その間に……」


「そうか……」


私はしばらく黙った。


若いもんが、一人死んだか。


もう数キロ走って私は軽トラを止めた


「もうこいつらやっちまうか、ゲンの仇だ」


私は怒りと悲しみを屍にぶつけた。



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