その六 王太子
まいったな。昔のことを持ち出されるとちょっと……。
目を覚まさせてくれたとでも言っておこうかな。世の中、思うようにはいかないことを教えてくれたよ、侍女殿は。
妻が嫌がるそぶりを少しでも見せたら全力で歯向かう気満々だったからね。侍女殿に余計な手出しをしたら、妻には一生許してもらえないだろうということもわかっていたから、どうすればいいのか、本当に悩んだよ。
だから、彼女に相談するようになったのだけれど。彼女も今は遠慮しないけれど、はじめの頃は貴族の令嬢らしく遠回しな言い方をしていたから、しばらく経ってから真意に気づくということもあったよ。
不敬罪に問わない証文を書いてからだね、率直に助言してくれるようになったのは。彼女は妻のことを友人として大切にしてくれていたから信用できたんだ。わたしのことは面倒くさいやつとしか思っていなさそうなところもよかった。
面倒を減らしたくなったんだろうね、途中で、元聖乙女の女神官を相談役仲間に引き込んできたよ。どういうつながりなのかわからないけれど、侍女殿とも仲がいいからって。
女神官殿も面白い人だよ。柱の影から爺様、婆様たちと一緒に拝ませてもらってますというから、てっきり冗談だと思っていたんだけど、本当にやっていたし。
今なら王太子殿下のご尊顔を拝することができますよとかいって一般信徒を引き連れて神殿案内をしていると聞いたときには、笑ったね。
いや、腹は立たないよ、民に顔を覚えてもらうのも王族としては必要なことだろう。聖騎士がしっかり警護しているから、変な連中も紛れ込まない。ああ、たまに、あぶり出すのに協力してもらうこともある。
母上はもっと売り込んでもらえと言っているよ。容姿も武器にして味方を増やせと日頃からいわれているんだ。
……うんと幼い頃は、繊細で淑やかな、弱い人だと思っていたよ。王太后様とやりあう姿を目の当たりにして、とんでもない勘違いだったとわかったけれど。
外交の席でも、見事に顔を使い分けているね。見習わなくては。
そうだな、両親の夫婦仲は悪くはないと思うけど……。母上が時々、ひどい、かな。
この間も側室持ったらどうですかと言い出して、父上がものすごく不機嫌になっていたよ。今は王族が少ないからか、母上は昔から時々、父上にいうんだよね、側室持てって。そのたびに父上の機嫌が悪くなるから、やめてほしいのだけど。
「王太子様のところにあと三人くらい生まれるって神託あったらしいから大丈夫だってさ!」って、あの女護衛兵が斜めの方向で慰めていたよ。
なんか知らないけれど、たまに父上とお茶飲んでいるんだよね。周りも止めない。いや、止められないのかもしれないけど。
裏表がないから、父上も息抜きになっているのじゃないかな。
さくさく書けた王太子編です。クリスマスプレゼント……と、ゆーことにしておいてください。




