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その七 国王

 なんだ?


 ああ、あれのことか。餌付けしているわけではない。たまたま休憩時間に出された茶菓子に毒が仕込まれていたのをあれが気づいて以来、毒見役を兼ねて茶につき合わせているだけだ。


 嗅覚なのか勘なのかはわからぬが、食べずとも見抜くので重宝している。たまに厨房にも入り込んでいるな。ああ、王宮内の出入り自由を認めてある。禁じたとして入り込もうと思えばどこにでも入り込めるだろう、あれは。


 最初は私が誰なのか、わからなかったようだ。


 奥庭に飛び込んできたかと思えば、「疲れてんな、おっさん。これでも食って元気出せよ!」などといって、よくわからぬものを押し付けて去って行った。


 いや、食べてはいない。近衛騎士が欲しがったので与えた。


 あとで聞けば、潜入した間諜を追っている途中で、ついでに見つけた他の間諜もまとめてひっ捕らえたそうだ。


 放し飼いにしておいた方が効率よく狩ってくれるなどと飼い主が言っておったが、その通りだったな。よく妙なものを見つけたと持ってくるぞ。隠されていた密書であったり、恋文だったり。……ああ、恋文は色仕掛けで取り入った間諜のものであったりするから面白いな。思わぬものが釣れる。


 猛獣を放し飼いにするなという声もないわけではないが、あれは無駄な狩りはしないだろう。


 妃も気に入っているようだから問題ない。


 あれの兄弟も拾い物が得意らしく、役に立っているようだ。あれの飼い主の妹が取りまとめて送ってくるらしい。


 あやつの妹? そうだな、王太子妃の座を狙っているのかと思ったこともあったが、見込み違いだった。あやつが文官に登用したいと言い出したときも止める気はなかったが、本人にその気は無かったようだな。


 王太子妃だけでなく、息子の友でもあり、妃とも懇意にしているようだが、宮廷で幅をきかせようとするでもなし、なにを考えているのかはよくわからぬ。妃たちには協力しているのだから、兄妹喧嘩なぞ放っておけばよいだろう。


 あやつは役に立つ男だが、ひねくれ者だからな。素直に頭を下げればよいものを搦め手でどうにかしようとするから反発されるのだ。そのうち収まるだろう。


 王太子妃付き侍女……ああ、あの。夫婦揃って働き者だな。裏のない者たちだ。多少、変わっていても信頼できる。孫の世話も任せて問題ない。下手な連中を近づけさせることはないだろうからな。家柄だけの役立たずとは大違いだ。


 また子どもが生まれるようだが、あの近衛騎士の実家は変わり種を輩出するから、将来が楽しみだ。


 元聖乙女の女神官のことはよく知らん。時々、信徒たちと一緒になって、息子を遠くから拝んでいるという話は聞いた。害がないなら放っておけと伝えてある。息子も面白がっているようだ。


 ああ、そういえば側室にという声が上がったが、神官長が叩きつぶしていたぞ。気さくで庶民にも親切だと人気があるらしく、ゆくゆくは後継者にと考えているらしい。


 外に出ていかぬよう聖騎士との仲を深めさせるべく周囲がお膳立てしているらしいが、武術が上達するだけで仲が進展せぬと嘆いている。この間も地方巡察中に狼藉者を取り押さえたらしいな。たくましく護衛いらずで何よりだ。


 なぜか妃もその女神官をよく呼び寄せているようだ。


 妃に聞いたところで、正直に言うわけなかろう。気晴らしになっているのであれば、それで良い。


しばらくまた時間があくと思いますが、何かたまったら放出しまーす!

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